<皮>大事な娘はいただいた~終章~後編

家族を奪った”人を皮にする力”ー

全てを奪われた男は、
人を皮にする力の黒幕”D”へと迫っていくー。

その末に、待ち受けている運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「人を皮にする力ぁ?
 ははー…警察を揶揄っちゃいけないよ」

敏夫は、女子大生・三重島 咲月を皮にしようとしていた
黒メガネの男から回収した
”人を皮にする薬”を手に、警察署へと足を踏み入れていたー。

しかし、応対してくれた警察官に事情を説明しても、
担当の刑事は、敏夫の言葉を信じようとはしなかったー。」

いやー、”人を皮にする力”などということを
信じて貰おうとするのが無理なのかもしれないー。

が、それでも敏夫は諦めずに
現物を手に”人を皮にする薬”はあるということー、
そして、”D”の存在を警察官に伝えていくー。

「ーーディー…ねぇ…
 失礼ながら、何かの映画の話か何かかな?」
警察官はそう言葉を口にするー。

それでも、敏夫は「本当なんです!信じて下さい!」と、
そう言葉を口にするー。

「この薬の成分を分析してくれれば、分かるはずなんだー!
 普通じゃない成分がきっと入ってるー…

 ーこれを注入されたら、人間はまるで着ぐるみみたいに
 ペラペラになってしまうんだ!」

敏夫はとにかく必死に”皮”のことを伝えたー。

それが、娘の美菜を、妻の晴子を、そして息子の昭俊を救う
一歩になるはずだと、そう信じてー。

「ーーーーー」
警察官は、”頭のおかしなやつが来た”と言いたげな表情を
浮かべながらも、
あまりにも必死になっている敏夫の姿を見たからか、
敏夫が持ってきた”人を皮にする薬”が入った容器を手に取るー。

「ーーーイタズラだったら、どうなるか分かってますねー?
 完全な業務妨害ですよ」
警察官は不満そうにそう言葉を口にしつつー、
”やっぱり嘘でしたごめんなさい”をするなら今だぞ?と
言いたげな表情を浮かべるー。

しかし、敏夫にはそんな覚悟は必要ないー。
何故なら、”人を皮にする薬”は、本当に存在しており、
”D”を名乗る人物も実際に存在しているのだー。

迷うことなく、
「全て本当なんですー。その薬の成分を調べて下さいー」と、
そう言葉を口にするー。

警察官は、怪訝そうな表情を浮かべながらも、
「ー分かりました」とだけ答えて、後日再び連絡すると、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

がー、その数日後ー…

敏夫が、警察に連絡先として伝えた
ビジネスホテルに警察がやって来て、
”先日の液体は、栄養ドリンクだった”と、そう告げられたー。

「ーーば、馬鹿なー!そんなはずはありません!
 あれは、確かにー」
敏夫はそう言葉を口にするー。

警察に提出した液体は女子大生・咲月を皮にしようとしていた
黒メガネの男から取り上げたものだー。
あれは、人を皮にする薬で間違いないー。

しかしー、警察官は首を横に振るー。

「残念ながら、事実ですー。
 あなたが提出したのはただの栄養ドリンクでしたー。

 我々警察を揶揄って、どういうつもりか
 署でじっくりと話を聞かせて貰いましょうか」

そう言葉を口にする警察官ー。

「ーーっ…お、お前も”D”のグルなのかー?」
敏夫は怒りの形相でそう言葉を口にするー。

”人を皮にする薬”の存在が明るみに出ると
困るから、そんな風に言いがかりをつけて
もみ消そうとしているのだと、敏夫はそう思いながら
警察官を睨むー。

しかしー、警察官は
「D??? いい加減にしてくれー」と、
うんざりした様子で言葉を口にすると、
「あんたの妄言に付き合っている時間はないんだよー」と、
丁寧な対応をするのもやめて、そう言葉を吐き出したー。

