<入れ替わり>モスキート・チェンジ

とある家に侵入した蚊ー。

その蚊は、他の蚊と同じくー
”駆除”される運命にあったー。

しかしー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・

鶴岡家ー。

秋が深まってきたころー、
1匹の蚊が、鶴岡家に侵入したー。

この家の長女の帰宅に合わせて、玄関から侵入したのだー。

「ーあ、お姉ちゃん!蚊がいる!」
長女・千晶(ちあき)の弟・智也(ともや)に、
早速発見されてしまった蚊はー、
智也から離れようとするー

智也が「こいつめ!」と叫びながら、
蚊をパン!と叩こうとするー。

しかしー
蚊は、ギリギリで智也の攻撃をかわすことに成功するー。

「ーーお母さん!殺虫剤どこだっけ!」
智也がそう叫ぶと、
千晶が「今、ごはんの準備中だし、殺虫剤はやめたほうがいいよー」と、
智也に向かって言い放ったー

「ーでも、あいつをぶっ殺してやらなくちゃ!」
中学生の智也は”強い言葉”を使いたい年頃なのだろうかー。
そんな風に呟くと、
高校生の姉・千晶は「蚊だって、必死なんだからー…
そんな怖いこと言っちゃダメ!」と苦笑いしながら呟いたー。

「ーこのまま出て行ってくれれば、それが一番だしー」
千晶のそんな言葉に、少し不満そうな智也ー。

”ーーー”
なんとか、逃げ切った蚊は、天井付近で
そんな智也のことを見つめていたー

”ーーーーーーーーーー”
蚊が何を思っているのかは分からないー。
けれど、智也のほうを不満そうに見つめているー。

蚊は、智也から血を吸おうと思ったのだろうかー
智也の方に向かって飛んでいくと、
智也が再び蚊に気付いて、
「あ、こいつ!」と叫ぶー。

必死になって潰そうとする智也ー。

姉・千晶の言う通り、蚊も必死だー。
なんとかして、家族の誰かから、血を吸いとろうとしているー。

「ーーも~~!静かにして~!」
千晶が走り回る智也に向かってそう呟くとー
智也から逃げてきた蚊が千晶の方に
近寄ってきたー。

そしてー

「ーーー!」
千晶が、耳元で音がして、咄嗟に蚊を避けた
その時だったー。

「ーーあっ!」
千晶が突然動いたことによって、千晶の耳の中に
蚊が入り込んでしまうー。

「ーーえっ!?ちょっと!」
千晶が困惑した表情でそう言葉を口にするとー

「うっ…」
と、呟くと同時に、蚊は、なんとか千晶の耳から抜け出したー

再び飛び回る蚊ー。

「ー大丈夫?」
母親が心配そうに呟くと、
晩御飯の準備を手伝っていた千晶は、
「ーーーーあ、、うん!大丈夫」と、笑みを浮かべるー。

「この~~~!」
智也が、蚊を追いかけるー。

千晶はその様子を見つめてから、
唖然としたような表情を浮かべてー
母親に「あ、ごめん…ちょっと、え~っと、う~~~ん トイレ!」と
呟いてから、そのままトイレの方に向かっていったー

「ーあれ?お姉ちゃんトイレ?」
智也が言うと、
千晶は「うん」と頷いてからー
「ーあの蚊、潰すの頑張ってね」と笑みを浮かべるー。

「ーへへっ!そうこなくっちゃ!
 お姉ちゃんがトイレから戻ってくるまでに
 しっかり潰しておくからな~!」

嬉しそうに智也が言うのを見て、千晶はにっこりと
微笑むと、そのままトイレの方向へと向かったー。

トイレの前までやってきた千晶はー
ニヤリと笑みを浮かべたー

「ーーーすごい………」
自分の顔や髪、身体を触る千晶ー

「すごい…どうして…???
 すごい…すごいー」
身体を触る手の動きが激しくなっていくー

千晶は、鏡のほうを見つめると、
自分の顔をうっとりとした表情で見つめながら
こうつぶやいたー

「ーすごいーわたしがーーー”人間”ー」
とー。

何が起きたのかー
それは、”本人”にも分からないー。

だがー
蚊が千晶の耳に偶然、一瞬入り込んだ際にー
どういうわけか、強い衝撃を感じて、
蚊はいつの間にか、千晶の身体になってしまっていたのだー

恐らくはー
千晶は”蚊”の身体にー

「ーー人間って…すごいー」
千晶はそう呟くー

千晶の身体と入れ替わった”蚊”は、
千晶の脳も手に入れたことにより、
千晶の記憶や、千晶の言語能力などー
あらゆるものを一気に手に入れて
人間の言葉を喋れるようになったー

