冒険の途中で憑依薬を手に入れた勇者。
憑依薬の快感に憑りつかれた彼は
次第に本来の目標を見失っていく…
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「---わぁぁぁ…すごいなぁ…」
仲間の巫女・イリーナを乗っ取った勇者・クロウ。
「---はぁぁ…巫女さんってこんな感じなのか…
なんか動きにくそうなのに
よく戦ってるなぁ…」
イリーナが呟くー
クロウは、剣士として動きやすい格好を
いつもしているが、巫女見習いのイリーナは
巫女服でいつも行動している。
巫女服を着慣れていれば、また違ってくるのかもしれないが
巫女服を着たことがないクロウにとっては
この感じは新鮮だった。
「うっ…」
イリーナが視線を下ろして顔を赤らめる。
「--…って、俺はそんなことするために憑依したんじゃないぞ」
イリーナの胸から目を逸らすー。
「--……そ、そう。憑依薬のテストだ。
アイテムをいきなり実践で使うのは危険だからな」
イリーナの声でそう呟く。
普段、丁寧な口調で穏やかなイリーナが
普段とは全く違った雰囲気でしゃべっていることにも
興奮してしまうー
「お、、落ち着け。落ち着け、俺」
イリーナは大切な仲間だ。
変なことをするわけにはいかない。
そう思って、自分で自分に「落ち着け」と呟いたものの
イリーナの声でそう呟いたことによって
余計に興奮してしまう。
「あぁぁぁ…ま、、まず、自分の身体が
どうなっているのか見に行かないと」
イリーナは立ち上がる。
魔物との戦いで「憑依」のアイテムを使うなら
その間、自分の身体がどうなっているのか、
ということを確認しておかないといけない。
もしも無防備な状態になっているのであれば
使う場所は考えないといけないし、
場合によっては自分の身体を守るための
行動をしなくてはいけないー
「----」
イリーナは王宮で貸してもらった自分の部屋から
外に出る。
キョロキョロしながら歩くイリーナ。
「あぁぁぁ…巫女さんの格好、落ち着かない…」
そわそわしながらクロウの部屋へと向かう。
憑依薬を使う前に
部屋の鍵は開けておいた。
「--やぁ、イリーナ」
ー!?
背後から声がして振り返るイリーナ。
そこには、仲間の学者・フォグがいた。
「こんな夜中に、どうかしましたか?」
フォグの言葉に、イリーナは
「あ、いや、なんでもないよ」と呟く。
「---そうですか~…?
なんか、慌ててるように見えましたけど?」
フォグが首を傾げる。
「---え、、え~っと、いえ、あの、大丈夫だ、、じゃない、
大丈夫です!ちょ、、ちょっと、王宮って
すごいなぁ~って、あは、、あははははは!」
必死にイリーナのフリをしながらフォグに言う。
「---ならいいですけどね。」
フォグが笑う。
そして、フォグは自分の部屋に「おやすみなさい」と
言いながら入っていく。
「--ふ~~~あぶねぇあぶねぇ」
イリーナの声でそう呟くと、イリーナは
クロウの部屋へと入ったー。
他人に憑依している間の自分の身体は
どうなっているのだろうかー。
それを、確認するためにー。
部屋に入るとー
そこには、倒れているクロウの身体があった。
「あ~…なるほど~」
イリーナは、ベットに座ると、
そのまま男っぽいがさつな姿勢で
クロウの身体を見つめる。
「憑依してる間は、自分の身体は
完全な無防備状態ってことか…」
イリーナが呟く。
これは、憑依薬を魔物との戦いで使う上での
一つの課題だろう。
「--…さて、次は」
イリーナの身体から抜け出して、
自分の身体に戻ることができるのかどうか。
そして、イリーナに、憑依されている間の
記憶が残るのかどうか。
それを確かめないといけない。
「ここじゃ、まずいよな」
そう呟くと、イリーナは自分の部屋へと戻っていく。
今度は、誰とも遭遇しなかったー
「---」
鏡を見つめるイリーナ。
(ちょ、、ちょっとぐらい…)
そんな、下心が溢れそうになったがーー
クロウは我慢した。
鏡に映るイリーナがイヤらしい顔をして
顔を赤らめている。
「うぅぅ…イリーナ、こんな顔もできるのかぁ…」
このままエッチなことをしたくなってしまうー
