とある事件を起こし、マークされていた男ー。
しかし、ある日ー…
その男は自分を尾行中の女性捜査官の身体を
”入れ替わり薬”で奪い取ってしまうー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
ニヤッと笑みを浮かべる男ー。
彼は、”犯罪組織アビス”に所属している男・
勝俣 剛紀(かつまた ごうき)ー。
剛紀は、”犯罪組織アビスの倉庫番”として、
アビスが持つ武器などの管理や取引などを行っており、
捜査官にマークされていたー。
「ーーー…」
そんな剛紀は、日に日に、犯罪組織アビスをマークする
警察内の特殊捜査チームに追い詰められ、
次第にその包囲網を狭められている状態だったー。
がー、剛紀も黙ってはいなかったー。
彼は今日、ある計画を実行に移そうとしていたー。
それはー
”入れ替わり薬”を使って
自分を尾行している女性捜査官・円花(まどか)の身体を
奪うことー。
”へへへへーお前のその身体ー
俺が、有意義に使ってやるからなー”
今日も、円花に尾行されていることを察知して、
剛紀は笑みを浮かべていたーー。
剛紀をマークしている捜査官は主に4人ー。
時間や場所ごとによって交代している模様で、
場合によっては複数人、剛紀を尾行していることもあるー。
しかし、今の時間帯は”円花”ひとりー。
円花の身体を奪うにはちょうどいいー。
”クククー
その身体を奪えば、俺は捕まらねぇし、
警察内部の人間というステータスも手に入れることができるー”
剛紀は、少し離れた場所にいる円花の姿を確認しながら、
そんなことを考えると、改めてニヤッと笑うー。
”それにー…エロイ身体も俺のものだー”
円花はまだ20代の捜査官ー。
服の上からでも分かるスタイルの良さに、
剛紀は下心も抱いていたー。
「ーー…さてーーーここでいいか」
剛紀は、そう呟くと足を止めるー。
そして、言葉を口にしたー。
「ー俺のこと、尾行してるのは知ってるんだぜー?」
とー。
「ーーーー」
その言葉に、円花が警戒しながら姿を現すー。
「ーそうー。
もう少しあなたのことを泳がせておこうとしてたけどー
それなら、仕方ないわねー」
円花はそう言葉を口にすると、銃を手に、
それを剛紀に向けるー。
「おいおいー。いくら俺のような犯罪者相手でも、
銃を放つのはー」
剛紀がそう言うと、円花は「黙りなさい」と、そんな言葉で剛紀の
言葉を遮り、剛紀を睨みつけるー。
「ーわたしたちのチームは、個別に許可が下りた”組織”の
構成員は、場合によっては射殺も許可されてるのー
残念だったわねー」
円花のその言葉に、剛紀は「チッー」と、表情を曇らせるー。
追いつめられた表情を浮かべながらも、
剛紀は”入れ替わり薬”を、この場で使おうと
隙を見計らっていたー。
”ーー追い詰められているのは俺じゃないー
あんたなんだぜー”
内心でニヤリと笑う剛紀ー。
そもそも、この状況も円花の身体を奪うために、
”仕組んだ”状況だー。
円花の身体を奪いー、
”欲望のための身体”と、
”暗躍するための身体”を手に入れるー
女の身体を手に入れて欲望の限りを尽くしー、
”捜査官”という立場の身体を手に入れて
悪の限りを尽くすー。
そのために、剛紀は”あえて”追い詰められているフリを
しているのだー
”ー入れ替わる前に撃たれちゃ、終わりだからなー”
剛紀はそう思いつつ、ニヤッと笑みを浮かべたー。
そしてー、
”あえて”目立つように身に着けて置いたナイフを
身体の動きで、円花に気付かせると、
円花は「今すぐそれを捨てなさい」と、そう反応したー。
「ーー…」
”わざと”抵抗してみせる剛紀ー。
「本当に撃つわよ」
円花の言葉に、剛紀は「わかったー、わかったよー」と、
そう言葉を口にすると、
「捨てるよ」と、そう言葉を口にしながら、ナイフを捨てるために
手に持ったー。
”へへー”
剛紀は、ニヤリと笑うー。
そしてーー
ナイフを円花の方に投げつけるー。
もちろん、”円花は必ずそれを回避する”と計算しての攻撃だー。
相手は警察内部の特殊チームの捜査官ー。
追いつめた犯人が、ナイフを捨てるために手に持つー
そんなシチュエーションを前にすれば、
ほぼ確実に”警戒”しているだろうし、
ナイフを掴ませるということは、
万が一襲い掛かってきたり、投げつけて来ても、
”それを避ける”あるいは”抑え込む”自信があるー、ということだー。
