<憑依>妻は元アイドル~欲望編~第2章

元アイドルの妻が、
ファンだった男に憑依されてしまったー。

あれから長い時を経て、
再び悲劇が、襲い掛かろうとしていた…!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「それは、どういうことですかー?」
泰治が、病院の医師に聞き返すー。

病院の意思は困惑した表情を浮かべながら
”突然倒れた”という希海の検査結果を
見せつけたー

”ここに”不自然な影のようなもの”がありますー”

医師は、そう言ったのだー

「ーー希海は、何か病気ー…ということですか?」
希海への愛情はもう消えていたし、
今は息子の奈々子に近付かないでほしい、という想いの方が
強かったのは事実だが、
それでも、元々は”妻”だった相手が
何か病気、となると、泰治の性格上、どうしても気になってしまうし、
”関わらない方がいい”のに、関わらずにはいられなくなってしまうー。

「ーーー…いえー、ご心配されているような
 ことではないのですがー」

と、医師は首を振るー

脳に腫瘍があったりだとか、
脳出血を起こしているだとか、
そういうことが起きているわけではない、と、
医師はすぐに補足するー。

「ーですが、このような”影”は見たことがないのですー
 この部位に影があるとなると、
 まるでー、脳が身体に命令を送ることを拒むようなー
 そんなことになるのではないか、とー。」

医師の言葉に
泰治は不安を感じるー

「ーつまりー…?」
泰治は険しい表情で言うー

しかし、医師は「いえー」と、困惑の表情を浮かべるだけで、
それ以上の言葉は口にしなかったー。

”憑依されている状態”の希海の脳には、
もっと別の事態が起きていたかもしれないし、
その状態で検査をしていれば、この医師は何かを
掴めたかもしれないー。

しかし、既に希海に憑依していた憲彦は
希海がこの病院に搬送される前に、
希海から抜け出し、娘の奈々子の方に移動しているー。

そのためー
”曖昧な影”しか、希海の脳の中に異常は起こっておらずー
この翌日、医師が再度検査したときには、
その影はもう消えておりー
医師は、”検査の際にたまたま何かが映り込んでしまっただけで
心配はないでしょう”と、泰治に言い放ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

奈々子が、帰って来なくなったー。

「ーーあんたが、お母さんの夢を理解しなかったから、
 こんな風にお母さんが苦しんでるんでしょ!」

病院で言われた言葉を思い出すー。

病院で寝泊まりしているらしく、
家には昨日から帰ってこないー。

「ーー奈々子ー…」

”奈々子が急におかしくなったー”

泰治には、そう思えたー。

そして、この状況はー
奈々子がまだ4歳だった頃に
”妻の希海が豹変した”時の状況とよく似ていたー。

「ーですが、このような”影”は見たことがないのですー
 この部位に影があるとなると、
 まるでー、脳が身体に命令を送ることを拒むようなー
 そんなことになるのではないか、とー。」

医師の、そんな言葉を思い出すー。

「ーーーー」
いったい、何が起きているのかー

奈々子の急な豹変が何を意味しているのかー。
希海が、奈々子に何かしたのかー。

そんな風に思いながら、
理解できないこの状況に、泰治は頭を抱えることしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

希海が退院することになり、
”行く場所がない”希海を、迎え入れることを
奈々子が提案してきたー

「ーな…何を言ってるんだ奈々子!?」
泰治は困惑するー

「お母さんに、この家で暮らしてもらうの!」
奈々子が怒りっぽい口調で言うー。

「ーい、いったいどうしたんだ奈々子!
 急にそんなこと言い出してー」

泰治は戸惑いの表情を浮かべるー。

奈々子からしていれば、母の希海は
4歳の時に豹変して家を出て行っていて、
ほとんど、一緒に過ごした時間の記憶は
失われているはずだー。

「ーーわたしは、ずっとずっとお母さんに会いたかったの!
 なのにわたしは、あんたに気を使って、ずっと会えなかった!
 お母さんの話をすることもできないような空気を
 あんたが作ってたの!」

奈々子が叫ぶー

泰治は「そ…そんなこと、俺はー」と、戸惑うー

”クククー
 のぞみちゃんの娘も、のぞみちゃんも僕だけのものだー
 お前はとっとと、この家から、消えろー!
 この家は、僕とのぞみちゃんの、楽園になるんだー!”

