憑依薬に魅入られて仲間の巫女を乗っ取った勇者クロウー。
欲望の巫女と欲望の姫ー
野望の魔物と、疑いを抱く騎士ー。
クローバー王国と
魔王軍の戦いの行方と、
欲望の巫女を待ち受ける、運命はー?
--------------------–
「------」
王宮の頂で、セレス姫は、豪華なドレスを
雨に濡らしながら、両手を広げてー
ゾクゾクしながら深呼吸していたー
”永遠の戦乱”
王宮の眼下に広がる
街には、火の手があがりー
逃げ遅れた民たちが悲鳴を上げているー
騎士団が戦いを続けー
魔物が死に、
騎士が死に、
そして、民が死ぬー。
血で血を洗う戦いが、繰り広げられているー
「いい匂い…♡」
うっとりとしたセレス姫ー
そこにーーー
魔王軍の大将軍・ゼルがやってきたー。
「----クローバー王国・女王、セレス姫とお見受けする」
大将軍ゼルが、マントを風でなびかせながら笑みを浮かべるー。
「----魔王フォーティスの命に背き、
わたしの王国に総攻撃を仕掛けるー
そのようなことをして、良いのですか?」
セレス姫として、魔王フォーティスが憑依しているセレス姫は
笑みを浮かべながら言うー
雷が鳴り響くー
「魔王フォーティスは、ただのチキン野郎だ。
今日より、俺が真魔王・ゼルである。
王女セレスー
貴様の首を、高々と掲げてー
我々がすべてを支配するのだー」
ゼルが笑うー
同時に、セレス姫が笑うー
まるで、悪女のような笑いー。
「--身の程しらずが!」
セレス姫が目を赤く光らせー
ビクンと震えるとー
セレス姫の背後から
”魔王フォーティス”のシルエットが浮かび上がったー
「--!?!?!?」
大将軍・ゼルが驚くー。
「-我に対しての侮辱ー
地獄の苦しみをもって、償う覚悟はあるのであろうな?」
セレス姫がヒクヒク震えながら、
魔王フォーティスと同時に言葉を発するー
「--王女セレス…貴様は…何者!?」
大将軍ゼルは驚きを隠せないー
セレス姫=魔王フォーティスを、彼は知らないのだー。
「--このお姫様は、我が何年も前に乗っ取りー
意のままにしているー操り人形よ」
魔王フォーティスとセレス姫が叫ぶー
「ま、、ま、、まさか!?」
大将軍ゼルは怯えていたー
目の前に立つー
セレス姫ー
いや、魔王フォーティスの圧倒的魔力をその肌で感じてー
「---そういうことだったのかぁ!」
雨が降り注ぐ王宮の頂ー
そこに、第3騎士団長のエンダルフが駆け込んできたー
「----あら」
魔王フォーティスがセレス姫の身体の中に戻っていくー
「エンダルフ…わたしに刃を向けるのかしらー?」
セレス姫がクスクスと笑うー
「--貴様……い、、いつからだ!いつから姫様の中に!?」
第3騎士団長のエンダルフが叫ぶー。
セレス姫は、豪華なドレスを雨に濡らしながらー
邪悪な笑みを浮かべたー
「何年も、前からー
この女の自我など、とっくに闇に飲まれー
消えてしまったー」
綺麗な声で、邪悪に呟くセレス姫ー
第3騎士団長のエンダルフが、
剣を手にするー。
「---ゼル。今ならお前の反乱、許してやろうー。
さぁ、我の目の前で、その騎士団長を切り裂くのだー」
セレス姫が、魔王フォーティスとしての本性を隠そうともせずに、
大将軍・ゼルに命じたー
大将軍・ゼルは雨に打たれながらー
呟くー
「---…………魔王様…
つまりあなたは何年も前から、我々と、王国の人間ども、
その両方を操っていた…
そういうことですか?」
大将軍ゼルの、静かな怒りを感じさせる声ー。
「----」
セレス姫は笑っているー
「---………」
大将軍ゼルは拳を震わせたー。
”魔王フォーティス”が”セレス姫”に憑依していたのであればー
いくらでも、魔王軍が、王国を滅ぼすことはできたはずー。
それなのにー
大将軍ゼルは悟るー
”魔王様”が、
魔王フォーティスとして、そしてセレス姫として
魔王軍と王国軍の双方を操りー
”意味のない戦い”を繰り広げさせていたことをー
「--貴様ぁ!」
大将軍ゼルは、セレス姫に向かって剣をふるったー。
「---愚かなー
死で償うが良いー」
セレス姫が目を赤く光らせてー
口から邪悪なオーラを吐き出したー。
第3騎士団長のエンダルフも、セレス姫を背後から攻撃するー
「姫様…!