剛紀の読み通り、円花はナイフを回避して、
銃を剛紀に向けたー。
が、剛紀が欲しかったのは”数秒”ー。
ナイフを回避する動きさえあれば、十分だったー。
「ーお前の身体は、俺が貰ったぁ!」
袖の中に隠していた入れ替わり薬をその場に叩きつけると、
一気にガスが噴き出すー。
「ーー!?!?!?」
円花が銃を手に、「これは?!」と、そう叫ぶも、
すぐに剛紀の姿は見えなくなってしまうー。
やがてーーー
煙が晴れるもー、
そこにはもう剛紀の姿はなかったー
「ーー!?!?!?!?」
表情を歪める円花ーー
いやーー
「ーーえっ…?」
円花は、”持っていたはずの銃”を自分が握っていないことに気付くー。
それだけではないー。
「ーな、何、この手ー!?」
自分の手が”変形”しているー。
「ーー!?!?」
円花は、続けて、手が変形したわけではないことを悟るー
「こ、これってー…」
そうー
円花は、たった今追いつめていたはずの
犯罪組織アビスの構成員・剛紀の身体になってしまっていたのだったー。
「ーど…どういうことー…こ、こんなー?」
あらゆる危険な任務もこなしてきた円花でさえ、動揺を
隠せないこの状況ー。
「ーー…う、嘘ー……こ、こんなことってー…」
呆然としながら、剛紀(円花)は戸惑いの表情を浮かべながら
周囲を見渡すー。
既に、近くに円花(剛紀)の姿はないー。
予め”入れ替わる”ことを理解した上で、
入れ替わりを仕掛けた剛紀は、入れ替わった直後に
すぐにこの場から逃走したのだー。
近くにはー…
入れ替わり薬が入っていたと思われる容器ー
さらには、紙切れと円花が持っていた銃が落ちていたー。
相当慌てていたのだろうかー。
円花になった剛紀は、円花が元々持っていた銃を
拾うこともなく、そのまま逃亡したようだー。
「ーーー…入れ替わり薬ー…」
落ちていた紙切れを拾う剛紀(円花)ー
どうやら、”この状況”を引き起こしたのは
入れ替わり薬と呼ばれる薬のようで、
印刷された文字がそこにはびっしりと書かれていたー。
「ーーー……そんなー…」
薬品のテンプレート的な説明が書かれている他、
他にも複数の注意点が記載されていて、
剛紀(円花)は戸惑いながら、
その記述に目を通していくー。
がーー
「ーーーー!?!??!?」
剛紀(円花)は、”利用上の注意”という項目に
記載されていた文字を見て、表情を変えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁっはぁっはぁっー
すげぇ…」
円花(剛紀)は髪を乱しながら、息を切らすと、
「ー捜査官の女って言っても、やっぱ
慣れない身体だと走ると疲れるなー」
と、そう言葉を口にするー。
がー、改めて自分の身体を見つめた円花(剛紀)は
「ーーへへへへー」と、嬉しそうに笑みを浮かべるー。
「こんなすげぇ身体が手に入るなんてー
入れ替わり薬ー…マジですげぇぜ」
円花(剛紀)は笑うー。
”警察内部の関係者”という立場を手に入れ、
さらには”欲望を満たせるこの身体”も手に入れたー。
運動能力自体は、剛紀の身体よりも劣る部分は
あるとは思うー。
しかし、この身体であれば”女”であることを武器に、
色々なことがやりたい放題になるー。
「クククー”女の身体”を悪用する人間にとっちゃー、
この身体は最高の身体だぜー」
邪悪な笑みを浮かべながら、
円花(剛紀)はそう呟くと、
そのままゆっくりと歩き出すー。
「ーーーへへーじゃあなー」
自分が走ってきた方向を見つめながら、
剛紀(円花)に対して言葉を発するー。
もちろん、それなりの距離を走ってきたため、
もう本人に言葉は届かない距離ではあるものの、
円花(剛紀)は勝ち誇った表情でそう言葉を口にすると、
そのまま立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
”利用上の注意”ー
そう書かれた部分を見つめる剛紀(円花)ー
そこには、こう書かれていたー。
”対象者のうち、片方が死亡した場合、
入れ替わりの効力は切れる”
とー。
つまりー、
円花か剛紀のどちらかが死ねば、
入れ替わりの効果が切れる、と、
そう書かれているのだー。
「ーーーー!!」
剛紀(円花)は表情を歪めるー。
”剛紀(円花)”か”円花(剛紀)”のどちらかが死亡すればー、
入れ替わり薬の効力は切れるー。
