<憑依>彼女が姫になってしまった②~戸惑い~

①にもどる!

ある日、彼女が異世界の姫の魂に憑依されてしまったー。

そのことに気付かないまま、
彼氏は豹変した彼女を前に困惑し…?

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「ーこれが君の姿だー。
 これは、君なのか?」
スーパーの店長から借りた手鏡を手に、
輝夫がそう言葉を口にすると、
希海は驚きの表情を浮かべながら言ったー。

「い、いったいどうなってるのー?こ、この女は誰!?」
とー。

「ーー…これは、君だー」
輝夫がそう言葉を口にすると、
希海は周囲を見渡してから、
もう一度鏡を見つめる。

そして、自分の身体を何度か動かすと、
困惑したような表情を浮かべながら
「こ、こ、こんなのわたしじゃないわ…!
 わたしは、エミリーはもっと綺麗だもの!」と、
そう言葉を口にするー。

輝夫は戸惑いの表情を浮かべたまま
言葉に詰まっていると、
スーパーの店長は「彼女さん、二重人格ー……ってやつですか?」と
戸惑いながら口を挟むー。

「い、いえー…そんなことは一度も聞いたことありませんしー
 原因も思い当たりませんがー…」
輝夫はそう返事を返すと、希海を見つめるー。

がー、どう考えても目の前にいる希海は
いつもの希海じゃないー。

ただ、二重人格ではないにしても、
性格上、こんな”別人のフリ”をするような子じゃないし、
恥ずかしがり屋な一面もある希海が、
こんな演技をできるとは思えないー。

「ーーーーーー」
店長は困惑した表情を浮かべながら
彼氏である輝夫と、万引きをした希海がグルになって
見逃してもらおうとしているのではないか、とそんな風にも考えて、
「ーひとまず、警察は呼ばせていただきます」と、そう言葉を口にする。

輝夫も、どんな事情であれ、希海が万引きをしてしまった以上、
それは仕方がない、と、そう考えて
「本当に、ご迷惑をおかけしました」と、店長に対して頭を下げるのだったー。

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希海に万引きの経歴がなかったこと、
輝夫が必死に謝ったこと、
ダメ元で警察に事情を説明して、
半信半疑ながらも、病院での治療を勧められたこと、
スーパーの店長自身も、厳しい罰は望まなかったことなどから
警察での一連の対応は終わり、
家へと帰宅した希海と輝夫ー。

が、希海は「ーここはどこなのー?教えて頂戴」と、
不満そうにそう言葉を口にしながら、
聞いたこともないような地名を次々と口にしたー。

「~~~~~…」
輝夫は困惑しながらスマホで希海が口にした地名を検索するー。

しかし、希海が口にした地名のうちの一つが
”たまたま”ゲームに登場する場所と名前が一致しただけで、
ほとんどの場所は検索しても引っかからないような名前だったー。

「ーー……そんな場所はどこにもないけどー…」
輝夫はそう言葉を口にした上で、
「ここは、”日本”だけどー」と、そう言い放つと、
「2本????」と、希海が首を傾げる。

「ち、ちがう、ちがう、
 日本、ジャパン!」

輝夫が必死に、今の希海に理解してもらおうとそう言葉を
口にするも、
「2本??シャンパン???」と、全く希海には意味が
通じていないようだったー。

輝夫は”どうすればいいんだ…?”と思いつつ、
「ち、地球ー 地球は分かるか?」と、そう確認すると、
「ち、ちきゅ???ちくわ?」と、希海はさらに頭に「?」を
浮かべるような仕草をしたー。

”ち、地球も分からないのかー…?”
輝夫はそう頭の中で呟くと、
「き、君はどこから来たのか、君は何者なのか、教えてくれるか?」と、
改めてそう確認する。

すると、希海は
「だ~か~ら~!わたしはエミリーよ!
 ゼリアス王国の国王の娘のエミリー!」
と、そう叫ぶー。

「ゼリー王国?」
今度は、輝夫がさっきの希海のような反応をしてしまうと、
「ゼリアス王国!!!」と、希海はそう叫んだー。

が、そんな王国の名前、聞いたこともないし、
検索してみてもやはり引っかからなかったー。

そして、輝夫はさらに希海と話を続けるー。

その結果、希海の中には
”異世界”からやってきたとしか思えない姫・エミリーが入り込んでしまって、
希海の身体を動かしている状態であると、輝夫はそう考えたー。

それと同時に、”エミリー”に対して、
今は輝夫自身の彼女である希海の身体を使っている状態であることを伝えて、
無茶はしないように伝えると、
さらに質問を続けるー。