”ぐー…”
敏夫は、ここで捕まったら”おわり”だと、そう感じたー。

咄嗟にその警察官にタックルをして逃亡を図る敏夫ー。

”D”は警察内部にまで通じていると言うのだろうかー。
そう思いつつ、必死にビジネスホテルの外に飛び出すと、
敏夫は「ー俺は絶対にー…美菜を…家族を取り戻すんだ!」と、
怒りの形相を浮かべたー。

がーーー
敏夫の”推理”は間違っていたー。

「ーーこれであのおっさんは警察に迷惑行為をした挙句、
 逃亡した容疑者ー」

物陰からその様子を見ていたーーー

女子大生の咲月は不気味な笑みを浮かべながら
そう言葉を口にするー。

”黒メガネの男”に、皮にされそうになっていた女子大生・咲月と、
”黒メガネの男”は、グルだったー。

二人とも”D”から人を皮にする薬を購入したことのある協力者で、
そもそも”咲月”は、既に男に乗っ取られていて、
その身体を完全に支配されている状態だー。

黒メガネの男が”加害者役”、
そして、咲月を乗っ取っている男が”被害者役”として
敏夫の前に姿を現し、敏夫をはめたのだー。

”黒メガネの男”が持っていたのを、”人を皮にする薬”だと
思い込ませて、それを警察に提出させ、
警察とトラブルを起こさせるー。

そういう計画だー。

咲月はニヤニヤと笑みを浮かべながら
「でも、こんなことして何の意味があるんです?」と、
Dにそう確認すると、
Dは”人生とは、ビジネスであり、遊びであるー。それが
私の生き方ですからねー”と、そう言葉を口にすると、
”ただー”と、そう言葉を付け加えたー。

”ーそろそろあのおもちゃにも飽きましたー”
”D”はそう言葉を口にすると、
電話の向こうから咲月に対して言ったー。

”そろそろ仕上げに移りましょう”
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁ…、くそっー…警察までー…」
敏夫は表情を歪めるー。

警察は”D”の仲間でも何でもなかったものの、
敏夫の立場からすれば、警察がDと組んでいて、
”証拠を提出したのにもみ消された”と思ってしまっても
無理はなかったー。

ついに、家族を奪われただけではなく、
自分自身まで逃亡犯のような状態にされてしまった敏夫ー。

けれどー、それでも敏夫は家族のことを、
美菜たちのことを諦めることはできなかったー。

「ーーはぁ…はぁ…はぁ…くそっー…俺はー」
敏夫は、警察から逃れるために廃墟地帯に身を隠しながら
それでも、自分にできることー…

”D”の情報を集めることを続けたー。
”D”にたどり着き、美菜たち家族を救うためー…

「ーーーーー」
こんなことになる前にー…
最初に”邪太郎”が、美菜を皮にして
家族ごっこを強要してきていた段階で、
もしも美菜を元に戻すことができていれば、
こんなことにはならなかっただろうし、
今も弄ばれ続けている美菜たちも、
こんなに長い間、好き放題されずに済んだはずだー。

邪太郎をあの段階でどうにかできていればー、
”D”に目をつけられることもなかったはずだー。

ただー…そんな泣き言を言っても始まらないー。
全てのことはもう起きてしまったのだからー。

「ーーーくっ…」
廃墟地帯で身を隠すように休んでいた敏夫は、
雨の中、ゆっくりと立ち上がるー。

すると、そこにー
”見覚えのある人物”が姿を現したー。

「ーーみ…み…美菜…?」

信じられない、という様子で
敏夫が視線を向けた先には
自身の娘である”美菜”の姿があったー。

「ーーお父さん、もう”十分”だよー」
美菜は静かにそう言葉を口にするー。

そしてーー…
その背後から、妻の晴子と、息子の昭俊も姿を現すー。

「ーあなたはもう、十分頑張ったわ」
妻・晴子がそう言葉を口にするー。

「ーー父さん、今までありがとうー」
息子の昭俊がそう言葉を口にするー。

「みんな…」
敏夫が瞳を震わせながら、最愛の家族ー…
三人の姿を見つめると、
娘の美菜が、
「お父さんーお疲れ様」と、そう言葉を口にした上で
暖かいスープの入ったマグカップを手渡して来たー。