魔王に乗っ取られて、これ以上悪事に使われるならー
いっそのことここでー
私が姫様をお救いするー」
”セレス姫”を殺すことでしか、姫を助ける方法はないー。
そう悟った第3騎士団長のエンダルフは、悲しみの表情で
セレス姫を攻撃するー。
「--はぁあああああ」
セレス姫が邪悪なオーラをさらに放つとー
セレス姫の手と顔に禍々しい紋章のようなものが浮かび上がるー
そしてー
牙が生えて、漆黒の翼が生えるー。
セレス姫の身体が宙を舞うー。
「-なにっ!?」
第3騎士団長のエンダルフが戸惑うー。
大将軍ゼルも、空を舞うセレス姫を見つめるー
セレス姫がドレスをふわふわさせながらー
中身が見えることも一切気にせずに、
空中から”闇のオーラ”で、攻撃を始めるー。
「---うおおおおおお!」
大将軍ゼルが、マントを羽のように変形させて、
宙を舞うー。
雨舞い、雷鳴轟くクローバー王国の上空で、
2つの翼が激突するー。
「--我こそ、この世界の神だー」
綺麗な顔に不気味な文様を浮かべたセレス姫が笑うー
大将軍ゼルとて、歴戦の魔王軍No2-。
魔王フォーティスが憑依しているセレス姫に圧倒されつつもー
しぶとく戦いを続けるー
「こ、、これはー」
第3騎士団長エンダルフは、王宮の屋上から、その”人外の戦い”を見守るー
そしてー
激しい雷鳴が届いたー
セレス姫の攻撃を受けた大将軍ゼルが、
王宮の屋上に落下してくるー
セレス姫が笑いながら、上空から降りて来るー。
「---ぐ……」
大将軍ゼルの身体はズタボロだー。
「---」
セレス姫がゆっくりとー
コツコツ音を立てながら近づいてくるー
返り血を浴びたセレス姫のー
美しくも、冷徹な表情ー
第3騎士団長エンダルフが、すかさず攻撃を仕掛けるー。
セレス姫が、闇の波動で、エンダルフを吹き飛ばすー。
「---さぁ、愚かなもーー」
セレス姫はそこまで口にして、言葉を止めたー
倒れていたはずの大将軍・ゼルがいないー
「---!?!?!?」
背後から、ボロボロになった大将軍ゼルが、セレス姫に襲い掛かるー
「うあああああああああああ!」
闇のオーラを纏う剣で、セレス姫に切りかかるー
攻撃は確実にセレス姫に命中したー
セレス姫が少しだけ弱弱しい悲鳴を漏らすと
すぐに「貴様ぁああああああ!」と体中から闇を吹き出し、
大将軍ゼルと激しい攻撃の打ち合いを繰り広げるー
「姫様…」
第3騎士団長エンダルフは、悲しそうに、”変わり果てたセレス姫”を見つめるー
狂気的な笑みを浮かべ、
肌に謎の紋様を出現させ、牙を生やしたセレス姫が、
大将軍ゼルと激しい攻防を繰り広げているー
”姫様、今、お救いします”
エンダルフが剣を手に、セレス姫の背後から切りかかるー
「--おのれえええええええ!」
セレス姫が怒りの形相で、
大将軍ゼルと、第3騎士団長エンダルフの攻撃をなんとか受け止めるー。
それでも、ゼルもエンダルフも攻撃を止めないー
セレス姫の美しいドレスがボロボロに破れていくー
肌を露出させたセレス姫がー
「貴様らは、我の”駒”---
駒の分際で、頭が高いわ!」
と叫ぶー。
激しい衝撃波が放たれー
エンダルフとゼルが吹き飛ぶー。
エンダルフが王宮屋上の壁に打ち付けられー
大将軍ゼルは、王宮の屋上から、
ボロボロになって、真っ逆さまに転落、
地面に叩きつけられて、そのまま、炎上ー
塵一つ残らず、消滅したー。
「---くっ…」
第3騎士団長のエンダルフは苦しそうに、セレス姫のほうを見つめるー
髪も顔も、ドレスもー
何もかもが乱れ切っているセレス姫ー
「姫様…どうか…どうか、目を覚ましてください」
エンダルフが苦しそうに言うー
「--ふふふ」
セレス姫は笑ったー
「もう、わたしは魔王フォーティスと一体化したのよ」
邪悪な笑みを浮かべるセレス姫ー
セレス姫本人の意識は、もうー
とうの昔に消えてー
「---」
エンダルフが最後の力を振り絞って、立ち上がるー
雷が鳴り響くー。
そしてー
セレス姫と激しい攻防を繰り広げた末にー
エンダルフは、セレス姫の闇の剣に切り裂かれてー
その場に崩れ落ちたー
雨が降り注ぐー
剣を捨てたセレス姫は、よろよろと歩くと、
その場に座り込んだー
さすがのセレス姫も、
大将軍ゼルと、第3騎士団長エンダルフを、
