<皮>伝説の海底都市①~嵐~

とある豪華客船ー。
乗客たちが至福の時を過ごす中、
突然の悪天候に見舞われて、
船は制御不能に陥ってしまうー。

絶体絶命のピンチー。
そんな状況を救ったのは、”謎の海底都市”だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーまるで別世界に来たみたいだよねー」

豪華客船の内部ー。
豪華な船の中を探索しながら、
姉の福永 美彩(ふくなが みさ)が
嬉しそうに笑うー。

「ーははは、確かにー。
 っていうか姉さん、はしゃぎすぎだろー?」
男子高校生の福永 洋輔(ふくなが ようすけ)は、そう言葉を口にすると、
「え~?洋輔こそ、高校生らしくもっと楽しそうにすればいいのに~!」と、
そんな言葉を口にするー。

「ー高校生らしくってなんだよ」
洋輔は苦笑いしながらそうツッコミを入れると、
「え~?ホラ!わ~い!!!!タタタタタタタッ!! みたいなー」
と、姉の美彩が笑うー。

「いやいや、それもっと小さい子の反応だろー…」
どこか冷めた感じの洋輔はそう言うと、
「こう見えても俺も楽しんでるんだぜー?」と、そう返すー。

二人は、両親と共に
夏休みを利用して、豪華客船の旅を楽しんでいたー。

と、言うのも、両親の結婚30周年を迎えたためだー。

普段の日常では絶対に味わうことのできない
非日常を、存分に堪能する二人ー。

「ーーおい!船長を出せ!
 俺を誰だと思ってるー!?」

ふと、そんな声が聞こえて来るー。
美彩と、洋輔がその声がした方向を見つめると、
女性スタッフに詰め寄っている偉そうな雰囲気の髭の男がいたー。

「ー俺は、真柴グループの会長の弟の息子だぞ!!」
そう叫ぶ40代ぐらいの男ー。

「ーなにあれ」
美彩が呆れ顔で言うと、洋輔も呆れ顔で、
「ああいう迷惑なやつ、時々いるよなー」
と、そう言葉を口にするー。

そこに、この豪華客船の”船長”がやってくるー。

「ーお客様、どうかしましたかー?」
渋いおじさん、という雰囲気の船長、五十嵐 渉(いがらし わたる)が
そう言葉を口にすると、
「おぅ、あんたが船長かー」と、偉そうな男がそう言葉を口にするー。

絡まれていたスタッフの女性が
”部屋を移動したい、と言い出しましてー”と、そう報告すると、
「お部屋に、何か不都合がございましたか?」と、五十嵐船長はそう確認する。

しかし、偉そうな雰囲気の男は、
なおも不満そうな表情を浮かべたまま、
「うるせぇ!!!気が変わったんだよ!」と、そう叫ぶと、
部屋からの景色が俺の理想とは違って、どうのこうの、とそう言い出したー。

「申し訳ありませんがお客様、その部屋には
 既に別のお客様がいらっしゃいまして、移動は出来ませんー。」

五十嵐船長がそう伝えると、偉そうな男は不満そうに
「ーうるせぇ!その客を移動させりゃいいだろ?
 俺は真柴グループの会長の弟の息子でーー」
と、そう叫ぶー。

がーーー

「ーー柴犬グループだか何だか知らねぇが、
 お客様はみんな平等なんだよー。」
と、五十嵐船長が鋭い目つきでそう言うと、
真柴グループを名乗る男は、青ざめた様子で口を閉ざすー。

「ーーそれでは、海の旅をごゆっくりお楽しみください」
五十嵐船長は、元の口調に戻ってそう言うと、船の屈強な身体つきの警備員に対して、
「あの男が問題を起こさないか、見張っていて下さい」と、
丁寧に指示をして、そのまま立ち去っていくー。

「ーーケッー」
船長を前に、すっかりビビッてしまった様子の真柴グループを名乗る男は、
不満そうにしながら、そのままその場を後にしたー。

「ーせっかくの楽しい旅行なのに、ああいうのがいると超迷惑!」
姉の美彩が不満そうにそう叫ぶー。

隣にいた洋輔も「ーだよな」と、姉の言葉に賛同するのだったー。

そして、その数時間後ー。
それは、起きたー。

「どうなってるー?」
五十嵐船長が慌ただしく、操縦士に確認すると、
「ー分かりません!急に嵐がー」と、そう言葉を口にする。

五十嵐船長は目を細めながら、
「ーこの辺りで嵐は発生していないはずだったがー」と、
しかし、嵐はますます酷くなっていき、船は制御不能の状態に
陥っていくー。

五十嵐船長は緊急事態を前に、船員たちに的確な指示を下していくー。

その上で、乗客たちに対して
”嵐の中を通過中ですー。お部屋で安全な態勢を取り、
 指示があるまで部屋の中に留まって下さいー”と
そうアナウンスを入れるー。

そのアナウンスを自分の部屋で聞いた美彩と、
弟の洋輔は、戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーー嵐ってヤバくないー?」
美彩がそう言うと、
洋輔は「海の上じゃ、よくあることなんじゃね?」と、
そう返すー。

