<女体化>声だけ女体化してしまった部長

ある日ー、
とある企業の部長を務める男が女体化したー。

いやー…
”女体化”したのは”声帯”だけだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー」
とある企業の”部長”として勤務している男、
黒村 武明(くろむら たけあき)ー。

彼は、バイトからこの企業に入り、
その後契約社員、正社員登用と、下から上へとのし上がり、
部長にまで出世した40代後半の男だー。

”バイト”という立場からこの会社にいるからか、
どんな立場の相手に対しても、しっかりとした気配りができる男で、
部下からも信頼されているー。

「ーーさて、とー」
そんな彼は、今日も妻・雅美(まさみ)が作ってくれた弁当を食べ終えて、
ひと息をつくと、
「今日のポテトみたいなやつも美味しかったなー」と、弁当のことを振り返るー。

冷凍食品かもしれないが、
わざわざ用意してくれているのだし、
美味しければ武明としても満足だー。

そんなことを思いつつ、午後の仕事を始める武明ー。

そこに、20代の若手男性社員・市丸 裕太(いちまる ゆうた)がやってくると、
「部長、確認お願いします」と、
部署で必要な資料を完成させたらしく、それを持って来たー。

「市丸ー。いつも仕事が早くてたすかーーー あ????」

お昼まではー
”ふつう”の1日だったー。

そう、お昼まではーーー

言葉を止める武明ー。

目の前にいる若手男性社員の裕太も
「え?部長ー?何すか?今の可愛い声ー」と、
そう言葉を口にするー。

そうー、部長の武明が
とても可愛い声ー。
アニメ声のようなー、そんな女性声優のような声を出したのだー。

その外見とは、全く真逆のイメージの声が部長の口から出たことで、
部長本人だけではなく、周囲も戸惑っているー。

「ーーえー…いや、あれー?な、なんだこの声ー?え??」
部長の武明は、なおも可愛い声で何度か言葉を口にすると、
「ちょ、ちょっと待ってくれー」と、そう言いながら、
後ろを向いて何度か咳払いをしたり、
咳き込んだりして、おかしな喉の状態を直そうとするー。

しかし、その咳払いすら可愛い感じになってしまっていて、
若手男性社員の裕太は「えっ!?えっ!?部長!その声、ヤバくないですかー?
滅茶苦茶可愛いんですけどー!」と、興奮した様子でそう言葉を口にしたー。

「ーえ?お、おいー平気か?」
武明のことを昔から知る部署のエースを務める40代の社員が
心配そうに言葉を口にすると、
「あ、あぁ、栗岡(くりおか)ー大丈夫だー」と、そう言葉を口にするも、
その声はやはり”かわいい”ままだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーど、どうしてこんな声にー」
困惑した様子の部長・武明ー。

”声”だけが女体化してしまい、
”ごく普通のおじさん”な見た目に、
アニメ声のようなとても可愛い声が出るー。

見た目と声が完全に一致していない
混沌とした状態ー。

「ーあはは!部長ってばそんなに落ち込まないでくださいよ~!」
ギャルっぽい雰囲気の社員・美空(みそら)が笑いながら言うー。

「ーーーいやぁ…でも、この声じゃー…」
武明は心底困惑したような表情を浮かべながら、美空の方を見つめると
美空は「え~!でも可愛いじゃないですかぁ~」と、
そう言葉を口にするー。

「ーい、いやぁ…可愛いって言われてもなぁ」
声だけ可愛くなってしまった武明がそう言うと、
若手男性社員の裕太は、
「部長!ちょっと!」と、部長の武明を呼ぶと、
壁で仕切られたスペースまで部長を移動させてから
「ここに立って、少し喋ってみてください」と、
そう言葉を口にして、部長が見えない位置まで
立ち去っていくー。

「ーえっ!?お、おいっ!?」
”声だけ”女体化した武明の声が
そのスペースから聞えて来るー。

そんな声を聞いて、若手男性社員の裕太は笑うと、
「完璧っす!」と、そう声を口にしながら
戻って来るー

「か、か、完璧って何がー?」
武明はなおも自分の声に戸惑いながらそう言い放つと、
「姿さえ見えなけりゃ、完全に美少女ですよ美少女!」と、
嬉しそうに裕太は言い放つー。

