放課後に、後輩の大人しい女子から呼び出された
男子生徒ー。
そして、そこで彼は”2つの告白”をされることになるー
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男子高校生、
堀山 明弥(ほりやま あきや)は
”厄介な奴に目をつけられてしまった”と、思いながら
自分の部屋で頭を抱えていたー
「あ~~くそっ…どういうことなんだー」
明弥は、”ある返事”をどうするか、悩んでいたー
それは”告白”だー。
今日、明弥は同じ図書委員として活動している
後輩の女子生徒・蒼井 琴葉(あおい ことは)から
呼び出されてー
告白されたのだー。
そして、その返事を迷っているー。
明弥には、彼女がいないー
だから、告白を受けても浮気にはならないー
明弥は、別に女子が嫌い!とか、絶対に付き合わないんだ!とか
そういう考えの持ち主ではないー
だから、告白を受けても問題はないー。
琴葉のことも嫌いじゃないし、
むしろ、可愛くていい子だと思っていたー
性格にも、何も、問題はないー
一見すると、告白を断る理由なんて、ないように思えるー。
だがー
明弥は迷っていたー。
琴葉の告白を受けるべきか、どうかー。
それはー
明弥は頭を抱えながら、今日、告白された時のことを
思い出すー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---先輩、今日の放課後、少しお時間頂けますか?」
”発端”は、昼休みのことだったー。
明弥のいる教室に、後輩の琴葉がわざわざやってきて、
そう言われたのだー
「え?あれ?今日、図書当番だったっけ?」
明弥は不思議そうにそう答えたー。
別にとぼけたりしたわけでも、なんでもなくー
ただ単に「あれ?」と思っただけのことだー。
その言葉に、琴葉は「いえ、そういうことじゃないんですけれど、大事なお話がー」と
明弥の方を見つめると、
明弥は少し困惑しながら「わかった。別にいいよ。どこで待ち合わせかな?」と答えたー
放課後に、西棟の使われていない教室で待ち合わせの約束をすると、
琴葉は「じゃあ、待ってます」と、ほほ笑んで立ち去っていくー。
その様子を見て、親友の五太郎(ごたろう)は、
「ヒュー!やるじゃねぇか」と、笑みを浮かべたー。
「-何がだよ?」
明弥は苦笑いしながら五太郎を見ると、
「可愛い後輩から放課後に呼び出されるって言ったら
アレしかねぇだろ?」と、五太郎は笑うー。
「--アレ?なんだよ…?」
明弥は困り果てた様子で言うー。
明弥は、明るいタイプの男子高校生であるのだが
”恋愛”関係に対しては、かなり鈍感な方で、
この時点で、琴葉から告白される、なんてことは
夢にも思っていなかったし、
頭の片隅にそんな考えすら浮かんでいなかったー。
「----告白されるに決まってるだろ?」
五太郎が小声で言うと、
明弥が「はぁ!?」と声を上げたー。
「-そんなわけないだろ?普通に
図書委員でいっしょにはなるけど、
別に普通に雑談してるだけだぞ?」
明弥の言葉に、
五太郎は「わかってねぇなぁ。お前のことだから
どうせ、無意識に親切にしてるんだろ?」と、
やれやれと言わんばかりに、首を振ったー
「-まぁ、困ってたら手伝ったりとかは普通にするけどー
それは別に蒼井さんだけじゃなくて、
男子でも女子でも、普通にするけどな?」
明弥は、そう言うと、
「--告白なんてあるわけないだろ」と、笑いながら
自分の座席に戻るー。
「--はははっ!じゃあ、賭けるか!
