<入れ替わり>痴漢X冤罪①~罪~

ある日の朝の電車ー。

女子大生は電車内で痴漢被害に遭ってしまうー。
が、そんな彼女が捕まえたのは、”犯人ではない”おじさんー。

しかも、その冤罪おじさんと彼女が入れ替わってしまって…?

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女子大生の松村 紗奈恵(まつむら さなえ)は
”触られて”いたー。

「~~~~~~」
紗奈恵が、震えながら我慢しているー

”痴漢ー?”
この場で手を掴んでも良かったー

だが、もうすぐ駅に到着するー
それまで我慢して、降りるときに取り押さえようー

そう思いながら、紗奈恵は我慢するー

スカートの中に手を入れられて、
太ももや下着を触られているー

ぞわぞわと鳥肌が立つような感覚を覚えるー

後ろには、おじさんが立っているー

”許せない”
正義感の強い紗奈恵は、強い怒りを覚えた。
平然とした顔で、紗奈恵を触る痴漢男にー。

ーーー
周囲の乗客を見渡すー

真面目そうな眼鏡の青年や、
中年のおばさん、
男子高校生、
同じぐらいの年齢の女がいるー。

誰も、何の反応もしていないー

”痴漢に気づいていないー”
紗奈恵は少し気を落とすー

確かに、周囲の乗客が痴漢されているかなんて
気にしなければ気づかないかもしれないー

男が、堂々と紗奈恵の胸を触っていれば
さすがに気付くだろうけれど、
男は、下の方でこそこそと紗奈恵の
スカートの中に手を入れているだけー。

だからー
下の方をちらちら見ていなければ
気付かないのも無理はないー

電車が停車するー

駅についたー
紗奈恵のスカートに入れられていた手が引っ込むー

そして、その人物も同じ駅に降りようとするー

「--!」
紗奈恵は、電車から降りた直後、
そのおじさんの手を掴んだー

「この人!痴漢です!」
紗奈恵がおじさんの手を掴みながら叫ぶー

「--え!?!?!」
おじさんが叫ぶー

「--電車で、わたしのスカートの中、
 ずっと触ってましたよね!?」
紗奈恵が怒りの表情で言うー

「な、、な、、なんだって!?」
おじさんは明らかに挙動不審な様子で叫ぶー

周囲の利用客が紗奈恵とおじさんの方を見る。
おじさんは戸惑うー。

「--やだ、痴漢」
「最低だな」
「いかにもやりそうなおっさんだぜ」

少し中年太りして、半分剥げているおじさん・
三津野 茂(みつの しげる)は、反論する

「お、、俺じゃない!」
とー。

「--いいや」

紗奈恵と茂が振り返る。

「--あなた、触ってましたよね?」

電車の中で紗奈恵の近くにいた眼鏡の青年が、
紗奈恵に助け舟を出した。

「--な、、なんだってぇ」
茂が怒りの表情で青年の方を見るー

「--俺、見ましたよ。
 彼女に触れてる手を」

眼鏡の青年の言葉に、周囲はどよめくー

「--お、、俺じゃない!俺じゃない!!」
茂は叫んで、紗奈恵の手を振りほどくー

「--あ、!待って!」
紗奈恵が茂の手をもう一度掴んだそのときー
茂がバランスを崩して、紗奈恵の方に倒れてきたー

「あっ」
「うぉっ!?」

紗奈恵と茂が、駅のホームに倒れ込んでしまうー

「-だ、大丈夫ですか?」
眼鏡の青年が慌てた様子で言う。

「---あ、、あぁ…大丈夫…」
紗奈恵が起き上がるー。

「--わたしも、大丈夫です」
茂が起き上がるー。

「--!?」
「--!!」

紗奈恵と茂が顔を見合わせた。

「--きゃあああああああああ!」
「--うわあああああああああ!」
二人が叫ぶー

「--ど、どうしたんですか!?」
青年が戸惑った様子で言うと、
茂と紗奈恵が叫んだ。

「おれ!?」
「わたし!?」
とー

二人は、入れ替わってしまっていたー

「--……!!!」

茂(紗奈恵)が表情を歪める。

紗奈恵(茂)が、自分の胸を見つめて
目のやり場に困っているー。

「---あ、、あの…俺は、どうすれば」
紗奈恵(茂)が戸惑いながら言う。

「--ーーーえ」
茂(紗奈恵)驚きの表情を浮かべるー

”俺じゃない”
茂の脳が、強く、そう発していたー

”俺じゃない”
”俺じゃない”

とー

「まさか……」
茂(紗奈恵)は戸惑いを隠せないー

”触ってたの…このおじさんじゃないの…?”

