平凡なある日、
突然やってきた訪問販売ー
怪しげな男が売りだそうとしてきたのはー
”女子高生の皮”だったー。
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倉井 祐一(くらい ゆういち)は
ごく普通のサラリーマンだった。
恋愛には縁がなく、
独身のまま、30後半にまで
さしかかっていたが、
本人は、自分の人生に特に不満は
抱いていなかった。
仕事は順調
プライベートでは趣味を楽しみ、
友人もほどほどにいる。
貯金も十分に出来ているし、
今のところ、老後の心配もなさそうだ。
なにも、不自由なところはない。
そんな彼は、
土曜日の休日のひと時を楽しんでいた。
ちょっとした料理を作って見たりー
特撮映画を見て盛り上がったり、
ちょっとエッチな動画を見たりー
これはこれで、充実した休日だった。
しかしー
ピンポーン…!
インターホンが鳴り、
祐一は、「はい」と返事をする。
相手が何やら、商品の紹介なんたら言っている。
よくあるセールスだろう。
祐一は「あ、すみませんが、今、忙しいので」と
適当にいつものように断ろうとしたー
しかし…
「--女の子になってみたいと思いませんか?」
セールスの男は、ニヤニヤしながら
そう呟いた。
「--!?なんだって?」
祐一はその言葉に反応した。
女の子になる、とはどういうことだ?
祐一は、その言葉に興味を抱き、
玄関の扉を開く。
あやしいセールスかもしれない。
そう思った。
けれどー
セールスの男には、強い説得力があった。
”女子高生の皮”
男は、それを販売してくれるのだと言う。
販売価格はー
10万円。
着ぐるみにしては、もの凄い高い金額だ。
だがー
”10万円”を払ってでも買いたいと思うぐらいの
説得力があったー
「この皮は、生きているんですー」
セールスの男は笑う。
圧縮袋に入れられた女子高生の皮ー。
どんな感じの子か、写真で見せられた
祐一はこの子になってみたいと感じた。
まるで本当に、女の子になったかのような
感覚を味わうことのできる着ぐるみー
カタログを読んだ祐一は、
購入を決意したー。
「--ありがとうございます」
セールスの男が嬉しそうに笑うー。
「もしも、商品に不備があったり、
ご不満がありましたら、クーリングオフもできますから」
男はそう呟いた。
このセールスマンなら安心だと感じ、
契約書にサインをした祐一は、
圧縮袋に入れられた女子高生の着ぐるみを
手に入れたー。
独身の祐一には、お金もある。
だからー
たまにはこういうものを買ってみるのも
悪くは無いー
圧縮袋を開封するとー
まるで、生きているかのようなー
そう、ホンモノの人間をそのまま
中身だけ抜いたかのような
生々しさのある女子高生の着ぐるみに早変わりした。
「--すげぇ…」
祐一は呟くー。
”舞香”
圧縮袋にはそう書かれていた
「名前まであるなんて、本格的だな」
祐一は笑いながら、
その着ぐるみを身に着けるとー
自然と自分の身体に舞香の着ぐるみが
溶け込むようにしてフィットした。
「な、、なんだ、、この感覚!」
ー!?
祐一は、自分の声が自分自身のモノではなく
可愛らしい女子高生の声になっていることに気付く。
「え…えぇ…!?」
まさか声まで変わるとはー
ここまで凄い着ぐるみだとは思わなかった。
「--うわぁ…すげぇ」
可愛い声で呟く祐一。
祐一は洗面所の鏡の前に立つー
「ま、、まじかよ…」
祐一…舞香になった祐一は
唖然とした様子で自分を見つめた。
「ゴクリー」
着ぐるみを着ているー
というよりかは、完全にこの子に
なりきっているような、
そんな感じだー。
目も、鼻も、綺麗な唇もー
自分自身のものになったような感じさえする。
「どういうことだこれは…」
ふと、胸の部分が気になる。
鏡の中の舞香が顔を赤らめている。
「--い、、いいのか…?」
舞香になった祐一は戸惑う。
だがー
自分はあくまでも着ぐるみを着ているだけだ。
祐一はそう自分に言い聞かせて
舞香となった自分の胸を触った
「あぁ…やわらかい…」
鏡に映る舞香が、幸せそうな笑みを浮かべている。
顔まで赤らんでいるし、
触った胸の感触はー
まさに本物かのようだったー
祐一は、女性の胸を触った経験が
ほとんどないから、これがホンモノの感触か
どうかはイマイチなんとも言えなかったが、
とにかく、ホンモノだと言われたら信じてしまいそうな、
そんな感覚があった。
「---って、この格好じゃ流石にまずいよな」
着こんだ着ぐるみは全裸の状態。
いくら着ぐるみとは言え、
こんなにリアリティがあると、
流石にまずいのではないか、と思い、
何か服を着ることにしたー。
「---ん?」
