<入れ替わり>心配かけてごめんなさい③~謝罪~(完)

クラスの人気者の身体を”入れ替わり”で
手に入れた根暗な男子生徒ー。

彼の目論見は見事に成功し、
欲望の生活を送っていたものの、
あまりにも入れ替わり相手が”良い子”すぎたことで、
逆に罪悪感を感じるようになってしまう…。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「違うんだー…これは、僕のせいなんだー…」
朱音(俊太)は、
俊太(朱音)の優しい振る舞いー、
そして、たくさん心配してくれる状況を前に、
耐えきれなくなって、そう言葉を口にしたー。

「ーー僕のせいー…?」
俊太(朱音)はそう言葉を口にしながら不思議そうにしているー。

がーー…
朱音(俊太)はそこで言葉を止めてしまうー。

”本当のこと”を言ったらどうなるのかー。
それは朱音(俊太)にも分かっているー。

どんなに朱音が優しくてもー、
どんなに朱音がいい人でもー、
絶対に怒ると思うし、困らせてしまうー。

それにー…
こんなに一生懸命”偶然入れ替わったフリ”をする計画を練って
せっかくそれを成功させたのにー、
自分自身じゃ信じられないぐらいの美少女になれたというのに、
それを全て失う可能性だってあるー。

だから、言えなかったー。

「ーー…笠島くんのせいなんかじゃないよ」
朱音(俊太)が黙り込んでいると、俊太(朱音)が、
ふと、そんな言葉を口にした。

「あの日、わたしと笠島くんが廊下でぶつかっちゃったのは
 笠島くんだけのせいじゃないし、
 わたしももっと注意すれば良かったからー…

 だから、こうなっちゃったのは、笠島くんのせいなんかじゃないよー。

 笠島くんだって辛いんだし、気にしないで」

そんな、俊太(朱音)の言葉が
心臓に突き刺さるかのように響き渡るー。

「僕はー…」
朱音(俊太)がそう言いかけると、
次の授業を知らせるチャイムが鳴るー。

結局、今日も言うことはできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからー、
朱音(俊太)は
ますます元気を失って行ったー。

朱音の身体で欲望の限りを尽くそうと思って
服を脱いでもー、
ドキドキはしてもー、
それ以上に強い罪悪感に襲われてしまうー。

もし朱音が俊太をいじめているような女子であったならば、
容赦なく好き放題できたかもしれないのにー、
まさか、こんなに心配されて、こんなに優しくされるなんてー。

「ーーーー」
その翌日ー。

学校で暗い表情を浮かべていた朱音(俊太)を見て、
俊太(朱音)が近付いて来ると、
「大丈夫ー?どこか体調悪いー?」と、
そう言葉をかけて来るー。

「何か辛いことがあったら、わたしも全力で笠島くんの
 力になるからー…」

俊太(朱音)のそんな言葉に、
追いつめられていた朱音(俊太)は
「そういうのだよー」と、そう言葉を口にする。

「そういうこと言うから、余計に辛いんだー」
とー。

こんなの八つ当たりだと分かっているー。

なのに、朱音(俊太)はそう吐き出すと、
「僕のことは放っておいてよ」と、
それだけ言葉を口にして、
立ち去っていくー。

女子トイレの個室に入って隠れるようにして
昼食を食べる朱音(俊太)ー

まさか、朱音のようなキラキラした子の身体になってまで、
トイレの個室に閉じこもって昼食を食べることに
なるなんて思わなかったー。

「ーーー僕はー…僕はー…」

”せっかく入れ替わりを成功させたんだー”と、
自分に何度も何度も言い聞かせる朱音(俊太)ー

朱音にどんなに心配されても、優しくされても
”適当にあしらっておけばいいんだ”と、
女子トイレの個室の中で乱暴にパンを食べながら
自分に言い聞かせるー。

けれどーーー…

「ーーーー」
女子トイレの個室から出た朱音(俊太)は
鏡で自分の顔を見つめると
大きなため息を吐き出してから、
教室へと戻る朱音(俊太)ー

俊太(朱音)は心底心配そうな表情を浮かべながら
そんな朱音(俊太)の様子を見つめているのが見えたー。

「ーーーー」
朱音(俊太)はその視線を感じながら
息を吐き出すと
「放課後に大事な話が…あるんだ」とだけ伝えて
座席へと戻ったー。

そして、放課後ー。

朱音(俊太)は、ここ最近、自分が
朱音に心配をかけるような振る舞いを繰り返してしまっていたことを
謝罪したー。

「ーー心配かけてごめんなさいー」
朱音(俊太)が心の底からの謝罪の言葉を口にすると、
俊太(朱音)は「ううんー…こんな状態だもんー。不安にもなるし」と、
それでも優しく微笑んで見せたー。

