<憑依>勇者さまご乱心・終章⑤~終焉~(完)

憑依薬に魅入られて仲間の巫女を乗っ取った勇者クロウー。

欲望の巫女と欲望の姫ー
野望の魔物と、疑いを抱く騎士ー。

クローバー王国と
魔王軍の戦いの行方と、
欲望の巫女を待ち受ける、運命はー?

--------------------–

「------」
王宮の頂で、セレス姫は、豪華なドレスを
雨に濡らしながら、両手を広げてー
ゾクゾクしながら深呼吸していたー

”永遠の戦乱”

王宮の眼下に広がる
街には、火の手があがりー
逃げ遅れた民たちが悲鳴を上げているー

騎士団が戦いを続けー
魔物が死に、
騎士が死に、
そして、民が死ぬー。

血で血を洗う戦いが、繰り広げられているー

「いい匂い…♡」
うっとりとしたセレス姫ー

そこにーーー
魔王軍の大将軍・ゼルがやってきたー。

「----クローバー王国・女王、セレス姫とお見受けする」
大将軍ゼルが、マントを風でなびかせながら笑みを浮かべるー。

「----魔王フォーティスの命に背き、
 わたしの王国に総攻撃を仕掛けるー
 そのようなことをして、良いのですか?」
セレス姫として、魔王フォーティスが憑依しているセレス姫は
笑みを浮かべながら言うー

