”家族ごっこ”
そう称して長女を皮にして、父と母と弟に”ふつう”の生活を要求する男ー。
しかし、
父は、指を咥えて従っているだけではなかったー
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「----ね~お母さん!そういえば、来月から部活の発表会の練習があって~!」
美菜が嬉しそうに話しているー
美菜を皮にして乗っ取っている邪太郎は、美菜の記憶をも
完璧に読み取り、美菜として振舞うことができる。
「---え…あ、、、う、、うん…」
母・晴子が震えながら言う。
「ーーーねぇ、おかーさん!ちゃんと聞いてる?」
にっこり微笑みながら言う美菜ー。
父・敏夫と弟・昭俊は気まずそうにその光景を見ているー
「---う、、、うん…聞いて…聞いてる…」
母・晴子は、緊張から喉がカラカラになって、
小さな声で答えるー
目の前にいる娘は、”乗っ取られている”
話している相手は、美菜であって美菜ではない。
その事実が、晴子を極度の緊張に貶めていた。
「----ん~~~~?なに????」
美菜がわざとらしく呟くー。
「--き、、聞いてる…聞いてるよ!」
母・晴子が必死に答えるー
「き・こ・え・な・い~~~~~~!」
美菜がドン!と乱暴に机を叩くと、
晴子がビク!と震えて、目から涙をこぼすー。
「--あっれぇ~~~?
お父さん!うちって、朝ごはんの最中に
急にお母さんが泣き出すような家庭だったっけ~?」
美菜がわざとらしく父・敏夫に聞くー
「え…あ…え、、、、」
父・敏夫も戸惑うー
「---ねぇ、どうだっけ????
おかしくない????
普通の日常を体験したいんだけど!!
ねぇ???おかしいよな?あ???
お前たちのババアは急に朝ごはん中に泣くのか?
あ????
ドラマでも見て感動したのか???
あ?どうなんだよ!」
美菜とは思えないような悪魔のような怒鳴り声を出して
美菜がコップを放り投げるー
コップが割れて、中に入っていたお茶が飛び散るー。
「---うっ…う…」
母・晴子は恐怖のあまり泣き出してしまうー
「--お、、お、、、母さんは、、、び、、病気なんです!」
弟・昭俊がとっさに口にしたー
「ちょ、ちょっと最近、精神的に参ってるので…!
急に、泣いちゃったり、することが、あって」
そんなことはないー
母・晴子は健康そのものー
弟・昭俊がとっさについた、ウソだー。
母親を病気扱いにしてでも、
とにかく、この場を収めたかったー
「----ふ~~~~~~ん」
美菜がうなずくー。
「--俺はさ、”ふつーの家族の暮らし”をやりたいだけなんだよ。
わかる?
俺が飽きたら、この女も開放してやるって言ってんだろ?
俺は飽きっぽいからさ、1週間ぐらいの信望さ。
ふつーにしてろよふつーによ!
