憑依暗殺部隊への復讐ー。
男が目論んだ復讐は終わりを迎えるー。
そして、凶悪犯罪者の意識と混ざり合った悲運の少女もまた、
”終わりの時”を迎えようとしていたー。
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「おとうさん!宿題、後にしていい?
もう私、疲れちゃった…」
娘がめんどくさそうに言う。
だが父は言った。
「”中途半端”はダメだー。
一度やると決めたら、”最後までやり遂げろー”」
それが父の口癖だったー
”最後までやり遂げろー”
薄れゆく意識の中、
さっきまでごく普通の世話好きの女子高生だった
姫莉は目を開いた。
もちろん、姫莉の意識は無いー。
憑依暗殺部隊のデルタによって肉体も意識も全て支配されている。
彼女の体は、既にボロボロだった。
暗殺者・世良股影が投げた爆弾が直撃して、
もう立てないのだー。
肝試しに来ただけなのにー。
勝手に体を乗っ取られて―
勝手にこんな風にされてー、
自分じゃ、何も分からないまま死んでいくー。
”理不尽”
けれどもー
憑依暗殺部隊はそれを承知の上で、
その罪を背負う覚悟で、悪事に手を染める人間を
葬ってきた。
外道には外道をー。
ボロボロになったスカート、乱れきった髪の毛…
姫莉は、もう、元には戻れないー
「くっ・・・」
世良股影が姫莉を楽しそうに見つめていた。
「君は失格だ。
この子の手はーーー」
世良が、姫莉の手のニオイを嗅ぎ始めた。
「モナリザの手とは違う―」
世良はモナリザの絵を持ちながら笑う。
そして、姫莉(デルタ)を哀れみの目で見つめた。
「---ー狂人め…」
姫莉は吐き捨てるようにして言ったー。
心の中で「わたし、シニタクナイー」と
叫んでいるような気がした。
だがー、もう遅い。
デルタは心を痛めながら、姫莉の本来の意識を抑え込んだ。
「狂人?違うな。
私はただ、静かに暮らしたいだけなんだ…。
殺し屋。人と必要以上に関わる必要のない素晴らしい
職業だ。そうは思わないか?」
世良がそう言うとつぶやいた。
「さよならだー」
世良が、刃物を姫莉に向けた。
姫莉は目を閉じたー。
”アルファー、先に地獄で待ってるぞ”
そう呟いたー。
だがー
”中途半端”はダメだー。
一度やると決めたら、”最後までやり遂げろー”
自分が娘に言った言葉が突然、頭に浮かんできた。
ーーーー!!
「---ふぅぅぅぅぅっぅ~~~!」
刃物を姫莉にふりかざす世良。
「そうだーー
中途半端はダメーーだったな…」
姫莉(デルタ)は最後の力を振り絞り、
自分が持ってきていた、小型のナイフを
世良の首筋に突き立てた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇ…、自分が自分で無くなるときって、
どんな時だと思う?」
女子高生の年齢でありながら裏世界に
身を投じることになってしまった
北村加奈はそう言いながら、志乃(アルファ)の方に
銃を放った。
「--私ね…
ある日、凶悪犯罪者の死亡事故の現場に
居合わせちゃったの…!」
加奈が自虐的に笑う
「その時にね、よく分からないけど、
その人の残留思念が私に憑依しちゃったみたい!
うふふ・・・
その瞬間からかな…
私の中には”二人分”の記憶が混在するように
なったのー」
志乃は、頭をフル回転させて、
北村加奈を毒で葬り去る準備を進めていた。
「私ー、本当は…
こんなことしたくない!
お父さんもお母さんも殺したくなかった!
でも、、、でも!!!!
そんな風に苦しんでる私が!
苦しんでる私を見ると!
たまらなく興奮するのっ!
うふふふふっ!」
加奈は分かっていたー。
自分は…凶悪犯罪者の意識と混ざり合ってしまった…
だから、こんな風に自分が変わってしまったのだと。
気づいていたー。
あんなに楽しい高校生活を、
あんなに幸せだった家族生活をー、
自分の手で壊したくなってしまった理由も分っていたー。
自分の中に入り込んできた凶悪犯罪者の意識が、
自分と混ざり合って…それで…
「ねぇ…自分の体なのに、自分で興奮するって、
おかしいと思わない?」
加奈が志乃(アルファ)の方に駆け寄りながら言う。
「---!?」
加奈がその綺麗な足で強烈な蹴りを志乃に喰らわせた。
「はぁっ…ごほっ…」
可愛らしい声で咳き込む志乃。
加奈はそんな志乃に近づいて
自分の足を挑発的に見せつけた。
「ねぇ、見て…
私の足…
きれいでしょ?
