<憑依>お父様への復讐①~黒い影~

企業に成功し、豪邸に住む会社の社長。

彼には、心優しい娘がいた。

しかし、ある日を境に、彼の周辺で異変が起き始める。

※リクエスト作品デス!

------------------------------

天田 祐司(あまだ ゆうじ)は、
大学生時代に自ら起業。

ネットビジネスを中心に大成功を納め、
今では、ネット業界を中心に大きなシェアを持つ
大企業へと成長を遂げていた。

40代後半に突入した祐司は、
会社も安定し、豪邸を構え、
そこで家族と幸せに暮らしていた。

これからも、
実力で勝ち取った幸せは、長く続くはずだったー。

しかしー
その幸せに、終わりが近づいていることを、
彼はまだ知らなかった。

シャンデリアのある部屋で
夕食を食べる家族。

高校生の娘・聡美(さとみ)が微笑む。

「こうしてお父様とご飯食べるの、久しぶり…」

聡美は、とても心優しい子で、
周囲に対しても礼儀正しいー

自宅には使用人も何人かいるが、
聡美は、お金持ちの娘であることを
決して誇ったりせずに、とても物腰の低いお嬢様だった。

会社にも時々出入りしていて、
父のことを手伝ってくれることもある。

父は、聡美が立派な娘に成長していることを
とても、誇りに思っていたー

「--最近は、仕事が忙しいからな…」
祐司が言う。

2か月前ー
順調だった祐司の会社では、ちょっとした問題が
起きていたー

それは、役員の一人による、横領だったー。
祐司は、その役員を信じていた。

何故なら彼はー
大学時代の同級生で、企業したころから
苦楽を共にしてきた人物だったからだ。

けれどー。
彼は会社のお金を横領していたー
それも、相当な金額をー。

信じ切っていた自分が愚かだった。
そう思い、祐司は、大学時代からの”戦友”とも言える
その男、茶谷を問い詰めたー

すると、その茶谷はー
”一緒に企業したのに、世間ではお前ばかりが注目を浴びているー”

とー

”表”に立つ祐司と、
”裏方”として表舞台には立たない自分の立場の違いに対する不満をぶちまけたー

そしてー
茶谷は、翌日、自宅で首を吊って命を絶ったのだったー

その後始末と、
裏彼の受け持っていた仕事の穴埋めで、
祐司はとても忙しかったのだ。

「--うん。分かってる。でも、無理しないでね」
娘の聡美が優しく微笑む。

「あぁ…。心配かけてすまんな」
祐司がそう言うと、

「ごちそうさま」
と、聡美が優しく微笑んで、部屋の外へと向かう。

「--お嬢様、入浴のご用意が出来ております」
執事の男が頭を下げると、
聡美は微笑みながら「ありがとうございます」と頭を下げ返した。

お嬢様であることを決して気取らず、
真面目で優しい娘ー
それが、聡美だったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「--従業員がストライキを起こした?」

祐司は驚く。

「はいー」
秘書の優子(ゆうこ)が、困り果てた表情で言う。

優子は20代後半ながら
とても優秀な美人秘書ー。
祐司が、優秀な秘書がいる、と企業仲間から持ちかけられて
雇った女性だった。

妻から嫌がられるかとひやひやしたが
祐司が浮気をする性格ではないと知っている妻は、
「優秀な人なんでしょ?全然大丈夫よ」
と若い女性秘書を雇うことも快諾してくれたー

「--どうしてまた急に」
祐司は困惑した表情を浮かべる。

この会社の給料は、決して低い方では無いー
業界の平均以上の給料は出しているー

そして、祐司は、会社がブラック化しないよう、
徹底的に残業などのチェック体制を整えていた。

なのに、ストライキなんて…

祐司は、頭を抱えていたー。

「とりあえず、みんなと話をしてみよう」

社員がいなければ話にならないー
祐司は、困惑しながらも
ストライキを提案したという企画部長の羽生と
話をすることにしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁぁ…」
祐司が疲れた様子で帰宅する。