雷が鳴り響くー

「魔王フォーティスは、ただのチキン野郎だ。
 今日より、俺が真魔王・ゼルである。
 
 王女セレスー
 貴様の首を、高々と掲げてー
 我々がすべてを支配するのだー」

ゼルが笑うー
同時に、セレス姫が笑うー

まるで、悪女のような笑いー。

「--身の程しらずが!」
セレス姫が目を赤く光らせー
ビクンと震えるとー
セレス姫の背後から
”魔王フォーティス”のシルエットが浮かび上がったー

「--!?!?!?」
大将軍・ゼルが驚くー。

「-我に対しての侮辱ー
 地獄の苦しみをもって、償う覚悟はあるのであろうな?」
セレス姫がヒクヒク震えながら、
魔王フォーティスと同時に言葉を発するー

「--王女セレス…貴様は…何者!?」
大将軍ゼルは驚きを隠せないー

セレス姫=魔王フォーティスを、彼は知らないのだー。

「--このお姫様は、我が何年も前に乗っ取りー
 意のままにしているー操り人形よ」

魔王フォーティスとセレス姫が叫ぶー

「ま、、ま、、まさか!?」
大将軍ゼルは怯えていたー
目の前に立つー
セレス姫ー
いや、魔王フォーティスの圧倒的魔力をその肌で感じてー

「---そういうことだったのかぁ!」
雨が降り注ぐ王宮の頂ー

そこに、第3騎士団長のエンダルフが駆け込んできたー

「----あら」
魔王フォーティスがセレス姫の身体の中に戻っていくー

「エンダルフ…わたしに刃を向けるのかしらー?」
セレス姫がクスクスと笑うー

「--貴様……い、、いつからだ!いつから姫様の中に!?」
第3騎士団長のエンダルフが叫ぶー。

セレス姫は、豪華なドレスを雨に濡らしながらー
邪悪な笑みを浮かべたー

「何年も、前からー
 この女の自我など、とっくに闇に飲まれー
 消えてしまったー」

綺麗な声で、邪悪に呟くセレス姫ー

第3騎士団長のエンダルフが、
剣を手にするー。

「---ゼル。今ならお前の反乱、許してやろうー。
 さぁ、我の目の前で、その騎士団長を切り裂くのだー」

セレス姫が、魔王フォーティスとしての本性を隠そうともせずに、
大将軍・ゼルに命じたー

大将軍・ゼルは雨に打たれながらー
呟くー

「---…………魔王様…
 つまりあなたは何年も前から、我々と、王国の人間ども、
 その両方を操っていた…
 そういうことですか?」

大将軍ゼルの、静かな怒りを感じさせる声ー。

「----」
セレス姫は笑っているー

「---………」
大将軍ゼルは拳を震わせたー。

”魔王フォーティス”が”セレス姫”に憑依していたのであればー
いくらでも、魔王軍が、王国を滅ぼすことはできたはずー。

それなのにー

大将軍ゼルは悟るー

”魔王様”が、
魔王フォーティスとして、そしてセレス姫として
魔王軍と王国軍の双方を操りー
”意味のない戦い”を繰り広げさせていたことをー

「--貴様ぁ!」
大将軍ゼルは、セレス姫に向かって剣をふるったー。

「---愚かなー
 死で償うが良いー」
セレス姫が目を赤く光らせてー
口から邪悪なオーラを吐き出したー。

第3騎士団長のエンダルフも、セレス姫を背後から攻撃するー

「姫様…!
 魔王に乗っ取られて、これ以上悪事に使われるならー
 いっそのことここでー

 私が姫様をお救いするー」

”セレス姫”を殺すことでしか、姫を助ける方法はないー。
そう悟った第3騎士団長のエンダルフは、悲しみの表情で
セレス姫を攻撃するー。

「--はぁあああああ」
セレス姫が邪悪なオーラをさらに放つとー
セレス姫の手と顔に禍々しい紋章のようなものが浮かび上がるー

そしてー
牙が生えて、漆黒の翼が生えるー。

セレス姫の身体が宙を舞うー。

「-なにっ!?」
第3騎士団長のエンダルフが戸惑うー。

大将軍ゼルも、空を舞うセレス姫を見つめるー

セレス姫がドレスをふわふわさせながらー
中身が見えることも一切気にせずに、
空中から”闇のオーラ”で、攻撃を始めるー。

「---うおおおおおお!」
大将軍ゼルが、マントを羽のように変形させて、
宙を舞うー。

雨舞い、雷鳴轟くクローバー王国の上空で、
2つの翼が激突するー。

「--我こそ、この世界の神だー」
綺麗な顔に不気味な文様を浮かべたセレス姫が笑うー

大将軍ゼルとて、歴戦の魔王軍No2-。
魔王フォーティスが憑依しているセレス姫に圧倒されつつもー
しぶとく戦いを続けるー

「こ、、これはー」
第3騎士団長エンダルフは、王宮の屋上から、その”人外の戦い”を見守るー

そしてー
激しい雷鳴が届いたー

セレス姫の攻撃を受けた大将軍ゼルが、
王宮の屋上に落下してくるー

セレス姫が笑いながら、上空から降りて来るー。

「---ぐ……」
大将軍ゼルの身体はズタボロだー。

「---」
セレス姫がゆっくりとー
コツコツ音を立てながら近づいてくるー

返り血を浴びたセレス姫のー
美しくも、冷徹な表情ー

第3騎士団長エンダルフが、すかさず攻撃を仕掛けるー。

セレス姫が、闇の波動で、エンダルフを吹き飛ばすー。

「---さぁ、愚かなもーー」
セレス姫はそこまで口にして、言葉を止めたー

倒れていたはずの大将軍・ゼルがいないー

「---!?!?!?」
背後から、ボロボロになった大将軍ゼルが、セレス姫に襲い掛かるー

「うあああああああああああ!」
闇のオーラを纏う剣で、セレス姫に切りかかるー

攻撃は確実にセレス姫に命中したー

セレス姫が少しだけ弱弱しい悲鳴を漏らすと
すぐに「貴様ぁああああああ!」と体中から闇を吹き出し、
大将軍ゼルと激しい攻撃の打ち合いを繰り広げるー

「姫様…」
第3騎士団長エンダルフは、悲しそうに、”変わり果てたセレス姫”を見つめるー

狂気的な笑みを浮かべ、
肌に謎の紋様を出現させ、牙を生やしたセレス姫が、
大将軍ゼルと激しい攻防を繰り広げているー

”姫様、今、お救いします”

エンダルフが剣を手に、セレス姫の背後から切りかかるー

「--おのれえええええええ!」
セレス姫が怒りの形相で、
大将軍ゼルと、第3騎士団長エンダルフの攻撃をなんとか受け止めるー。

それでも、ゼルもエンダルフも攻撃を止めないー

セレス姫の美しいドレスがボロボロに破れていくー
肌を露出させたセレス姫がー
「貴様らは、我の”駒”---
 駒の分際で、頭が高いわ!」
と叫ぶー。

激しい衝撃波が放たれー
エンダルフとゼルが吹き飛ぶー。

エンダルフが王宮屋上の壁に打ち付けられー
大将軍ゼルは、王宮の屋上から、
ボロボロになって、真っ逆さまに転落、
地面に叩きつけられて、そのまま、炎上ー
塵一つ残らず、消滅したー。