舞香は、ふと鏡の方を見つめて笑うー
腕の部分に、小さい頃にしたであろう
予防接種のあとがかすかに残っていた。
「--こんなところまで再現されている
着ぐるみなんて、
まさに本物人間をそのまま皮にしたみたいだな」
舞香はそう呟くと、
面白そうに微笑んだー。
今日は土曜日。
明日と合せて二連休だ。
せっかくだから、二連休、
この舞香として楽しむことにしよう。
「---ふふふ」
舞香はニヤニヤしながら、
ネットを眺めてー
適当に、”女の子になったら着てみたかった服”を
購入したー
「明日には到着…
むふふふふふふ」
舞香はスケベな笑みを浮かべながら
がに股で部屋を歩くと、
適当な男物のシャツとパンツを身に着け、
自分の身体を弄び始めた。
「けへへへへ…♡
女の子の身体ってすべすべして
気持ちいいな~!」
触る場所によって、
本当に男では感じることのできない
快感を感じることができるー。
「--こ、、これは、すげぇ♡」
ライニングシャツとトランクス姿の
舞香が嬉しそうに微笑む。
顔は真っ赤に染まり、
身体を喜びで震わせている。
「むふふふふ…♡ あはははは♡」
舞香は涎を垂らしながら微笑んでいる。
とても、年頃の少女には見えない
野獣のような表情を浮かべながらー
「むふ…♡」
舞香はふと思う。
”これ、本当に着ぐるみなのかー?”
と。
舞香の中にいる祐一は
少し不安になった。
あまりにも、リアリティがありすぎる。
そう、あまりにも、リアルなのだー。
着ぐるみで声まで女の子のものになりー
年頃の少女がー
甘い声を出して喘いでいるー
さらに、男が感じることのできないゾクゾクまでー
鏡に映る舞香は、
欲望に満ちた表情で叫ぶ
「んあぁぁああ~♡ たまんねぇ~~~♡」
我慢できず、パンツの中に指を突っ込んで、
激しく手を動かしたー。
「ぐふ♡ あぁ♡ あんん♡
これ、、本当に、、着ぐるみ…なのぉぉぉ??
んあぁああああ~♡」
ランニングシャツだけを身に着けた状態の舞香は
激しく身体を震わせながら
顔を真っ赤にして、液体を周囲にばらまいたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
祐一は、舞香の着ぐるみを着たまま
休日を満喫していたー。
「---ふ~!」
ネットで注文したチャイナドレスを身につけながら
綺麗な脚をずっと撫で続けている。
テレビをかけながら、
ソファーに腰かけて、自分の足を
撫で続けるー。
至福の時間だー。
「あん…すべすべぇ…」
「はぁ…♡ はぁ…♡」
自分がこんなにきれいな生足の持ち主に
なれるなんて…
「うふふふ…わたしは舞香!」
すっかりその気になった祐一は嬉しそうに叫ぶ
「わたしは舞香!現役女子高生で~す☆」
嬉しそうに一人、ポーズを決める舞香。
”---先日から、行方不明になっている
熊井 舞香さんですが、
現在でも警察の捜索が続いていますー”
「--!?」
満面の笑みを浮かべていた舞香が
テレビに注目する。
「今、、なんて…」
”熊井 舞香さんは、5日ほど前から
行方不明になっており、
事件に巻き込まれた可能性もあるとしてー”
テレビにはー
今、自分が着ている着ぐるみ”舞香”の
写真が映し出されている。
「--な、、な、、な、、ななな、なんだ、、これは…?」
舞香の着ぐるみを着ている祐一は
悪寒を感じて、
慌てて先日の訪問販売業者に連絡を入れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「---どうしました?」
先日のセールスがやってくる。
「ど、ど、、どうしたって…!?
こ、、この着ぐるみは一体…?
テレビでこの子が行方不明になったって…」
舞香が焦った様子で言うと、
セールスの男は微笑んだ。
「えぇ…これは、ただの着ぐるみじゃありません」
セールスは笑う。
「--ーその皮はー
ホンモノの人間から作り出した皮なんですよ…ケケケ」
セールスの男の態度が豹変した。
祐一は反射的に身の危険を感じ取る。
なんだか、ヤバイー
「ク…クーリングオフはできるのか?」
祐一はびびってることを悟られないように、
舞香の皮を返却することを申し出た。
「えぇ、構いませんよ」
男が笑う。
「--では、舞香ちゃんの着ぐるみを
脱いで、返してください」
そう言うセールスマン。
「あ?あぁ…」
舞香の着ぐるみを着ていた祐一は
それを脱ごうとした。
しかしー
「--あ、、あれ…
お、、おい、どうやって脱ぐんだ!?」
舞香が叫ぶ。
セールスはにやりと笑った
「おやおや…現物が返品できないなら…
私としても、クーリングオフを
お受けすることはできませんね…」
セールスの男は笑ったー
「--知ってます?
