<憑依>要求は永遠に

肝試しの最中に、
一緒に来ていた彼女が憑依されてしまうー。

憑依された彼女から突きつけられた”要求”とはー?

※リクエスト作品デス!

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どうしてこうなった…?

俺は、困惑していた。

俺…
為末 佳也(ためすえ けいや)は、
大学に通うごく普通の学生だ。

彼女の堀木 海羽(ほりき みう)と一緒に
肝試しに来たまでは良かったのだがー

そこで、俺はとんでもない現象に出くわすことになってしまった。

まさか、こんなことになるとは…

くそっ!
こんなことなら、廃虚で肝試しなんて
しなけりゃよかった!

「うふ…♡」

涎を垂らしながら、海羽は俺の方を見つめた。

彼女は今、あろうことか、
服を引き千切り、上半身裸の状態で、
胸を揉んでいるのだー。

普段は大人しく、心優しい海羽とは
思えない姿ー。

海羽はーー
この廃虚に巣食う怨霊に憑依されてしまったのだった。

「---くっ…み、海羽を返せ!」
俺は叫ぶ。

しかし、海羽は笑うだけで、
素直に身体を返すことには応じてくれそうにない

「いやよ…
 えへ♡ きもちいいからだ~♡
 ただでかえすわけないでしょぉ?」

海羽が不気味な笑い声を上げる。

その目は時々、赤色に光っているー

人ならざる何かに支配されている証ー

と、でも言えば良いのだろうか。

だが、海羽をこのままにしておくわけにはいかない。
どうにかして、海羽を取り戻さなくてはならないー

海羽が霊に憑依されている。
にわかには信じがたいことだー。

けれどー
今のこの異様な状況を前にー
俺には信じるほかに、道はなかった。

「あぁぁ…♡
 この女の下の方が濡れてきたぁ~」

海羽が嬉しそうに、スカートの中に
手を突っ込んではぁはぁ言っている。

「くそっ…」

躊躇なくスカートまで脱ぎ捨てる海羽。

下着姿になって、イヤらしい笑みを浮かべた美海は、
夜の廃虚であっても、美しかった。

「--な、、なんてことするんだ!」」
俺は思わず叫ぶ。

夜にこんなところに来るやつはいないと思うが
確実に誰も来ない、という保証はないー。

もしも、海羽が下着姿で微笑んでいる姿など
見られたらー
それこそ、海羽は終わりだ。

俺はー
どうすればいい?

強引に海羽を取り返すことなど、できるのか…?

戦うかー

それとも…?

俺は普段の美海の優しい笑顔を思い出すー。

あの笑顔を、失うわけにはいかない。
そう思った俺はー
気付いた時には、土に手をつきー
”土下座”していた。

「頼む…海羽を、返してください」
俺は、怨霊を刺激しないように、
丁寧な言葉遣いで言うと、
海羽はにやりと笑った。

下着は既にぐしょぐしょに濡れている。

「あ~あ…びちゃびちゃして気持ちわる~!」
海羽は下着をも脱ぎ捨てると、
生まれたままの姿になって、
月の下で微笑んだー。

俺は、思わず見とれてしまいそうになったが
今はその時ではないー。

「--そうねぇ…」
海羽が生まれたままの姿で、
近くの岩に座り、足を組む。

「--なら、私の指定するものを、持ってきてくれるかしら?」

海羽は、普段とは全く異なる口調で
俺にそう告げた。

「ものー?」

俺はそう言いながらも、内心、何を要求されるのかと
ハラハラしていた。

金かー?

俺の命かー?

それとも…。
廃虚に巣食う怨霊が何を欲しがるのか。
正直、俺には良く分からなかった。

しかし、生まれたままの姿を
恥ずかしがることなく晒し、海羽は
にやりと笑みを浮かべて言った。

その言葉は、俺が全く予想もしていない
言葉だった。

「--この女の、変わりの身体…
 ここに持ってきてくれるかしら?」

海羽が言うー

何だと?
俺は唖然とした。

海羽の代わりに、誰かを犠牲にしろ、、
そういうことだろうか。

「--な、、なんだって…そんなこと、、
 できるわけ…」

そこまで言うと、
海羽が「ひひひひひひひ」と笑い始めた。

普段の美海とは違う、不気味な笑い声に、
俺は思わず恐怖した。

海羽が目を赤く光らせて、
自分の身体を抱きしめながら言う。

「なら、この女の身体はわたしのものー。
 くふふふふふふ」
海羽が立ち上がる。

目のやり場に困る俺。

「---さぁ、どうするの?
 この身体の代わりを持ってくるの?
 それとも…?」

海羽の言葉に、俺は返事をすることが出来ずに居た。

海羽のことはなんとしても助けたい。
その気持ちに嘘偽りはないし、
どうにかしたい。

しかしー
だからと言って、他の人を犠牲にしなければならないとなれば
話は別だ。

「あ、そうそう」
海羽が自分の足を触りながら笑った。

「--わたしが、この身体に完全に馴染んだら…
 もう、この女は2度と目を覚まさない」

海羽が笑うー

絶望の宣告ー

「な、、、なん…だと?」

俺は恐怖を感じたー。

「そうねぇ、3日ぐらいかしら。
 わたしが、この女の身体に完全に馴染むのは。
 そしたら、もうわたしはこの身体から出ることもできないし
 この女も、永遠に目を覚まさない」