それともバカだからわかんねぇか??あ????」
美菜が、表情を鬼のように歪めて言うー
普段穏やかな美菜の声で狂暴な言葉を口にされると
余計に恐怖心が増すー
「わ、、わかりますぅ!わかりますぅ!」
弟の昭俊がおだてるようにして言うと、
「--お姉ちゃんに敬語で話すんじゃないよ!」
と、美菜は机を思いっきり叩いたー
「はひっ!?!?!?」
弟の昭俊が震えるー
父・敏夫は、「は、、晴子は、ちょっと最近病んでるからー
一度部屋に連れて行くからな」
と、息子の口車に合わせて、そのまま晴子を
部屋に避難させたー
「---晴子。俺がなんとかするから」
泣きじゃくる晴子を慰める敏夫ー。
「このあと、たぶん、美菜は学校に行くと思うから
俺がその間に対策を考える。
だから、晴子は、安心してここにいていいからー」
夫である敏夫の言葉に、晴子は泣きながら頷いたー。
「----」
敏夫は、娘の美菜の姿を思い浮かべながらー
”お父さんが必ず助けるからな”
と、呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--じゃ、いってきま~す!」
美菜が笑いながら学校に向かうー
”学校なんて、久しぶりだぜ”
とりあえず、普通の女子高生としての
学校生活も体験してみたいー
「あぅ…」
美菜の身体がぶるぶると少しだけ震えるー
美菜の学校生活での記憶を読み取った
邪太郎は、美菜として学校に向かうのだったー
父・敏夫はただちに行動を起こしたー
「皮…皮…皮」
娘の美菜が外出したのを確認すると
パソコンで「皮」について徹底的に調べ始めるー。
「---」
情報は、そう簡単に見つかるものではない。
ネットのあらゆるサイトを確認していくー。
”何も情報を得られない”
そう諦めかけていたタイミングでー
敏夫はあるものを見つけたー
SNSの捨てアカウントのつぶやきにー
”彼女が皮にされた”というものを見つけたのだー
当然、周囲の人間は嘘だと思ったのだろう。
誰にも相手にされていないー。
しかしー
敏夫は、そのアカウントの内容を見ていきー
”本物”であると確信したー
過去に身近な大切な人を”皮”にされたと思われる人物の書き込みだー
そのアカウントの最後の書き込みは、3年以上前ー
既にこのアカウントの持ち主が、このアカウントを見ているかどうかは
分からないし、そもそも生きているかどうかも…分からない。
だが、ダメ元で敏夫は”聞きたいことがあります”と
メッセージを送ったー。
返事を待つ間、敏夫は次の行動を起こすー。
近くのホームセンターに行き、
道具を用意するー
美菜の中に潜む男と戦うための道具ー
まずは部屋に設置するための小型カメラー。
”美菜の中から男が出てくる”
そのシーンを撮影するためだ。
警察に相談するにしても”娘が皮にされました”など
100パーセント信じてもらうことができない。
だから、映像に記録する必要があるー。
だが、スマホでの撮影は無理だ。
美菜にばれたら、逆上されるー
だからこそ、証拠を記録するためのカメラが必要だったー。
音声を記録するボイスレコーダーも購入する。
映像だけで十分かとも考えたが、
近距離で音声も記録できれば、より証拠は増す。
映像の方にも音は記録はされるだろうが
うまく音が拾えない可能性もあると判断してのことだったー
ロープとテープ
”拘束”するためのグッズも揃えるー
可能であれば、美菜の中にいる男を拘束したいー
最悪の場合でも、美菜ごと拘束すれば、
どうにかなるかもしれないー
”乗っ取られた美菜”と戦うためのグッズを揃えた敏夫は
ただちに家に帰宅したー。
「----ちょっと話せるか?」
敏夫は、さらに近所に住む、10年来の親友に連絡を入れたー。
10年来の親友に家に行った敏夫は、
「--頼みがある」
と、切り出したー。
”明日の朝までに、俺から連絡がなかったらー
妻と息子を頼むー”
とー。
「どういうことだよ?」
苦笑いしながら、10年来の親友は言ったー。
「--今は、何も聞かないでほしい」
そう言うと、封筒を手渡したー
「どうか、これを警察にー。
明日の朝までに俺から連絡があったら
これは処分してかまわないー。」
”もしもー”
”もしも、今日ー美菜を助けることができなかったらー”
その、保険だー。
敏夫は、命を懸けて、美菜を助け出す決意をしていたー
もし、失敗すれば
