”人生をやり直したい”
そう思った彼は、”赤ん坊”に憑依した…!
イケメンと美女の間に生まれたばかりの赤ん坊に…!
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40代後半の熊原 哲(くまばら てつ)は、
不潔な容姿と、最悪な性格で”嫌われ者”だったー。
子供の頃からずっと
”自分さえ良ければいい”を体現してきた人物であり、
恋人はおろか、友達も一人もいなかったー。
仮に今、この場で哲が突然死したら、
他の人間は皆、喜ぶどころか悲しむだろうーー
いやー。
違う。
悲しむ人間すら、いないー。
哲は完全に孤立していたー。
しかし、彼も”老い”てきたのか、最近になって
ようやく心情に変化が現れた。
自分の人生を”後悔”するようになってきたのだー。
だが、時、既に遅しー。
40代後半になった哲が、今から自分を変えようとしても
そう簡単に変われるものではないー
最低限の清潔さを意識することも、
最低限の周囲に対する配慮を意識することも、
この年齢になってからでは
なかなかすぐに変えられるものではないー
そこで、哲は”人生をやり直したい”
そう、考えるようになったのだったー。
”人生やり直す”
そんな風にネットで検索する日々ー
”死んだあとはどうなるのだろうか”
哲はそんなことまで考え始めるようになったー。
また、生まれ変わることはできるのだろうかー。
もしかしたら、生まれ変わることも、あるかもしれないー。
そうすれば、次の人生では、
今の人生のようなことにはならないように、注意したい。
「--いや」
哲は首を振るー
少なくとも、世の中に「前の人生ではこんなだったんですよ」
なんて人はいないー。
それはつまりー
”生まれ変わることはない”
かー
”生まれ変わったとしても、前の人生の記憶はない”
ことを意味しているのではないか。
哲は、そう考えながら、呟くー
”それじゃ、ダメだ”
と。
生まれ変わることが無ければ人生はそこで終わりだ。
人生の”やり直し”も、出来ないー。
生まれ変わったとしても、記憶がないのであれば
”前回の人生の失敗”を生かして新しい人生を
送ることは出来ない。
また、今と同じような人生を送ることになってしまうー。
「くそっ!どうにかー
どうにか方法はないのか!?」
そんな風に考えながら
執念深く、”人生をやり直す方法”を毎晩のように調べ始めてから
3か月ー
ついに、哲はたどり着いたー
”憑依”
にー。
「---憑依… これだ!」
哲は、笑みを浮かべたー。
憑依さえあれば、人生をやり直すことが出来る。
そう感じた哲は、早速憑依薬を注文、
それが到着すると”計画”を練ったー。
その結果、哲は
”生まれたばかりの赤ん坊”に
憑依することに決めたー。
新しい人生を送るのであれば”女”がいいー
哲はそう思っていたー
哲自身の下心と、
単純に”今回は男だったから、次はもう一方がいい”という
気持も強かったー。
だがー
JKやJDを乗っ取っても
それは”自分の人生”ではないー
哲は”1からやり直したい”のだー。
そこで、ターゲットにしたのが”赤ん坊”だー。
しかし、そこでも一つ問題が生じた。
赤ん坊に憑依する以上、
その赤ん坊がどのように成長するか分からない、という点だー。
どうせ憑依するのであれば、やはり、美少女になりたいー
だが、その子の容姿がどんな感じか分かって来る段階では、
その子の人生は”中古”になってしまうー
哲は”新品”にこだわりを持っていたー。
やはり、新しいボディも新品が良いのだ。
「---」
哲は考えに考え抜いた結果、
美人である母親と、イケメンである父親の間に生まれた
赤ん坊に憑依することに決めた。
美女とイケメンの間に出来た子は
美少女になるに違いないー。
そう、思ったからだー。
そうと決まれば、早速ー。
哲は数日後には既に、憑依して乗っ取る候補を決めていたー。
大利根 紗愛(おおとね さら)-
母親は、大学時代にミスコンに選ばれたこともある美人で、
