<洗脳>耳鳴り~MIMINARI~

少女は、ある日を境に、謎の耳鳴りに苦しめられ
始めていた。

謎の耳鳴りの正体とはー?

耳鳴りは次第に悪化し、彼女に”命令”を始めるのだったー。

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男子高校生の時田 佐介(ときた さすけ)は、
同じ図書委員会の女子生徒、増谷 美紀(ますや みき)に
何かを見せていた。

「この前、増谷さんが聞きたがってた音楽、
 持ってきたよ」

音楽プレーヤーとイヤホンを手渡し、
微笑む佐介。

「--あ、本当に持ってきてくれたんだ!ありがとう!」

大人しそうな、眼鏡女子の美紀が返事をする。

美紀は、一見、大人しそうな外見なのだが
意外と明るく、誰とでもすぐに打ち解けるタイプだ。

同じ図書委員として活動しているうちに、
佐介と美紀は、少しずつ仲良くなっていった。

佐介は、以前、美紀が聞きたい!と言っていた曲を
音楽プレーヤーに入れて、持参したのだった。

図書委員会の仕事を終えたあと、
図書室に残る二人ー。

佐介から渡されたイヤホンを手に、
それを左耳につけて、音楽を聴く。

「---ふふ」
佐介はそんな様子をにやりと笑いながら
見つめていた。

「う~ん、いい音楽!
 やっぱわたしもダウンロードしよっかな!」
美紀が嬉しそうに言うと、
チラッと時計の方を見た。

「あ、もうこんな時間!そろそろ図書室閉めて
 帰らなくちゃね!」

そう言うと、佐介は「そうだな」と微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

全てはー
その日が始まりだったー。

翌日ー
朝、起きると美紀は、小さな耳鳴りに気付いた。

左耳から、
ピーというかすかな音が聞こえるのだ。

本当にかすかな音だったし、
普通に生活していると、
その音はまったく気にならなくなるぐらいの小さなものだったから、
美紀は特に何も気にしなかった。

「---昨日の音楽、私もダウンロードしちゃった~」

放課後の図書室で、美紀は、
いつものように佐介と雑談をしていたー。

「--そっか~役に立てて良かったよ」
佐介も何気ない笑顔で言う。

キィィィィンーーー

「---!?」
笑顔で雑談していた美紀の表情が歪む。

一瞬だけだが、強い耳鳴りが聞こえたのだー。

「--だ、大丈夫か?」
佐介が言うと、
美紀は、「あ、え?う、うん だいじょうぶ」と
答えるのだった。

ちょっと疲れているのかもしれない。

そんな風に思った美紀は、
その日は、いつもよりちょっぴり早く寝ることにした。

「--少し寝れば、治るよね」

美紀はそんな風に思っていたー。

けれどー
この”耳鳴り”はそんなに甘いものではなかったー。

ピィィィィィィーー

翌日…。
耳鳴りはさらに大きくなっていた。

「--ど、、どうしちゃったんだろう?」

昨日とは明らかに違うー
普通に日常生活を送っていても、
その耳鳴りは聞こえるー

「--今日は、元気ないな…
 何かあったのか?」
佐介が不思議そうに聞くと、
美紀は「ちょっとね、耳の調子が」
と左耳の方を触って微笑んだ。

学校帰りに耳鼻科を予約してある。

何か、耳に悪い所があるのかもしれないー。
厄介なことになる前に、検査をしておこうー。

そう思っての予約だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--異常は、ありませんね」
医師はそう言った。

