<憑依>悪の魂Inject~獣に汚染される少女~

検死官ジョーは、
109個目の悪の魂を女子中学生に憑依させようと動き出したー。

今日も、少女が
”悪の魂”に染められてゆくー。

過去の”悪の魂”はこちらからどうぞ!

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夕暮れの屋上ー。

検死官ジョーは、
哀愁漂う表情でワイングラスを片手に
夕日を見つめたー。

「----」
ジョーは目をつぶる。

「私ね、介護施設で働こうと思ってて、
 そのために今も色々勉強してるの」

妹の麻里のことを思い出す。

ジョーにとって天使のような存在だった麻里。

しかし、ジョーはその”天使のような妹”に
悪の魂を憑依させたら、どうなるのかー。
そして、妹なら悪の魂を克服できるのではないかー。

そんな思いを抱き、悪の魂を妹に憑依させてしまったー。

「介護の勉強もやめてやったわ!
 自分じゃ何もできないくせにあいつら
 人ばっか頼って!
 超むかつく!」

悪の魂に侵食された麻里の言葉を思い出すー

ジョーは夕日差し込む、自宅の屋上で
一人涙を流したー。

「---必ず、私が助けてやるからなー」

自分で悪の魂を妹に投げ込んでおきながら、
ジョーは、そう呟いた。

ジョーは、自分勝手な男だった。
そしてー自分の都合の良い方向に物事を
解釈する男だったー。

「----」
妹の死体から取り出した悪の魂を手に持ち、
夕日の方へと向けるー

「ほらー、見てごらん。
 夕日が綺麗だー」

ジョーが一人笑みを浮かべるー。

「また、一緒に綺麗な風景を見よう、麻里」

魂にそう語りかけて、悪の魂をやさしくなでるジョー。

ジョーは思う。
早く”悪の魂”の憑依実験を繰り返して
”悪の魂”から妹を蘇えらせる方法を見つけ出さなくてはー

ジョーは夕日に向かって、ワイングラスを乾杯すると呟いた

「正義(ジャスティス)は、勝つー
 乾    杯!」

ーーーと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジョーはとある中学校に来ていた。

中学3年生の
由梨原 沙里(ゆいはら さり)

ジョーの今回のターゲットだ。

心優しく、暴力や悪口を嫌い、
誰からも愛される清楚な美化委員長。

今日も笑顔でクラスメイトと優しく談笑していた。

「---楽しそうで何よりだ。」

ジョーは姿を消しながら呟いた。

「ーーー穏やかな日常こそが、
 君にとって楽しい日々なのだろうぅ?」

ジョーは、ターゲットの女子中学生、沙里に顔を近づけて笑うー。

だが、沙里にその言葉は届かないー。
ジョーが姿を消している間は、
何人たりとも、ジョーを認識できないのだ。

「---私の”楽しみ”は何だと思う?」

ジョーが問いかける。

むろん、沙里には聞こえていない。

だが、ジョーは満足げにほほ笑むと叫んだ。

「君のような、美しき存在が、
 ”悪の魂”によって浸食され、壊れていく様を
 見ることだ!」

ジョーはそう言うと、目を見開いて、沙里の
頭に”ライオンの死体から抽出した悪の魂”を
放り込んだ。

「さぁ、乗り越えて見せろー。
 悪の魂を」

そう言うと、ジョーはニッと笑みを浮かべて
姿を消したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

自宅でジョーは
ショパンの音楽を流しながら
インスタントラーメンを作っていた。

「---乾燥して固形となったラーメンがお湯で
 生き返る---
 元の麺に戻る―。

 ならば悪の魂からも元の人間に戻すことが
 できるかもしれないー」

ジョーはふと、
”自分は狂っているのか?”
そう思った。

だがー、
ジョーはすぐに笑みを浮かべた。

「--私は正気だ。」

自分はかって出会ったような”ヤバイやつら”とは違うー。

”名倉俊之”や”井澄ミスト”とは違うー。

ジョーは改めて思う。
”自分はまともだー” と。

「むっ」
空想にふけっていたジョーが、気づくと
ラーメンの麺は伸びきっていた…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二日後。