「---くっ…」
第3騎士団長のエンダルフは苦しそうに、セレス姫のほうを見つめるー

髪も顔も、ドレスもー
何もかもが乱れ切っているセレス姫ー

「姫様…どうか…どうか、目を覚ましてください」
エンダルフが苦しそうに言うー

「--ふふふ」
セレス姫は笑ったー

「もう、わたしは魔王フォーティスと一体化したのよ」
邪悪な笑みを浮かべるセレス姫ー

セレス姫本人の意識は、もうー
とうの昔に消えてー

「---」
エンダルフが最後の力を振り絞って、立ち上がるー

雷が鳴り響くー。

そしてー
セレス姫と激しい攻防を繰り広げた末にー
エンダルフは、セレス姫の闇の剣に切り裂かれてー
その場に崩れ落ちたー

雨が降り注ぐー
剣を捨てたセレス姫は、よろよろと歩くと、
その場に座り込んだー

さすがのセレス姫も、
大将軍ゼルと、第3騎士団長エンダルフを、
”この身体”で相手にするのは厳しかったー。

魔王フォーティス自体は、さらに強いのだが、
セレス姫の身体では”限界”があるー。

雨の屋上で座り込むセレス姫ー

「はぁ…はぁ…
 この身体には、まだ利用価値があるー。

 エリーゼと合流してー
 一度…身を隠すかー」

セレス姫がそう呟いているとー
屋上に誰かがやってきたー

セレス姫が目を見開くー

やってきたのはー
ズタボロの巫女服を着たー
イリーナだったー

勇者クロウが憑依しているイリーナ。

「---クロウ…」
セレス姫が驚くー

勇者クロウは、ベリアル海岸で、
第4騎士団長のティルク、魔王軍将軍のヒュドラもろとも、
第6騎士団長のオリオンが始末したはずだったからだー。

「---姫」
イリーナが、エリーゼの”首”を投げつけたー

「---!!」
セレス姫が驚くー

「エリーゼなんかより、わたしを、、このイリーナを
 愛でてほしかったー
 
 憑依薬で、イリーナに憑依してから、わたし、、おれ、、わたし…ずっと…
 姫と一緒に、、楽しんできたのにー

 姫はどうして、エリーゼなんかに、、、
 わたしより、エリーゼを選んだんですか!」

イリーナが泣きながら言うー。

もう、自分がクロウなのか、イリーナなのかも
よくわからなくなっていたー

セレス姫が、イリーナを見つめながら
「勇者クロウー」
と、呟くー。

大雨が降り注ぐー
王宮の屋上でー
ずぶ濡れの巫女服姿のイリーナと
ボロボロでずぶ濡れのセレス姫が見つめあうー

「--さぁ…回復魔法でわたしを回復させなさい」
セレス姫が荒い息で呟くー。

セレス姫が自らドレスをめくって、
下着を無理やり引きはがすと、
股を広げて座り込んだー

「わたしを、回復させなさいー
 勇者クロウ」

乱れきったセレス姫ー
とても苦しそうなセレス姫の呼吸ー

「--そうやって、またわたしを利用するんですか?」
イリーナが悔しそうにつぶやくー

「姫は、、魔王様は、、わたしを、おれを、、殺そうとした!!
 ベリアル海岸で、オリオンに命じて、殺そうとした!!!」
泣き叫ぶイリーナ。

「いっしょにゾクゾクを楽しんできたのにーーー
 いっしょに、、、いっしょに!!!」

イリーナの身体に怒りがこみあげて来るー

「----」
セレス姫は、股を広げたまま開き直った様子で笑ったー。

イリーナの身体から、よく見ると血が流れているー。
イリーナの顔色は、悪いー。

ベリアル海岸の戦いと、
王宮でのエリーゼとの戦いで、既にイリーナの身体も、ボロボロー。
魔力も付きかけているー。

魔法を使えるのは、あと1回が限界かもしれないー

「飽きたおもちゃは”捨てる”-
 それが、わたしのやり方ーーーー」

セレス姫が唾を吐き捨てるとー
イリーナは逆上して、セレス姫のアソコに錫杖を突っ込んでー

”炎の魔法”を唱えたー
最高のゾクゾクを感じながら、燃え上がるセレス姫ー

「うふふふふふふふふ
 きもちいぃぃぃぃぃ きもちいいいぃぃいいいぁいぁああああああ♡♡」

セレス姫の身体が燃えていくー

美しい身体がー
燃えていくー

やがてーーー
大雨に魔力による炎が打ち消されたときにはー
セレス姫の身体は、燃え尽きていたー

よろよろと王宮の屋上から立ち去るイリーナ

王宮の大広間上の廊下を歩くー
大広間とは吹き抜けになっているその場所からー
大広間を見つめるイリーナ。

「---わたしが、、わたしが代わりに王宮を支配してやるー」
イリーナが邪悪な笑みを浮かべるー

自分はNo2の王宮巫女だったー。
王女セレスが死んだ今ー
No1はーーー

「---!」
激しい痛みが、イリーナの身体を襲ったー。

「え……」
イリーナが錫杖を落としーーー
振り返ると、そこにはーーーー

「------!!!!」

”王宮の魔女”の異名を持つ
第2騎士団長・カミーラの姿がーーー

「---姫様をたぶらかした悪女めーー!」
カミーラが、剣をふるうー。

城下町から民を避難させ終えたカミーラは
王宮へと帰還ー
そして、第3騎士団長エンダルフが向かったであろう