とー。

茂の記憶を読み取ることはできないが、
入れ替わる直前に、茂が強く思っていたことが、
紗奈恵に流れ込んできたー

茂の叫びに、後ろめたいものは
感じられないー

茂になってしまった紗奈恵は直感するー

ーーーー冤罪…!!!

わたし、なんてことをー

電車の光景を思い出すー
手のあった方向にいた男はー
このおじさんと、眼鏡の青年だけー

まさかーー

「---あ、、あの…」
茂(紗奈恵)が口を開いたその直後ー

駅員が駆けつけたー

取り押さえられる茂(紗奈恵)-。

「えっ!?ちょっ!?」

ホームでは利用客や野次馬がどよめいているー。

「--あ、、あの…わ、、わたしたち、入れ替わって…」
茂(紗奈恵)が叫ぶー。

「入れ替わり?何を言ってるんだ!
 来なさい!」
駅員が茂(紗奈恵)を取り押さえるー。

紗奈恵(茂)が、駅員に「大丈夫ですか?」と
心配されているー
「だ、大丈夫です…」と紗奈恵になった茂が戸惑っているー

眼鏡の青年は、そんな様子を見ながら
静かに首を振ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

駅の事務室に連れてこられた茂(紗奈恵)。

「あんたねぇ、恥ずかしくないのか?」
駅員が言う。

「---だ、、だから、わたし、、入れ替わって…」
茂(紗奈恵)が戸惑いながら言うー

最悪のタイミングで入れ替わってしまったー。
これじゃ、わたしが触られたのに、
わたしが痴漢の犯人になってしまうー
しかも、このおじさん、冤罪だー。
無関係の人を痴漢にしてしまったことに
強い罪悪感を感じながら
真犯人に対する怒りを覚える茂(紗奈恵)。

同時に、この状況をなんとかしなくちゃ!という
焦りも感じていたー

ガチャー
駅の事務室の扉が開くー

駅員に連れられた紗奈恵(茂)がやってくるー

紗奈恵(茂)の表情は暗いー。
自分の身体が痴漢冤罪に巻き込まれてしまったことー
そして、入れ替わってしまったことに
戸惑っているのだろうー。

(よかった)
茂(紗奈恵)は思うー
二人が揃えば、入れ替わりのことは
なんとか信じてもらえるかもしれない。

おじさんと協力して、
ここはなんとかやっていくしかないー

「あの……すみませんでした」
茂(紗奈恵)が頭を下げるー

”冤罪”で茂の手を掴んで
痴漢だと叫んでしまったことを詫びる
茂(紗奈恵)-

「--その人です!」
紗奈恵(茂)が目に涙を溜めながら叫んだー

「え??」
茂(紗奈恵)が予想外の返事に戸惑うー

「電車の中で、おr、、、わたしのこと触ってきたのは
 そいつ、、その人よ!」
紗奈恵(茂)がぎこちない言葉遣いで叫ぶー

「---え…ちょ…!?わたしたち、いれかわ…」
茂(紗奈恵)がそこまで言って
紗奈恵(茂)の表情を見てハッとするー

”怒り”