自分は殺されるかもしれないー
美菜も助けられないかもしれないー
だが、最悪の場合でも、守るべき家族は美菜だけではないー
自分が返り討ちにあったとしても、
妻の晴子と息子の昭俊も、守らなくてはいけないー。
美菜を助け出せないそのときにはーーー
”美菜を道連れ”にしてでもーーーーー
「---わかった」
10年来の親友は、難しい表情で封筒を受け取ると
”何があったのかは聞かない。でも、気をつけろよ”
と、呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---晴子--- 美菜が帰ってきたら…
ちょっと騒がしくなると思うけど、
絶対、この部屋から出ないでくれ」
「え…?何をするつもりなの?」
「--絶対だー
約束してくれ」
敏夫の言葉に、晴子は頷くー。
さらに、息子の昭俊にLINEで連絡を入れてー
”俺からLINEが来るまで、帰って来るな”と、
告げたー
”俺は、美菜と戦う”
とー。
”わかった”
昭俊は、そう返事を送ってきたー
”負けるなよ、父さん”
とー。
「---」
全ての準備は整ったー
美菜の中にいる男を引きずり出してーーー
潰すー!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校で”普通の女子高生”としての生活を楽しんだ美菜ー
美菜は帰宅するー
笑みを浮かべながらー。
「---ただいま~~~!」
美菜が家に入って来るなり、そう口にする。
だが、返事はない。
「----ただいまぁ」
美菜がもう一度口にするー
そして、イライラした様子で頭を掻き始める。
「--おい、わたしが帰ってきたのに、あいさつもしないの?」
美菜が人の気配のないリビングに入っていきながらつぶやくー。
「---おい??? 普通の家族しろって」
美菜が引きつった表情で呟くー
「普通にしてろって言ってるだろ?なぁ?お、、、!?!?!?」
美菜の足に突然他人の足がひっかけられて、美菜が
勢いよく転倒するー
「--娘を返せ!」
父親の敏夫だったー
突然の攻撃に転倒した美菜はとっさに起き上がろうとするも、
父・敏夫が、すかさず美菜に攻撃するー
「----テメェぇぇ!」
美菜が敏夫の手を掴むと、今度は逆に美菜が敏夫を1発、2発と殴りだすー
その綺麗な手で、実の父親を殴る美菜ー
敏夫はそれでもひるまず、美菜を壁に叩きつけるー
「美菜、少し乱暴になるけど、我慢していてくれ」
美菜を拘束しようとする敏夫ー
「---はははっ!普通にしてろって言ったよなぁ?」
美菜が敏夫を睨むー
敏夫が美菜を睨み返すー。
「----いつまでも…好きにさせると思うな!」
美菜に対してそう言い放つと、敏夫は美菜を投げ飛ばすー
美菜が「ぐぇっ!」と悲鳴を上げるー。
それでも立ち上がる美菜。
「俺をなめんなよ!」
美菜が、本性を現して叫ぶー。
何かの格闘技のようなポーズを取りながら美菜が襲い掛かって来るー
だがー
父・敏夫は、かつて柔道を習っていたー
学生時代の記憶を思い出しながらー
美菜を再び投げ飛ばすー。
「---ぎょぇっっ」
美菜が苦しそうにうめくー
「---美菜を開放しろ!」
敏夫が叫ぶー
それでも、美菜はまだ向かってくるー
美菜と殴り合いのような状態になりー
美菜が顔面から鼻血を流すー
そしてー
ついにー
美菜はノックアウトされたー
「-----ごめんな、美菜」
そう呟きながら美菜を拘束する敏夫ー
「娘を開放しろ!」
敏夫が叫ぶー
美菜はイライラした様子で舌打ちしたー
そしてー
「ーーーあ~~~~~~~あ」
美菜がそう呟いたー
「---もうお前には何もできない」
敏夫が言うと、美菜は「俺は”普通に家族してろ”って言ったよな?」と
怒りの形相で呟くー。
「----ふざけるな!早く美菜を開放しろ!」
敏夫が叫ぶー
美菜の態度には、まだ余裕が見えるー。
敏夫は、ホームセンターで購入したカメラとボイスレコーダーを置く。
「--映像も、音声も、全部記録してある。
これを警察に出せば、お前は終わりだ。」
それだけ言うと、敏夫はすぐに警察に通報するー
”こういうときに油断すると逆転される”
敏夫は、そのことも理解していたー。
「----」
美菜が口から血を吐き捨てると、
ゲラゲラ笑いだしたー
「あ~~~~!うぜぇな!俺、普通の家族を味わいたかっただけなのになぁ!
あ~~~~あ、残念だなぁ~~~!