雨に打たれながら、
敏夫はそれを受け取ると歯ぎしりをするー。

こんなのは茶番だー。
分かっているー。

そしてーー
敏夫は”これ”を待っていたー。

”D”にはめられて、警察にも追われる立場になってしまった敏夫ー。

敏夫は、黒メガネの男が持っていた”液体”は
まだ本物の”人を皮にする薬”だと思っているし、
救出した女子大生・咲月も、純粋な被害者だとそう思っていて
二人がグルだったことには気付いていないー。

ただ、今の敏夫がそのことに気付く、気付かないは
本人にとってさほど重要なことではなかったー。

どのみち、絶望的な状況に追いやられた敏夫は、
”この時”を待っていたのだからー。

「ーーーーー」
娘の美菜、息子の昭俊、妻の晴子は恐らく、
D…あるいは、Dの協力者に身体を乗っ取られているままだー。

そしてこのスープには
毒か、人を皮にする薬が入っているに違いないー。

「ーーーー」
敏夫は、少しだけ表情を歪めると、
「ーーみんな、ありがとうー」と、
”家族”の方を見て笑みを浮かべたー。

美菜は邪悪な笑みを浮かべながら
「ーお疲れ様ー、お父さんー」と、クスクス笑うー。

そんな美菜を見つめ返しながら、
敏夫は、渡されたスープを飲んだーー。

「ーーぐっ…」
すぐに、敏夫は苦しそうにして
スープが入ったマグカップを落とすと、
美菜は「バカなお父さんーー」と、そう言葉を口にした上で、
「ー十分楽しめましたよー。私の暇つぶしとして、ねー」と、
そう言葉を口にしたー。

敏夫は”D”が、美菜の中にいることを確信するー。

それと同時に、苦しそうに、力が抜けていくような仕草をしながら、
廃墟地帯の物陰に向かって走るー。

「ーーははは、無駄ですよー」
美菜を乗っ取っている”D”は笑いながら敏夫にそう声を掛けると、
「人を皮にする薬を飲んだら最後ー、人は皮になるー」と、
”D”はそう言葉を口にしたー。

その上で、
「さぁ、見せて下さいよー。あなたの無様な姿をー」と、
邪悪な笑みを浮かべながら、”D”は美菜の後頭部に手をかけて、
美菜を脱ぎ捨てるー。

「ーここで見張りをお願いします」
”D”が、敏夫の妻・晴子と、息子の昭俊を乗っ取っている
”人を皮にする薬”の購入者たちにそう言葉を口にすると、
敏夫が苦しそうに倒れ込むようにして逃げ込んだ物陰に向かって歩いていくー。

「ーもう、聞こえていないとは思いますがー、
 あなたは私にはめられたんです」
”D”はそう言うと、黒メガネの男が持っていたのは人を皮にする薬ではなく、
その男に襲われていた女子大生・咲月は
既に身体を乗っ取られている”グル”だと、そう説明したー。