”この身体”で相手にするのは厳しかったー。
魔王フォーティス自体は、さらに強いのだが、
セレス姫の身体では”限界”があるー。
雨の屋上で座り込むセレス姫ー
「はぁ…はぁ…
この身体には、まだ利用価値があるー。
エリーゼと合流してー
一度…身を隠すかー」
セレス姫がそう呟いているとー
屋上に誰かがやってきたー
セレス姫が目を見開くー
やってきたのはー
ズタボロの巫女服を着たー
イリーナだったー
勇者クロウが憑依しているイリーナ。
「---クロウ…」
セレス姫が驚くー
勇者クロウは、ベリアル海岸で、
第4騎士団長のティルク、魔王軍将軍のヒュドラもろとも、
第6騎士団長のオリオンが始末したはずだったからだー。
「---姫」
イリーナが、エリーゼの”首”を投げつけたー
「---!!」
セレス姫が驚くー
「エリーゼなんかより、わたしを、、このイリーナを
愛でてほしかったー
憑依薬で、イリーナに憑依してから、わたし、、おれ、、わたし…ずっと…
姫と一緒に、、楽しんできたのにー
姫はどうして、エリーゼなんかに、、、
わたしより、エリーゼを選んだんですか!」
イリーナが泣きながら言うー。
もう、自分がクロウなのか、イリーナなのかも
よくわからなくなっていたー
セレス姫が、イリーナを見つめながら
「勇者クロウー」
と、呟くー。
大雨が降り注ぐー
王宮の屋上でー
ずぶ濡れの巫女服姿のイリーナと
ボロボロでずぶ濡れのセレス姫が見つめあうー
「--さぁ…回復魔法でわたしを回復させなさい」
セレス姫が荒い息で呟くー。
セレス姫が自らドレスをめくって、
下着を無理やり引きはがすと、
股を広げて座り込んだー
「わたしを、回復させなさいー
勇者クロウ」
乱れきったセレス姫ー
とても苦しそうなセレス姫の呼吸ー
「--そうやって、またわたしを利用するんですか?」
イリーナが悔しそうにつぶやくー
「姫は、、魔王様は、、わたしを、おれを、、殺そうとした!!
ベリアル海岸で、オリオンに命じて、殺そうとした!!!」
泣き叫ぶイリーナ。
「いっしょにゾクゾクを楽しんできたのにーーー
いっしょに、、、いっしょに!!!」
イリーナの身体に怒りがこみあげて来るー
「----」
セレス姫は、股を広げたまま開き直った様子で笑ったー。
イリーナの身体から、よく見ると血が流れているー。
イリーナの顔色は、悪いー。
ベリアル海岸の戦いと、
王宮でのエリーゼとの戦いで、既にイリーナの身体も、ボロボロー。
魔力も付きかけているー。
魔法を使えるのは、あと1回が限界かもしれないー
「飽きたおもちゃは”捨てる”-
それが、わたしのやり方ーーーー」
セレス姫が唾を吐き捨てるとー
イリーナは逆上して、セレス姫のアソコに錫杖を突っ込んでー
”炎の魔法”を唱えたー
最高のゾクゾクを感じながら、燃え上がるセレス姫ー
「うふふふふふふふふ
きもちいぃぃぃぃぃ きもちいいいぃぃいいいぁいぁああああああ♡♡」
セレス姫の身体が燃えていくー
美しい身体がー
燃えていくー
やがてーーー
大雨に魔力による炎が打ち消されたときにはー
セレス姫の身体は、燃え尽きていたー
よろよろと王宮の屋上から立ち去るイリーナ
王宮の大広間上の廊下を歩くー
大広間とは吹き抜けになっているその場所からー
大広間を見つめるイリーナ。
「---わたしが、、わたしが代わりに王宮を支配してやるー」
イリーナが邪悪な笑みを浮かべるー
自分はNo2の王宮巫女だったー。
王女セレスが死んだ今ー
No1はーーー
「---!」
激しい痛みが、イリーナの身体を襲ったー。
「え……」
イリーナが錫杖を落としーーー
振り返ると、そこにはーーーー
「------!!!!」
”王宮の魔女”の異名を持つ
第2騎士団長・カミーラの姿がーーー
「---姫様をたぶらかした悪女めーー!」
カミーラが、剣をふるうー。
城下町から民を避難させ終えたカミーラは
王宮へと帰還ー
そして、第3騎士団長エンダルフが向かったであろう
屋上を目指している最中だったー。
カミーラとエンダルフは、
巫女たち…イリーナとエリーゼのことも疑っていたー
そして、今、イリーナの”わたしが王国を支配してやる”という言葉を聞きー
カミーラはイリーナを斬り捨てたのだったー。
「あぁぁぅぅ」