でもー
”イリーナから抜け出せるのか”
そもそも
”イリーナに記憶があるのか”
それが大事だった。
特に、
”イリーナに憑依されている間の記憶があるのかー”
それは、とても重要だ。
「---」
目を閉じて、憑依から抜け出そうとするクロウ。
そしてー
「あ…」
イリーナがうめくような声を出して
そのまま倒れるー。
クロウは”よし、自分の身体に戻ることはできそうだな”と
確信するー。
実際に戦いで使って、ゴブリンに憑依して、
そのまま戻れなくなってしまったら、勇者ゴブリンになってしまう。
そんなのごめんだ。
憑依薬の実験に、イリーナを選んだのは
”もし戻れなくても、勇者イリーナになればいいかな”と
ちょっと思っていたからでもあったー。
「---」
自分の身体に戻らず、幽霊状態のままイリーナの様子を見つめる。
イリーナは、巫女服を乱した無防備な状態で倒れたままー。
”あぁぁ…なんか、ゾクゾクするかも”
無防備な状態で眠っているイリーナを見て、少し興奮してしまうクロウ。
”乗っ取られた相手が目を覚ますのか”
これも重要だ。
しばらくすると
イリーナが意識を取り戻した。
「--あ、、、あれ!?わたし!?」
イリーナが呟く。
「い、、いつの間にか、寝ちゃったのかなぁ…」
イリーナの言葉に、
クロウは思うー
”憑依されている間の記憶はない”
とー。
「---」
クロウは、”記憶がないなら、ちょっと楽しんでも、
エッチなことしちゃっても…”
と、考えて
すぐに首を振った。
「いやいや、だめだだめだ!」
クロウは、幽霊状態のまま、自分の部屋に戻り、
そのまま自分の身体に戻ったー
”身体に戻ることもできる”
「よーし!」
クロウは、これなら憑依薬を魔物との戦いに
使えそうだー
と、笑みを浮かべた。
もう一つー
”乗っ取った身体を死なせるとどうなるのか”は、
さすがにイリーナでは試せない。
だが、魔物との戦いで憑依薬を使うなら
何らかの方法で試しておきたい。
例えば、乗っ取った身体が死んだら
自分も死んでしまうのでは危険だ。
だが、乗っ取った身体が死んだら
自分が幽霊状態になるなら、
魔物に憑依して、自害させて倒す…ということが
できるようになる。
「--でも…試して本当に死んじゃったらなぁ」
クロウはそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
王宮の広間に呼ばれたクロウたちは、
再びセレス姫から、お願いを託されたー。
「--重ね重ね、申し訳ありません」
セレス姫が申し訳なさそうに言う。
魔王フォーティスの正体はいまだに不明。
魔物たちとの戦いは長期化し、
王宮の騎士団も疲弊していたのだ。
第5騎士団長のアイザックと共に
魔物討伐の作戦に参加することになったクロウたち。
昨日、行動を共にした第9騎士団長ユーリスとは違い、
第5騎士団長のアイザックは紳士的な性格だったー。
「---ねぇ、イリーナ」
クロウの幼馴染、エレンがイリーナに話しかける。
「はい?」
イリーナがほほ笑みながらエレンを見る。
「昨日の夜中、クロウの部屋に入ってくのみたんだけど、
なにしてたの?」
エレンが言う。
「--ぎくぅ!」
横で会話を聞いていたクロウが、冷や汗をかくー
”昨日の夜中”って、イリーナに憑依していたときのことだろうー。
「--え?わたし、ですか?」
イリーナが困った様子で言う。
「--なにしてたの?」
エレンは、イリーナを敵視しているー。
クロウのことが好きなエレンは、イリーナに一方的に
ライバル心を抱いていたのだ。
そのイリーナが、夜中にキョロキョロしながら
クロウの部屋に入って行ったことを
エレンはとても気にしている。
「--わ、、わたし、夜中は部屋から出てませんけど…?」
イリーナが首を傾げる。
「ふ~ん、嘘つくんだ~」
エレンが不満そうに言う。
「--え、、エレン!」
クロウが声をかける。
「昨日の夜中は、俺の部屋に誰も来てないぞ」
クロウが慌てて誤魔化そうとした。
「---え~?でも、見たんだけど」
エレンは不満そうだ。
「---ほら、エレン、寝ぼけてたんだろ~!