「ー家族のために必死な姿を見せるあなたの姿ー
 実に面白い見世物でしたー。」

”D”はそう言葉を口にするとその場でわざとらしく拍手をしてみせるー。

そして、両手を合わせながら
皮になった敏夫に対して、黙祷を捧げて見せると、
「ふふふふーふははははははっ!」と、笑いながら
”D”はそのまま立ち去ろうとしたー。

がー、その時だったー。

「ーーー!?」
”D”の背後から腕が伸びて来て、”D”は肩を掴まれたー。

驚きの表情を浮かべながら振り返る”D”ー。
するとそこには”人を皮にする薬”入りのスープを飲んだはずの
敏夫の姿があったー。

「ーーな、なぜー」
”D”がそこまで言いかけると、続けて敏夫は信じられない行為に出たー。

突然、”D”にキスをしたのだー

「ーー!?!?!?!?」
男からキスをされて驚く”D”ー。

が、敏夫の目的はキスをすることではなかったー。

”飲んだフリ”をして口に含んだ”人を皮にする薬”入りのスープを
”D”に口移しして飲ませることー

「ーーーぐっ…くそっ!」
”D”は慌てて敏夫を振り払うー。

しかしー、既に”D”の体内には人を皮にする薬が、
盛られてしまっていたー。

「ーーお前は…お前は、”ただ面白かったから”
 俺を煽ったと前に言ったなー?

 だから、お前は俺が落ちるところまで落ちたら
 必ず、”見に来る”とそう思ってたー」

敏夫がそう言葉を口にすると、”D”は震えながら敏夫の方を見つめる。

「ーーーー」
敏夫は、賭けに勝ったー。

自分から”D”を見つけるのではなく、
”D”の方からやって来るのを待つー…

それこそが、逆転の秘策ー。

そしてーー

「ーーぐっ…ぅ…うあああああああっ!」
”D”は隠し持っていた何かを手にしたー。

皮になっていく自分の身体ー
抜けていく力ー。

しかし、”D”も愚かではないー。
人を皮にする薬を売り捌く闇の商人ー。
当然、彼自身も”自分がそれを飲まされてしまう状況”を
計算していたー。

”隠し持っていた注射器”は
人を皮にする薬を無効化する”ワクチン”の役割を果たす薬ー

「ーーーーーーー!!」
敏夫は、勝ったー。

”D”に人を皮にする薬を盛ることに成功すれば
必ず”D”は、自分が皮になるのを阻止するため、
行動に出ると、そう思っていたー。

もし、この読みが外れて、”D”がそのまま皮になってしまった場合
もう、娘の美菜たちを元に戻す方法はないー。

ただー…
”D”は、敏夫の思った通り、”非常時を想定した治療薬”のようなものを
用意していたー。

「ーーうおおおおおおお!」
敏夫は力が抜けていく中、必死に自分にそれを打ち込もうとする”D”に
タックルをすると、
”D”からそれを奪い取るー。

”D”は絶望の表情を浮かべながら敏夫の方を見つめると、
助けて欲しそうな、そんな表情を浮かべながらもがいたー。

そんな”D”を見て、敏夫は少しだけ笑うと、
「ー自分が必死こく側になった気分はどうだ?」と、
それだけ言葉を口にしたー。

以前、”D”に、”必死こいて笑えますね”と言われた仕返しだー。

「ーーぁ…」
”D”はガクガク震えながらその場で皮になると、
それを見ていた妻・晴子と、息子・昭俊を乗っ取っていた”D”の仲間は
二人の皮をその場に脱ぎ捨てて逃亡したー。

「ーーーーー」
敏夫は、ゆっくりと美菜、昭俊、晴子の皮の方に近付いていくと、
”D”が使おうとしていた”治療薬”を手に、
それを三人の皮に打ち込むのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

家族の心のケアー、
自分自身が警察に追われている立場ー、
”D”から人を皮にする薬を手に入れた人々の存在ー。

まだ、この先大変なことは色々あるー。

ただーーーー

「父さんー。俺は信じてたよ」
息子の昭俊が穏やかに笑うー。

「ーーよかったー」
妻の晴子が安堵の表情を浮かべるー。

そしてーー

「ーーー」
正気を取り戻した娘の美菜の方を見つめると、
父・敏夫は「おかえりー」と、穏やかにそう言葉を口にしたのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”大事な娘はいただいた”の決着を見たいという
お声があったので、こうして書いて見ました~!★

元々、”D”の部分は、最初の展開から大分外れているので、
前に書いたところまでで完結のつもりも考えていましたが、
せっかくそういうお声もあったので、
こうして続きの世界を描いてみました~!★

ここまでお読み下さり、ありがとうございました★!

コメント