「とりあえず、耳鳴りに効くお薬を
 出しておきます。

 あとは、なるべく夜更かしなどを
 しないように、規則正しい生活を
 送るようにして下さいー。」

それが、医師の言葉だった。

結局、原因が分からずに、
美紀は不安を感じたまま
耳鼻科から帰ることになるのだった。

「薬が効けばいいけど…」
そう呟きながら、処方された薬を見つめる美紀。

「--~~~~~ーーしー~~~」

耳鳴りの中に、何か呟くような声が聞こえた気がした。

「--!?」
美紀は、不安に思って耳鳴りに神経を集中させてみたが、
特に何も呟くような声は聞こえなかった。

気のせいだったのだろうかー。

夜ー。
食後に処方された耳鳴りの薬を飲んで
自分の部屋へと向かう美紀。

気持ちが落ち着かない。常にキーンというような音が
聞こえてきて気持ちが滅入る。

今日はもう、早めに寝てしまおう。
そう思って、ベットに飛び込んだ美紀。

その時だったー

”立てー”

「---!?」

今度は、はっきりと声が聞こえた。
耳鳴りの音が薄れてー
変わりに、自分に”強い口調”で何かが命令をしてきたのだー

”立てー”

「---だ、、誰?」
美紀がパニックを起こした様子で言うと、
耳から聞こえる声は
さらにはっきりと告げた。

”立てー”

と。

「・・・・・・・」
美紀はうつろな目になって、そのまま言われるがままに立った。

”鏡の前に、立てー”

「はい…」
美紀は、感情のこもらない声でそう呟くと、
鏡の前に立ったー。

耳鳴りは、耳鳴りで無くなり、
呪文のような声が、
耳の中に轟いているー。

”服を、そのまま、脱げー”

「はい…」
美紀は、言われるがままに服を
まるで、操り人形かのように脱ぐと、
下着姿のまま鏡の前に立った。

”そのまま、ポーズを決めろ”

命令に従い、色っぽいポーズを取る美紀ー。

その目には、意思が宿っていない。

”鏡の自分に向かって、キスをしろ”

そう命令された美紀は、ゆっくりと鏡に近づいていき、
「んあぁっ♡」と声を出しながら、
鏡をクチュクチュと舐めはじめた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

暗い部屋で、パソコンをいじっていた
男子高校生は笑ったー。

パソコンのモニターには、
”美紀”が見ている映像が映し出されているー。

美紀の耳に耳鳴りが聞こえていたのはー
”接続”に時間がかかっていたためだー。

接続する際のノイズが、耳鳴りとして聞こえていたのだろうー。

「--やっと、増谷さんを思い通りに出来るーククク」
男子生徒は、にやりと微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

目覚めた美紀は、
昨日の夜の記憶がおぼろげな事に気付く。

「昨日…わたし…何を…?」

ふと、頭の中に、
下着姿の自分が鏡を舐めている映像が浮かぶー。

「---!!」
美紀は、”何かされた”と、そう感じた。

何かに操られていたようなー
そんな、感じがする。

一体、誰に。

今日も耳鳴りがする。

美紀は気づいていないー
この耳鳴りは、耳鳴りではなく、
外部からの命令を伝えるための”何か”による
ノイズであることをー。

「--そういえば…」

美紀は思い出す。

図書委員の佐介から、
音楽を聞かせてもらってから、
耳の調子がおかしくなった。

耳鳴りも、あの日、
イヤホンをつけたほうの、左耳からだー。

「--時田くん…わたしに、何かしたの?」
不安そうにつぶやくと、美紀は、
そのまま学校に出かけて行った。

今日の放課後ー
確認しなければならないー

佐介が、自分に何かしたのかをー。

色々考えながら通学路を歩く美紀。

そのスカート丈はいつもより物凄く短くなっていて、
今にも何かが見えてしまいそうなぐらいだった。

しかしー
美紀はそんな状況を何も不思議に思っていなかったー。

”耳鳴り”に、
寝ている間、ずっと吹き込まれたのだー

”女として、色気を曝け出せ”とー。

髪もいつもとは違うセットにし、
女らしさを強調しているー

けれどー
美紀は、そんな違いに気付けなかったー。

”これが、いつものわたし”だと、
信じて疑わなかったー。

周囲が、「あれ?美紀、今日イメチェンした?」だとか
「スカート短くない?」だとか
異変を指摘するも、
これがふつうだと思い込んでいる美紀は
特に何も反応を示さなかった。