「べ、別に美少女になりたいわけじゃないんだがー」
武明は呆れ顔でそれだけ呟くと、ふと、電話がかかってきたことに気付くー。

鳴っているのは社内電話だー。

いつものように、部長の武明は
「はい、黒村ですー」と、受話器を手にそう言葉を口にすると、
”え、あ~、部長はいますかー?”と、
別部署の部長の声が聞こえて来たー。

「ーーあ、えーっと…そのーこんな声ですが、私が部長の黒村ですがー」
武明は戸惑いながら、可愛い声でそう説明するー。

しかしー

”え??いやー
 部長に大事な話がー。
 部長をお願いできますか?”と、
相手の別部署の部長は困惑した感じの声を出したー

「ーーえ…ーーや、そのー
 こ、声はこんなですけどー、
 ぶ、部長の黒村ですー」

武明はなおもそう説明するー。

そして、「急にさっきから声がこんな状態でー」と、説明するも
相手の別部署の部長は
”いや、そういうのは困りますねー。部長はー?”と、
苛立ちを露わにしたー。

仕方がなく「ぶ、部長は今不在でー」と、そう伝えて一旦電話を切り、
慌ててその部署まで直接説明しに行ったものの、
別部署の部長は戸惑いつつ、こう言ったー。

「そんな声じゃ、仕事にならないだろうー?」
とー。

「ーーーいや、でもー」
その部長とは、それなりに話す間柄であるために武明は戸惑いながら
「と言っても、仕事を投げ出すわけには」と、そう言葉を口にするー。

しかし、別部署の部長は言うー。

”俺だって、お前の部署の社員がふざけてるのかと思ったんだー
 内部の人間はこうして実際に駆け付けて話をすればいいとしてもー
 普段、お前のことを知らない人間はどうする?”

とー。

”取引先との電話でも、その声で出るわけにはいかないだろ?”

その言葉に、武明は”確かにその通りだ”と、そう思いつつ、
自分の部署に戻ると、別部署の部長に提案された
”1回病院で見てもらった方がいい”という言葉に従うことにして、
早退して病院に足を運ぶことにしたー。

受付で手続きをするー
待合室で呼ばれた際に返事をするー
診察室に入って先生と話をするー。

がー、そんな合間にも、今の武明の
まるでアニメ声のような”女の声”は、
周囲の人々の注目を集めたー。

これで、見た目も美少女だったりすれば、
”悪い意味”での視線を浴びることはなかったとは思うー。

が、武明は良くも悪くも、
その見た目は”どこにでもいるおっさん”な見た目だー。

この見た目でアニメ声のような声を発されれば
当然周囲も”えっ!?”となってしまう気持ちは
痛いほど、武明本人にも分かってしまったー。

「ーー実は今日、昼頃から急にこんな声になってしまってー」
女声でそう言葉を口にする武明ー。

医師は驚いた様子で何度か瞬きを繰り返してから
「普段から、そのような声なのですか?」と、そう言葉を口にするー。

がー
「いやいや、違いますよー」と、そう言葉を口にしてから、
何とかスマホから、自分の声が聴けるものを見つけ出して、
それを再生しながら「これが、普段の声ですー」と、そう言葉を口にしたー。

医師は驚きながらも、武明の喉を調べてくれたー。

がー

「異常と言う異常は特に見当たりませんー。」
と、そう言葉を口にした上で、
「ーーこういう症状自体も、これまでに診たことも聞いたこともないのでー」と、
戸惑いを露わにしたー。