二人の両親も心配そうにしている中、
豪華客船が激しく揺れて、大きな音が聞こえたー。

そうこうしているうちに、廊下から「一部が浸水した」
「船体に穴が」と、そんな言葉まで聞こえ始めるー。

「おいおいー」
流石に洋輔もまずいと思ったのか表情を歪めると、
意を決して廊下に状況を確認しに行くために、部屋から外に出るー。

その頃ー、
操縦室では、五十嵐船長が険しい表情を浮かべていたー。

「何としても沈没は避けねばならないー。
 この近くに漂着できそうな島はあるか?」

五十嵐船長のその言葉と同時に、
船内で停電が発生するー。

「非常電源のシステムもダウン!」
船員の一人がそう叫ぶのを聞いて、
五十嵐船長は悔しそうに首を横に振るー。

「ーーー…残念なことだが脱出するしかないー。
 乗客乗員全員を船から脱出させるー。」
五十嵐船長は沈没を覚悟するー。

ならばせめて、乗客乗員含めて
一人の犠牲者も出さずにこの難局を乗り切ってみせる、と、
そう考えながら、行動を始めようと動き出す。

がーー…それも現実的には難しいー。
何故なら、外は大嵐ー。
救命ボートで脱出するのも事実上困難だった。
けれど、それでも座して死を待つことはできない。
できることは、何でもしなくてはー。

死をも覚悟する船長ー。

しかし、その時ー
”それ”は起きたー。

「船長!謎の光がー…!?」
船員の一人がそう叫ぶと、
海から謎の光が発されているのが見えたー。

「なんだこれは!?」
五十嵐船長がそう叫ぶと同時に、
船が急激に沈んでいくー。

「制御不能!」
船員が叫ぶー。

悲鳴も聞こえる中、
「いや、待てー!」と、五十嵐船長が叫ぶー。

海中に沈んだはずなのに、船は移動しているー。
しかも、まるで”バリア”が張られているかのように
船内に水が流れ込んでくることもなく、
船内の安全は保たれている状態ー。

「いったい、何が起きているんだー?」
船は既に全体が海中に沈んでいるー。

しかし、船は何かに導かれるかのように動き続けー、
どこかを目指しているー。

「ーー……ど、どうしますか?船長ー?」
船員の言葉に、さすがに戸惑いの表情を浮かべる五十嵐船長ー。

すると、やがて、海底に”都”のようなー、城のような場所が
見えて来たー。

「ーなんだ、これはー…」
呆然とする五十嵐船長ー。

すぐに「現在、状況を確認中です。乗船の皆様は
お部屋にて、お待ちください」と、そうアナウンスをするー。

それと同時に、”海底都市”のような場所に
船が入り込んでいくのを確認する船長。

船は海底都市の中に入ると、神秘的な雰囲気漂う
広い場所に停泊しー、
出入口が勝手に開いたー。

「ーーー…」
五十嵐船長が険しい表情を浮かべながら
「ー私が外の様子を見て来る」と、そう言葉を口にすると、
近くにいた副船長の女性ー、筒本 円花(つつもと まどか)が
「いえ、船長ーここはわたしが」と、そう言葉を口にするー。

「ーーいや、しかしー。
 君のことも、船員も、乗客も危険に晒すわけにはいかない」
五十嵐船長がそう言葉を口にするー。

副船長の円花はとても真面目で、優秀な人物だー。
が、五十嵐船長は副船長を危険に晒して、
自分が安全地帯にいる、ということはしたくはなかったー。

「ーーだからこそ、です」
円花はそう言うと、
「ーもしも何かあった時、船長がここにいなくなったらどうするんです?」
と、そう続けるー。

「そう言う時のための”副船長”だー。心配はない。君ならやれる」
五十嵐船長が、”私に何かあっても君なら大丈夫”と、そう言葉を口にすると、
円花は少しだけ笑ったー。

「でも、船長がここに残っていた方が乗客の皆さんが助かる可能性が高まりますー。
 それにわたし、5か国語を使えますからー、
 この先に誰かがいるなら、わたしが適任です」