父親はスポーツ万能のイケメンだー。
こんな良血な子供であれば、美少女になるに違いないー。
生まれたばかりの紗愛に
”身体の異常”をないことを確認するとー
哲は、紗愛に憑依したー
「-ぁっ、、、あ~~~~ だ~~~」
沙羅に憑依した哲は、
喋ることが出来なくなってしまったー
まだ、身体が正確に発音できるレベルに
発達していないー、と、いうことだろうかー
立つことも、歩くこともできないー
けれどー
頭はしっかりしているー
”へへへ やったぜ”
紗愛になった哲は、満面の笑みを浮かべたー
笑う紗愛ー。
母親は、まさか、生まれたばかりの娘が乗っ取られて
笑っているー
などとは、夢にも思わないだろうー。
紗愛になった哲はー
”大人としての自我”を持ったまま、
もう一度赤ん坊時代を体験したー
母親の胸を吸う瞬間は、
激しくドキドキしたー
”うあぁぁぁぁ…母乳だぁ…やべぇぇ…”
顔を真っ赤にしながら母乳を飲む紗愛ー。
けれど、母親は当然、それでも娘が
乗っ取られたことになど、気づくことはできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
紗愛として、充実した赤ん坊生活を堪能した哲ー。
特に、母乳を貰えるのには興奮したー
まさか、母親は、自分の赤ん坊がおっさんに乗っ取られていて、
おっさんが下心丸出しで母乳を飲んでいるなどとは
夢にも思わなかっただろうー。
紗愛になった哲は、充実していたー。
美少女になることが約束されたこの身体で、
すくすくと育っていく哲ー。
人生は、変えられるー。
自分の人生が良いモノにならなかったのはー
容姿に恵まれなかったからであると、哲は思っていたー。
楽しい幼少期を過ごしー
やがて、哲の学生時代がスタートするー
”天才”
周囲からはそう言われたー
足し算や
簡単な感じなど、40代後半であった哲にとっては
朝飯前だからだー
「紗愛ちゃんすごい!」
そんな風にもてはやされてー
しかも”大人の頭脳”を駆使した紗愛は、
周囲を見下していたー。
「--わたしは、すごいのよ」
紗愛は、髪をかき上げながら、笑みを浮かべるー
やはり、
美人とイケメンの娘だけあって、可愛い感じに育っているー
このままJCになりー
JKになったらー
どんなバラ色の人生が待ち構えているのだろうかー。
しかしー
そう、うまくはいかなかったー
「---……」
中学に入学したころからー
紗愛の顔が陰険な感じで、細目の、
”いかにもいじわるそうな、卑屈な顔”に変わって来たー
「くそっ!!!」
紗愛は怒りの形相でそう叫ぶと、
必死に勉強して、何度も何度も化粧を繰り返したー
だがー
容姿の劣化は止まらないー
まるでーー
「--うあああああああああああ」
紗愛は怒りの形相で叫ぶー
まるでー
”哲”の顔のような顔になっていく紗愛ー。
容姿の劣化と共に、紗愛になった哲は
清潔さに気遣うこともできなくなり、
髪はボサボサ、悪臭がするような女子になってしまったー
心配する両親ー
気づけばー
友達もー
恋人もいないー
そんな、女子高生になっていたー。
「----どうして…?」
小太りで、哲を女にしたような顔になってしまった紗愛は、
ボサボサ頭のまま、部屋でエロゲーに興じる日々を送っていたー。
元々の、哲の人生と、何も、変わらないー
「---どうして…どうして…どうして…!」
最初は確かに”可愛い”感じに見えたー。
だが、中学に入ったころぐらいからー
顔が、”中身”である哲に合わせるような形で
変化し始めたのだー
「--くそっ!くそっ!!くそっ!!!」
紗愛は思わず、パソコンのキーボードを叩いたー。
友達もいないー
周囲から嫌われているー
不潔と言われているー
いつの間にか、陰険な顔立ちになりー
太りー
全く美少女などではなくなってしまったー
哲からすれば”ブス”だー。
両親からも、呆れられていてー
これでは、まるで、元の人生と同じー
「--くそっ!どいつもこいつも!!!