その顔を見て、朱音(俊太)は自分に対する怒りだろうかー。
少し歯ぎしりをすると、意を決した様子で口を開いたー。

「ー僕が、この入れ替わりを仕組んだんだー」
と、小さい声でそう言葉を口にするー。

「ーーえ?」
ハッキリとは聞こえなかったのか、
俊太(朱音)がそう聞き返すー。

そんな反応を前に、
朱音(俊太)は目に涙を浮かべながら
「僕が、この入れ替わりを仕組んだんだ!」と、
そう叫んだー。

朱音のことを前から可愛いと思っていたこと、
家で朱音のことを想像しながら抜いたこともあったことー、
入れ替わり薬を手に入れて”偶然”を装い、わざとぶつかったことー、
その後も、元に戻る気がないのに協力するフリをして平然としていたことー、
家で朱音の身体で好き放題してしまったことー、

けれどー…
俊太(朱音)に優しくされて、心配されてー
そんな状態が続く中、罪悪感に耐え切れなくなってしまったと、
そう、素直に全てを打ち明けたー。

「ーーーーー~~~…~~~」
俊太(朱音)の表情から笑顔が消えるー。

全てを打ち明けた朱音(俊太)は
「本当にごめんなさいー」と、そう言葉を口にすると、
俊太(朱音)は数秒間固まってから、それでも笑顔を作ってみせたー。

「ーーうんーーー……びっくりしたけどー…
 色々ショックだけどー…
 でも、笠島くんが考え直してくれたならー…

 ーーそれならー…」

そこまで言葉を口にすると、言葉に詰まる俊太(朱音)ー

無理に笑顔を作りながらも、目から涙が溢れ出すのが見えたー。

「ーーご、ごめんねー
 打ち明けるの、きっと辛かったよねー
 で、でもわたしーやっぱりー…」

俊太(朱音)はそこまで行くと、
「なんだかショックだなぁ…」と、そう言葉を吐き出したー。

「ーーご、ごめんなさいー…」
朱音(俊太)は震えながらそう言葉を口にする。

想像以上に、俊太(朱音)がショックを受けているのを見て、
朱音(俊太)は心が抉られるような思いを抱くー。

そしてーーー

「ーー……きっと、笠島くんにも辛いこととか、
 そうしたい気持ちとかあったんだよねー?

 ーー打ち明けてくれてありがとう。

 それでー…元に戻る方法も知ってるってことだよね?」

涙を拭きながら俊太(朱音)はなおも、
いつものように明るく、そして優しくあろうと
そう言葉を口にするー。

「ー!」
朱音(俊太)はこれまでのことを打ち明けるのに必死で、
”この先”が最も言いにくいことであることを忘れてしまっていたー。

「ーーーえーー…… あ…」
”これを伝えたら”どうなってしまうか分からないー。

そう思った途端、何も言えなくなってしまったー。

「ーーーぁ…… …え…えっと…」
どう説明してもいいか分からないー。

さっきの心底ショックを受けたような反応を思い出す朱音(俊太)ー

”言えないー”
”絶対に、言えないー”

そう思いながら激しく動揺する朱音(俊太)ー

しかし、”元に戻る方法も知ってるってことだよね?”と
聞かれたのに”答えることができない”という状況は
”それを知らない”と自白しているのと同じことだー。

「ーーえ……?」
俊太(朱音)の表情からみるみるうちに笑顔が消えていくー。

「ーーも、元に戻る方法、教えてー?
 入れ替わりのことも誰にも言わないし、怒らないから」
俊太(朱音)は焦った様子でそう言葉を口にするー。

”元に戻る方法がない”なんてこと、あり得ない、
と言わんばかりの様子でー。

そんな、俊太(朱音)の様子を見ていた
朱音(俊太)は罪悪感を堪えきれなくなって
目から涙を流してしまうー。

分かっているー。
泣きたいのは、入れ替わりを仕組まれた俊太(朱音)の方だと
いうことぐらいはー。

信じていたのに、裏切られた俊太(朱音)の方だと
いうことぐらいはー。

それでも、どうしても朱音(俊太)は涙を堪えることができなかった。

「ー元に戻る方法はー……ないー……ないんだー」

入れ替わり薬は、”魂”への負担が強くかかるー。
2回目以降は、入れ替わりに失敗したり、魂への負担が強く、
魂ごと消滅したり、魂に異常が生じたりする可能性が
”非常に高い”ために、絶対に2度目以降の使用をするな、と、
説明書にそう書かれていたー。

「ーーーー…嘘…だよねー?
 ねぇ、嘘でしょ?」
俊太(朱音)にそう言われて、朱音(俊太)は、
泣きながら「これは……嘘じゃないんだー」と、そう言葉を振り絞るー。

目の前で泣き崩れる俊太(朱音)を見てー、
泣き崩れている”自分自身”の身体を見てー、
引き返すことのできない地獄を作り出してしまった、と
朱音(俊太)は自分のしてしまったことを
噛みしめるのだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”入れ替わり薬”について、
俊太(朱音)に全て隠さず説明して
”もう1度使うことを試すことはできる”と、
そう伝えた朱音(俊太)ー

