”人間屋”
そんな名前の、謎の店を見つけた女ー。
彼女は興味本位でそのお店に足を踏み入れるもー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー人間屋ー…?」
彼女は、とある町外れに存在する
不気味な廃墟地帯の中で、
そんな言葉を口にしていたー。
野口 茉莉(のぐち まり)は、
廃墟巡りが趣味の女子大生ー。
廃墟や、ホラースポットー、
限界集落ー、人口の少ない島ー
そういったものが好きで、
休日にはよく、そんな場所を訪れているー。
特にー、
夏休みのような、長期の休みが取れると、
田舎を訪れて宿泊ー、
こうして夜の廃墟などを巡るのが大好きだったー。
その最中ー
廃墟となった工場地帯を探索していた茉莉は、
その一角の寂れた建物に”人間屋”と書かれた
謎のお店を発見したのだったー。
「”屋”ってことは店だよねー?」
茉莉は一人でボソッと、そう言葉を口にすると、
”田舎の廃工場にある店とか、ヤバすぎでしょー”と、
思いつつ、好奇心を抑えきることが出来ずに
そのまま店の扉を開けたー。
ギシッと音を立てる建物ー。
”絶対、怪しい老婆とか、
マッドサイエンティストみたいなヤバい人とか出て来そうー
何なら幽霊かもだけどー”
そう思いながら、奥に進む茉莉ー
すると、やはり”店”だったのだろうかー。
手描きで商品名と値段が書かれた紙が
あちらこちらに貼られてーー、
その先にはーー
「ーー…な、なにこれー…?」
茉莉は表情を歪めるー。
”髪”
”目玉”
”爪”
”唾液”
”尿”
人間の”あらゆるもの”が、
売られていたー。
「ーーな…何これ…
か、髪ってー…?
ウィッグー?」
茉莉は戸惑いながら
”髪”と書かれた値札と、その近くに置かれた髪を見つめるー。
よく手入れされている綺麗な髪に見えるー。
そしてーー
その横の容器に入った”尿”と書かれたものを見つめるー。
「ーーー……何これー…?
まさか、本物じゃないよねー?」
しかも、”尿”とやらはペットボトルに入って
1本1000円ほどで売られているー。
「ーーー…あれ?これだけは10万円ー?」
そう思いながら、茉莉が値札をさらによく確認するとー、
そこには”JKの尿”などと書かれていたー。
「ーーー…やばっー…変態じゃんー」
茉莉がボソッと呟きながら、
”でも、こういうヤバい店も、ゾクゾクするよねー”と、
一人で店内を見渡すー。
廃墟の中にある”人間屋”ー
ヤバすぎて、変態かどうかはさておき、
茉莉の大好物だったー。
”今にもつぶれちゃいそうな店とか、
何考えてるのか分からないような店とかも、
見るとドキドキするし楽しいよねー”
茉莉がそんな風に思っていると、
やがて、人の気配がしたー
「ーー!!」
茉莉がバッと振り返るとー、
そこにはーー
華奢な、同じぐらいの年代の可愛らしい眼鏡の女性が立っていたー。
「ーーー…ど、どうもー…」
茉莉が、戸惑いながらぺこりと挨拶をすると、
「ーーいらっしゃいませ」と、眼鏡の子はそう言葉を口にしたー
”え?この人が店主?”
イメージと全然違う雰囲気の店主の登場に、
茉莉が戸惑っていると、
「はいー。”人間屋”をやっている目黒(めぐろ)ですー」と、
そう言葉を口にしたー。
「あ!呼ぶときは加奈(かな)って呼んでくださいね!
苗字で呼ばれるより興奮するんでー!」
店長の加奈はそんな、意味不明な言葉を呟くー。
茉莉は戸惑いながら「は…はぁー」と、頷くと、
「ーーこ、このお店いったいー?」と、
周囲を見渡しながら言葉を口にしたー。
「ーふふー、
”人間屋”は、その名の通り”人間”のパーツを売るお店ですー」
その言葉に、茉莉は「えぇっ…」と、困惑の表情を浮かべるー。
「ー結構、マニアもいるんですよー
例えばこの10万円の尿もー
10本まとめて買っていく人がいたりして、ねー」
邪悪な笑みを浮かべる店長の加奈ー。
「ーー…そ、そ、そうなんですねー…
って…こ、ここにあるものは、全部本物なんですか?」
茉莉が困惑した表情を浮かべながら確認をすると、
店長の加奈は「もちろんー…全部、”本物”の人間から取れたものです」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーー…」
茉莉はチラッと”目玉”と書かれた商品の方を見つめるー。
”あれもー、人間の本当の目なのー?”