俺を馬鹿にして!」
紗愛は、エロゲーをプレイしながら
怒りの形相で、ポテトチップスを口に運ぶー。
哲はー
何も、反省していなかったー。
”人生やり直したい”
そう思って、憑依薬にたどり着いてー
結果、生まれたばかりの赤ん坊である紗愛に憑依したー。
だがー、
”今のままの自分”を変える気は毛頭なかったー。
何故なら哲は、
自分が悪いと思っていないからだー。
元々の人生で、自分が嫌われたのは
周囲のせいであると、
そう信じて疑っていないからだ。
だからー
自分を変えるつもりなどなかったし、
紗愛を乗っ取った哲は、横暴な振る舞いを繰り返したー
その結果ー
哲の醜悪な性格が容姿にまで影響しー
食べたいときに好きなだけ食べる食生活は
紗愛の体型も変えてー、
身体が変わっただけで、前とは何も変わらないその性格は
周囲から、紗愛を孤立させたー。
「--いいんだ…いいんだ…わたしには、エロゲがあれば」
紗愛は、開き直ったー。
開き直ってー
さらに容姿は不潔になりー
ストレスからか、体重は爆増したー。
「-----」
鏡の前で、激太りした自分を見つめるー
髪はボサボサで、体臭がするー
もはや、男か女からすら、分からないー
”この子が、俺に憑依されなかったら
どんな姿だったのだろうかー”
そんな風に思いながらも、紗愛になった哲は開き直ってー
高校卒業と共に一人暮らしを始めて、実家とも縁を切ったー。
やがてーーー
時は流れー
大利根 紗愛はー
40代後半になっていたー。
哲が、紗愛に憑依したころと同じ年齢だー。
”おかしなおばさん”としてー
近所からも嫌われー
恋人はおろか、友達も誰もいなかったー。
悲しむ人間すら、いないー。
紗愛は、完全に孤立していたー。
元々の自分と、同じだー。
何も、変わらないー。
「---!」
ある日ー
紗愛になった哲は”幻”を見たー
綺麗な、優しそうな女性が歩いてくるー。
”--あなたは、何度繰り返しても同じー
あなたが、自分を顧みて、自分を変えない限りー
あなたは、何度でも醜くなるー”
その女性は、醜い紗愛を指さしたー
「--き、、貴様に何がわかるんだ!」
紗愛は叫ぶー。
だが、その女性は悲しそうに、紗愛の方を見つめたー
”--本当は、こうなるはずだったわたしをー
あなたは、そこまで醜くしたー”
優しそうでー
小奇麗な感じの40代ぐらいの女性はー
そう呟いたー
目の前にいるのはー
”哲に憑依されなかった場合の、40代後半の紗愛ー”
今の、醜悪な紗愛とは、まるで違うー
「くそっ!なんでだ!!!
くそっ!!!
ちがう、おれのせいじゃない!
お前の身体が、クズだからこんな醜くなったんだ!!!
俺は、、俺は!!!」
ーーー
気付くと、紗愛は家の中でひとり、叫んでいたー
「俺は!!!俺は!!!!何も悪くない!!俺はーー」
紗愛はーーー
”人生をやり直す方法”をネットで連日調べるようになったー
虚ろな、目でー
”--あなたは、何度繰り返しても同じー
あなたが、自分を顧みて、自分を変えない限りー
あなたは、何度でも醜くなるー”
「-----」
1か月後ー
アパートの一室から、中年女性の遺体が見つかったー。
女性は”人生をやり直す方法”の検索結果が表示されたスマホを手にしたままー
絶望の表情で息絶えていたのだと言うー。
おわり
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コメント
身体にまで中身の醜悪な部分が
影響を与えてしまった…!という憑依でした~!
憑依で人生丸ごと奪うのは、厳しい道のりなのデス…。
コメント
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体の影響を受けて性格とかが変化する話とかは前にもありましたが、中身の影響で肉体が変化する話は新鮮ですね。面白いです。
この話を逆に考えると、もし精神が美しければ、本来は不細工になる人間に憑依した場合、美しくなるということになりますね。
まあ、他人の体を乗っ取って新しく人生をやり直そうという自分勝手な考えを持ってる時点で心が美しいワケはないかな?
それにしても人生を奪われた紗愛ちゃんもかわいそうですけど、大切な娘を汚染されて失った両親も気の毒です。
ところで最後、哲はまた別の赤ん坊にまた憑依したんですかね?
その場合、また醜くなって、また憑依して、本来の紗愛の言う通り、何度でも繰り返すことになりそうですね。
SECRET: 0
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コメントありがとうございます~!☆
性格が見た目に現れる…みたいなのを
イメージして書いてみました~!
両親も、本人も被害者ですネ~…!
彼の場合は何度繰り返しても
同じことになりそうデス…!