紗奈恵になった茂の目には”怒り”が
浮かび上がっていたー

何もしてないのに”痴漢です”と言われた茂は、
腹が立っていたー

そんなタイミングでの入れ替わりー。

茂は”自分のことを痴漢だと言ってきた女子大生”に
激しい怒りと復讐心を抱いたー

「--許さない…!」
紗奈恵(茂)が怒りの表情をにじませるー

入れ替わった茂はーー
紗奈恵として、”自分を痴漢だと勘違いした女”に
復讐しようとしていたー。

どうせ、自分の人生など、
冴えないサラリーマンだ。
それなりにうまくやっていたが
痴漢冤罪で、もう人生、詰みだろう。

だったらー
この身体を奪って、JDになってやろうじゃねぇか。

「--な、、何を言ってるんですか…?」
茂(紗奈恵)が戸惑いながら言う。

「わ、、わたしたち、入れ替わって…

 そ、、その、さっきは本当にごめんなさい…
 だから…だから…」

茂(紗奈恵)は涙ぐみながら言うー

悪気はなかったー
本当に、間違えたー

でもーーー
茂の立場になってみて、紗奈恵は気づくー

痴漢冤罪の、怖さにー

痴漢は怖いー
でも、冤罪も怖いー。

茂からしてみれば
”何もしてないのに”痴漢扱いされて
本当に怖かっただろうし、屈辱だったのだろうー

「-ーーわたし、、こわい!」
紗奈恵(茂)がわざとらしく怯えた表情をするー

「--そ、、そんな…!
 お願いします!謝りますから…!
 いっしょに…いっしょに!」
茂(紗奈恵)が叫ぶー

こんな…
こんな、入れ替わった状態でーー…?

痴漢冤罪のおじさんと入れ替わった状態で…過ごす…???

「---いやああああああ…」
茂(紗奈恵)は、その場で泣き出してしまうー

駅員は呆れているー
駅員からすれば、
痴漢をした男が、言い訳をし続けていて、
挙句の果てに”相手と入れ替わった”などと
言い訳している往生際が悪すぎるおじさんにしか見えないー

「--ちょっとさぁ、往生際が悪いよ」
駅員があきれたように言う。

「-あんたが、あの子を触ったり色々して
 周囲もそれを目撃しているんだ。
 やっちまったことは、やっちまったんだよ。
 ね?もう大人しく諦めなさい」
駅員の鋭い言葉が突き刺さる。

「だ、、だから、、わたしたち、入れ替わっちゃったんです!」
茂(紗奈恵)はなおも叫ぶ。

「---……」
駅員があきれた様子で紗奈恵(茂)の方を見るー

「わ、、わたし、、知りません!」
紗奈恵(茂)はそう叫んだー。

「なんで…なんで、嘘つくんですか!」
茂(紗奈恵)が叫ぶー

なんでー?
入れ替わっているのは確かなのにー。

それともー
”自分の身体は自分のままで、
 紗奈恵が二人になってしまった”

のかー

”自分は、転倒した際におかしくなっていて
 実は”紗奈恵だと思い込んだ茂””

なのかー

そんな風にも一瞬考えたー

しかし、
さっき紗奈恵(茂)は”おれ”と言いかけた。

だから、入れ替わっているのは、間違いないー

「---!」
紗奈恵(茂)がこちらを睨んでいるー

”復讐”-
やっぱり、そうなのだろうー

”間違えて捕まえたわたし”を恨んでいるのだろうー。

「--お、、お願いします…
 ごめんなさい…
 間違えて捕まえたことは謝ります…

 お願いします…
 一緒に…一緒に元に戻れる方法を…」

駅の事務室で土下座する茂(紗奈恵)-

紗奈恵(茂)は
「お、、わたしは、、知りません!」と叫ぶー

そしてー
警察官が到着した。

「--あ~やっちゃったの?痴漢?」
警察官の一人が、茂(紗奈恵)を見て言う。

「ち、違うんです!
 わたし、間違えて、痴漢をした人じゃない人を
 捕まえてしまってー

 そのあと、二人で転んでしまって
 入れ替わってしまってー」

茂(紗奈恵)が必死に説明するー

「な~に、言ってるんだ」
警察官が苦笑いするー

「ほんとうなんです!
 わたしの中身が、松村 紗奈恵で、
 あっちが、この男の人なんです!」

入れ替わったことを必死に説明しようとするー

だがーー

「いい加減にしろ!」
警察官が声を荒げた。

「ひっーー」
茂(紗奈恵)は目に涙を浮かべる。

「もうあきらめろ。な?
 このコも怖がってる。
 やっちゃったことは、ちゃんと反省しなくちゃ。
 大人だろ?」

警察官は茂(紗奈恵)の肩を叩くと、
そのまま茂(紗奈恵)を連行していくー

そんな茂(紗奈恵)を見つめながら
紗奈恵(茂)はニヤリと笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・

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間違えた相手を痴漢として捕まえてしまって、
さらに、その人と入れ替わってしまうという
とんでもないお話デス(汗)

続きはまた明日デス~

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