なんとか従業員たちとの話はついたが
給料を上げることになったし、
色々と問題が山積みになっている。

「お帰りなさいー」
妻の好恵(よしえ)が、祐司を出迎える。

「あぁ、ただいま」

祐司は好恵が、自ら出迎えてくれるなんて
珍しいーと少し不思議に思う。
妻の好恵は、祐司とは別で、フラワーショップチェーン店を
経営している。

それなりに業績も良いようだ。

夫婦仲はとても良いのだが、
妻の好恵も忙しく、こうして出迎えてくれることは
ほとんどなく、
いつもは、屋敷のメイドが、出迎えてくるのだったー

しかしー

「---使用人たちは?」
祐司が聞くと、
好恵が首を振った。

「それが…急に辞めてしまって…」
困惑する好恵。

「--な…なんだと!?」
祐司は驚いた。

使用人たちの半分が
突然辞めてしまったというのだ。

「ど…どういうことだー」

困惑する祐司ー

そんな祐司の様子を
クスクス笑いながら見つめる人影にーー
祐司たちは気づいていなかった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「--いやぁ…すみませんでした」
企画部長の馬原が言う。

急なストライキ。

給与のUPを約束された馬原たち、
社員はご機嫌だった。

「--社長なら、必ず給与アップしてくれると
 伺ったもんで」

馬原企画部長が言う。

「---伺った?誰から?」
祐司が不思議そうに聞き返すと、
馬原企画部長は
「あ、いや、なんでもありません」と頭を下げて
通常業務に戻ってしまった。

「---…一体…?」
祐司は困惑する。

伺ったー?
馬原企画部長たちが起こしたストライキは
誰かが仕組んだものなのか?

「ーーーあの…」
秘書の優子が祐司に声をかける。

「ちょっと、今日、仕事終わった後に
 お話、いいでしょうか?」

優子の言葉に、
祐司は何も考えず
「あぁ、いいよ」と答えたー

優子は、意味深な笑みを浮かべながら
「ありがとうございますー」

と頭を下げたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

祐司は、優子と共に
近くの高級レストランに足を運んでいた。

「それで、話って?」
祐司が言うと、
優子は「いえ…その」と微笑んだ。

「--どうした?何かあるなら言ってみろ」
祐司が優しく声をかける。

そしてー
そのあとに、冗談めいて微笑んだ

「--まさか君も、ストライキ突入かなー?」

と。

その言葉を聞くと、優子は、
祐司の方を真剣な表情で見つめた。

「--一晩でいいんです…わたしを…
 わたしを…抱いてください」

「--!?」
祐司は目を見開いた。

この秘書は、何を言っているのだ?と。

「---わ、わたし…社長のことが…
 ずっと…」

秘書の顔が優秀な秘書ではなく
女としての顔になっている。

祐司は、「-ま、待て!」と叫んだ。

「俺には妻がいる…
 俺は妻を裏切ることができない…!」

それだけ言うと、
秘書の優子は、悲しそうな表情を浮かべた。

「---すみません」

とー。

祐司は”どうしたんだ急に?”と思いながらも、
優子をとにかく落ち着かせるように
冷静に言葉を投げかけたー。

しばらくしてお店から出た祐司と優子。

優子は、ふいに祐司に抱き着いた。

「---社長…」
優子は泣きそうになりながら、祐司に
すがりつくようにして抱き着いた。

「お…おい!」
慌てて祐司は優子を引き離す。

「--俺には家族がいるんだ。
 君の思いにこたえることはできないー」

祐司がはっきりとした口調で
そう言うと、優子は「すみませんでした…」と
深々と頭を下げたー

物陰からー
その様子を撮影している女がいたー

「ふふふふふ…♡」

不気味に微笑む女ー

目当ての写真を取り終えた女は、
ハイヒールの音を立てながら、
色っぽい足取りで、その場から
立ち去るのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「--な、なんだこれは…?」

自宅に送られてきた匿名の郵便物ー

その中身を見て、
祐司は驚いたー

昨日のー
秘書の優子と、高級レストランに入った場面ー

そして、出てきて優子が祐司に
抱き着いた場面ー
それを撮影した写真だ。

妻の好恵が
「これはどういうこと?」と不満そうな声で
祐司に尋ねる。

「ま…待て…これは…!」

祐司は考えるー。
どういうことだ?
タイミングが良すぎる?

