憑依暗殺部隊。
暗殺対象の近しい女性に憑依して、対象を暗殺する恐怖の部隊。
しかし、時に暗殺された人間に近しいモノが、恨みを抱くこともあるー。
”恨み”が憑依暗殺部隊の命を狙うー
憑依暗殺部隊の新作です。
※
過去作 混ざり合う意思 を読んでいるとより楽しめ(?)ます。
ただし、読んでなくても大丈夫です!
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彼女は一人、暗い部屋で
”銃”の用意をしていた。
自分がこんなモノを持つことになるなんて、
何か月か前まで、夢にも思わなかった。
銃の準備をしながら彼女は笑う。
身動きのとりやすい、色っぽい服装に身を包んだ彼女―、
北村 加奈(きたむら かな)は
数か月前まで普通の女子高生だった。
しかしー、彼女は偶然凶悪犯罪者の死亡事故の現場に
居合わせてしまい、凶悪犯罪者の残留思念に憑依されてしまう。
憑依された彼女は
その意思と”混ざり合い”、豹変した。
高校をやめ、家族をも手にかけ、
裏の世界で生きる少女に成り果てたー。
凶悪犯罪者の思考と、加奈の女の魅力を武器に、
裏世界の暗殺を数多くこなした彼女は、いつしか
裏世界でも有数の暗殺者に、短期間で上り詰めたのだった。
今回はー。
”憑依暗殺部隊”と呼ばれる暗殺集団の暗殺。
「--わたしが、負けるはずないもの―」
加奈がクスっと笑う。
その表情はまだ女子高生らしい可愛らしいモノだった。
加奈はふと部屋にある写真を見つめる。
”自分が手にかけた、家族の写真”
過去なんて捨てたはずなのにー。
なのにー。
「-----お父さん、、お母さん…」
加奈は目から涙を流した。
何で自分はこんなことしているんだろう。
どうして人を殺して、自分の親まで殺して・・・
わたしのしたかったことはこんなことじゃなかったはずー。
時々、加奈はそんな風に思う。
凶悪犯罪者の意識と混ざり合ったとはいえ、
彼女は彼女ーーー。
時折、本来の自分を取り戻しかけることもあるー。
けれどー。
「--わたしは暗殺者…」
表情を引き締め、加奈は呟く。
「私にーー、過去なんて必要ないー」
そう言うと、太ももに括り付けたホルスターに
銃をしまい、今の彼女のアジトを後にした…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今回は悪質ホームレス4名の暗殺。
ちょうど、女子高生4人がホームレスの根城の近くで今夜、
肝試しをするという情報が入っている。
その4人に憑依してホームレスを暗殺する。
かなり悪質な奴らのようだが、
油断しなければ問題ないだろう。」
アルファが4人の写真を移す。
4人とも、ホームレスらしい風貌だ。
それを見て暗殺部隊隊員のベータが顔色を変える
「ゲゲッ…ホームレスとヤルのかよ…
いくら女の子の体だからって、何かイヤだぜ…」
ベータがそういうと、ガンマが笑う。
「--ベータさんは、誰が相手でも、どんな
シチュエーションでも、その子の絶頂を堪能するものだと
思ってましたけど… 苦手分野もあるんですねぇ」
ベータが「俺にだって選ぶ権利はあるぞ!」と叫ぶ。
そんな二人を余所に、アルファは憑依対象4人を
スクリーンに表示した。
一人一人解説していくアルファ。
釘宮 姫莉(くぎみや ひめり)
世話好きの女子高生。
蒲生 志乃(がもう しの)
大人しい雰囲気のメガネっ子ー。
泉田 友菜(せんだ ともな)
ツンデレ系少女ー。
妻夫木 柚香(つまぶき ゆずか)
お嬢様育ちの世間知らず―。
「さて…私は誰でも構わん。
いつものように…」
アルファがベータとガンマの方を見ると、
二人は既に”好みの子”を指さしていた。
ベータはお嬢様育ちの柚香ー。
ガンマはツンデレ少女、友菜を…。
ベータは笑う。
「お嬢様育ちの世間知らず。
そそるねぇ!