俺は告白されるにハンバーガー2個賭けるぜ!」
五太郎の言葉に、明弥は「フッ」と笑いながらー
「--俺は告白されないに、チーズバーガー10個だ!」
と、自信満々に宣言したー。
そして、放課後ー。
明弥は、琴葉と待ち合わせをした空き教室にやって来るー
そこには、誰もいないー
「---…あぁ…なるほど」
明弥は少しだけ納得したー
「なんか、あれだな…罰ゲームってやつかな?」
とー。
明弥は別にキモがられるようなタイプではないし、
罰ゲームの対象として告白する相手には
ふさわしくはないが、そういう可能性も十分にあるー。
”待ち合わせ時間は過ぎてるし、5分ぐらい待って
来なかったらー”
「--!」
来たー。
後輩の蒼井琴葉は、ちゃんと待ち合わせ場所にやってきたのだー。
慌てた様子で空き教室に入って来ると、
「すみません先輩ー。先生の話が長くて、少し遅れちゃいました」と
申し訳なさそうに微笑んだー
「あ、いや、いいけどー」
明弥はそう言うと、少し顔を赤らめたー
”五太郎のやつのせいで、変な意識しちゃうじゃないか…ったく”
五太郎に言われるまで
”告白される可能性”なんて全く考えたことはなかったがー
いざ、そう言われてみると、確かに意識してしまうー
後輩の蒼井琴葉は、正直、かわいいし、
告白されれば、嬉しいー
”落ち着け、俺”
自分で自分を落ち着かせようとしながら、
明弥は琴葉に対して
「それで、話って…?」と自然な様子で言葉を投げかけたー。
「----あの…」
琴葉は、少し恥ずかしそうにしながら、
明弥の方を見つめるー。
「--あの…!わたし…先輩のことが…好きですっ!」
普段大人しい様子の琴葉が、勇気を振り絞ったのか、
少し強めの口調で、そう言い放ったー
「---ん?」
明弥はぽかんとなったー
「え…今、なんて?」
明弥が言うと、琴葉は明弥の方をまっすぐ見つめながら
「--わたし、先輩のことが、好きです!」
と、叫んだー。
「--え…えぇ!?!?」
明弥が驚いていると、
琴葉は「先輩、頭が良くて何でもできますし、とても優しいですしー」と、続けたー。
信じられないー、という様子で
明弥が驚いていると、
琴葉は「あ、、ごめんなさい…いきなり言われても困っちゃいますよね」
と、戸惑いの表情を浮かべたー。
明弥はすぐに「あ、いやいやいやいや、急にだったからびっくりしただけで!」
と、顔を赤らめながら言うと、
「--ありがとうー。…蒼井さんにそんなこと言われるなんて、嬉しいよ」と
付け加えたー。
そして、告白に”OK”を出そうとした
その時だったー
「--あ!ちょっと待ってください!
お返事を聞く前に、もう一つ、言っておかないといけないことがあってー!」
琴葉が、明弥の”告白OK”にストップをかけたー。
「え」
明弥が言うと、
琴葉は、少し考えた様子を見せてからーー
明弥の方を見たー
「-実はわたし、蒼井琴葉であって、蒼井琴葉ではないんです」
琴葉の言葉に、
明弥は首がへし折れそうになるぐらい、首を傾げたー
”いきなり、何を言ってるんだ!?”
とー。
琴葉は、明弥の方を見つめるとー
「--”身体”は確かに蒼井琴葉なんですけどー」
と、言うと、「驚かないで聞いてくれますか?」と、
明弥に”確認”したー
明弥は「--え…え、、うん」と、頷くー
”まさか、「わたしは蒼井琴葉の中にいる別人格ー」とか言い出すのか?”と
思いながらも、琴葉の言葉の続きを待つー。
「--あ!驚くかもしれないけど!聞くよ!」
と、明弥は咄嗟に付け加えたー。
話の内容次第では、驚かずにはいられないかもしれないー
だから、先にそう言っておいたー。
「---わかりました」
琴葉はそう言うと、深呼吸してからー
自分の後頭部のあたりに手を掛けたー。
「--!?」
明弥は表情を歪めるー
琴葉が、”自分の頭”を引き裂くようにしてー
頭がぺろりとめくれたー
「---え…え!?蒼井さん!?ちょ!?」
”蒼井さんが死ぬ”
単純にそう思ったー
だがー
次の瞬間、さらに衝撃を受けたー。
「---!?!?!?!?!?!?」
明弥は、目を震わせるー。
あまりの出来事に信じられなかったー。
「---この子はー”皮”---」
琴葉の中から、男が出て来たのだー。
しかもー
いかつい感じの、ヤバそうな男だー。
「---え…え…え…はひっ!?」
明弥が震えていると、
琴葉の皮を半分だけ身に着けたままの男は言ったー
「--蒼井琴葉は、小3のときに、俺が”皮にして乗っ取ったー」
男はそれだけ言うと、明弥の方を見つめるー。
「--え…え…え…????」
震える明弥ー
「---この子本人の意識は、その時から封じ込められたままー」
それだけ言うと、男は再び琴葉の皮を身に着けたー。
「-----…と、いうことなのでーー
わたしは、わたしであって、わたしではないんですけどー
でも、わたしも、蒼井琴葉として、もう7年ぐらい生きて来たのでー
今ではわたしが蒼井琴葉みたいなものなんですー」
琴葉は、いつもの口調に戻ると、そう言いながら
穏やかな笑みを浮かべたー
「----そ、、そ、、そうなんだーーー」
明弥は平静を取り戻して、琴葉の方を見つめると、
続けて呟いたー。
「で、でも、でも、なんでわざわざそのことを俺にー?」
明弥は言うー。
「--か、、仮に、蒼井さん、いいやーー、あなたが
蒼井さんを乗っ取っているんだとしてもー、
わざわざ言わなければ、俺も、他の人も
絶対にそのことに気づいたりしないのにー」
明弥の言葉に、
琴葉はクスっと笑ったー
「--そうですねー。
これだけ長い間女子として生きてくればー
女子として振舞うのも完璧ですからー
ばれることはないですよね」
そう言うと、明弥の方を、琴葉はまっすぐと見つめたー
「--でも、好きな人には、
秘密も全部打ち明けておきたいじゃないですか?