「ーーすごい…ふふっ… すごい…!」
千晶になった蚊はひたすら笑みを浮かべるー

「ーーなぁにこれ…?」
千晶がニヤァ、としながら自分の胸に手を触れるー

「ーーへぇ~…おっぱいって言うんだ…」
ニヤニヤしながら、それを揉み始める千晶ー

蚊にとっては、初めての快感であったのだろうー。
しばらく気持ちよさそうに、うっとりとした表情を
浮かべながら胸を揉み続けー、
「はぁぁ…♡」と、甘い吐息を漏らし始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

”ど、、どうして…!?”

千晶は、蚊の身体になってしまっていたー

”空を飛ぶー”

いやー
厳密に言えば部屋の中を飛んでいるのだが、
とにかく、千晶は、蚊になってしまっていたー

”ひっ!?”
ふと、横からパチン!という音が聞こえたー

弟の智也が
”蚊”を潰そうとしたのだー。

本当に、ギリギリだったー。
あと数センチ、ずれていたら
千晶は、状況も理解できないまま、蚊として
死ぬところだったかもしれないー

”ど…どういうこと…!?
 ち、ちょっと!智也!”

千晶は大声で叫んだー

…つもりだっだー。
だが、”蚊”の身体では、声など発することが
できるはずもなくー、
智也も、母親も、何の反応も示していないー。

それどころか、智也は嬉しそうに、
蚊になった千晶を潰そうとしているー

”な、、なんでこんなことに!?”
あり得ないー
千晶はそう思いながらも、
状況をはっきりと把握できないまま、
智也の攻撃を避けることに必死になっていたー

”蚊”の気持ちー…
そんな気持ちを、千晶は嫌でも理解することに
なってしまったー。

人間にこうして追われることは
蚊にとっては、恐怖でしかなくー…
悲鳴を上げたくなるぐらいの出来事であることを、
千晶は知ってしまったー

「ーーあ~~…殺虫剤使えればあんなやつ、すぐにやっつけることが
 できるのに!」
智也が言うー。

”ーーー!!”
蚊(千晶)は、表情を歪めたー

いやー
歪めるような顔もないのだがー
気持ちの中では歪めたつもりだったー。

”ごはんの準備中だから殺虫剤を使わない方がいいー”