それに、俺が選んでやることによって
”記憶を消されずに”済むからな!」
ベータがちらっとデルタの方を見る。
暗殺部隊の隊員、デルタは
”その少女が数十年かけて積み上げてきたものを
積み木のように一気に壊すことに興奮する”という
理由から、憑依から抜ける際にその少女の記憶を消去して、
離脱するー。
ベータとガンマからはその行為を”野蛮”と
罵られている。
「---…」
デルタはアルファの方を一瞬見た。
”アルファだけが”記憶を消すこと”の真意を知っているー。
デルタは世話好きの姫莉を指さした。
アルファはふっと笑うと、
眼鏡女子―、志乃の写真を見つめた。
「よし、今夜決行だー」
アルファの合図で暗殺任務の決行が告げられた。
しかし、彼らはまだ知らないー。
今回の任務は”上層部”から送られてきた正式な任務ではないー。
かって、憑依暗殺部隊が暗殺した
真柴一家の経営していた会社の専務が、
主の復讐のために仕組んだ罠であることを…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4人の高校生が人気のない廃工場にやってきていた。
「怖いよ~」
眼鏡っ子の志乃が言う
「大丈夫、大丈夫!オバケなんかいないよ!」
姫莉が笑う。
その顔は自信に満ち溢れている。
「オバケなんていませんわ!」
お嬢様育ちの柚香が言う。
「・・・・・こ、怖くなんてないんだからね!」
ツンデレの友菜が手を震わしながら言うー。
彼女らはーーー
オバケよりも恐ろしいものに狙われていることを
知らなかったーー。
「ひっ!?」
眼鏡っ子、志乃が声を上げる―。
アルファが憑依をし、一瞬で全てを支配した。
「どうしたの?」
姫莉が訪ねる。
だが、志乃は愛想なく「何でもない」と答えるだけだった。
アルファの憑依は一瞬だー。
「な、、、何??
わ、、私の中に何かが…
なんですのこれ? あ、、、あ・・・」
お嬢様育ちの柚香が悲鳴を上げている
「ちょ、ちょっと?」
混乱する姫莉。
しかし姫莉にも、既に”デルタ”が憑依していた。
デルタは暗殺の瞬間以外、本人の意識を残したままにし、
自分は心の奥底に潜んでいる。
「あぁっ…いい!全部流れ込んでくる!
この子の歴史が一瞬で!
この子の全部が、数秒で、この手に!」
ガンマに憑依された友菜が笑う。
ガンマはー。
憑依対象の全ての記憶を読み取り、
それが流れ込んでくる瞬間に快感を見出している。
さっきまでのツンデレ風な印象とはガラリと変わって、
友菜は楽しそうだ。
「うひひひひひひっ!
この体でたっぷり遊んであげますわ!」
お嬢様言葉で喜ぶ柚香(ベータ)
ベータはドストライクの少女の体を乗っ取り、
上機嫌だった。
先ほどまでの上品な感じは失われて、
欲望に満ちた瞳で笑う柚香。
そんな柚香を含む3人に、
志乃(アルファ)は頷き、
すぐそばの廃墟となった研究施設へ入るように促す。
さっきまで怯えていた志乃はー
冷徹な暗殺マシーンと化したのだった。
廃墟の研究施設の中を根城にしている
ホームレス4人組。
それが今回の暗殺対象だ。
しかしーー
「ホームレスなんて、どこにもいませんわ!」
柚香が言う。
「---ちょ、、、ちょっと、、、な、、なに…?
私の体が勝手に…?」
デルタに憑依された姫莉は
意識だけ残されたまま、体を操られて戸惑う。
「------」
志乃が眼鏡越しに鋭い視線で周囲を警戒している。
その時だったー
突然、スポットライトがあたり一面に照らされた。
色とりどりのスポットライト。
「なんだ!?」
思わずお嬢様言葉で話していた柚香(ベータ)が
素を出して叫ぶ。
すると、一人の男が、正面の高台の上に姿を現した。
研究所内の演説をする場所のようだー。
「---初めまして憑依暗殺部隊のみなさん」
初老の男はニヤっと笑みを浮かべた。
そして、、、
「--君たちに暗殺された真柴一家が運営していた会社の
専務ー 田尻 紀介(たじり のりすけ)と申します」
田尻専務はふかぶかと頭を下げた。
「真柴…?」
アルファが記憶を呼び起こす。
かって、大企業の創業者一家を暗殺したことがある。
そいつらの名前が、真柴一家だった気がするー。
「君たちが真柴会長らを暗殺したおかげで私の人生は狂った!
会社は倒産し、私はお役御免だ…。
そして私は調べた。あらゆる裏世界の情報網を使って、
真柴会長らを殺したのはアンタら、憑依暗殺部隊だとなー」
アルファはその言葉を聞きながら気づいた。
”これは、罠だとー”
ホームレスなんかいない…
真柴工業の専務が、自分たちを誘い出すための罠ー
志乃(アルファ)は呟く。
「総員、たい…」
”総員、退避”
アルファは憑依した女性の体を捨てて
離脱するように命じようとした。
しかしー
「---!?(出れないー?)」
いつものように体から出ようとしても
抜け出すことができないー。
そんなアルファの様子を見て田尻専務は笑った
「無駄ですよ…
この施設内に”特殊な電磁波”を発生させておいた。
これで君たちはその体から抜け出すことはできない。
そして…
その体が死ねば、きみたちも体と共に死ぬ―」
専務は、
真柴工業の技術力を結集させて、
”憑依から抜け出すことのできない特殊な電磁波”の
開発に成功した。
どんなに追い詰めても、憑依から抜け出されれば、
暗殺部隊を倒すことはできない。
だからこそー、これが必要だったのだ。
「おーほほほほほほ!