その子、私に”皮”にされる直前、
泣き叫んでましたよ…くふふ…」
邪悪な笑みを浮かべる男。
舞香になった祐一は絶望の症状を
浮かべるー。
「--…こ、、この子を元に戻してやってくれ!」
舞香の声で叫ぶ。
まさかー
着ぐるみじゃなくて、
本当の人間の皮だなんて思わなかった。
祐一は叫ぶ。
「俺を、元に戻してくれ!」
とー。
「あぁ…心配はいりませんよ」
セールスの男がニヤニヤ笑う。
「もうすぐ…”同化”しますから…」
その言葉に、祐一は背筋が凍るような思いをした。
”同化する”とは何だ??
混乱する祐一。
「--あなたは間もなく、
舞香ちゃんそのものになるんですよ。
その子の記憶が流れ込んできて―
あなたは舞香ちゃんになるー
くくく」
セールスの男が笑う。
「な…なんだって…!
ふ、、ふざけるな!
おい!
最初にクーリングオフできると言っただろうが!」
舞香の声で叫ぶー。
セールスの男は「じゃあ、”皮”を返品してくださいよ」と笑う。
しかしー
舞香の皮を脱ぐことはできないー。
「--さよならだ」
セールスの男は、そう呟くと、
笑いながら玄関から外へと出ていく。
「おい!ふざけるな!待て!」
外に出てもおかしくない格好に着替えると、
舞香は、慌ててセールスの男を追いかけた。
セールスの男が笑いながら
近くの駐車場に置いてあった自分の車に乗り込む。
そしてー
その車は走り去ってしまった。
「くそっ!くそっ!くそっ!」
この子の”皮”の脱がなくては、
自分が助かりたいという思い―。
舞香を助けたいという思い―
2つの感情から、祐一は焦っていた。
「----…!」
ふと、舞香ははっとする。
「---え…え~っと」
”帰るべき場所”が分からないー
自分の家から飛び出して
セールスの男を追いかけようとしたはずなのに、
自分の家が分からない
「あ…あぁあ…」
舞香はパニックになった。
どうして、こんなことになったのかー
舞香には、祐一には分かる。
”もうすぐ、同化する”
「---ど、、同化って…同化って…?」
祐一は恐怖したー
このまま、舞香の皮に支配されて
自分が舞香そのものになってしまうのではないかー。
自分が、
祐一という存在が消えてしまうのではないかー
「たす…けて…」
舞香は道路に膝をついた。
自分は祐一なのか、
自分は舞香なのか。
それすらも怪しい中、
訳も分からない恐怖を感じて
舞香は泣き始めてしまった。
「--きみ…?」
その時だったー
警察官が舞香に気付き、声をかけた。
「---た…たすけて…」
舞香は目から涙を流している。
警察官は、舞香の顔を見て
はっとした。
この子は、数日前から行方不明になっている子であると
確信した警察官は、舞香を即刻保護したー
・・・・・・・・・・・・・・・・
数時間後ー
ようやく落ち着いた舞香の元に
母親がやってきた。
母親は行方不明になっていた
舞香の姿を見て涙を流すー
「舞香!どこ行ってたのよ!」
涙を流す母親。
母親に抱かれながら、舞香は
泣きながら答えた。
「ごめんね…お母さん…」
とー。
舞香は無事に母親と再会できたことを
心から喜んでいたー
もう、自分が祐一であることを
舞香の皮を着た祐一は、完全に忘れてしまっていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
テレビのニュースを見ながら
舞香が発見されたことを知る
セールスの男。
可愛い子を自らの特殊な力で皮にして
それを手頃な価格で売りつけるー
10万ぐらいであればー
少し金に余裕のある人間なら簡単に食いつくー
そしてー
皮と同化させてしまえばー
何の問題にもならないー。
セールスの男は、
カワイイ子を皮にし、
それを一人暮らしの男に売りつけー
儲けていた。
1体10万ー。
だが、皮にして売るだけのとても簡単なお仕事だ。
1か月で10体も売れば、100万になる。
原価はほぼ0。
一人暮らしの男が失踪しても、大きな問題にはならないし、
調べたところで見つかりっこない。
とても美味しい商売だー。
舞香と母親の再会のニュースを
今一度眺めながら男は笑った。
「感動の再会だなー。
だが、再会した娘は、
娘であって娘ではないー。」
舞香の意識は、皮にされた時に、
失われたー。
今、舞香として振る舞っているのは
”舞香の記憶に支配された祐一”だ
舞香ではあるが、舞香ではないー
「くくく…」
男はテレビを消すと、
またひとつ、新たな皮を作りだそうと、
家から出ていくのだった…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
「スケジュール表」の予定のところに
ずっとタイトルだけ公開していた小説ですが
ついに書けました~!
ようやく形にできて、一安心デス!
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