”バランス”
それを保つために、
憑依が使われていたー
世界は、コントロールされているー
”憑依”によってー。
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”バランス”
人類を繁栄させるためには、
必要なことだ。
庶民たちは、気づいていない。
”バランス”を維持するために
裏で”数多の憑依”が行われていることにー。
・・・・・・・・・・・・・
「なんで…どうして…」
女子高生の桜花(おうか)が、突然自殺したー。
”もう疲れちゃった ごめんね”という
遺言状を残してー。
同級生の奈恵子(なえこ)は、
突然のクラスメイトの自殺に
戸惑いを隠すことができなかったー
「何かに悩んでいたなら…
相談してくれればよかったのにー」
泣きじゃくる奈恵子。
相談?
そんなもの、できるはずがないー
だってー
彼女は、飛び降りる30分前まで、
”自殺するつもりなんて全くなかった”
のだからー。
桜花はーーー
”憑依”されたー。
”バランス”を保つためー。
桜花が自殺する1時間前ー。
桜花は、普通に勉強して、
友達にLINEを送っていたー。
好きなアイドルのブルーレイの発売を
心待ちにしながら、カレンダーを見つめる桜花。
「---ふふふ~♪たのしみ!」
桜花は笑みを浮かべながら、
スマホを手に、部屋から出ていこうとするー
その時だったー
「うっ…」
桜花がビクンと震えて、スマホを床に落とすー
「---あ………」
桜花の目の色が変わるー。
生気のない目ー
すぐに、目が輝きを取り戻すと、
桜花はため息をついた。
「--はぁ、早く帰りてぇ」
そう呟くと、桜花は突然、机に置いてあった
可愛らしいメモ用紙を引きちぎると、
そのまま桜花の記憶を読み取って
”もう疲れちゃった ごめんね”と、
桜花の筆跡でメモを残したー
身体がビクンと震えるー
桜花は憑依されてしまったー
その拒否反応が起きているー
だが、桜花に憑依した人物は
強い精神力でそれを抑え込むと、
そのまま外に出かけるー。
「あ~…短いスカートだなぁ…
スースーして落ち着かないんだよな」
そう呟くと、
そのまま出かけていく桜花。
そして、桜花は、近くのビルを見つけると、
無表情のまま、屋上へと上がっていくー
綺麗な黒髪を掻きむしりながら、
「さて、今日のノルマ達成、っと」
と、呟きながら、そのまま面倒臭そうに
ビルの屋上から飛び降りたー
桜花は何者かに憑依されて、
そのまま自殺させられてしまったのだー
世の中には”裏”があるー
決して表に出ることのない”裏”だ。
それにより、社会はバランスを保っているー。
”GOD”と名付けられた秘密機関によってー
人間界を牛耳っているのは
大国でも、政治家でもない。
”GOD”だ。
GODと呼ばれる組織に所属する50人の人間が
人間界を牛耳っているー
”人口削減 ノルマ達成”
「ご苦労」
男が言うー。
「は~!自殺するのも面倒臭いんですから
勘弁してくださいよぉ」
桜花に憑依していた軽そうな男が言うと、
年配の男は笑うー
「仕方あるまい。
A地区の”学生”が増えすぎていた。
”調整”が必要だったのだ。」
先日は、A地区で通り魔事件が起きている。
通り魔の犯人の男もーーー
”GOD”のメンバーにより憑依されて
3人の命を奪った。
これも”A地区”の人口を調整するためだー
世界のあらゆる事件はー
この”GOD”によりコントロールされている。
彼らの目的は、ひとつー。
”人類の永遠の繁栄”であるー。
突然の自殺ー
突然の犯罪ー
あらゆる事象は”GOD”が支配しているー。
GODが人間に憑依することで、
全てをコントロールしているー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「急にどうしちゃったの!?」