円花は、”少しでもこの先の状況をよくできる確率”があるのは、
船長がここに残り、わたしが先に進むことだと、そう言葉を口にするー。

「ーーーー」
それでも、五十嵐船長は円花を含む、部下を危険に晒したくはなかったー。

とは言え、”確率”の問題で言えば、円花の言う通りなのも事実だったー。

「ーーわかったー。
 が、危険を感じたらすぐに引き返すんだぞ?」
五十嵐船長の言葉に、円花は静かに頷くと、
”謎の海底都市”内に停泊した船から外に出て、
先に進んでいくー。

「ーーーー」
船から離れて、先の部屋に進んだ円花は
「ー誰か、いらっしゃいますか?」と、そう言葉を口にするー。

しかし、返事はないー。
さらに奥の部屋に進むと、
ガラス張りとなっていて、海を一望できる幻想的な光景が広がっていたー。

「ーようこそー」
背後から声がして、円花はハッとして振り返ると、
そこには、立派なドレスを身に纏う若い女の姿があったー。

「ー!
 は、初めましてー。わたしたちはー」
円花は戸惑いながらも、相手が”ようこそ”と言って来たために
言葉が通じると判断して、冷静に自分たちの船の名前や自分の名前、
ここに来た理由を説明したー。

すると、「分かっていますよ」と、高貴な雰囲気の女は
そう言葉を口にしたー。

その上で女は言うー。

「わたしは、ここ、海底都市アイリスの女王ー」
女王を名乗る女は、そう言葉を口にすると、
笑みを浮かべながら
「あなたたちを歓迎しますー」と、そう続けるー。

円花は「ーあ、ありがとうございますー」と、
そう言葉を口にした上で、
自分たちの船の置かれた状況を説明ー、
さらには地上へと戻る方法はないかどうかを確認しようとするー。

すると、女王は笑みを浮かべながら、円花の方に手を向けると、
手から”謎の光”を放ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい!!!!いつまで待たせるんだ!!
 どうなってるー!?」

”真柴グループ”の会長の弟の息子を名乗る乗客、
真柴 芳樹(ましば よしき)が不満そうにそう叫ぶと、
スタッフが「落ち着いて下さいー」と、そう言葉を口にするー。

「ふざけるな!これが落ち着いていられるか!?
 船は沈没したのかー!?
 俺は真柴グループの一族だぞ!!!
 俺に何かあったらお前らは全員クビだ!」

真柴 芳樹が不満そうにそう叫ぶ中、
部屋の外に出て様子を探っていた男子高校生の洋輔と
その姉・美彩は、
不安そうな表情を浮かべるー。

さっき、船の窓から確認した外の景色は
完全に”海の中”だったー。

今は薄暗い空間に停泊している様子だったものの、
何が起きているのかは分からず、困惑している状態なのは事実だったー。

そんな乗客の混乱がさらに膨らんでいく中ー、
五十嵐船長は副船長の円花が戻ってきたことを確認したー。

「ーー船長ー。この先に海底都市のみなさんがいらっしゃいますー」
円花がどこか淡々とした口調でそう言葉を口にするー。

「ー海底都市の皆さんー?」
五十嵐船長は船から、船の外にいる円花に向かってそう確認するー。

「ーはい、わたしたちを歓迎して下さるそうですー
 まずは、みんなで話を聞きませんかー?」
円花のその言葉に、
五十嵐船長は少しだけ戸惑いながらも、
「”安全”は確認できたということだなー?」と、そう聞き返すー。

「ーはいー。わたしが安全を確認しました」
円花は即答すると、「さぁ、早く行きましょう」と、
少し強引な様子でそう言葉を口にしたー。

五十嵐船長は戸惑いながらも
「君と君はここに残れー」と、2名の船員にそう告げると、
そのまま、乗客たちにアナウンスを入れるー。

船が沈没したことー、
謎の海底都市にたどり着いたことー、
ここに人がいて、その人たちとこれから話をすることを告げるー。

どよめく乗客たちー。

が、船が海底に存在する謎の都市に停泊してしまっている以上ー、
それに従うしかなかったー。

そしてーー
乗客や船の船員たちが船から降りて来るのを見て、
副船長の円花は、後頭部のあたりを触りながら邪悪な笑みを浮かべたー

②へ続く

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コメント

謎の海底都市にたどり着いてしまった豪華客船…!
不穏な気配がしますネ~!

続きはまた明日デス~!!!

続けて②をみる!

「伝説の海底都市」目次

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皮<伝説の海底都市>

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