吹き抜けから、大広間に真っ逆さまに転落して
地面に叩きつけられるイリーナ。
カミーラはそれを確認すると、
「--姫様!」と叫んで、屋上に向かうー
もうー
”手遅れ”な屋上にー。
「--ひぃい…はぁああ…あぁ…」
イリーナはまだ死んでいなかったー
ボロボロになりながらもー
イリーナは、大広間から移動するー
目から涙がこぼれて来るー
死にたくないー
死にたくないーーー
イリーナの魔力は、連戦で尽きていて
回復魔法も使えないー
イリーナは、もうろうとした意識の中ー
走ったー
そしてーー
イリーナが無意識のうちにたどり着いたその場所はーーー
”秘密の部屋”
かつてのーーー
イリーナに憑依している勇者クロウの幼馴染ー
エレンが幽閉されている場所ー。
「---エレン…たすけて…エレン」
イリーナが、涙を流しながらエレンにすがりつくー
だがー
エレンは”催眠漬け”になっていて、
もはや”虚ろな目”をしながら笑うだけだったー
近くには、以前、第6騎士団長だった女性騎士・イザベラもいるー。
エレンと同じ状況だー。
「エレン…エレン…たすけて…」
イリーナが血と涙を流しながらエレンにしがみつくー
「えへ…えへへへへぇ…♡」
エレンが涎を垂らしながら笑うー。
エレンは、もう、助けてくれないー
人として、壊れてしまったからー
「--ねーねー、クロウ」
「--さっき、セレス姫見て、顔、赤くなってなかった?」
「こら~~!この下心!」
「まったく~!エレンは乱暴だなぁ~!
そんなんじゃ、姫になんかなれないぞ~!」
なぜだろうー
幼馴染のエレンとの会話が、頭に浮かんでくるー。
どうしてだろうー。
自分が、壊したのにー。
自分がエレンをこんな風にしてしまったのにー
イリーナはその場に倒れ込むー
もう、歩く力も残っていないー
傷だらけでー
ボロボロでー
鬼のような形相のイリーナが鏡に映るー
「--わたしも…なんだか最近よく眠れてない気がするんですよね…」
心優しかったイリーナの姿を思い出すー
「--あぁぁぁああ…」
イリーナはその場でうめき声をあげたー
死の間際だからかー
セレス姫が死んだからかー
こころが弱っているからかー
今ー
イリーナを乗っ取っている勇者クロウはー
”罪悪感”に襲われていたー
「--エレン…たすけて……」
イリーナがエレンに手を伸ばすー。
エレンは「えへへへへへっ♡」と虚ろな目で笑いながら、
イリーナの手をはねのけたー
「ご、、ごめんなさい…ごめ、、、、、ん…なさ…」
イリーナは、苦痛に表情を歪めたまま、
その場で動かなくなったー
・・・・・・・・・・・・・・
1か月後ー
クローバー王国の王宮及び、城下町は大打撃を受けたー
だが、生き残った第2騎士団長カミーラを中心に、
王宮の復興は続いていたー
魔王軍も、大将軍ゼルや、幹部クラスを大量に失い、
しばらく再起不能の状態ー。
「--わたしたちは、必ず、立ち直れる!」
第2騎士団長カミーラが、民衆たちや王宮の生き残りの兵士に向かって叫ぶー
おおおおおおおおお!!!
と、歓声が上がるー。
女王セレスの身体死すともー
魔王フォーティスは死なずー
新たな器を得-
新たな舞台を作り上げー
戦乱は続くー
復興と永遠の戦乱ー
そして、破壊ー
”この世界はー
我の望む世界だー”
永遠の戦乱続くー
地獄のような、世界だー
第2騎士団長カミーラは、目を赤く光らせると
不気味な笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
勇者さまご乱心の最終章でした~!
こんなに長くお話を展開することになるとは、
最初に書いたときは思いもしませんでした!笑
最後のシーンは、
イリーナを斬ったあと、第2騎士団長のカミーラが
どこに向かっていたかを思い起こしてみると、
何が起きたのか想像できる…かもデス!
ここまでお読み下さりありがとうございました~!
コメント
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まあ、発言からして姫様の元に駆け寄っちゃったんだろうねぇ……
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そうですネ~!
駆け寄ってしまいました~☆!