そしてー

放課後。

図書室での仕事を終えた美紀は
佐介に声をかけた。

「ねぇ、時田君」

その声に、佐介はギクッとした様子で振り向く。

なんだか、今日の佐介はそっけない。

”やっぱ、わたしに何かしたんだ”
美紀は、直感的にそう感じた。

だからこそー、
自分を避けるような行動をしているのだ、と。

「---わたしに、、何をしたの?」
美紀がそう言うと、
佐介は「え?」ととぼけるような仕草をしてみせた。

「--…え、じゃないでしょ」
美紀が左耳を指さしながら言う。

「--わたし、時田くんに、イヤホン借りて
 音楽聞いたでしょ?
 あの日から、なんか耳鳴りが止まらないの」

美紀が、困った様子で言うと、
佐介は、笑った。

「---ちょ、、あ、、あのさ、
 ごめん」

佐介の言葉に、
美紀はにが笑いした。

「やっぱ、わたしに何かしたんだ?」

とー。

しかし、佐介は首を横に振った。

「あのさー、
 耳鳴りどうこうよりもさ…
 今日、どうしちゃったの?」

佐介は不思議そうに尋ねたー。

「へ?」
雪が首をかしげる。

佐介はそんな美紀を見て、
ため息をつきながら言った。

「なんか、今日、増谷さん別人みたいだよ?
 態度も悪いし、
 なんか派手になったし、
 スカートも短いし、
 話し方もツンツンしてるしー?」

佐介に言われて
美紀は思うー

”そんなことないよ、いつものわたしだよー”

と。

しかしー
本当は違うー

”謎の耳鳴り”によって、
感情や思考を操られているのだー

美紀は、そのことに気付けていないー。

「--ど、どうしたんだよ!増谷さん!」
佐介が叫ぶ。

”どうした?
 それはこっちのセリフでしょ?
 わたしに何したの?”

美紀はそんな風に想いながら、だんだん苛立ってきていた。

「--ねぇ、あんた、わたしに何したのよ!」
大声で叫ぶ美紀。
美紀は普段、声を荒げるような子ではない。

しかしー

今日は、違うー

”耳から発されるノイズ”に巧みに操られているー。
本人は、そのことを、既に自覚できない状態にあった。

「--ねぇ、何したんだよ!言えよ!」
美紀が、明らかにおかしな様子で佐介の
胸倉をつかんだ。

「ぼ、僕は何も…!
 と、とうか、何なんだよ!
 どうしたのさ!」

佐介は必死に叫ぶ。

しかし、美紀は鬼のような形相で、
佐介を投げ飛ばすと、叫んだ。

「--ぶっ壊してやる…!」

美紀の左耳では
”こわせ”
”こわせ”

と囁く声が響いていたー

そしてー

美紀は図書室の椅子を掴んで、
佐介に投げ飛ばそうとしたー。

その時だったー

「---もういいよ」

図書室の入り口に、男子生徒が一人、
立っていた。

「--…!」
佐介はその生徒を見て、呟いた。

「袴田…(はかまだ)」

袴田とは、クラスメイトの一人、
いつもクラスの隅っこに居る男子生徒だ。

友達もおらず、
常に何かをブツブツ呟いており、
周囲からは避けられるような感じの生徒だった。

その袴田が、どうしてここにいる?

