<入れ替わり>痴漢X冤罪②~勾留~

自分が、捕まえてしまった「冤罪おじさん」と
入れ替わってしまった「痴漢被害者の女子大生」

犯人を捕まえるどころか、
まさか自分が、冤罪で罪を被ることになるなんて…。

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警察署で取り調べを受ける茂(紗奈恵)

「だ、だから…わたしは入れ替わってしまって…」
茂(紗奈恵)が泣き出してしまうー。

警察官は呆れて頭を抱えるー。

取り調べ担当の刑事からしてみれば、
中年のおじさんが、痴漢をした挙句、
中身は被害者の女子大生で、わたしたちは
入れ替わってしまった!と言い訳をしているようにしか見えない。
しかも、女々しく泣いたり、女言葉を叫んだりしている。

正直、”救いようがない”
というのが刑事たちの印象だったー

「--いい加減にしてくれよ」
若い刑事がため息をつくー

そして、扉が開いたー

「交代だ」
鋭い目つきの年配刑事が入ってくる。

若い刑事が頭を下げて、その刑事と交代するー

これまで、何人もの犯人を落としてきた歴戦の刑事・
堤 源五郎(つつみ げんごろう)は鋭い目つきで
茂(紗奈恵)を睨んだ。

「---ま、まずはリラックスして」
源五郎は優しい口調で呟いた。

「わたし…本当に、この人と入れ替わってしまって…」
茂(紗奈恵)は泣きながら言う。

「---…じゃあ…何があったのか、聞かせてくれるかな?」
源五郎が言うー

”信じている”わけではない。
まずは、相手に気持ちを吐き出させるー。
言い分は、最後まで大人しく聞いてやろうじゃないか。

それがー源五郎の常とう手段。

茂になってしまった紗奈恵は、
全てを話したー。
電車内で痴漢被害に遭ったことー
駅に降りたときに”痴漢をした人”じゃない人を捕まえてしまったことー。
そしてー、そのあとにその人と入れ替わってしまったことー

それを聞き終えると、源五郎は笑みを浮かべながら頷いた。

「わかった。
 でもね、そういうことを言ってるとさ、
 勾留される時間が長くなっちゃうんだよ。わかる?
 否定されると、こっちも調べなくちゃいけないからね。

 でも…ちゃんと認めれば話は別だ。
 罪を認めて、身元もはっきりしていれば、
 釈放されて、無事にご家族のもとに帰ることができる。

 まぁ~その後、色々やることはあるけど、
 長々と牢屋の中で過ごす必要はなくなるってことだよ」

源五郎はそこまで言うと、たばこを咥えながら
立ち上がったー。

「--ねぇ、お父さん。
 娘さんと、奥さんがいるんでしょ?

 意地張ったってしょうがないじゃない」

まるで、友達に接するかのような口調で源五郎が言う。

「--で、、でも、、わたし」

「ほら!それ!」
源五郎が、茂(紗奈恵)を指さす。

「そういうの、よくないよぉ。
 だってほら、お父さん、俺たちの立場になって考えてごらんよ。

 ”私がやりました”って言われたら俺たちも調べることは
 最低限で済むんだ。
 
 でも”私たち、入れ替わってます”なんて言われたらどうかな?
 俺たち、それを調べなくちゃいけない。

 調べてる間、お父さんは牢屋の中だ。
 分かるでしょう?

 で、入れ替わってるなんてこと、あるわけがない。
 だから、”調べてる間、牢屋にいる時間は無駄”になるし、
 ”俺たちも無駄な労力”だし、”お父さんは俺たちからのイメージが悪くなるし”
 何もいいことなんてないでしょ?

 ここはWin-Winで行きましょうよ お父さん」

源五郎が言うー

「で、、、でもぉ…」
茂(紗奈恵)は戸惑うー
不思議と、罪を認めてしまったほうが
いいようなー
そんな感じまでしてきてしまうー

罪を認めれば最低限の時間で釈放される可能性が高くなるー

そうすれば、自分の身体を取り戻しに行くこともできるー。

だがーーーー

「--わ、、わ、、わたしはやってません!」
茂(紗奈恵)は大声で叫んだ。

「入れ替わってるのも本当ですし、
 この身体のおじさんも、わたしを触ったりはしていません!」
茂(紗奈恵)の言葉に、
源五郎はほほ笑んだ。

「そっか。」

そして、笑みを消したー

「じゃ、俺たちも容赦しないよ」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「--はぁぁぁぁぁ~♡」
紗奈恵になった茂は、自宅でミニスカートを身に着けて、
太ももを両手で触っていたー

