<皮>カワノツジギリ③~対決~(完)

②にもどる!

人を皮にする力を用いて、
辻斬り行為を繰り返す男ー。

奉行所の同心は、そんな彼による犯行を
食い止めようとするもー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!」

増援を呼んで、”さや”を倒した現場に戻った
同心の蔵之介は困惑の表情を浮かべたー。

さやがペラペラの状態かつ、
ボロボロの状態で倒れていて、
さっきまでいたはずの剣客の男・龍之介の姿は消えているー。

「ーーおかしいー
 さっきまで”こんな身体”ではなかったはずだが」
蔵之介は、倒れているさやを見つめながら
そう言葉を口にするー。

今、この場に倒れている”さや”は、
先日の老人や、町娘と同じように
”ペラペラ”の…まるで、着物のような状態になってしまっているー。

がー、さっき一度この場を離れるまで、
さやは確かに”普通の人間”と同じような身体だったー。

一体何が起きているのだろうかー。

「ーやはり、さっきの剣客…何か関係しているのか?」
蔵之介はそう思いつつ、
どうしても、先ほどの”さや”の様子が
まるで何かに操られているような様子だったことを思い出すー。

「ー今回の辻斬りは
 俺らの想像をはるかに超えたやつなのかもしれんなー」
蔵之介は険しい表情を浮かべつつそう言葉を口にすると、
応援に駆け付けた者たちと共に”さや”の遺体を運び込み始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜ー。

「ーーひとり、ふたり、三人、四人、五人ー」

剣客・竜之進は嬉しそうに
”辻斬り”を繰り返していたー。

同心の蔵之介と共に”辻斬り”と戦った剣客・龍八郎ー
彼は、本人が自己紹介していた通り、
本当にただの”旅する剣客”であったものの、
”さや”を皮にしていた辻斬りの男に乗っ取られてしまい、
辻斬り行為に及んでいたー。

「ーー…お、おいっ!お、お前!いけっ!」

蔵之介や、雄之進が所属している奉行所とは別の奉行所に
乗り込んで来た龍八郎を前に、
その奉行所を束ねる男が、部下に向かってそう言葉を口にするー。

がー、辻斬りの男は、
元々剣客であった龍八郎の身体はいつも以上に動きやすかったのか、
圧倒的な力を発揮ー、
その奉行所にいた同心たちは、そのほとんどが
斬り捨てられて壊滅状態に陥ってしまったー。

さらにはー…
剣客・龍八郎の身体もその場に放棄されー、

翌日ー…
蔵之介と上司の雄之進は、その現場へとやってきていたー。

「ーまさか、北町奉行所が一晩にして全滅するとはー」
別の同心がそう言葉を口にすると、
上司の雄之進も、北町奉行所の人々の亡骸を見つめながら
静かに頷くー。

「ーしかし、酷くやられたものだなー…」
同心・蔵之介はそう言葉を口にすると、
昨日共闘した剣客・龍八郎の”ペラペラ”になった遺体を
触りながら、ため息を吐き出すー。

「ー”やつ”は、他人を操るーー
 あるいは、他人の身体を使うことができるのかもしれないなー」
同心・蔵之介のそんな言葉に、
上司の雄之進は「まさか」と、そう言葉を口にして立ち上がる。

「ーいや、しかしー。
 そうとしか考えられませんー。
 この男はともかく、昨日の女は俺も元々知ってましたが
 ごく普通の食事処の奥さんでしたー。
 あの人が辻斬り行為に及ぶはずなど考えられません」

蔵之介はそう言うと、
雄之進は「むぅ」と、少しだけ考えるような
仕草をしてから、
「ーーこれ以上は、この件に関わらない方が良いかもしれぬ」
と、そう言葉を口にしたー。

「ー!?
 何故です?」
蔵之介がそう答えると、
雄之進は「北町奉行所がやられたー
と、なれば次は我々かも知れぬー」と、
臆病風に吹かれてしまったのか、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上司にあたる雄之進が手を引いてからも、
蔵之介は”辻斬り”の男を追い続けたー。