沙里は普通の生活を送っている。
今のところ異変はない。

「-思えば、動物の悪の魂を放り込むのは
 初めてだ。影響がないのかもしれんな」

ジョーがつぶやいたその時だった。

「---今日は焼き肉が食べたい!」

帰宅していた沙里が、母にそう告げた。

「なんか、無性に肉が昨日の夜から
 食べたくて…」

沙里が言うと、
父が立ち上がった

「よし、じゃあ、家族で焼き肉に行くか。」

ーーー肉か。

ジョーは思う。
”肉食のライオン”の悪の魂の影響が出始めたのかも知れないー と。

「美味しい!美味しい!
 ここの肉、超おいしいよ!」

中学生らしくはしゃぎながら焼肉を食べる沙里。
その食べ方はー少し異常だったー

元々あまり肉が好きではないはずの沙里が、
もの凄い勢いで肉を口に運んでいく。

どうみても、おかしいと思えるぐらいに。

肉をボロボロとこぼしながら
夢中になって肉を食べる沙里ー。

「ちょ、、もうちょっと、綺麗に食べなさいよ」
母が言う

「そろそろやめといたらどうだ…?」
父が言う。

だが、沙里は笑った。

「えへへー、
 なんか今日、まだまだ行けちゃう気分!」

嬉しそうに沙里は肉を食べ続けたー。

ーーさらに二日が経過した。

今までお菓子などを好んで食べていた沙里。
しかし、昨日からは全くお菓子を食べる気が起きない。
気が進まない。

昨日の晩御飯はオムレツだった。

オムレツの中の肉が美味しくてたまらなかった。

夜中ー
沙里は突然目を覚まし、
冷蔵庫に向かった。

その時、何故だか立っているのが面倒になり
沙里は四つん這いになって、移動し始めた

「あれぇ…?なんかこの方が楽だなぁ…」
そう思った沙里は四足走行のまま、
冷蔵庫に到着すると、冷凍庫に凍らせてあった
肉を取り出し、そのまま口に咥えた

「はふぅ…肉ぅ…」

幸せそうな顔で沙里はそのまま部屋に戻ったのだった。

そして、今日。
登校した沙里は
明らかに口数が減っていた。

「---どうしたの?元気ないね?」
友達の一人が沙里に尋ねる。

「え?---べ、別になんでもないよ」
沙里は久しぶりに言葉を発した。

だがー何故だろうか。
沙里には言葉を発するのが面倒で仕方が無かった。

考えがまとまらないー
肉を食べたいー
こんな狭いところに居たくない。
もっと解放感のある場所でー。

「グォォォォォォ…」

無意識のうちに沙里は鋭い目つきでうなり声を
あげていた…。

周囲のクラスメイト達は不思議そうに、
あるいは、気味悪そうにその様子を見つめた…。

「さ、、、沙里…?」
友達の一人が声をかけると、
沙里はいつものような笑みを浮かべたー。

ジョーは醒めた様子でそれを見ていた。

「ヒトはーー獣の魂にも勝てないのか。
 実に残念だよ。」

そう呟きながら、再びその様子を見つめ続けたーー。

そして、その日の放課後―。

「はぁ……あ~~~鬱陶しい!」
沙里が鋭い目つきで叫ぶと、
手を地面につけ、四足で歩き始めた。

「--ちょ、、ちょっと沙里!」
一緒に帰ろうとしていた友人が叫ぶ。

後ろからはスカートの中も見えてしまっている。

「---なに?」
沙里が愛想なく言う。
昨日ぐらいから、愛想もなくなってきているー。

「な、、なんて格好してんのよ!」
友人がそう言ったモノの、沙里は
「この方が楽よ」とだけ言って、
口の端から涎を垂らしながら、
そのまま四足で…しかも素早く走り始めた。

一人走り去る沙里を見て友人は首をかしげた

「ど…どうしちゃったの…?」

夜ー。

沙里は自分の部屋で全ての服を脱ぎ捨てていた。

「ぐるるるるるる…」

”ライオンの悪の魂”に染まってきた沙里には
”服”と言うものが鬱陶しくて仕方がなかったのだー

”エサは戦って奪い取れ―”

沙里の体の中が闘争本能で満たされていくー。

これは、一体…?

「ぐおおおおおおおおおお!」

沙里は体は折り曲げながら
うなるようにして叫んだー。

「--明日が、、限界か」
ジョーはかぶっていた帽子で目元を隠すと、
口元をゆがめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

沙里は服を着ずに外に出ようとしたところ、親に止められて
仕方がなく服を着て外に出た。

が、すぐに四足状態になり、そのまま学校へと向かった。

そしてー
朝教室についた沙里はーーー
もう”人ではなくなっていたー”

直立で立ち、座席に座る沙里ー。

可愛らしい容姿ー
けれども鋭い目つきー。

「さ、、、沙里ー?」
友人が心配そうに声をかけたときーー
”それ”は起こった。

「ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅう!」
沙里がうなり声をあげると、自分の制服を噛みちぎりはじめた。

「ひっ…」
「きゃああああ!」
「な、、、何やってんだ!?」

クラスメイト達が悲鳴をあげる。

そしてーー。

「ぐがぁぁあああああっ!」
沙里が歯をむき出しにして、友人に飛びついた。

その歯で友人にかみつく沙里ーー

「きゃあああああっ、は、、、はなして、、ねぇ、、、!
 何するの!???」

沙里はお構いなしにーー
人間の限界を超えた力で友人にかみついたー。

友人から血が流れ、友人の肉を噛みちぎった
沙里は美味しそうにそれを食べている

「ふぉぉぉぉぉぉぉ!」

ーーその時だった。

「何してる!油井原!」

先生が駆け付け、
友人にかみついた状態の全裸の沙里はそのまま取り押さえられて
連行されたー

数日後―
彼女は精神病棟に入院することになったー。

だが、もう彼女はー
二度と”人間には戻れないー”

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジョーは今やすっかり”時代遅れ”となっていた
アニメの流れるテレビを見つめていた。

数年前まで人気のキャラクターだった彼女。

だが、今では彼女のグッズなど、
ゴミのように中古屋に流れている。

ジョーが、テレビに手をかざす。
すると、テレビ画面から”魂”が出てきた。

「--私の力は、次元も超える」

ジョーがニヤっと笑みを浮かべた。

テレビから出てきたのは”悪の魂”

そう。ジョーはテレビに映る
”時代遅れとなった人気アニメキャラクター”の
悪の魂を取り出した。

ジョーは最近気づいた。
”時代遅れ”という”死”を迎えたキャラクターから
悪の魂を取り出せることに。

ジョーは”時代遅れ”となり
今やすっかり落ちぶれたアニメキャラの美少女の
悪の魂を手に持ち笑った。

「時代に置き去りにされたアニメキャラの怨念ともいえる
 悪の魂を憑依させたら、どうなるかなー?
 フフフ…」

ジョーの瞳が、狂気の輝きを放っていた…

おわり

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コメント

二次元から悪の魂を取り出してしまったジョーさん。
もはや、彼は止まりませんね…。

続きはそのうち!

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憑依<”悪の魂”>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    二次元に入るんじゃなくて二次元から取り出すとか新しすぎるw

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 二次元に入るんじゃなくて二次元から取り出すとか新しすぎるw

    どういうシステムになっているのかは謎です(笑)