屋上を目指している最中だったー。

カミーラとエンダルフは、
巫女たち…イリーナとエリーゼのことも疑っていたー

そして、今、イリーナの”わたしが王国を支配してやる”という言葉を聞きー
カミーラはイリーナを斬り捨てたのだったー。

「あぁぁぅぅ」
吹き抜けから、大広間に真っ逆さまに転落して
地面に叩きつけられるイリーナ。

カミーラはそれを確認すると、
「--姫様!」と叫んで、屋上に向かうー

もうー
”手遅れ”な屋上にー。

「--ひぃい…はぁああ…あぁ…」
イリーナはまだ死んでいなかったー

ボロボロになりながらもー
イリーナは、大広間から移動するー

目から涙がこぼれて来るー

死にたくないー
死にたくないーーー

イリーナの魔力は、連戦で尽きていて
回復魔法も使えないー

イリーナは、もうろうとした意識の中ー
走ったー

そしてーー
イリーナが無意識のうちにたどり着いたその場所はーーー

”秘密の部屋”

かつてのーーー
イリーナに憑依している勇者クロウの幼馴染ー
エレンが幽閉されている場所ー。

「---エレン…たすけて…エレン」
イリーナが、涙を流しながらエレンにすがりつくー

だがー
エレンは”催眠漬け”になっていて、
もはや”虚ろな目”をしながら笑うだけだったー

近くには、以前、第6騎士団長だった女性騎士・イザベラもいるー。
エレンと同じ状況だー。

「エレン…エレン…たすけて…」
イリーナが血と涙を流しながらエレンにしがみつくー

「えへ…えへへへへぇ…♡」
エレンが涎を垂らしながら笑うー。

エレンは、もう、助けてくれないー
人として、壊れてしまったからー

「--ねーねー、クロウ」

「--さっき、セレス姫見て、顔、赤くなってなかった?」

「こら~~!この下心!」

「まったく~!エレンは乱暴だなぁ~!
 そんなんじゃ、姫になんかなれないぞ~!」

なぜだろうー

幼馴染のエレンとの会話が、頭に浮かんでくるー。

どうしてだろうー。
自分が、壊したのにー。
自分がエレンをこんな風にしてしまったのにー

イリーナはその場に倒れ込むー
もう、歩く力も残っていないー

傷だらけでー
ボロボロでー
鬼のような形相のイリーナが鏡に映るー

「--わたしも…なんだか最近よく眠れてない気がするんですよね…」

心優しかったイリーナの姿を思い出すー

「--あぁぁぁああ…」
イリーナはその場でうめき声をあげたー

死の間際だからかー
セレス姫が死んだからかー
こころが弱っているからかー

今ー
イリーナを乗っ取っている勇者クロウはー

”罪悪感”に襲われていたー

「--エレン…たすけて……」
イリーナがエレンに手を伸ばすー。

エレンは「えへへへへへっ♡」と虚ろな目で笑いながら、
イリーナの手をはねのけたー

「ご、、ごめんなさい…ごめ、、、、、ん…なさ…」
イリーナは、苦痛に表情を歪めたまま、
その場で動かなくなったー

・・・・・・・・・・・・・・

1か月後ー

クローバー王国の王宮及び、城下町は大打撃を受けたー

だが、生き残った第2騎士団長カミーラを中心に、
王宮の復興は続いていたー

魔王軍も、大将軍ゼルや、幹部クラスを大量に失い、
しばらく再起不能の状態ー。

「--わたしたちは、必ず、立ち直れる!」
第2騎士団長カミーラが、民衆たちや王宮の生き残りの兵士に向かって叫ぶー

おおおおおおおおお!!!
と、歓声が上がるー。

女王セレスの身体死すともー
魔王フォーティスは死なずー

新たな器を得-
新たな舞台を作り上げー

戦乱は続くー

復興と永遠の戦乱ー
そして、破壊ー

”この世界はー
 我の望む世界だー”

永遠の戦乱続くー
地獄のような、世界だー

第2騎士団長カミーラは、目を赤く光らせると
不気味な笑みを浮かべたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

勇者さまご乱心の最終章でした~!
こんなに長くお話を展開することになるとは、
最初に書いたときは思いもしませんでした!笑

最後のシーンは、
イリーナを斬ったあと、第2騎士団長のカミーラが
どこに向かっていたかを思い起こしてみると、
何が起きたのか想像できる…かもデス!

ここまでお読み下さりありがとうございました~!

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憑依<勇者さまご乱心>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

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    まあ、発言からして姫様の元に駆け寄っちゃったんだろうねぇ……

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    そうですネ~!
    駆け寄ってしまいました~☆!