好きな人に隠し事はしないー。
わたしは、そう決めてるんですー」
琴葉の言葉に、
明弥は「そ、そっか…」と頷くー。
「それとー」
琴葉の表情が、少しだけ暗い表情になり、
低い声で続けたー。
「-”あなた”とか呼ばないでくださいー。
”蒼井さん”ってー、
今まで通り呼んでくださいー
今はもう”わたし”が、
蒼井琴葉なんですからー」
琴葉の言葉に、明弥は「あ、、、あ、、あぁ、わかったよ」と
戸惑いながら答えたー
「それでーー」
琴葉が微笑むー。
「-お返事を、聞きたいですー」
とー。
明弥は、激しく動揺しながらも、
答えを絞り出したー。
「-あ、あのさ!来週!1週間後まで待ってくれるかな?」
明弥の言葉に、琴葉の表情から笑顔が消えるー。
ただ、笑顔が消えただけかもしれないがー
”琴葉の中に男が潜んでいる”と知っただけで、
琴葉の表情の変化が、ひとつひとつ、怖かったー。
「---お、俺、告白されるのはじめてだし、
彼女もまだ、いたことないから、
ちょっと、急だったし、すぐに返事はー」
「--ふふふ…そうですねー…。
急でごめんなさい。びっくりさせちゃいましたね。
じゃあー
先輩ー。
来週、楽しみにしています。
今日はありがとうございました」
琴葉はペコリと頭を下げて、そのまま立ち去っていったー。
琴葉が立ち去って行ったあとー、
明弥は一人、その場所で座り込んで
ガクガクブルブルと震え始めたー
”恐怖”
そんな感情が、明弥を埋め尽くしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんでわざわざ俺に秘密を暴露したんだー…」
そして、現在ー
帰宅した明弥は頭を抱えていたー。
例え、琴葉が乗っ取られていたのだとしても、
それを言ってこなければ、明弥がそれを知る由はなかったー。
それなら、今頃喜んで告白を受けていただろうし、
幸せの絶頂にいるだろうー。
”どうだった?”
親友・五太郎からのメッセージに返信する気力も失いー
明弥は、一人、部屋の中で考え込むことしかできなかったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
後輩からの「2つ」の告白…。
OKするか、断るか、
続きはまた次回デス~!
今日もありがとうございました!!
コメント
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これは前の結婚式当日に正体を告白する皮の話に近い話ですね。あの話に比べれば、打ち明けるタイミングはずっと早いので、「騙したな!」みたいな感じで精神崩壊することはなさそうですけど、やっぱり皮であることを告白されてすごく困惑してますね。
好きな相手には全てを打ち明けたいという気持ちを持つのはいいけど、やっぱり言うべきではない気がしますね。というか、そんなことを打ち明けた上で両思いになって付き合えると本気で思ってるんですかね?
立場を逆にしてそんな告白される側の立場で想像したら、皮にされた女の子(中身男)と付き合うなんて普通なら絶対あり得ないですよ。
恋人が憑依されてることを知っても受け入れられるどころか、むしろ興奮するような特殊な性癖の持ち主でもない限りは。
それにしてもいくら長い間、琴葉として生きていても、しょせん、偽物は偽物でしょうに。
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コメントありがとうございます~!
結婚式当日の告白のお話を意識して作りました~!!
ただ、その後の展開は全く別になってくるので、
その点も含めてお楽しみくださいネ~!
「いうべきではない気がする」という点は、
鋭いですネ!
今後の展開にも関わって来る部分なので、
今はノーコメントにしておきます!笑