甘いですわ!
私たちをあなたみたいなおっさんがどうにかできると
思ってるんですの?」
柚香(ベータ)がお嬢様口調でノリノリで言う。
その言葉を聞き、専務は笑った。
「私はねー。
TSFと呼ばれるジャンルが嫌いでね。
そういうジャンルが好きな人間を嫌悪している。
そう、つまり君たちのような人間だよ。
女性に憑依して暗殺?虫唾が走るわ!」
そう言うと、専務は指で合図をした。
「君たちを殺すために、
腕利きの暗殺者4人を集めた!
存分に楽しんでくれたまえ!」
専務が高らかに宣言するー。
柚香はお嬢様言葉を忘れて叫ぶ
「なにっ!」 とー。
スポットライトが4人の暗殺者に照らされるー。
専務は、真柴工業時代、プレゼンや外部へのPRなどを
担当していた。
それゆえ、こういう演出が好きなのだ。
「貴方たちを殺す暗殺者を紹介しましょう!」
専務がふざけた調子で言う。
オレンジ色のスポットライトに大柄の男が照らされる。
専務は叫ぶ
「裏世界のスナイパー”ドルゴ13”」
ドルゴ13と呼ばれた男は鋭い目付き、
太い眉を憑依暗殺部隊に向けたー。
「相手は女かー。」
続いて青色のスポットライトが
紳士的な服装の優男に照らされる。
専務は高らかにその男を紹介する。
「元は、とある会社の御曹司!
今は殺し屋という異色の経歴の持ち主―。
通称、ずっと俺のターン!
”青馬社長”!」
社長は紹介されると「ワハハハハハ」と笑いながら、
宣言したー。
「俺は人を、カードで殺す!」 と。
専務はさらに続ける。
緑色のスポットライトに照らされた男について
語り出す。
「モナリザを愛する暗殺者ー
世良 股影(せら またかげ)!」
爆弾とモナリザの絵を持った男が不気味にほほ笑む。
そして、もう一人ー。
紫のスポットライトに照らされたー
その場に不釣り合いな少女が姿を現したー
「女暗殺者ー北村 加奈!
17歳にして現役の暗殺者!」
専務は紹介を終えると、
アルファたちの方を見た
「君たちはーこの4人に殺される」
邪悪にほほ笑む専務。
志乃(アルファ)は手を挙げた。
そして”散開”のサインを出した。
暗殺部隊の4人は咄嗟に4方向に散らばって駆け出したー。
その様子を見て、ドルゴ13がつぶやいた。
「一人一殺…」 と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--へへっ…しびれる!しびれる!
興奮する!
興奮しますわぁ!」
柚香(ベータ)が研究所内の通路を走りながら
一人笑う。
ベータにはたまらなく楽しかった。
この危機的状況が。
そしてこの状況でこれから、男とヤルことが。
柚香(ベータ)が一人で笑っていると、
そこに男が現れたー。
ーーードルゴ13だった。
柚香は笑うー
「お待ちしてましたわー」 と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
姫莉(デルタ)も今回ばかりは姫莉の意識を
完全に支配して走っていた。
とある会議室にかけ込んだ、
その時だったー。
会議室の真ん中でモナリザの絵を見つめながら
「ふぅぅぅぅぅぅ」とつぶやいている
暗殺者ー世良の姿があった。
姫莉と世良が目を合せる―。
そして、世良は静かにほほ笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
友菜(ガンマ)の前には、
カードを持った男が立っていた。
青馬だ。
「--私のお相手は貴方?」
ツンデレの友菜を演じながらガンマが笑う。
「--フン。」
青馬は愛想なく鼻で笑うと、カードを手に、
友菜の方へ歩み始めた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
志乃(アルファ)は
研究所内の、広い部屋に出ていた。
「・・・・・」
背後から人の気配がするー。
志乃が振り返ると、
そこには、女暗殺者、北村 加奈の姿があった。
「…さっさと終わらせたいの。死んでくれるー?」
加奈は愛想なくそう呟いた。
ーーー志乃(アルファ)は目を細めるー。
「----」
なぜ、こんな年齢の子が暗殺者に?
が、アルファは”そんなこと、私には関係ないか”と
加奈を睨みつけ、暗殺体勢を整えた…
②へ続く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
導入部分に時間がかかりました(汗)
お楽しみは明日からで…!
コメント
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続き楽しみです
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> 続き楽しみです
ありがとうございます!
明日からが本番です!
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どうなるのか楽しみ
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> どうなるのか楽しみ
ありがとうございます^^
次回以降は”濃い”展開が待ってますよ!