「”こうなる前”のこと、覚えてるか?」
輝夫がそう言うと、希海は
「わたしはー、いつものように部屋で寝てただけだから分からないわ」と、
不満そうに呟くー。

「気付いたら、この女になって知らない変な街を歩いてたの」
そう言葉を口にする希海ー。

恐らく、大学帰りに買い物に向かっていた希海は、
その途中でこの”エミリー”とやらに憑依されてしまったのだろうー。

「それより、さっさとカイルを呼んでくれるかしら?」
希海のそんな言葉に、
「い、いやー、ここはたぶん、君のいた世界と違う世界だからー」
と、輝夫は困惑しながら言うと、
「役立たず」と、希海は不満そうに言葉を発して、
顔を背けたー。

”おそらく中身が違う”とは言え、
希海の顔に希海の声で”役立たず”と言われると
少なからずショックも受けてしまうー。

目の前にいるのが、希海であって希海ではない存在だと分かっていてもー。

「ーーじゃあ、こうしよう」
輝夫はショックを受けながらも、”ある提案”を口にするー。

「ーー俺は、希海を元に戻したいー。
 君は、元いた場所に帰りたいー。
 そうだな?」
輝夫がそう確認すると、
希海は「偉そうにー…」と、不満そうにしながらも、
「まぁ、それは間違いではないわ」と、そう言葉を続けるー。

「ーだったら、協力しようー。
 君と、希海のために、俺は君が元の世界に戻るための方法を探すー。

 だから君は、しばらくこの状況を我慢して、家にいてほしい」

輝夫のその言葉に、
希海は不満そうに「わたしにずっと家にいろと言うのかしら?」と、
そう言葉を返してくるー。

「ーー」
輝夫は少し考えてから、すぐに口を開くと、
「君の世界と、この世界のルールはたぶん違う。
 色々分からないまま、外を歩き回っても
 さっき、スーパーで捕まったみたいに面倒なことになってしまうかもしれないー。
 だから、外に行くときは必ず俺といっしょだ」
と、そう言葉を続けると、
希海はため息を吐き出すー。

その上で、「まぁでも、確かにそれもその通りねー」と、頷くと、
「あんな面倒なことになるぐらいなら、無礼なあなたの言うことに従わってあげるわー」と、
高飛車な様子でそう言葉を口にするのだった。

この日からー、輝夫と”異世界の姫”に憑依された希海との
共同生活が始まるのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーそれ取ってくれる?」
「ーーそこ、邪魔よ!」
「ーこれどうすればいいの?」

この世の常識を何も知らず、
けれども偉そうな態度の希海の
横暴な振る舞いは続くー。

”~~分かってはいても、複雑だなぁ”
輝夫は、希海が希海ではない状態だと分かっていながらも、
”希海が急に嫌な感じの人間”になってしまったような
錯覚を覚えながら、内心で戸惑うー。

とは言え、今は希海の機嫌を損ねないように
しなくてはいけない。
今の希海は”エミリー”に憑依された状態。

エミリーがその気になれば
希海の人生を壊すような行動を
することだって、できてしまうー。

エミリー本人にそんな気が無かったとしても、
今の状況は
”希海を人質に取られているような状態”と、言っても
あながち間違いではないような、厳しい状況であるのは
事実だったー。

「ーところで、あなたはいつもこんな貧相なものを
 食べているのかしら?」
希海が不満そうにそう言葉を口にする。

そんな希海に対して、輝夫は苦笑いをすると、
「まぁ、”お姫様”からすれば不満かもしれないけど、
 全然貧相な食べ物じゃなくて普通の食べ物だよ」と、
輝夫がそう言い放つー。