「--んふふふふ……
 人を痴漢呼ばわりしやがって!」
紗奈恵の声で、乱暴な言葉を口走るー

「ーーあぁぁ♡」
なぞるようにして、両手で太ももを触るー

ドキドキしながら紗奈恵(茂)が顔を赤らめるー

「--ーー痴漢呼ばわりした罰だ!」
そう叫ぶと、紗奈恵(茂)は、
両手で紗奈恵の胸をわしづかみにしたー

「んふぅぅ…なんだこの感触ぅ…」
紗奈恵(茂)が甘い声を出しながら言うー

「ここに、こんな膨らんだものがあるなんてぇ…
 へへへ…あぁぁあああっ…なんか、変な気分…

 しかも…
 揉んでると…♡
 あぁぁ…気持ちいいぃなぁ…♡♡」
うっとりした表情の紗奈恵(茂)--

そのあとも、色々な格好をして
鏡の前でポーズを決めたり、
挑発的な言葉を口にしてみたり、
色々なことをしながら楽しむー

最後には、鏡にキスもしたーー

「--うふふふふ♡」
紗奈恵(茂)は、うっとりとした表情で笑うと、

「さて」と呟いたー

「”お仕置き”はこのぐらいでいいか」

そう言うと、ドキドキしながら、
紗奈恵(茂)は髪を触るー

「しっかし、邪魔だな、この髪ー
 見る分にはいいけど、自分がこうだと面倒くせぇ」
紗奈恵(茂)はそう呟き、周囲を見渡す。

ロングな髪型の紗奈恵の髪は、
茂にとっては邪魔以外の何物でもなかったー

他人の髪を見るならいいのだが、
自分がロングだと、男として何十年も生きてきた
茂にとっては、ただのオブジェクトでしかない。

「--これで、よし」
ゴムで適当に髪を結んで、邪魔にならないようにすると、
自分の足を見つめるー

「スカートも落ち着かないなぁ…見る分にはいいけど」

外を歩くのに、スカートは茂にとってはちょっときついー

スカートを脱いで、
動きやそうなジーンズをはくと、
そのまま鏡の前に立つー

「へぇ~…スタイルいいんだなぁ~」
少しポーズを決めると、
紗奈恵(茂)は顔を赤らめて、そのまま外に出たー

”痴漢の真犯人を見つけるチャンスー”

どんな形にせよ、
本当に痴漢したやつは、許せないー。

せっかく紗奈恵の身体を手に入れて、
自由を手に入れたんだー

あの時ー
この女が、痴漢を勘違いしたのなら
触れていた可能性がある人間は限られているー

「俺は触ってねぇから…
 ありえるとすればーー」

やはり、あの好青年風の男だろうかー。
「--あなた、触ってましたよね?」
そう言っていた、あいつだー。

何故あいつはそんなことを言ったのだろうかー。
答えは”真犯人だから”
では、ないだろうかー。

他に周囲にいたのは、男子中学生と女たちで、
痴漢と関係あるとは思えないー

もう一人、杖をついた老人も距離的には
届いたかもしれないー

「---俺をこんな目に遭わせやがって…」
紗奈恵(茂)はそう呟くと、
”この声にこの口調は似合わないし、
 調べるときには女の子のふりしなくちゃな…”と考える。

そして、もう一度口にした。

「わ、、わたしをこんな目に遭わせて…
 ゆ、、許せないんだから!」

ぎこちなく言うー。

「---」
一人で顔を真っ赤にするー

「--だめだ…恥ずかしい…」
顔を抑えて紗奈恵(茂)はそのまま歩き出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・