昔からそうだし」
クロウが言うと、エレンは「そうかなぁ」と不満そうに
口を閉ざしたー。
魔物が潜んでいる廃墟にたどり着くー
だがー
魔物はいないー
「--!?」
周囲から矢の雨が降り注ぐー
「--なんだ!?ぐああああっ!」
第5騎士団長アイザックを含む、同行した騎士たちがあっけなく倒れていくー
魔王軍の将軍が、クロウたちを待ち伏せしていたー
圧倒的に不利な状況ー。
このままではー
しかしー
クロウは思い立つー。
”憑依薬を使えばー”
とー。
「---」
仲間たちから見えない物影に隠れたクロウは
憑依薬を飲むー。
そして、魔王軍の将軍に憑依するー
「うっ」
魔王軍の将軍になったクロウー
「なんだ…この身体…力がみなぎる…!」
魔物の身体を乗っ取ったクロウは
今まで感じたことのない力が
湧き出てくるのを感じながら叫ぶ。
「-もう良い。撤退だ」
魔物たちに指示を下す。
下級のゴブリンが、驚いた表情をしているー
「撤退だ!」
ゴブリンたちは弓を放つのをやめて、
魔王軍将軍の言葉に従う。
「---(すごい…憑依薬があれば、
魔王フォーティスだって倒せる)」
仲間たちから離れてー
そのまま持っていた武器で自分の身体を貫くー。
「ぐおっ!」
魔王軍の将軍の身体を乗っ取ったまま
自分を刺すー
魔王軍の将軍の身体から力が抜けていくー
”このタイミングでー”
クロウが憑依から抜け出すー。
”死ぬ”瞬間まで憑依していたらどうなるか分からないし
恐ろしくて試せないが、これならー
クロウは元の身体に戻り、
仲間たちと合流する。
「--なんなの?急に敵が退いていったけど?」
幼馴染のエレンが不思議そうにしているー。
「さぁ」
クロウは、笑みを浮かべながら答えた。
魔王軍の将軍を自殺させてやったー。
この力さえあれば、なんでもできるー
「---…ーー」
学者のフォグが、笑みを浮かべている
クロウのほうを、不安そうに見つめていたー。
城に帰還する。
セレス姫が、クロウらにお礼の言葉を告げる。
第5騎士団が犠牲になったことを悲しみながらも
魔王軍の将軍を倒すことができたのは、
大きな収穫であった、と。
「--」
クロウが部屋に戻る。
夜になるー。
「---へへへへへ…」
クロウは憑依薬を再び飲み込むー
そしてー
巫女のイリーナに再び憑依したー
「んあぁっ!?」
イリーナがびくっとして、普段使っている錫杖を落とすー。
「んへっ…へへへ…乗っ取る瞬間って、なんか気持ちいいな」
イリーナが笑みを浮かべるー
「--昨日、記憶が残らないことは分かってるし…
ちょっとお楽しみしちゃおうかな」
普段は穏やかに話すイリーナが欲望に満ちた声でしゃべる。
「---はぁっ」
イリーナの真似をして、回復魔法を唱えてみるー
自分の周りに緑色の光が出てきてー
イリーナ自身が回復するー
「んふふふ…回復魔法唱えるのって、なんだか気持ちいいな…」
もう一度唱えるイリーナ
「---あふっ…、なんか、、回復魔法を唱えるイリーナ、かわいい…」
イリーナは顔を赤らめながら
何度も何度も回復魔法を唱えては
自分を回復させるー。
可愛らしいポーズをわざと決めながら、
回復魔法を唱えまくるイリーナ。
「んふっ♡」
鏡を見つめながら
挑発的なポーズを決めるイリーナ。
何度も、何度も、何度も回復魔法を唱えるー。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
魔力を使い過ぎたイリーナの身体が悲鳴を上げている…
「えへへ…♡ 息遣いも…かわいい…」
イリーナを乗っ取っているクロウは
すっかり、憑依の虜だった。
「--身体が憑かれてるならぁ…」
スカートの中に錫杖を突っ込むイリーナ。
そしてー
「んあぁぁぁあああっ♡」
回復魔法に使っている杖をイリーナのアソコに
無理やり突っ込んでみるー
「ぁああううぅぅ~♡」
喘ぎながら回復魔法を唱えるー
イリーナのアソコに直接回復魔法の効果がーー
「んひぃぃぃぃぃぃっ♡」
あまりの気持よさに、イリーナはよだれを垂らしながら