「ふぅんーーー。可哀想に」
希海の言葉に、輝夫は少しムッとしながら
「贅沢な生活しか知らないのも、可哀想だよ」と、
そう言い返すー。

すると、希海は「あら?わたしに喧嘩を売ってるの?」と
不満そうにそう言葉を返してくるー。

その言葉に輝夫はため息を吐き出しながら首を横に振ると、
「ーーいや、別にー」と、それだけ言葉を口にしたー。

まるで”家来”のように使われる日々ー。
希海のためだと思いつつも、
うんざりしてしまうような使い方もされて、輝夫は
疲れ果てていたー。

早く、希海の中から”エミリー”とやらを追い出して、
希海を元に戻さなくてはいけないー。
希海のためにも、自分のためにもー。

人間とは不思議なもので、
希海のことは好きでも、
”希海の見た目”で横暴な態度を取られ続けると、
だんだんと希海のことまで嫌いになりそうになってしまう。

もちろん、今でも希海のことは好きだ。
けれど、”希海の見た目”と”希海の声”で嫌なことをされ続けると、
どうしても脳が、希海を”イヤな相手”だと錯覚してしまうような、
そんな感じが拭えないー。

このまま、ずっとこの状況が続けば希海のことまで嫌いになってしまうー。

そんな危機感を抱きつつ、なんとか異世界からやってきた姫・
エミリーを元の世界に戻し、
希海を元通りにする方法を探す日々を送る輝夫。

「最近、疲れてそうだけど大丈夫か?
 森藤さんも全然大学に来ないしー」

大学内ー。
昼休みに親友の孝信がそんな言葉を口にするー。

「ん?…あ、あぁー大丈夫」
輝夫は自虐的に笑いながらそう返事をする。

あまり大丈夫ではないものの、
まさか、希海が”異世界の姫に憑依されてしまった”などとは言えないー。

言っても信じて貰えないだろうし、
話が広まればややこしいことになってしまうかもしれない。

それだけは、避けなくてはいけなかった。

「希海は、ちょっと最近体調が悪くてさー」
輝夫がそう言うと、孝信は「そ、そっかー…お大事にな」と、
少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「はは、いや、いいんだー」
輝夫も少し申し訳なさそうにそう言葉を口にすると、
”とにかく、早く希海を元に戻さないとなー…色々支障が出るー”と、
そんなことを頭の中で考えつつ、
その方法を色々と思案し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「元の世界に戻る方法、何か心あたりはないかー?」
輝夫が、改めて希海に憑依している状態の
エミリーに対してそう言葉を口にする。

「ないわよ。あったらこんな貧相なところにいないし。」
希海が髪を触りながらそう言葉を口にするー。

髪型まで勝手にお嬢様ヘアーのような感じに
変えられてしまっていて、
その様子にも、腹立たしさを覚えてしまう。

「ーー…君の身体じゃないんだから、あまり好き勝手するなよ?」
そう指摘する輝夫。

が、希海は「相変わらず無礼なやつねー。
姫であるわたしに、この女が従うのは当然のことよ」と、
自分は姫だから、希海の身体でどんな格好をしても自由なのだと
エミリーは言うー。

「ーーとにかく、わたしが元の世界に戻る方法を見つけるのも
 あなたの仕事なんだから、さっさと見つけて頂戴。

 ー全く、カイルならこういう時、さっさと仕事をしてくれるのに」

希海は腕組みをしながらそう言葉を口にすると、
「わたしは部屋にいるわ」と、不満そうにしながら
自分の部屋へと戻っていくー。

「ーーーー」
輝夫は嫌そうな表情を浮かべながらも、
希海のためにと、エミリーの出身国であるという
”ゼリアス王国”についても調べていくー。

が、そんな名前の国は存在せず、
やはり、”この世界とは別の世界からやってきた”としか
考えられなかったー。

あるいはー…
”自分をゼリアス王国の姫だと思い込んだ別人格”が
生まれてしまったのではないかと、そんな風にも考えるー。

やっぱり、スーパーの店長が言っていた通り、
二重人格なのではないかと、
そんな不安も頭の中によぎるー。

”一度、病院の診察を受けるのも手かー?
 エミリーとやらが希海の中で生まれた別人格だったとしても、
 本当にゼリアス王国とやらの姫だったとしても、
 何か方法が見つかるかもしれないー。

 ただー…”

輝夫はそこまで考えると、”あの姫”を
病院に連れて行くのは難易度が高い、と、そう思いながら
ため息を吐き出すのだったー。

③へ続く

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コメント

輝夫くんは二重人格も疑っていますが
ちゃんと憑依なので安心(?)して下さいネ~!笑

明日が最終回デス~!!
今日もありがとうございました~~!

続けて③をみる!

「彼女が姫になってしまった」目次

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