剛紀が使った入れ替わり薬は、
”両方が生きていないと”その力を維持できないー。
そういうことになるー。
「ーーーーーー」
剛紀(円花)は戸惑いの表情を浮かべながら、
円花が持っていた銃を見つめるー。
「ーー…ーー…ーーー……バカな男ー」
剛紀(円花)は苦笑いするー
元々、軽そうな男だったし、
これまで尾行していても、浅はかな行動がいくつも見受けられたー。
数年前から”犯罪組織アビス”の幹部候補と言われながらも、
一向に幹部に出世しないところを見ても、
剛紀にはどこか抜けたところがあるのだろうー。
入れ替わりで、円花の身体を奪い、
慌てて逃走した際に落としたであろう、入れ替わり薬の説明書と、
元々円花が持っていた銃ー。
「ー身体を奪われたのはびっくりしたけど、
最後の最後でミスをするなんてー」
剛紀(円花)はため息をつくー。
できれば、剛紀を捕らえたかったー。
しかし、このまま放置しておけば、剛紀が円花の身体を使って
悪事を始めるだろうー。
すぐにでも、身体を取り戻さなくてはいけないー。
剛紀(円花)は銃を拾うと、
そのままそれを自分に向けたー。
一瞬、身体に恐怖が走ったー。
「ーーー…元に戻るためとは言えー
自分に銃を向けるのは、なんだか怖いわー」
剛紀(円花)は自虐的にそう言葉を口にするー。
元に戻る瞬間に”痛み”はあるのだろうかー。
それとも痛みを感じる前に元に戻れるだろうかー。
そんなことを考えるー。
がー、長々と考えを巡らせている時間はないー。
今すぐにでも、剛紀は円花の身体で
捜査情報を奪おうとするかもしれないし、
仲間に連絡を入れて仲間の命を奪うかもしれないー。
捜査官という立場を利用して悪事を行ったり、
今、この瞬間にも円花の身体を触って
楽しんでいるかもしれないー。
そう思うと、ゾッとしたー。
愚かな略奪者・剛紀の息の根を止めるためー
そして、自分自身の身体を取り戻すため、
剛紀(円花)は意を決して、自分に銃を向けるー。
”ーこんな体験をして、そのあとも生きてるって言うのは
なんだか不思議な感じー”
剛紀(円花)は思わず苦笑いすると、
深呼吸をしてから、その場で、自分自身に向かって
銃を発砲したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
パァン!!!
銃声が響き渡ったー。
裏路地の一角で、自分の胸を壁に押し付けながら
ニヤニヤしていた円花(剛紀)はビクッと震えたー。
そしてーー
「ーーー…!」
円花(剛紀)は自分の手を見つめると、
「も、戻ったー」とそう言葉を口にするー。
「ーーーーーーー」
「ーーーーーーーなんてなぁ へへ」
ニヤッと笑う円花(剛紀)ー
ニヤニヤしながら、来た道を戻ると、
そこには自分に向かって発砲し、死んだ剛紀(円花)の姿があったー。
その側には入れ替わり薬の説明書が落ちているー。
「ーーへっ…バカな女だぜー。
この説明書は俺が適当に作った”偽物”だよー」
円花(剛紀)は、そう言葉を口にすると、
剛紀(円花)に向かって唾を吐き捨てるー。
そうー。
片方が死んでも、元になど戻らないー。
円花(剛紀)は入れ替わった後に
剛紀になった円花を始末するために、
”偽の説明書”と”銃”をあえて置いて逃亡したのだー。
そしてー、その結果、思い通りの結果になったー。
「勝手に死んでくれて、ありがとよ」
円花(剛紀)はそう言葉を口にすると、
「ーこの身体は俺が有意義に使ってやるぜ」と、
そう呟いたー。
「ーーーーわたしですー」
円花(剛紀)は咳払いをしたあとに
”いつもの円花”のような声を出すと、
「勝俣 剛紀が逃亡中に自殺しましたー」と、
仲間の捜査官に向かってそう連絡を入れてー、
邪悪な笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
1話完結の入れ替わりモノでした~!★
1話完結だと、
普段とはまた違う詰め込み方をしないといけないので、
私もいつもとは少し違う気持ちで執筆してます~!★!
今日もお読み下さりありがとうございました~~!
コメント
そんな簡単に戻れるなんて都合が良すぎると思ったら、やっぱり罠でしたね。
バカなのは都合の良すぎる説明をあっさり信じて自滅した円花の方でしたね☆
こちらへの感想もありがとうございます~~!☆
いかにも罠なオーラが漂っているのに
信じちゃダメなのデス~笑