回復するーー
「はぁぁ…ぅ…♡ うぅぅ♡」
錫杖を自分の体液で濡らしながら
イリーナは幸せそうな顔を浮かべて、
あまりの気持よさにその場でぶるぶる震えていたー
「-----え」
イリーナが驚いて顔を上げると、
そこには、学者のフォグがいた。
「--イリーナ……何を…してるんですか…?」
フォグの言葉に、
イリーナは「え…あ、、、か、、回復魔法の練習ですぅ…♡」と
呟くー
「---イリーナ…いいえ、クロウ」
フォグが言う。
「---!」
「---…さっき、話をしようと思って
あなたの部屋に向かったらー
偶然、何か薬を飲んでいるあなたを見てしまったんです」
フォグが言う。
「倒れたと思ったら、イリーナの部屋から変な声が聞こえてきてー…」
頭のいいフォグは、それだけで、察してしまったー。
”クロウがイリーナを乗っ取っている”ことをー。
「--仲間の身体で…なんてことを…」
生真面目なフォグが言うー。
「べ…別に…い、、いいじゃないか!
悪事をしているわけでも、なんでもないんだし!
俺だって、勇者勇者って、毎日疲れるんだ!」
イリーナの声で叫ぶ。
「---……その力は危険です。
確かに、魔王との戦いには役立つかもしれません。
けれどー…人として超えてはいけないラインがある、と
私は思うんです」
フォグの言葉に、イリーナは舌打ちする。
そして、フォグは言う。
”その薬は危険だと。処分するべきだ”と。
「--わかった」
イリーナの身なりを整えて、イリーナの身体から抜け出す。
気絶して、その場に倒れるイリーナ。
自分の身体に戻ったクロウは、
フォグを自分の部屋に入れる。
「--…」
クロウは、数日前、森で拾った憑依薬を
フォグに見せる。
フォグは、”今すぐこれを処分するべきです”と主張した。
過ぎたる力は危険であると。
クロウは、黙って頷いた。
「--フォグの言いたいことはよくわかったよ…
俺が、ちゃんと処分しておく」
クロウが言う。
「--……」
フォグは疑いの目でクロウを見つめる。
「---俺を信じてくれよ!フォグ!仲間だろ!」
クロウが笑う。
「---その名前に憑依して、
あんなことをしたあなたを…私は信用できない…」
フォグが悲しそうに言う。
「---ごめん…フォグ…
でも……でも、、俺だって、魔王との戦いで疲れてるんだ…
信じてくれよフォグ…
お前の言葉で、俺は目が覚めた。
明日、イリーナにも謝る」
クロウは、目を潤ませながら言った。
今までの戦いでも、クロウは数々の人々を助けてきた。
クロウの正義感は、本物のはずだ。
「---わかりました」
フォグは仲間を信じる決断をした。
クロウを信じようー、と。
部屋から出ていくフォグ。
クロウは「ありがとうフォグ」と呟くと、
憑依薬を捨てーーー
…いや、飲んだ。
翌日ーーー
自分の部屋で、フォグがナイフを突き立てて
自ら命を絶っているのが発見されるのだったー
「---ありがとうフォグ。
俺を信じてくれてー。
そしてー
ばいばい、フォグ」
クロウは静かにそう囁くと、
憑依薬を大事そうに抱えながら、
フォグの死を悲しむフリをしたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依の魅力に取りつかれてきてしまった
勇者さまー。
次回が最終回デス~!
コメント
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次回はまたイリーナに憑依するのかそれともエレンに憑依するのか、はたまたセレス姫に憑依するのか……
とても楽しみです!
SECRET: 0
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> 次回はまたイリーナに憑依するのかそれともエレンに憑依するのか、はたまたセレス姫に憑依するのか……
> とても楽しみです!
コメントありがとうございます~!
次回は…ふふふ…
明日のお楽しみデス~