週刊誌記者にでも撮影されたのかー?

「--好恵…!
 これは、誤解だ!
 俺を信じてくれー」

祐司のまっすぐな瞳ー。

今まで妻を裏切ったことは一度もない。

そんなこともあってか、好恵は、
祐司を信じてくれたー

「お父様?どうしたの?」
娘の聡美が、学校へ向かう仕度をしながら父の様子に
気付き、声をかけてきた。

「あぁ、ちょっと、厄介なことになってな」
祐司はそれだけ言うと、
すぐに会社へと向かうのだった。

そんな父の様子を見てー
聡美は口元を歪めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

会社に到着すると、
馬原部長が、祐司のもとに駆けつけてきた。

「--社長!大変です!」

そう言いながら馬原部長は
何かを祐司に叩きつけたー。

”天田社長不倫”と
書かれているー

秘書の優子と抱き合っている祐司の写真ー

「--とある週刊誌が、来週発売する予定の記事だそうです」

週刊誌の会社から、今朝送られてきたようだー

「くっ…優子は?」
秘書の優子の姿が無いー

「--それが…」
馬原部長が首を振る。

優子はー
今日、出社していないのだと言うー

「くそっ…!はめられた…!」

祐司は頭を抱えた。

秘書の優子は、
どこかが送り込んだスパイか何かだったのかもしれないー

「これは…罠だ」

祐司は思うー
ライバル企業が、週刊誌と結託して
美人秘書を送り込んで、
そして、こうして、俺をはめたのだー

と。

優子のことを紹介してくれた企業仲間の
眞理夫(まりお)が怪しいー。

祐司はそう思った。

あのキノコばっか喰ってる髭おやじに問い詰めようと、
眞理夫の会社に電話しようとしているその時だったー

「--社長!」
馬原部長が電話を慌てて取り次ぐー

「こんどはなんだ!?」

うんざりした様子で祐司が言うと、
馬原部長は「早く電話に!」と叫んだ。

電話に出るとー

そこからは、
謎の機械音声が聞こえてきたー

”お前の娘は、預かったー”

とー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

廃工場ー

電話を終えた女子高生は微笑んだ。

「ふふふ…お父様…
 娘のわたしが、お父様のことを
 追いつめてるなんて…
 思いもしないよね…
 くくくくく」

使っていたスマホを粉々に踏み潰すと、
祐司の娘ー聡美は微笑んだー

「--まさか、自分の娘が
 憑依されてるなんてー
 夢にも思わないでしょうね…くくく」

聡美が怒りの表情を浮かべるー

聡美はーー
憑依されていたー

数か月前にー
横領を問い詰められて自殺した
祐司の戦友とも言える男・茶谷にー

「---俺は、この身体でお前に復讐してやるー
 くくくくく…
 あはははははははは!」

聡美は笑いながら自分の制服を
滅茶苦茶に乱すと、笑みを浮かべるー

そして、近くにいたチンピラに金を渡して
自分の身体を椅子に縛りつけさせると、
笑みを浮かべて、
父が助けに来るのを待ったー。

「---お父様…
 娘のわたしが、、
 あんたの人生、滅茶苦茶にしてあげる…」

聡美は、悪い笑みを浮かべて、
そう呟いた…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

昨年頂いたリクエストを題材にした作品デス!

憑依部分突入までが長くなりましたが
明日からが本番(?)デスー!

PR
憑依<お父様への復讐>

コメント