”そりゃ、俺だって聞いたことないさー”と、思いつつも、
先生の話を聞くー。

その上で、うがい薬など、”この状況”に効くのかどうか
サッパリ分からないものを処方されてしまったー。

そのまま”帰宅”すると、妻の雅美にも驚かれて、
現在高校1年の娘・真桜(まお)にも困惑の視線を向けられてしまったー。

「ーす、す、すぐに、治るからー」
戸惑いながら、声だけ女体化した武明はそう言葉を口にするー。

しかし、娘の真桜は「き、キモッー…」と、そう言葉を口にすると
「み、見た目と声が流石に合わなすぎでしょー」と、心底困惑した表情を
浮かべながら言葉を口にするー。

「ーそ、それはお、俺も思ってるけどー…
 でも、急にこんなー…」
可愛い声で必死にそう言葉を口にする武明ー。

がー
”すぐに戻れるから”と、何度もそう言葉を口にしてはいたもののー、
元に戻ることはできないまま、時ばかりが流れたー。

やがてー、会社で”専務”からの呼び出しを喰らうー。

「ーー喉の調子が戻るまで、しばらく休んだ方がいいだろうー」
専務はそう言葉を口にするー。

武明を気遣っているー。
そんな”風”に思わせつつも、実際には
”この声では働かせられない”とー、
会社に来るな、と、そう言われている気がしたー。

武明は渋々それに従うー。

病院で色々な検査をしたものの、原因は分からずに、
最終的に”退職”することになってしまい、
声だけ女体化してしまった武明は、
ついに職も失ってしまったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー」
長女の真桜は、自分の部屋で表情を歪めていたー。

真桜はーー
かねてから、一流企業で働く父・武明を
良く思っていなかったー。

なんとなく”自分は優秀”みたいなオーラを感じて、
真桜からすれば気に入らなかったのだー。

そんなある日、高校の先輩から”女体化薬”という
不思議な薬を貰ったー。

”祖父”の家がゴミ屋敷で定期的に掃除の手伝いに行っている先輩で、
祖父の家には”変なもの”がたくさん転がっているから楽しいー、とか
何とかで、よく変なものを学校に持って来るのだー。

そして、そんな先輩から”女体化薬”を貰ったのだー。

真桜からすればちょっとムカつくー、
そんな父に対するちょっとした嫌がらせで”女体化薬”なるものを
一滴だけ、父・武明が持って行くはずだった弁当箱に盛ったのだー。

もちろん、父が死んだりすることまでは望んでいないー。
事前に真桜自身が自分の飲み物に女体化薬を混ぜて飲みー、
”問題ない”ことは確認していたー。

がー、真桜は元々女であるために”効果”は何も発揮されずー、
何も知らずに女体化薬を盛られた弁当を食べた武明はー
”声帯”だけ女体化してしまったー。

本来、1本分飲む必要がある”女体化薬”を数滴
弁当に垂らしただけであったために、
身体そのものが女体化することはなかったものの
”女体化薬”を盛られた弁当は、喉を通過したことで、
最も近い声帯の部分だけが影響を受け、
そこだけ女体化してしまったー。

それがー…
父・武明が声帯だけ女体化してしまったことの真相ー。

娘の真桜も、慌てて”元に戻す方法”はないかどうかを調べ、
学校で先輩にも確認したものの、
残念ながら”既に手遅れ”だったー。

「ーーごめんなさいー」
真桜は、想像以上にその影響が大きくなってしまったことに
今更ながら後悔しつつ、
そんな言葉を口にするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ーーーーがーーー

それから数年ー

娘の真桜が当初抱いていたような暗い気持ちは消し飛びー、
女体化して会社まで辞める羽目になってしまった父・武明も
今や”新たな仕事”を見つけて、しかも
サラリーマン時代以上に稼げるようになっていたー。

その仕事と言うのがー”声優”だったー。

声優経験のない武明がいきなり活躍することは
”普通”であれば、不可能ではあったものの
”男なのにこんな、アニメ声みたいな女の声が出る”と
話題になって一気に拡散、
今では普通に美少女キャラクターの依頼なども舞い込むようになり、
災難からの逆転を、武明は成し遂げていたー。

「ーーってか、この子、CVお父さんだよねー?」
普段、アニメを見ない真桜がそう呟きながら
テレビに表示されている美少女キャラを指差すー

「ーそ、そうだよー ははー」
相変わらず声だけ女体化している武明はそう言うと、
真桜は少しだけ笑ってから「可愛いじゃんー」と、
そう言葉を口にしたー

おわり

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コメント

”声帯だけが女体化してしまう”という
マニアックな(?)感じの女体化モノを
1話完結で書いて見ました~!★

仕事はクビになってしまっても、
なんとか逆転できて、上手くやっていけそうなエンドに…★!

お読み下さりありがとうございました~!★!

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小説

コメント

  1. 葉月/リーフ より:

    すごく新鮮で面白かったです!
    見た目と声のギャップを持つ声優さんになって、話題になったらいいなぁ

    それと、女性が女体化薬を飲んでさらに美少女になる(年齢変わっても大丈夫)ってのも面白そうだと思った

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~~!★!

      たまには、特殊なシチュエーションも~★!と、いうことで
      書いてみました~!★笑

      確かにそれも面白そうですネ~!!