女子大生の由香(ゆか)が必死に叫ぶー
「何もかもイヤになっちゃったの」
血まみれの女子大生が笑うー
突然、大学内で暴れ出して
4人の命を奪ったー。
「---なんで!なんでよ!」
由香が叫ぶー
「---ふふふ…ふふふふふふ…」
さっきまで、普通に明るく楽しそうに
喋っていた彼女が、急に
食堂の刃物を奪って
次々と周囲の人間を刺し、
大学は大騒動になったー
暴れている女子大生はー
”GOD”に憑依されているー
”生かしておけば”
将来、GODの存在に気づきかねない
”優秀な学生”を始末するために、
GODは、彼女に憑依して
ターゲットを始末したー
警察が駆けつける。
「あははははははっ!あはははははは♡」
返り血で血まみれの彼女が連行されていくー
ミニスカート姿で、大胆に露出された綺麗な足にも
血がたくさん付着している状態で、
彼女は大笑いしているー
”さて…”
彼女に憑依していた”GOD”のメンバーは
彼女の記憶と思考を真っ黒に染め上げて
完全に狂人にしてから
憑依から抜け出したー
「--あ…?」
憑依から解放されても、彼女はもう元には戻らない。
「ひひひひ…♡ あはっ♡ あははははははははは!」
大笑いしながら足をしたばたさせる彼女は
そのまま連行されて
”凶悪犯罪”として、世間には報道されるのだったー
”GOD”は全てを司るー
「マザー・ソフトコーポレーションのCEOは、死んだ方がいいな。」
”GOD”のメンバーが呟くー
その日のうちに大企業
マザー・ソフトコーポレーションのCEOは
交通事故を起こして死んだー。
”GOD”のメンバーが憑依して、わざと事故を起こしたのだー
憑依能力を使えば
交通事故を起こすこともたやすいー。
「--そろそろ炎上騒動を起こしたほうがよさそうだな」
”GOD”のメンバーが呟くー
女優が憑依されて、
「男とか~ATMだしぃ~」と公の場で笑いながら呟くー
当然、炎上したー
記憶も改変されて、その女優は、
その後も問題発言を繰り返して
炎上を続けるー
清楚だったイメージはすっかり地に落ちてしまったー。
誰も知らないー
この女優は憑依されて、
炎上させられた”被害者”であることをー。
「そろそろ火を消せ」
GODメンバーが呟くー
その日のうちに、その女優のファンが憑依されたー
そしてー
「何が男はATMだぁ~!」
脚本通りに叫びながら、その女優を刺すファンー
”炎上が招いた凶悪事件”として
報道するメディアー
「--医療ミスで、死亡だ。
U大学病院は、経営的に少しマイナスにすべきだ」
”GOD”メンバーが呟く。
オペに立ち会った助手の女性が憑依されて、
手順をわざとミスするー
結果、ファンに刺された炎上女優は死んだ。
「--んふふふふ♡」
わざとミスした看護師の女性が笑みを浮かべるー。
病院長は憑依されてミスを隠蔽しようとするー
憑依されたジャーナリストがそれを暴くー
憑依された看護師が開き直った態度を取るー
結果ー
U大学病院は経営的に大打撃を受けたー。
「--それでいい」
”GOD”は細かい部分までを
全てコントロールしているー
そのことを知るのはー
”ほんのわずかな人間”のみー。
GODのメンバーと
世界の主要人物のみー。
一般の人々は、そんなことは知らないー
いいや、知る必要がないー
世界はGODによって”バランス”を保たれているのだからー。
生きるも、死ぬも、GOD次第。
太古の昔から、人間はそうして生きてきた。
しかしー
時々”それ”に逆らおうとする人間がいるー
「---も、、もううんざりだ!」
モニターだらけの部屋で
大国の大統領・ホーキンソンが叫ぶ。
3D空間に”GOD”の文字が浮かび上がるー
”大統領ー
人類がここまで反映できたのは、
誰のおかげだと思っているのです?”
若い男の声がする。
”言葉に気をつけなさい。
神に逆らえばどうなるか、
知っているでしょう?”