微笑む海羽。

俺の選択肢は、ひとつしか残されていなかった。

「---わ、、、分かった!
 つれてくりゃいいんだろ!」

俺は、そう叫んだ^

もう開き直ってやる。

彼女のために誰かを犠牲にする?
あぁ、そうだよ。
俺は自分勝手な人間だ!
でも、これしか方法がないんだ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝ー

昨日のことは、悪い夢だと思いたい。

けれど、ザンネンながら、夢ではなかった。

俺は、海羽に代わりの身体を
連れてくるように要求されて、
そのまま、生まれたままの姿の海羽を
廃虚に置いて、帰ってきたのだった。

逃げたわけではないー。

こうするしかなかったんだ。

あの場で力任せに海羽を殴ったりしたとしても
海羽が解放されるとは思えない。
むしろ、人の身体を乗っ取るようなやつだ。

逆にこっちがやられてしまうのがオチだ。

ここは、従うしかないー。

海羽と、俺自身のために
他の誰かを犠牲にする。

分かっている。
最低な行為だと。

けれどー。
そうするしかないー。

俺は、自分にそう言い聞かせながら
大学へと向かった。

「あ、佳也くん~!おっはよ~!」

背後から声をかけてくるおなじみの声ー。
麻綾(まあや)-。

おしゃれ好きで、強引な性格の彼女は
何故だか俺のことを気に入っているのか、
積極的に俺に話しかけてくる。

海羽と俺が付き合いだした後に、
麻綾は俺に告白してきたこともある。

二股なんか絶対にしたくない俺は、
素直に彼女がいることを告げて、
その想いに答えることが出来ない事を告げた。

だがー
それでも、麻綾は、俺を海羽から
奪ってやると言わんばかりに
積極的なアプローチを繰り返してきていて、
海羽も俺も正直困っていた。

「あれれ~?今日は海羽はいないの~?」
麻綾がにこにこしながら
周囲を見渡す。

「-----」

俺はーー
邪悪な考えが浮かんでしまった。

麻綾も悪い子じゃない。
だが、正直、鬱陶しいと思うことはあった。

もし、
もしもー

もしも、この麻綾を、海羽の代わりにすれば
海羽は解放されて、同時に麻綾もいなくなるー。

「----」
俺は、もうこの考えを振り払うことができなかった。

「---あ、あのさ…」
俺が口を開くと、
麻綾は「なぁに?」と微笑んだ。

「--ちょっと今日、大事な話があるんだ。
 時間あるかな?」

返事を聞く前から俺には分かっていた。

麻綾は、自分で言うのもなんだが、俺に夢中だ。
俺が誘えば、必ず来る。

「--うん、いいよ!」
麻綾は、俺の予想通りの返事をしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

廃虚にやってきていた俺と麻綾。

「-ちょ、ちょっと~!?こんなところで どうするの?」

廃虚に連れてこられたことに
警戒心をあらわにする麻綾。

ま、当然の反応か。

「ここここ、、、怖い…!」
普段、明るく元気な麻綾は震えている。

このままじゃ、海羽のところに
辿り着く前に、麻綾が逃げ出してしまいそうだ。

「も、もう帰ろうよ~!」
麻綾が言う。

「--ねぇ~!佳也君ってば~!」

ーー麻綾を帰らせるわけにはいかない。
俺はそう思い、振り返った。

「この先に、すっごく景色のいいところがあるんだ。
 そこで…麻綾ちゃんに…」

俺はわざと顔を赤らめた。
麻綾も顔を赤らめる。

俺が告白するー
麻綾にはそう錯覚させておこうー。

そしてー
ついに、俺は、海羽の身体を奪った亡霊のいる場所に
辿り着いた。

「え?景色のいい場所ってここ?」

立ち止まった俺を見て戸惑う麻綾。

ごめんな…。
俺は心の中でそう思った。

確かに、俺と海羽の仲を邪魔してくるのは事実だがー
別に、麻綾は悪い子ではないー
むしろ、純粋でいい子だー。

けど…
海羽を救うためにはー。

「---ね…ねぇ、佳也くん?」

麻綾が少し青ざめた様子で尋ねてくる。

こういう場所は苦手なのかもしれない。

「--ふふふ…来たわね?」
物陰から海羽の声がした。

昨日と同じ、生まれたままの姿で、
俺と麻綾の前に姿を現す海羽。

お風呂にも入れる状態じゃないからかー
身体が汚れている。

「--み、、海羽っ?」
麻綾が口元に手をやって
驚いた様子で叫ぶ。

当たり前だー。
大学の同級生が、全裸で姿を現せば
誰だって驚くだろう。

「ーーーど、、、どういうことなの?」
麻綾は困惑している。

「---ごめん。…」
俺は頭を下げた。

麻綾はわけが分からない、という表情だ。

俺だって、わけが分からない。
海羽と肝試しに来ただけなのに
こんなことになるなんて。

「あら…それがこの女の代わり?
 なかなか可愛いじゃない」

海羽が麻綾の方をイヤらしい目つきで見つめる。