そう思いながら、さらに店内を見渡すと、
”歯”だとか、そんな商品も見えたー。
「ーーー…ーそれにしても、
こんな怪しいところに一人で来るなんてー。
珍しいですね」
クスクスと笑う店主の加奈ー。
「え…あ、はいー
わたし、廃墟巡りとかヤバいスポットとかー、
そういうのを巡るのが趣味なんでー。
それで今日、夜に廃工場探検でもしてみよ~!って
思ってここに来たら、このお店を見つけてー」
茉莉が、そう説明すると
加奈は「なるほど~」と、笑いながら頷いたー。
「ーーーそれで…ーーこ、ここは…
そのー…誰かお客さん来たりするんですか?」
茉莉が失礼だとは思いながらも、好奇心からそう尋ねると、
「ーーもちろんー。まぁ、そんなに頻繁には来ませんけどねー」と、
そう言葉を口にする店主の加奈ー。
茉莉は、そんな加奈を見つめながら、
「ーー…か、加奈さんが一人でここをー?」と、そう呟くー。
「はいー。まぁー
わたしも”元々は客”だったんですけどねー」
加奈はニヤッと笑いながらそう言葉を口にすると、
茉莉は「え…お客さんから店長にー?すごいですねー」と、
そう言葉を口にしたー。
加奈は「ふふ」と、笑いながら
突然、10万円の”尿”の入ったペットボトルを手に取ると、
それを飲み始めるー。
「ーー!?!?!?」
表情を歪める茉莉ー。
「ーーーふふーー
美味しいんですよー これーーー
”直接的な味”というよりかはー
”心で変態の味を楽しむ”という感じですけどねー」
店主の加奈は下品な笑みを浮かべながら、
口元からだらしなく”尿”と思われる液体を垂らすー。
「ーーー~~~~……」
茉莉は呆然としながら、その様子を見つめるー。
これまで、様々な廃墟を巡りー、
ホラースポットを巡りー、
限界集落や人口の少ない島ー、それに変なお店ー
色々なところを回って来た茉莉ー。
しかし、”人間屋”は、そんな茉莉からしても、
引いてしまうぐらいに恐ろしい恐ろしい場所だったー。
「ーーあはは そんな化け物を見るような顔、
しないでくださいよー」
そう言い放つと、店主の加奈は
「そうだー。そろそろ”新しいボディ”がやってきたから
店主交代かなー」と、そう言葉を口にしたー。
「ーーえ…な、なにを言ってー…?」
戸惑う茉莉ー。
加奈は「ふふー」と笑うと、
「うちに来る”お客さん”は2種類に分かれるんですー。
”人間屋”がどんなお店か知りながらやってくる
”商品を買うお客さん”
そしてー、”お前”のようにたまたま迷い込んだ
”素材を提供してくれる”お客さんー」
と、そう言葉を口にするー。
突然”お前”と言われた茉莉は、戸惑いながら
加奈の方を見つめると、
加奈は突然、自分の髪をはさみで切り始めたー。
「ーーえ…?」
加奈の綺麗に整えられた髪が、どんどん切られていくー。
「ーー”商品”はこうして入荷してるんですー
”次の身体”に乗り換える前に今まで使っていた身体の
”パーツ”をこうして商品にするー」
加奈は笑いながら自分の髪をどんどん切っていきー、
用意されていたゴミ袋のような袋にその髪を入れていくー。
「ーーち、ちょっと!?何してるんですか?!」
突然、目の前で綺麗な自分の髪をバサバサと切り始めた加奈を前に、
茉莉はそう声を上げると、
加奈はそれを無視して、突然、近くに置いてあった
容器に笑いながら放尿し始めたー
「ーーーはー… な、何なのー…?」
呆然とする茉莉ー。
「ーー女子大生のこれも、なかなか高い金額で売れるんでねー
”マニア”にー」
そう言い放つと、加奈はさらに自分の爪をニヤニヤしながら
剥がし始めたー。
あまりに痛々しい様子に、茉莉は驚いて目を逸らすー。
「ーーひひ…さっき言いましたよねー?