ま、いいや、俺さ、こういうことされると、すっげぇむかついちゃうタイプなんだよね」
美菜の言葉に、敏夫は、表情を歪めるー
「---めちゃくちゃに壊してやるぜ」
そう呟くとー
美菜の顔面がぱっくりと割れたー
美菜を皮にした男がーー
美菜から飛び出すー
「---!!」
敏夫は油断していたーー
油断していないつもりだったがー
していたーーー
拘束しているのは、美菜の身体ー
美菜の身体から飛び出した男・邪太郎はーー
笑みを浮かべながら自由に歩きだすー
唖然としている敏夫を、邪太郎が、殴りつけるー
みぞおちを殴られ、
倒れてしまう敏夫ー
それを見た
邪太郎は、2階に向かうー
「---!」
敏夫が、苦しそうにその様子を見つめるー
”きゃあああああああああああ”
悲鳴が聞こえたー
妻・晴子の悲鳴ー
そしてー
晴子が出てきたー
不気味な笑みを浮かべながらー
「--お前を、壊してやるー」
そう、呟いてー
今度は、妻・晴子が皮にされてしまったー
敏夫は自分の無力さを呪いながら、なんとか立ち上がろうとするー
晴子がカメラと、ボイスレコーダーを破壊しているー
そしてー
「---お前は、終わりだ」
と、笑みを浮かべるー
晴子は、美菜の皮に手をかざすとー
美菜が皮ではなく、普通の姿に戻っていくー
さっきー
敏夫が殴ったことで、鼻から血を流している美菜ー
しかも、美菜は椅子に拘束されたままー
「ーーーうぅ…」
美菜が少しだけ呟くー
「--テメェ!妻を返せ!」
敏夫がよやく起き上がって晴子の胸倉をつかむー
その時だったー
「---はは!あばよ!」
晴子が叫んだー
玄関から、
”敏夫の通報”で駆け付けた警察官が入って来るー
「--た、、助けてください!」
晴子が叫んだー
「!?」
敏夫が、周囲を見つめるー
ボロボロの娘ー
妻の胸倉をつかんだ状態の夫ー
この状況ではーー
「--ま、、まて、、ちがっ!」
敏夫が叫ぶー
「--き、急に夫が、暴れだして…」
邪太郎に乗っ取られた晴子が涙を浮かべながら叫ぶー
「--ち、、ちが!!!ちがう!」
敏夫は、カメラとボイスレコーダーを壊されたことを思い出して絶望するー
これじゃーーー
”俺が暴れて娘と妻に暴力をふるった”
ようにしかーーー
連行されていく敏夫ー
弁明は、できない状況だったー
「----えへぇ…♡」
美菜は、皮にされていたせいか、正気を失いかけていて話にならないー
妻の晴子は乗っ取られているー
息子の昭俊は帰宅して、父の無実を叫んだがー
聞き入れられなかったー
パトカーに乗せられる直前、晴子は笑ったー
”---お前の娘も、妻も、息子も、全部俺のものだー。
お前がいけないんだぜ?
普通にしてろって言ったのに、してないから”
耳打ちしてくる晴子を
敏夫は睨むー
しかしー
もう、どうすることもできなかったー
”家庭内暴力の夫”として連行される敏夫ー
ほどなくして、
敏夫の元に離婚届が届き、
晴子・美菜・昭俊は、”蒸発”したー。
どこに行ったのかもわからないー
敏夫の10年来の親友も、あの翌日に自殺してしまったー
おそらく、邪太郎に”自殺に見せかけられて”何かされたのだろうー。
敏夫は絶望するー
あの男に、家族を奪われてしまったー
今もどこかで、
美菜と晴子と昭俊はー
あの男に苦しめられているー
それなのに、
自分にはどうすることもできないー
”絶望”
その2文字が、
敏夫の頭の中から、いつまでも離れてくれなかったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最後までダークに…!
お読み下さりありがとうございましたー!
コメント
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いつも楽しく読ませていただいています。3年前にSNSに投稿していた人がストーリーに関わってくるのかと思っていたので、とても気になります。皮モノは大好きなので、続編希望です
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コメントありがとうございます~!
3年前のSNSも実は意味はあったりするのですが、
それは機会があれば!!
続編(か番外編)もいずれ書いてみたいですネ!