奈々子がニヤッと笑みを浮かべながら
心の中でそんな風に思うー

”わたしの親は、お父さんー”
そんな風に言っていた奈々子は、
”お母さんに会いたい”と考えたことはなかったー。

育ててくれていたのはお父さんだし、
お母さんのことは、ほとんど記憶に残っていないから、
”悪口も言わないけれど、特別な感情もない”

奈々子にとっては、そんな存在だったー。

けれどー
今の奈々子は、
憲彦に憑依されてしまっているー。

家族の、平和を引き裂いた元凶にー。

「ーーお母さんには、絶対この家で暮らしてもらうから!」
奈々子がそう言い放つと、泰治は「待ってくれ!」と叫ぶー

「希海にだって、今の生活があるはずだし、
 家だってあるはずだー!
 
 それにー
 奈々子だって、俺だって、そんなにいきなり、
 また一緒に暮らすなんてことー」

泰治がなんとか奈々子を落ち着かせようと、そう言葉を口にするー。

だがー
落ち着くわけがないのだー。

”話している相手”は、
身体は奈々子であっても、中身は奈々子ではないのだからー。

「ーーーお母さんをどこまで苦しめれば気が済むのー?
 あんた、最低ー」

奈々子の目は、完全に”憎しみ”に満ちていたー

泰治は困惑しながら
「な、奈々子ー…頼むから落ち着いてくれー」と、頭を下げるー

「不満があるなら、ちゃんと聞くし、
 話し合うー。
 だから、落ち着いてくれー。

 奈々子が急に、まるで別人みたいになってしまってー
 俺も、どうしていいか分からないんだー
 頼むー。」

泰治は、なおも奈々子を落ち着かせようとするー

「ーあんたと話す言葉なんてない」
奈々子はそう言うと、泰治に対して言い放つー

「あんたなんて、お父さんじゃない!」
とー。

泰治は、一生懸命育てて来た奈々子に
そんな言葉を言われて、心にナイフを思いっきり
刺されたかのような、強い衝撃を受けたー

「ーー………奈々子…」
泰治はそれだけ呟くと
奈々子は容赦なく、そんな泰治に対して
さらに辛辣な言葉を投げ続けるー。

「そんなにお母さんと一緒に暮らしたくないなら、
 あんたが出て行けばいいじゃんー

 お母さんの夢を邪魔してー
 今、またお母さんを追い詰めようとしてるー

 あんたなんてー
 あんたなんて、消えちゃえ!!」

ゾクゾクゾクー
奈々子の身体が妙な反応を示したー

”えへへへ…のぞみちゃんの娘の身体が
 疼いてるなぁ…どうしただろうなぁ…”

奈々子はニヤッと笑みを浮かべるー

大好きなお父さんにこんな態度を取らされて
奈々子の意識が必死に抵抗でもしているのだろうかー。

憲彦には分からないー。
だが、こういう状況も、憲彦にとっては
最高の快楽だったー

「ー……消えて!」
奈々子が叫ぶー

「ーーな、奈々子…!」
泰治は、もはや言葉を失っているー。
どうしていいのか、完全に分からなくなってしまっているー。

当たり前と言えば、当たり前かもしれないー。

いきなり、最愛の娘にこんな態度を取られてしまっては、
もう、どうすることもできないー。

「ーーわたしの前から消えろ!
 2度とわたしの前に出て来るな!

 お母さんを壊した、あんたの顔なんて、見たくない!」

奈々子が大声で叫ぶと
泰治は「ま、待て!奈々子!」と必死に声を上げたー。

だが、”暴力も辞さない”奈々子に無理やり玄関から
追い出された泰治は、そのまま締め出されてしまったー。

当然、奈々子の方が力は弱いが、
”奈々子を傷つけることは絶対にしない泰治”は、
反撃することができないまま、
家から追い出されてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「クククッー」

父親を追い出した奈々子は、家の扉を
閉めると同時に笑い出したー

「クククククッ…はははっ!あはははははははっ!」
愉快そうに笑う奈々子ー。

「ーこれでのぞみちゃんは永遠に僕のものだー。
 のぞみちゃんから生まれたこの肉体も僕のものだー
 のぞみちゃんのものは、全部僕のものなんだー

 ふひっ…ひひ…ひひひひひひひひっ」

笑いすぎて涙を浮かべながら
奈々子はそう呟くと
「さて、と、あとは劣化したのぞみちゃんをこの家に
 呼び寄せればー僕の新たな楽園の誕生だー」
と、笑みを浮かべるー。