源五郎は、茂の家族に連絡を入れたー

家族は泣いていたー

「--わたし…負けない」
茂(紗奈恵)は呟くー

絶対に罪は認めないー

自分が間違えて捕まえておいて言うのもなんだけど、
このおじさんはやってなかったー。
それに、わたしは入れ替わっただけー

わたしのためにも
おじさんのためにも、罪を認めることはできないー

「奥さん、泣いてたよ」
源五郎が言う。

本当に泣いていたのかは分からないー
源五郎の作戦かもしれないー

だがー
いずれにせよ、罪を認めるつもりはないー

その語、茂(紗奈恵)は検察官と面会をすることになったー
検察官にも呆れられたが、
茂(紗奈恵)は、全てを話し、否定したー。

裁判官とも話すことになり、
そこでも、決して譲らず、全てを否定した。

自分たちは入れ替わっていることー。
そして、茂自身も、痴漢をしていないことー。
それを、告げたー。

結果ー
釈放されることはなく、勾留されることが決まってしまったー

牢屋の中で茂(紗奈恵)は思うー

どうにかー
どうにかしないと…

「この人じゃないのに…
 しかも…中身はわたしなのに…」
茂(紗奈恵)が呟くー

もしもー
もしも、入れ替わりがなかったらー
このおじさんが代わりにこういう目に
遭っていたのだろうか…。

だが、入れ替わった直後の
茂の感情が紗奈恵に流れ込んできて、
この人は痴漢をした人じゃない、ということは
確信したー。

申し訳ないことをしたー。

紗奈恵になった茂の目は、怒りに満ち溢れていたー。
きっと、冤罪をかけられたことで、怒っていたのだろう。
当然と言えば、当然ー。

「---……はぁ…っていうか…」
茂(紗奈恵)は呟くー

「なんでここ、大きくなってるのよ~!」
自分のアレが勃起していることに気づく茂(紗奈恵)

上手くコントロールできない…?
なに、わたし、興奮してないけど??え???

紗奈恵はそんな風に思いながら
大きくなったそれを必死に抑え込もうとして、
悪戦苦闘することになってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--俺じゃないよ」

あの時、電車にいた青年を割り出したー。
青年は、大学生だったー。

「----…ほ、、本当ですか…?」
紗奈恵(茂)が、か弱い女子大生を演じながら言う。

「--あぁ。」
青年は答えるー

青年が、茂がやったのを見た、と断言したことで、
茂の痴漢冤罪は確定的なものとなったー。

もし、この眼鏡の青年が真犯人だとすれば、
”嘘をついた”理由も分かりやすい。

「---きみが…」
青年が口を開く。

「きみが”この人です”って言ってたから、信じて
 助け船を出したんだ…
 あの時、おっさん、”俺じゃない”とか嘘ついてただろ。

 周りの誰かが断言すれば、
 きみの助けになるんじゃないかって」

青年は眼鏡をいじりながら言ったー
”自分のために”嘘をついたんじゃなくて
”紗奈恵のために”嘘をついたのだと。

「どうしてそんなことしたんだよ?
 俺にだって、人生があるんだぞ!」
紗奈恵(茂)が思わず紗奈恵のふりをするのを
忘れて、声を荒げてしまうー。

「---え?」
青年が一瞬戸惑ったー。

だが、青年はすぐに答えた。

「--俺の彼女が、2年前、大学に入ったばかりの頃
 痴漢に遭って…
 それ以降、精神的におかしくなっちゃったんだ…

 だからかな…
 なんとなく、君と彼女を重ねて…
 助けないと、って思っちゃったんだ」

青年の言葉に
紗奈恵(茂)は、それ以上、文句を言えなかったー

この青年は、犯人じゃないー
話していると分かるー
悪い嘘をつくタイプではないー

「---そうか…」
紗奈恵(茂)は頷く。

そしてー

「---あ」
紗奈恵(茂)は自分が紗奈恵の身体になってることを思い出したー

「あ…そ、そうですか~♡ あ、ありがとうございますぅ~!」
明らかに苦しい女子大生風なふるまいをして
頭を下げる。

そして、慌てて男っぽい走り方をしながら立ち去っていくー

「--変な子だな」
青年は苦笑いしながらそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・

「-----」
紗奈恵(茂)が、たばこの自販機の前に立つ。

「あぁ…いや、だめだだめだ。この子も成人してるみたいだけど
 人の身体で煙草を吸うのはさすがに…」

”いや、1本だけならー”

しかしー
すぐに、”あ、自販機では買えないや”と思いながら
「がまんがまん!」と呟いて諦めるー

ーーーーー!!!

紗奈恵(茂)が、街角のミラーに移る人影に気づく-

”追跡、されているー?”

そう感じた紗奈恵(茂)は、
足早に、紗奈恵の家に向かって歩き始めたー

ニヤア…

紗奈恵の様子を見ていた人影は、不気味な笑みを浮かべた…

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

痴漢冤罪でつかまったあとの流れは
あくまでフィクションデス~!
実際は、違う部分もあると思いますので
物語として、大目に見てくださいネ~

今日もありがとうございましたー!

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