「---ふふふ…素敵ね
 あなたもわたしと同じように、
 器になるのよ…」

海羽が涎を垂らしながら微笑んだ。

俺も、思わず、その海羽の仕草に
恐怖を感じてしまうー

明らかに正気ではないのが
伝わってくるからだー

「い…いや…!」
麻綾がおびえる。

「--ど、、どういうことなの!ねぇ!!」
麻綾は泣きながら俺の方を見た。

その目には
恐怖や
困惑ー
俺に騙された怒りー

色々な感情が込められていた。

「--ごめん。
 海羽を取り戻すためにー
 犠牲になってくれ!」

俺は麻綾の表情を見ずに叫んだー

恨むなら、
恨んでくれー。

でも、それでもー

「きゃああああああっ!」
麻綾の悲鳴が聞こえる。

ごめんー

俺は心の中でそう叫んだ。

「ああああああ…は、、入って、、入って来ないでぇ…」

泣きじゃくる麻綾。
次第に悲鳴が弱くなっていくー

そしてー

やがて悲鳴は、笑い声に変わった。

「うふふふ…ふふふふふふ…
 あははははははは~生身の女体だぁ~!」

麻綾が笑う。

俺は、海羽の方を見た。

しかしー
海羽もニヤニヤしているー

「---ど、、どういうことだ!?」

俺は叫んだー

代わりの身体を持って来れば、
海羽は解放されるはずではなかったのか。

「あ~~あ…」
海羽が笑う。

「---わたしのために持ってきてくれたからだ~
 別のやつに取られちゃった」

笑う海羽。

麻綾も笑う。

「--ひへへへへへ!
 こ~んなエロい身体があるなら~!
 黙ってるわけにはいかねぇぜ~!」

服を引き千切りながら麻綾が笑うー。

「--な、、や、、約束が違うぞ!」

俺は叫んだ―。

「--仕方ないじゃない。
 わたし以外にもここには霊がたくさんいるの。」

海羽は高飛車な様子で笑った。

「--他の霊に身体取られちゃったんだから~
 仕方ないよねぇ!きゃははははははっ!」

「お…おい!ふざけるな!
 頼む!海羽を返してくれ!おい!」

俺は海羽に必死に食い下がった。

しかしー
海羽は俺を振り払うと言った。

「返してほしければ、代わりの身体を
 持ってきなさい」

海羽の言葉に、
俺は、こいつが、海羽の身体を返すつもりがないことを悟るー

でも、それでもー
俺は、海羽を見捨てることは出来なかった。

「わ…わかった…連れてくるから…!
 今度こそ、海羽を返してくれよ」

その言葉に
生まれたままの姿の海羽と麻綾が笑う。

二人とも、目を赤く光らせて微笑んでいるー

「くそっ!」

俺は叫んだー
どうすることもできない自分の無力さを
呪いながらー

そしてー
翌日ー
俺は、大学の別の同級生をつれて、
廃虚へとやってきていたー。

また”同じこと”が繰り返されるー

なんとなく、そう分かっていたがー
それでも、俺はーー

それでも俺はー
海羽を救いたかったー

そしてー
3人の生まれたままの姿の彼女たちに
笑われてー

俺はまた、次の身体を、
廃虚に運ぶことになるー

やつらの要求は終わらないー
永遠に…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

リクエスト題材の作品でした~

リクエストの原文は

”肝試し
例の如く、いかにも出そうな廃墟にて、
彼女や幼馴染が憑依される。
当然、彼や幼馴染は言いなりになるしか無かったが、
実は漂ってる霊はたくさんいて、状況はさらに悪化していく。
つまり、憑依された娘「新たに変わりな娘連れてきなさい。
そしたら解放の事考えてあげる」
⇒言うがまま連れてくると憑依されるが、
体は返してもらえず。抗議するが、『考えてあげると言ったがするとは言って無い』
→以下ループ的な?”

というものでした!

今回は、お読み下さったような作品になりました!
リクエスト&お読み下さりありがとうございました!!

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コメント

  1. より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    リクエストありがとうございます。
    こう言う無限的なのも怖いかなと思いました。
    早くも熱くて堪らないので(誤字では無い)、少し涼しくなった感じがします。

    ホント小まめに水分取って休息しないとマジで魂が出ちゃいそうだ汗
    と言う事で自分は、こまめに飲料水を確保しております
    無名さんも倒れて魂が抜けちゃったらシャレにならないので、体調にはお気をつけて

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ありがとうございます~!
    水分補給、大切ですネ~!
    体調に気をつけながら頑張ります!