「--実験は成功だよ」
袴田が笑いながら、美紀の方に近づいていく。

椅子を持ったままの美紀はうつろな目で
そのまま立っていた。

「見ろよ、素晴らしいだろう?」
普段、口数の少ない袴田が
まるで別人のように、堂々とした様子で微笑む。

美紀の顎を掴んで、自分の方に顔を向けさせて、
そのままキスをさせた。

「---この女は、僕の言いなりだ」

袴田の言葉に、
佐介は唖然としている。

「な、、、増谷さんに何をしたんだ!?」
佐介が叫ぶ。

「----”洗脳”したんだよ。」
 僕がこの数年間、ずっと開発していた
 特殊な音波を使ってな」

袴田は笑う。

美紀は袴田に抱きかかえられて微笑んでいる。

昨日まで”耳鳴り”に違和感を感じていた美紀は、
今や、耳鳴りを心地よいものに感じていて、
その上、耳鳴りと混じって聞こえる”命令”を
喜んで聞き入れていたー。

そのまま、美紀は言われるがままに
袴田にキスをした。

袴田の唇は、乾燥していてカサカサで、
”気持ち悪い”と表現しても良いような唇だが、
美紀は嬉しそうに口づけをしていたー。

「--ま、増谷さんになんてことを…!」
佐介が呟くと、

嬉しそうに顔を赤らめている美紀に向かって

”少し待ってろ”と指令を送るー

美紀はその指令に従って、人形のようにその場に
立ち尽くしたー。

「お前の音楽プレイヤーに細工してな、
 僕の開発した特殊電波が流れるようにしたんだよ」
袴田が言う。

佐介ははっとするー。

この前、音楽プレーヤーを美紀に渡して
音楽を聞かせてあげたー
あの時にー?

「--そう、あの時に、増谷さんの脳内に
 僕の特殊電波が浸透した。

 人間に使うのは初めてだったから、
 ”失敗”したときの保険として、
 お前を利用させてもらったがな」

袴田はにやにやしながらそう説明した。

もしも、特殊電波で洗脳に失敗した場合、
美紀が廃人になってしまう可能性があった。

失敗したときに、自分が容疑者として
疑われることを避けるために袴田は
佐介を利用したのだった。

「---増谷さんを返せ!」
佐介は美紀のことが好きだったー。

だから、必死に叫んだ。

しかしー

「--美紀、お前は僕の操り人形だ」
頭をなでながら袴田が言うと、
美紀は

「はいー」と答えた。

そしてー、
「---そいつを懲らしめてやれ」

それだけ言うと、袴田は笑いながら
図書室から立ち去った。

「おい!待て!」
佐介が叫ぶ。

しかしー
その前に、洗脳された美紀が立ちはだかる。

美紀は思うー

わたし、どうして時田くんに対して怒ってるんだろう…と。

けれど、その思考は一瞬でかき消され、
美紀は敵意のまなざしで佐介の方を見たー

美紀は、怒鳴り声をあげながら
佐介に襲い掛かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

袴田は笑うー。

”実験は完成した”

と。

全ての女子は、僕のものだー

と。

今日の昼休みの放送委員会が放送する
音楽に”例の特殊音波”を混ぜたー。

女性の脳波にだけ干渉する特殊な音波だー。

今日の昼休みからー
全ての女子生徒は、僕のものだー。

「---」
チラリ、と空いた座席を見るー

座席が2つ、空いている。

1つはー
時田 佐介の座席ー
佐介は、美紀に大怪我をさせられて、しばらく入院だー。

もう1つはー
増谷 美紀の座席ー
佐介に大怪我を負わせて、停学処分になったー

「---ふふふふふふ」

昼休みの時間がやってきたー。

校内放送の音楽が流れるー。

”僕が馬鹿にされる日々は終わりだー”

袴田は廊下を歩きながら笑う。

「--あれ?なんか、耳鳴りがする?」

「--え?わたしも…何だろう??」

女子生徒たちが口々に耳鳴りを訴え始めた。

特殊音波による、脳への干渉が始まったのだー
女子生徒たちが耳鳴りを気にする中、
袴田は微笑んだー

”さぁ、始めよう”とー

全女子生徒の脳内に響き渡るように呟いたー

そしてー

”乱れ狂えー”

と、彼はそう命令したー

ほどなくして、校舎中に女子たちの喘ぐ声が
響き渡り始めたー。

これからは、僕こそが、学校の支配者だー

袴田は、これから始まる楽園のような人生を
今一度想像して、微笑んだ…。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

随分前からスケジュール表に載せていた
「耳鳴り~MIMINARI~」ようやく書くことができました!

洗脳モノでしたが、いかがでしたか?
お楽しみ頂けていれば、幸いデス!

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小説
憑依空間NEO

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