どう?興奮しない?
私、毎晩いっつも自分の体に興奮しっぱなし!
うふふ・・・
だってそうでしょ?
わたし、女子高生なんだから!
興奮せずにはいられないよね!
この髪、艶のある唇!
胸に、この足!たまんないよねぇ!
いや、たまんねぇよ!あはははははは!」
志乃は顔をあげた。
アルファは思う
(なんだコイツはー、
イカれているのかー?)
アルファの経験上、
今までに「イカレタ」人間は何人も相手にしてきた。
以前相手にしたホテル支配人の名倉俊之もその一人だ。
だが、この女はー。
「あははははははははっ♡
わたしの、いや、女の体、たまんないよぉ!
たまんねぇ♡ たまんねぇ!!!!」
加奈が女言葉と男言葉を交互に交えながら
黒いミニスカートのドレスを滅茶苦茶に弄んでいる。
「はぁぁぁ~~~~」
興奮に体を震わせた加奈が志乃の方を見る。
「うふふっ…
私は、北村加奈でもあって…
死んだ…凶悪犯罪者の男でもあるの!
ふへへへへ!女の子と混ざり合うのって
最高じゃん!」
志乃がふいに立ちあがって、持っていた毒カプセルを
加奈の顔面に押し付けようとした。
しかし加奈はそれに気づき、バック宙をして、回避した。
バック宙の際に蹴りが当たって、
眼鏡女子―、志乃のメガネが吹き飛ぶ。
「---チッ」
志乃(アルファ)は呟いた。
”憑依する子を間違えたなー” と。
志乃の体は視力が悪い。
眼鏡が飛ばされた今…。
ほとんど何も見えない。
「うふふふふふふっ!
私って、何であんなに真面目にやってたんだろうねぇ???
俺って…どうしてあんな野蛮だったんだろうねぇ…」
加奈が狂気を目に浮かべて、志乃の方に近づいてくる。
”最後は銃をアタマに撃ちこんでやるー”
加奈は笑った。
”最後に勝つのはわたしー”
混ざり合った二人の意識はー
完全にその”境界線”を見失っていた。
”心優しい優等生だった 北村加奈”
”凶悪犯罪者の 倉持幸雄”
混ざり合った二人はー、
もう、加奈でも、幸雄でもなかったーー
「あははははっ!
死んじゃえ!」
加奈がそう叫んだその時だった。
志乃が突然起き上がり、
目が見えないハズなのにー
加奈の方めがけて、毒液を飛ばした。
「ひっ!?」
毒液を浴びた加奈がその場に倒れる。
「-ーーー暗殺者は…
余計なことをペラペラしゃべらない…
よく覚えておけ」
志乃(アルファ)はそう呟いた。
ーー加奈の声。
声がアルファに加奈の位置を知らせてしまったのだった。
「あっ…あっ…あぁっ…」
体の痙攣が止まらない。
加奈は悟るーー
”自分はもう、死ぬーーー”と。
けれども、何故か清々しい気分だった。
本来の”心”を取り戻せた気がする―。
「---……わたし……死ぬの…?」
加奈が涙を目に浮かべて呟く。
志乃は、加奈に近づいて呟いた。
アルファは思う。
この子に何があったのかは分からないー。
けれども、こんなに優しそうで、穏やかな顔つきの子がなぜ―?
「……ああ」
志乃は手短に呟いた。
「---ー……でも、、いいや……
もう、わたし……何が何だか分からないし…」
加奈は苦しい息の中、ため息をついた。
頭の中がスッキリとしていくーー
あぁ、、やっぱり私は、、北村加奈なんだーーー。
そう思えた。
涙を目からこぼしながら彼女は言ったー
「わたしーー、天国でお父さんとお母さんに会えるかな――?
わたしが殺しちゃった……あやまらなくちゃ」
加奈の言葉に志乃は冷徹に呟いたー
「---暗殺者の行く先は地獄だ。。
会うことは永遠にできないー」
冷たいアルファの言葉ー。
アルファは”死にゆく人間”に、
甘い言葉をかけるのはー
”酷”だと思っていたー。
”甘い言葉”をかければ、これから死ぬ人間は、
未練からこの世にしがみついてしまうからー。
「-----馬鹿…」
そう言うと、加奈はそのまま動かなくなった。
志乃はそのまま立ち去ろうとした。
けれどー。
振り返り、眼鏡をかけなおし、加奈の傍に近づき、
見開いたままの目をそっと閉じてやった
「---眠れーー永遠に…」
アルファはそう呟くと、”次”の行動を始めた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くっそ!何故だ!何故だ!何故だぁ!」
モニター室で叫ぶ田尻専務。
雇った暗殺者4人は全滅してしまった…。
その時―
モニター室の扉が開いた。
ボロボロの服装でほほ笑む女性2人ー
お嬢様育ちの柚香(ベータ)と、
ツンデレ少女、友菜(ガンマ)だった。
「---あらあら、オコですの?」
柚香がほほ笑む
「し、、仕方ないわね!私たちが1回だけ遊んであげる!」
友菜も微笑んだ。
田尻は叫ぶ
「こ、、、このTSF野郎ども!このヘンタイが!