”人間屋”には2通りのお客さんがいるってー。
商品を買いに来るお客さんと、
お前のようにたまたま迷い込んだお客さんがいる、とー」
そう言いながら、加奈は笑うー。
「ーー”お前”みたいな客は売上にはならないー。
知らずに入って来たやつは”人間屋”を見て、
気色悪いと思うだけだからー
でもねー」
髪をほとんど切り落とし、見る影もなくなった加奈が
ニヤニヤしながら言うー。
「ーー”次の身体”ー
そして、次の次の身体が見つかった時の”商品の仕入れ”には
使えるんだよなー」
加奈はそれだけ言うと、
「ー”この女”も、前はお前と同じような”客”だったー」と、
自分の頭を指でつつきながらゲラゲラと笑うー。
「ーーーーさ…さっきから…何を言ってるの…?」
戸惑いの表情を浮かべることしかできない茉莉ー。
「ーーククククー
分からなくてもいいよー
お前は”人間屋”の12代目の店主になるんだからー…
ひひひひー」
加奈はそれだけ言うと、
「ーー俺はさー、”憑依”で他人の身体を乗っ取ることができるんだー」と、
ついに本性を暴露したー。
「ーー…ひ…憑…依…?」
呆然とする茉莉ー。
「ー次は、お前の身体を貰うよー」
加奈は、茉莉を指差すと
その場で苦しそうにうめき声を上げて、
倒れ込んだー
「えっ…ち、ちょっとー…!?」
茉莉が加奈に駆け寄ると、
加奈は軽くうめき声を上げながら、
ピクピクと痙攣しているのが見えたー。
「ーーー……ひっー…」
茉莉は怯えた様子でそう叫ぶと、
慌てて”人間屋”から飛び出すー。
あの店主が何なのかは分からないー。
けれど、茉莉には
それを考える余裕もなく、
只々怯えた様子で走っていたー。
今まで、色々なホラースポットを訪れた経験もあるし、
それなりに怖い思いをしたこともあるー。
けれどー…
ここまでの怖い思いをするのはー
今回が初めてだったー。
「ーーーー…!!!」
走っていた茉莉はビクッと震えるー。
今まで、感じたことのない
”何かが自分の中に入ってくる”ような感覚ー。
「ーーーぁ…やめ……てー」
茉莉は苦しそうに、そんな言葉を吐き出すー。
がー、それに抗うことは出来ずー、
どんどん意識が薄れていくー。
”ーーーほらーその身体を俺によこしなー”
そんな言葉が頭の中に響き渡るー。
茉莉は必死に抵抗しようとしたもののー
そのまま完全に支配されてしまったー
「クククーー…可愛いじゃんー」
茉莉はニヤリと笑いながら、自分の手を見つめると、
そのまま”人間屋”の方に戻っていくー。
建物の中に入ると、
意識が戻らないまま痙攣している加奈を
「邪魔だよ」と、足で雑に蹴り飛ばすと、
容器を手に、笑みを浮かべたー
「ーへへートイレも行きたくなってたみたいだし、
ちょうど、商品を補充できそうだなー」
ニヤニヤしながら、売り物にするべく、
自分の尿を容器に入れていく茉莉ー。
そこにはもうー、
廃墟を巡ったり、ホラースポットを巡ったりするのが好きな
茉莉の姿はなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数か月後ー。
「ーーーーーー♪~~~」
”人間屋”の店主を務める茉莉は、
廃墟の一角に存在する自身の隠しアジトで、
シャワーを浴びながら笑みを浮かべていたー
「ーこの身体、何度見ても飽きないよなーククー」
イヤらしい手つきで自分の身体を触る茉莉ー。
シャワーを終えると、アジト内に置かれていた
自分のスマホを手に、茉莉は笑うー。
”ーー最近、実家に帰ってこないけど、
忙しいの?元気にしてる?”
親からの連絡ー。
茉莉はクスッと笑うと、
”わたしは元気だよー”と、そう返事を送りー、
不気味な笑みを浮かべるー。
「ーーさぁ…今日も商売商売ー」
茉莉は、髪を乾かしながら
そう言葉を口にすると、
夜の間だけ営業している”人間屋”を今日も開けるために
ゆっくりアジトの外に向かって歩き出したー
おわり
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コメント
1話完結の憑依モノでした~!☆
実は1年以上前に思い浮かんでいて、
SNSで告知する用のイメージ画像まで
1年以上前に完成していたのですが
そのまま実際に書くことはなく、長い間眠っていた作品デス~笑
7月に書くと告知した作品を全部書き終えて
1日残っていたので、こうして
1年以上の眠り(?)から、実際に執筆して
表に出て来ることになりました~笑
今月もありがとうございました!
来月もよろしくお願いします~!☆!
コメント
ホラー系ですよネ!?
少し怖かったデス(-_-;)汗
パーツにして売るってスゴイですネっ!
感想ありがとうございます~!☆
夏なので、ホラーだったのデス…!!