さっき、そう言っておいて正解だったー
これならー

蚊になった千晶は、戸惑いながら
”蚊の身体”を動かす方法を
感覚で理解していくー

”とにかく、まずはこの状況をなんとかしなくちゃー…”
なんとかなるかは分からないー
でも、なんとかしないといけないー

前向きな性格の千晶は、
”不安”を感じるよりも先に、この状況をどうするべきか、
考えていたー。

しかしー

「ーーーふ~~~~」
千晶になった蚊が、戻ってきたー

「あ、お姉ちゃん」
智也が言うー。

「ーーーまだあの蚊がウロウロしてるんだ!」
智也が言うと、千晶(蚊)は「ふ~~~ん」と呟いてから
ニヤリと笑みを浮かべたー。

「ーーじゃあ…殺虫剤、使っちゃえばー?」
千晶(蚊)が、そう呟くー。

”え…”
蚊(千晶)がその会話を聞きながら、震えるー。

「ーーえ…」
困惑したのは、弟の智也も同じ様子だったー。

「ーーえ、でもお姉ちゃん、さっきー?」
智也の言う通りー。

さっき、千晶は自分で、”殺虫剤を使おうとする弟を止めた”のだー。
それなのに、ここに来て”殺虫剤使っちゃえば?”とは
どういうことなのだろうかー。

そんな風に思いながら、
智也が戸惑いの表情を見せていると、
千晶(蚊)はにっこりと笑うー。

「少しぐらいなら大丈夫ー。
 ほら、あの飛び回っている蚊を、ぶっ殺しちゃお♡」

笑いながら言う千晶(蚊)ー。

千晶の脳を使ってー、
人間の言葉を瞬時に理解しー
千晶の脳の思考能力で、行動を判断していはいるもののー
中身は、蚊。

突然、千晶の口で過激な言葉を口走ってしまい、
弟の智也を困惑させてしまうー。

「ーーお…お姉ちゃん…?」
戸惑う智也。

「ーーねぇ、お母さん、少しぐらい使っても大丈夫だよね~?」
千晶(蚊)が母親に向かって言うー

”ちょ…ちょっと…や、、やめてよ…!”
蚊(千晶)はその会話を聞きながらー
母親が”殺虫剤を使うこと”を止めてくれることを
少しだけ期待したー。

がー。
残念ながら、その願いが届くことはなかったー

「そうねぇ…少しなら大丈夫じゃないかしら」
母親の言葉に、千晶(蚊)は、「ほら!智也!あいつをぶっ殺して!」と
嬉しそうに叫ぶー

「う、うんー!」
智也が殺虫剤を向けるー。

その言葉と同時に蚊(千晶)は、すぐに逃げようとして、キッチン付近から
蚊に出せる限界の速度でー
2階に逃げようとしたー。

だがー

「あ!待て!」
智也も2階に追いかけてくるー。

逃げ場を失ってしまった蚊(千晶)は
”待って!やめて!わたしが千晶なの!”と叫ぶー

しかしー
蚊の身体に人間の声を発することなど、できないー

その叫びは、声にならずー
智也は、そのまま蚊になった”お姉ちゃん”に気付くことができないままー
蚊(千晶)殺虫剤をかけてしまったー…。

”あ…ぁ…”
身体の自由が急激に効かなくなるー

”虫として殺虫剤を浴びること”を、
蚊になった千晶は、身をもって体験したー。

息が苦しいー
全身から走り抜ける脱力感ー
とろけそうなほどの、激痛ー。

”こんなに…こんなにつらいなんて”と
思わずにはいられないー。

しかしー
今はそんな場合ですらない

”や…やめて…”
蚊(千晶)がそう呟くー。

もちろん、その声は弟の智也には響かないー。

「ーー…は~…これで大丈夫かな」
ピクピクしている蚊(千晶)を見つめながら
智也がそう呟いていると、背後から、
千晶(蚊)も2階に上がってきたー

「あ、お姉ちゃん」
智也が言うと、
「ーまだ生きてるじゃ~ん」と、千晶(蚊)は
呟くと、智也の手から殺虫剤を奪い取ったー。

そしてー

シュウウウウウウウ…
と、殺虫剤を地面に落ちてピクピクしている蚊(千晶)に
向かって噴きかけるーー

「ーー死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
千晶(蚊)が狂気的な笑みを浮かべながら
そう連呼するー

「お…お姉ちゃん…?」
智也が不安そうに、姉の姿を見つめるー
なんとなく、違和感があるのだー

”助けて…たす…”
殺虫剤でトドメを刺された蚊(千晶)にもはや
どうすることもできないー

「ーー人間の身体、ゲット~」
小声でそう呟くと、千晶(蚊)は、
「ーーあはは!うふふふふふふふふふふふふ♡」と
狂ったように笑いながら、殺虫剤がなくなるまで
蚊(千晶)に向かって殺虫剤をかけ続けたー。

最後に、容器を廊下に放り投げると、
蚊(千晶)を踏みつぶして、踏みにじるー。

「ーーーお…お姉…ちゃん?」
もはや、ドン引き状態の弟・智也を見て、
千晶(蚊)は「退治完了~」と、嬉しそうに呟くと、
そのまま殺虫剤の容器を回収して、
1階へと降りて行ったー。

その日からー
千晶は変わったー

なんだか”妙に”ハイテンションで、
時々爆弾発言をするようなこともあればー
たまに”とんでもない行動”をすることもあるー。

そしてー
服装は派手になりー
夜になると部屋からエッチな声が聞こえてくるようになったー

”これが、人間の身体…♡”

ある日の夜ー
弟の智也は、部屋から聞こえてくる姉・千晶のそんな声を聞いてしまうーー

その日以降ー
智也は千晶(蚊)に恐怖すら抱くようになってしまったがー
怖くて”その言葉を聞いた”とは、口にすることはできないのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

人間と蚊の入れ替わりモノでした~!☆
人間以外の生き物が絡む入れ替わりモノは
まだそんなに書いてないですが、
機会があればまたチャレンジしてみたいですネ~!

お読みくださりありがとうございました☆

小説
憑依空間NEO

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