わ、、私によるな!」
だが、田尻の叫びもむなしく、
両側に立った柚香と友菜に抑えられた。
二人は、田尻専務の顔面に両側から胸を押し付けた。
「うふふふふふふ~
女子高生二人の胸に押しつぶされて死ぬ?
最高の死に方じゃありませんの??」
「わ、、、私の胸・・・・・
触っていいの…今回だけだからね!」
お嬢様とツンデレを演じながら、ベータとガンマは
田尻専務を圧死させた。
力無く崩れ落ちる田尻専務。
それを見て柚香と友菜はハイタッチした。
「イェイ♪」
そして、二人はそのまま女同士で熱いキスを始めたーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会議室。
志乃(アルファ)は
自分たちの”憑依状態からの離脱”を妨げる電波の発信源を突き止め、
そこに向かっていた。
だがー。
「-----デルタ…」
志乃は呟く。
通りがかった会議室には
血を流して既にこと切れている世良股影と、
無残に転がるモナリザの絵、
そして女子高生、姫莉の姿があった。
姫莉にはデルタが憑依しているー。
「---は……、、、アルファ……
ヘマこいた…」
姫莉が目から涙を流す。
これは、
デルタの涙かー
それとも姫莉のーーー
志乃は頷いた。
「私も必ずーー
必ずー
後から”合流”するーーー。
先に地獄で待っていろ」
そう言うと、志乃は目をつぶった。
側から見ると冷たい言葉ー。
けれどもー
アルファとデルタの間柄では、これで十分だった。
「ふふっ……了解……」
姫莉(デルタ)が穏やかな笑みを浮かべると
そのまま、ゆっくりと目を閉じた。
「------」
志乃(アルファ)は会議室を後にした。
そしてー
電波発信源を突き止め破壊し、志乃の体から離脱したーー。
志乃の倒れている場所にはーーー
数滴の水滴がー床に落ちていた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰還したベータとガンマに
デルタの死が告げられた。
「---ったく…
人の記憶なんか消してるからだぜ」
ベータがつぶやく。
デルタは”快楽のために記憶を消している”と
アルファ以外には説明していた。
自分の弱いところを見せないために―。
「-----」
アルファは、一瞬、デルタの過去をベータとガンマに告げようと思った。
だがー、それはしなかった。
デルタはきっと、それを良しとしないだろうー。
アルファは、幽体離脱をするためのカプセル装置に
入ったまま動かないデルタの体を見つめて静かに呟いた
「---ご苦労だったーーー。
眠れ…永遠に…」
そう呟くと、アルファはベータ、ガンマに顔を見せないように
足早に部屋から退出した・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上層部から呼び出されたアルファは、
次の任務の書類を渡された。
上層部の男は言う。
「ーーーーかなりの危険人物の暗殺だー」
机に写真を置く男。
アルファは写真の男を見つめる―。
次の対象ー
それはーーー
”検死官ジョー”
悪の魂と呼ばれる物質を人に憑依させて楽しむ
快楽主義者ーーー。
「危険な任務だー。
気を引き締めてかかれ」
上層部の男の言葉にアルファはうなずいた…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
検死官ジョーさんと暗殺部隊…
どうなっちゃうんでしょうね・・・(笑)
デルタさんや加奈、
前から出ている人物を終わらせる(?)のは
私としては少し寂しい部分もあったりします・・・
ご覧いただきありがとうございました!
<予告>
憑依暗殺部隊VS悪の魂
私は”力に屈しない―”
検死官ジョーの”執念”がアルファらを襲う―?
<掲載時期未定です!>
コメント
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加奈もデルタも死んでしまうとは。これから3人でやってくんですかね
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> 加奈もデルタも死んでしまうとは。これから3人でやってくんですかね
当面は3人になりそうですね。
ちなみに、
決して”最終回が近い”的な投げやり展開ではありません(笑)
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憑依空間全体でキャラが増えすぎたから自然淘汰されてる感ある( ˘ω˘ )
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> 憑依空間全体でキャラが増えすぎたから自然淘汰されてる感ある( ˘ω˘ )
買い過ぎたケチャップはゴミ箱に投げ捨てられるのと同じですね
(私が何言ってるかよく分からない笑)