「ーーーー…それにしてもー」
ふと、鏡を見つめると、奈々子は自分の顔を触りながら
笑みを浮かべるー

「全盛期ののぞみちゃんそっくりだー…」
そう呟く奈々子は、不気味な笑みを浮かべてからー
母親の希海に連絡をし始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーなんだって?娘さんに追い出された?ははっ!」
愉快そうに笑うのは、
泰治の会社の同僚・井守 敏郎(いもり としろう)ー

「ーー何が起きてるのか、正直、俺にもさっぱりだよ」
そんな風に呟く泰治を見て、
敏郎は「おいおい…っていうか、本当に大丈夫なのか?何があった?」と、
心配そうに呟くー。

希海が憑依されて豹変し、結果的に離婚に至った当時から
この敏郎とは親しいー

今、会社ではお互いに異なる部署を率いていて
仲間であると共にライバルでもあるものの、
互いに嫉妬したり、憎んだりし合うことはなく、
よきライバルとして、お互いにプライベートの
相談に乗ることも多かったー。

「ーー…急に、奈々子がおかしくなってさー」

泰治は、奈々子が豹変したことを、
時系列を追いながら順番に、分かりやすいように
敏郎に説明したー

「つまり、お前が別れた奥さんの夢を理解しなかった
 悪者扱いされてるってことか?」

敏郎が驚いた様子で言うー。

「まぁ…そういうことになるなー」
ため息をつく泰治ー。

「ーそれにしても何でいきなりー…
 ついこの間まで、仲良さそうだったのにー」

敏郎も、奈々子とは面識があるー
だからこそ、その奈々子が急に豹変したことは驚きだったー

「ー結局あれかなー…
 俺に、家族を持つなんて無理だったのかもなー」

泰治は自信を完全に喪失して、
”俺のようなやつは生涯独身でいたほうがよかったのかもしれない”と
悲しそうに呟くー。

本当はー
妻の希海も、
娘の奈々子も、泰治のことを裏切ってなどいないー

だがー
”そう思えてしまう”のがー
”憑依”の恐ろしさー。

真相にたどり着けない”周囲の人々”は、
永遠に憑依された当事者の”豹変した振る舞い”に
振り回され、傷つき続けることになるー。

「ーそんなこと言うなよー。」
敏郎はそう呟くと、「奈々子ちゃんにも、何か事情があるのかもしれないぞ」
と、なんとか泰治を元気づけようと、そんな言葉を投げかけたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

♪~~~~

母親のアイドル時代の衣装を着て、
母親の歌を歌いながら踊っている奈々子ー。

「ーーーー…」
奈々子から呼び出された希海が、暗い表情でそれを見つめているー。

「ーーーふぅ~~♡ ほんと、のぞみちゃんみたい」
奈々子は歌を歌い終えると、ご機嫌そうにそう呟いたー

「ーお願い……奈々子を返してー…わたしはどうなってもいいからー」
正気を取り戻した希海は、
自分が長い間憑依されていたことよりも、
娘の奈々子が、憑依されてしまったことに強いショックを受け、
なんとか、奈々子だけでも助けてもらおうと
必死に嘆願していたー

「ーのぞみちゃんさぁー」
奈々子はそう言うと、母親の希海を睨みつけるようにして
顔を近づけたー

「ーのぞみちゃんはもう、輝きを失ったスクラップなんだよー
 大人しく僕に従ってないと、
 奈々子ちゃんを滅茶苦茶にしちゃうぞ???」

奈々子に脅すような口調でそう言われた希海は、
一人、震えることしかできなかったー

”泰治ー… 奈々子ー… わたしのせいでー… ごめんー”

アイドル時代の狂ったファンの男のせいで、
夫だった泰治のことも、娘の奈々子も巻き込んでしまったー。

それを、自分の責任だと強く感じてしまった希海は、
目に涙を浮かべながら、憑依されている奈々子のほうを見つめたー

<第3章>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回は次の土曜日になります~!
お読み下さりありがとうございました!!

憑依<妻は元アイドル>
憑依空間NEO

コメント

  1. 匿名 より:

    正気を取り戻したということは希美は憑依中の記憶はなかったんかな?
    色々状況に理解はあるみたいですけど。

    それにしても、劣化したのぞみちゃんって、酷い言いようですよね。
    そう言いつつもまだ興味はあるみたいな感じですよね。 一緒に暮らそうとしてるのは。
    それともただおもちゃにしたいだけですかね?

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      憑依されている間の細かい記憶はなくて、
      記憶が飛んだことや、直前の記憶から判断してる感じですネ~!

      酷いことを言いつつ、まだまだ自分の物にしておきたいという
      歪んだ欲望が出ています…★

タイトルとURLをコピーしました