そしてーー

「ーーた、助けてー、助けてーーー」

”辻斬り”を追い続けること1週間ー。
夜の街を見回っていた蔵之介は
そんな言葉を聞いて、
その声が聞こえる河川敷の方に向かったー。

そしてー
その先で、蔵之介は”ある光景”を見てしまったー。

それはー…
背を向けて立っていた飛脚風の男が禍々しい小刀を手に、
悲鳴を上げた町娘を”皮”のようにする瞬間だったー。

「ーー貴様!動くな!」
同心・蔵之介がそう言葉を口にすると、
「ークククーまたお前かー」と、
飛脚風の男は笑みを浮かべながら振り返ったー。

そしてーーー
男は笑みを浮かべながら
”自分の後頭部”のあたりを小刀で引き裂いたー。

「ー!?!?!?」
刀を構えたまま、困惑の表情を浮かべる蔵之介ー。

すると、
飛脚風の男の身体が”皮”になっていきー、
その中から”別の男”が姿を現したー。

「ーーな…何が起こっているー…?」
”男の中から男が出て来た”ー
そんな状況を前に、同心・蔵之介は心底困惑したような
表情を浮かべるー。

辻斬りの男はニヤニヤと笑うと、
「ー俺のこと、随分としつこく追っているようじゃないかー
 上司の命令も無視して」と、そう言葉を口にしながら
たった今”皮”にした町娘の皮を手にして笑ったー。

「この女は、病気の母親のために健気に働いていてなー」
辻斬りの男がそう言葉を口にすると、
「とても、いい子だー」と、そう言葉を続けながら
自らが”皮”にしたその女の姿を見つめるー。

蔵之介は、戸惑いの表情を浮かべながらも
「その人から手を離せ!」と、そう言葉を口にすると、
辻斬りの男は笑みを浮かべながら
蔵之介のほうを見てーー
そして、その町娘の”皮”を素早く身に付けて見せたー。

すると、声がその女のものに変わりー、
町娘の身体を自由自在に動かせる状態になった辻斬りの男は
笑みを浮かべながら
「同心のダンナー。素晴らしいだろ?」と、
自慢気に乗っ取った身体を触ってみせたー。

「ーーー…き、貴様ー…い、今までもこうして
 罪のない人々をー」
蔵之介は、ここ最近起きている連続辻斬り事件の黒幕が
この男であったことを悟ると、険しい表情を浮かべながら
そう言葉を口にするー。

「うははははは!その通りだー
 俺の手にかかりゃ、どんな奴だって”辻斬り”になるんだー
 この女のようないい子もー、老人も子供も、同心であろうともな」

そう言葉を口にすると、町娘の身体で刀を振るい、
襲い掛かって来る辻斬りー。

「ーそ、その娘の中から出ていけ!」
蔵之介はそう言葉を口にすると、
「ーーそれは無理な相談だー」と、そう言葉を口にしながら、
蔵之介の刀を自分の刀ではじき返すー。

そして、少し距離を取ると、
禍々しい小刀を手に「”これ”で皮にされた人間はもう元には戻らねぇ」と、
そう言葉を口にしながら、町娘の身体で辻斬りは笑うー。

「ー俺が楽しく人を斬ってー、
 そして血を吸うための道具になるんだー」
町娘の身体で、辻斬りの男は嬉しそうにそう言い放つと、
唇をぺろぺろと舐めながら「あぁ、早く血が吸いてぇな」と、
笑みを浮かべるー。

「ーーーーっ…」
蔵之介は、既に”皮”にされてしまったこの町娘は
救うことはできないのだと突き付けられて、表情を歪めるー。

「ーーならばせめて貴様はここで成敗してくれる」
蔵之介は意を決して戦う決意を固めるー。

「ーうははは!やってみろ!」
町娘の身体で、激しい動きをしながら、
刀を振るってくる辻斬りー。

しかし、乗っ取っている身体の”限界”を超える動きを
繰り返したために、町娘の身体がすぐに壊れていくー。

「ぐっ…貧弱な身体だぜー」
それでも刀を振るう町娘を見て
蔵之介は今一度険しい表情を浮かべると、
「ーせめて、安らかに眠れー」と、そう言葉を口にしてから、
刀で、強烈な一撃をお見舞いしたー。