けれども、説明書の表記によれば
”非常に高い確率で2回目以降は魂に異常をきたす”のは
間違いないことで、
俊太(朱音)から”今よりもっと酷いことになるだけだよー”と、
そう言われて、断られてしまったー。

俊太(朱音)は明らかに元気を失い、放心状態ー。
ほとんど口も利いてくれなくなってしまい、
やがて、俊太(朱音)は学校にも来なくなってしまったー。

「ーーーーー」
朱音(俊太)は心底心配しながら、俊太(朱音)のー、
”自分が元々座っていた座席”を見つめるー。

自分でこうなることを仕組んだのに、
相手のことを心配しているなんて、おかしな話だと
自分でも苦笑しながらも、
心配で心配でたまらないー。

「ー朱音?どうしたのー?」
友達から声を掛けられて、朱音(俊太)は
「あ、ううんーだ、大丈夫ー」と、朱音のフリを続けるー。

どうすれば良かったのだろうかー。

最初から入れ替わりなんてしなければ良かったのだろうかー。
それとも、入れ替わりを仕組んだことを自己満足のために
打ち明けたりしなければ良かったのだろうかー。

「ーーーーー」
帰宅しても、自分の部屋で一人になっても、
もう、朱音の身体で欲望を満たすつもりにもなれなかったー。

人間は追い詰められているとー、
男の身体でも、女の身体でも、十分に欲望を楽しむことが
できないのかもしれないー。

今はただ、罪悪感でいっぱいだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから数週間が経過したー。

幸い、俊太(朱音)は入れ替わりのことを周囲には
一切言わなかったため、
朱音としての生活を続けることはできたー。

が、依然として俊太(朱音)は学校に来ない状況が続いていて、
朱音(俊太)は心底心配していたー。

がーー…

「ーーー!」
この日、俊太(朱音)が久しぶりに学校にやってきたのだー。

朱音(俊太)は昇降口前でそれに気付くと、
驚いたような表情を浮かべると同時に
”今度こそみんなに入れ替わりを暴露されるかもしれない”と、
強い不安を抱くー。

しかしー、
俊太(朱音)が、朱音(俊太)に気付くと
穏やかに笑いながら近づいて来たー。

「ーーもう、大丈夫だからー」
俊太(朱音)はそう言ったー。

勝手に入れ替わりを仕組まれて、
元に戻れない状況にされてしまったことー、
そして、嘘をつかれてしまったことは
本当にショックだったけれど、
もう、気持ちの整理はついたから、と、そう言葉を口にするー

「ー笠島くんも、きっとそうしないといけないぐらい
 悩んでたんだよねー?
 最後には打ち明けてくれたんだしーー

 ーーもちろん、スッキリ許すことはできないけどー
 ーでも…もう、悩むのも落ち込むのもおわりー。

 ずっと悩んでても、結果が変わらないなら
 前を向いて、この身体で生きて行かないとね」

俊太(朱音)はそう言ったー。

やっぱり、”朱音”は優しいー

そう思いながら、朱音(俊太)は、戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーー気持ちの整理に時間が必要だったからー」
不登校になっていた理由をそう説明する俊太(朱音)ー。

そして、俊太(朱音)は言ったー。

「ー心配かけて、ごめんなさいー」
とー。

前向きに生きると決めたのか、
どこか意を決したような笑顔ー。
でも、そんな笑顔なのに、目には涙が浮かんでいるー。

前向きな決意と、張り裂けそうなぐらいに悲しい表情が
入り乱れてたその表情ー。

そして、”謝るべきは僕なのに、また僕が謝られてる”とー
朱音(俊太)は、そう思わずにはいられないー。

「今日も、頑張ろうねー」
俊太(朱音)が教室の方に向かって行くー。

一人残された朱音(俊太)は、
罪悪感に完全に押しつぶされながら、
その場で吐きそうになって蹲るー。

吐きそうになりながら、朱音(俊太)は思ったー。

”あぁー、これが人の人生を奪ったバツなんだー”
とー。

”僕はこの先ずっとこの思いを抱えて生きていくんだ”
と、そんな地獄の始まりを、
深く深く、いつまでも噛みしめるのだった…。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

飛龍様からのリクエストによる入れ替わりモノでした~!

頂いたリクエストの原文は、

・・・

「根暗でぼっちな男子が一度だけ使える入れ替わりアイテムを手に入れて、
偶然を装って同じクラスの天真爛漫で可愛い女の子と入れ替わる。
表向きは元に戻るため協力し合おうと言っておいて、
家では自分の物になった女の子の裸を見たり好き放題する男子だが、
女の子があまりにいい子で心配してくれるので段々と罪悪感が湧いてきて……」

・・・

と、いうモノでした~!★!

これを元に書いたのがこの作品ですネ~!!

飛龍様からのリクエストを書くときには、
(指定がない場合)私がハッピーエンドで書いていることが多い気がしたので
今回はどろ~りとしてみました~!

お読み下さり、ありがとうございました~~!!

「心配かけてごめんなさい」目次

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