高飛車な女の声がするー
”人間”に見えるがー
”人間”はないー
GODのメンバー50人は
人間に憑依している”なにか”だー。
人間を影からコントロールし、支配しているー
「---お前たちは、いったい、何者なんだ!」
民間の出身であるホーキンソン大統領が叫ぶ。
”一般人”として暮らしていた時には
知らなかった。
”GOD”などという組織の存在も、
何もかもー。
”調子に乗るな!”
老婆の声が聞こえるー。
GODメンバーの一人だ。
「---…わ、、わたしは…
お前たちの存在を公にする…!
全世界に向けて…GODの存在を明らかにする」
ホーキンソン大統領が叫ぶ。
”そんなこと、できると思っているの?”
無邪気な少女の声がするー。
3D空間のGODの文字が歪むー。
「--…に、、人間を舐めるなよ!」
ホーキンソン大統領が叫ぶー
”GOD”は笑うー。
”ふーん!そんなこと言っちゃって、
覚悟はできてるのかな~”
無邪気な少女の声ー
”覚悟”
”覚悟”
”覚悟”
3D空間に”覚悟”の文字が
大量に出現して
ホーキンソン大統領を煽る。
「---う…うるさい!
大体お前たちは何者なんだ!」
叫ぶ大統領ー
「--我々は神ー」
アニメ声の女が呟くー。
「神」
「神」
「神」
「神」
数多くのモニターに神の文字が浮かび上がり
ホーキンソン大統領は冷や汗をかく。
「--我々を舐めるな!
お前たちがどこにいるのか探し出してー
必ず根絶やしにしてやる!」
”GOD”は笑うー
無駄だー
これまでにも”GOD”に歯向かおうとした人間は
何人もいた。
だが、愚かなことだ。
GODに歯向かうことなどできないのだからー。
その日から、ホーキンソン大統領は、
GODの言いなりになるのをやめた。
全人類に対する”緊急演説”明日に行うとし、
最大級の警備を用意したー。
そしてー、同時に、精鋭部隊による
GODの本拠地攻撃を準備する。
核兵器を使ってでも”GOD”を壊滅させるー。
しかしー
「大統領!”GOD”の居場所が分かりました」
「どこだ!?」
副大統領に向かって叫ぶホーキンソン大統領。
「それがーーーー」
「--なんだと…」
ホーキンソン大統領が唖然とするー
GODの通信は、人間にとっては
”未知の電波”で送信されていたー。
そしてー
その電波の発信源はーーー
ホーキンソン大統領の見つめるモニターに
GODの居場所が光点で示されているー
その場所はーーー
”冥王星”
ーーーーーーー
そしてー
翌日ー
全人類に対する集会が行われる直前、
突然、ホーキンソン大統領たち、
国のトップは
自国にありったけの核兵器を放ちー
国ごと、消滅したー
”GOD”
「--はい、”削除完了~”」
GOD本拠地で、
アニメ声の女が笑うー
彼女は2年前に失踪した人気声優だ。
GODの特殊な装置により、憑依されて
冥王星に転送されたー。
妖艶なメイクで足を組む女ー
「我々は、神」
アニメ声で呟くー
地球は、最初から”GOD”の統治下だ。
遥か、昔からー。
恐竜が絶滅したのはなぜか。
人類は、それを知らない。
それは”我々が飽きたから”だー。
人間も、同じー
せいぜい我々が”飽きない”ように、
頑張ることだー。
憑依の力を使えば、
どうにだってできるのだからー…
おわり
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コメント
少し前に書いた「地球は植民地」というお話の
ネタを考えた際に、もう一つの候補になっていた
ネタがこの「”バランス”」でした。
ただ、ジャンルが似たような感じ
(何かに支配されている系)だったので、
こっちを没にして、地球は植民地を本採用
した感じになりました~!
”バランス”のネタもなんとなくもったいない
気がしたので、今回、1話構成にはなりましたが
こうして書いてみました!
お読み下さりありがとうございましたー!
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