「ーーーがっ」
少し離れた地面まで吹き飛ばされた辻斬りの男は
町娘の身体から飛び出して、
自分の身体で同心・蔵之介のほうを見つめるー。

「ーーく…くひひひー
 ただの同心の癖してやるじゃじゃないか」
そう言葉を口にしながら、よろよろと立ち上がる辻斬りの男ー。

今まで着ていた町娘の”皮”を足で踏みにじると、
ニヤニヤしながら蔵之介のほうを見つめるー。

「ーーーお前のような悪党を成敗するために
 日々、鍛錬を欠かしていないからなー」

蔵之介がそう言葉を口にすると、
辻斬りの男は笑みを浮かべながら刀を構えたー。

「ーー”それ”はどこで手に入れたー?」
蔵之介は刀を握りしめながら、
辻斬りの男が持っている”人を皮にする小刀”を
どこで手に入れたのかを問うー。

が、辻斬りの男は笑みを浮かべたまま
「”血”を吸わせろー」と、そう言葉を口にしながら
蔵之介に向かって刀を振るったー。

辻斬りの男の腕前は、かなりのものだったー。

しかし、それでもー、
人知れず、街の人たちを守るために、日々鍛錬を欠かしていない
蔵之介は、それに負けることはなかったー。

”実力”だけでは辻斬りの男の方が上だったかもしれないー。

けれど、人々の命を奪いー、
さらにはその身体を乗っ取って好き放題するこの辻斬りの男に対する
怒りが、そして街の人々を守らなくてはいけないという
強い使命感がー、
その”実力差”を埋めたー。

辻斬りの男の刀を、蔵之介の刀が弾き飛ばすー。

辻斬りの刀が少し離れた場所に落下ー、
刀を失った辻斬りの男は、
蔵之介の刀に斬られる瞬間ー、
負けを悟ったかのような、どこか自虐的な笑みを浮かべたー。

その直後ー、
蔵之介の刀が、辻斬りの男に直撃したー。

「ーーぐはっ…」
激しい衝撃と痛みで、身体ごと吹き飛ばされた辻斬りの男は、
そのまま倒れ込むー。

苦しそうに、立ち上がり、逃げようとする辻斬りの男ー

が、ついには力尽きて、河川敷の川に転落するとー、
川に浮かび上がった状態のままー、
川に流されていったー。

「ーーー…ふぅー」
蔵之介は、”恐ろしい相手だったー”と、
そう思いながら、
辻斬りの男が落とした刀と、”人を皮にする小刀”を回収ー、
そのままゆっくりと歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

”辻斬り”騒動は終結したー。

色々な人間の身体を乗っ取り、
他人の身体で辻斬り行為を繰り返していた男が
死亡したことで、
辻斬りはパタリと止まったー。

やはり、一連の事件は蔵之介が成敗したあの男が
行っていたのだろうー。

”人を皮にする力を持つ小刀”は、あまりにも危険な存在ー。
蔵之介の手から、奉行所の上層部に提出されー、
悪事に使われないように厳重に保管されているー。

ただー、今でも”どこからそれが入手されたのか”は
分からない状態が続いていたー。

「ーー真実は闇の中ーか」
蔵之介は少し険しい表情を浮かべながらも、
小さくため息を吐き出すと、
今日も街の平和を守るため、
そのままゆっくりと歩き出すのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」

蔵之介の上司である同心・雄之進は、
”闇の忍”の一族から”人を皮にする小刀”を手に入れ、
それを”辻斬りの男”に流した張本人だったー。

雄之進は”あえて”自分たちの管轄の地域で事件を起こさせて
最終的にそれを自ら解決することで、
自身の奉行所の名声を高めようと目論んでいたー。

そのついでに、ライバルの奉行所を辻斬りの男に襲撃させて
ライバルを壊滅させたー。

ただー、蔵之介に”我々も狙われるかも”として、手を引かせようとしたのに
辻斬りが倒れてしまったのは誤算だったー。

奴には、もうちょっと働いてもらおうとしていたのにー。

「まぁいいー今度はー」

夜道を歩きながら雄之進がそう言葉を口にすると、
目の前に突然、近くの呉服問屋の娘が姿を現したー。

「ーー!」
雄之進が少し驚いた表情を浮かべると同時に、
娘は笑みを浮かべて、刀で雄之進を斬り捨てたー。

「ーーークククー」
倒れた雄之進を見つめながら、娘は笑みを浮かべると、
「ーあんたとはもう終わりだー。この辺で辻斬りをするのは飽きたー」
と、そう言葉を口にするー。

あの時ー、確かに蔵之介に斬られた辻斬りー。
がー、男は”二重に皮”を着ていたー。

つまり、町娘を脱いだ後の男の姿も、”皮”ー。
男の本体は、その下に潜んでいて、
蔵之介に斬られても本体はノーダメージだったのだー。

「ーー今度は、北の方で辻斬りをするかー」
娘の身体で男はそう言葉を口にすると、
闇の中へと姿を消すのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

辻斬りの男を完全に倒すことはできませんでした~…!

でも、辻斬りは別の地域に移動するみたいなので、
ひとまず、物語の舞台となった街の平和は
一旦守られそうですネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~!!

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皮<カワノツジギリ>

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