突如として嵐に見舞われた豪華客船ー。
絶体絶命の危機を迎える中、
豪華客船は導かれるようにして、謎の海底都市にたどり着いたー。
そこでは”女王”を名乗る人物が待ち受けていてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーこの先で、女王が待ってます」
副船長の円花は、五十嵐船長や乗客を
案内しながら、海底都市アイリスの中を進んでいくー。
まるでこの場所を元から知っているかのように
道案内をしていく円花を見て
五十嵐船長は立ち止まると、
「ー妙に、この場所の構造に詳しいなー?」と、
そう言葉を口にするー。
その言葉に背を向けたまま立ち止まる円花ー。
五十嵐船長は、他の船員や、乗客たちを守るようにして
背後に立たせながら、
自分が前に出て、”なぜそんなに詳しいのか”を、
円花に問うー。
すると、円花は苦笑いしながら振り返ったー。
「ーさっき、一度往復しましたからー。
その時に覚えたんですー」
と、そう言葉を口にしながらー。
「ーー…自慢みたくなっちゃって嫌なんですけどー…
わたし、暗記力は凄くてー…
ほら、色々な国の言葉を喋れるのもそんな特技のおかげですしー」
自分を指差しながら微笑む円花ー。
確かに、円花はとても物覚えが良いー。
そう言われてみると、さっき、一人で奥に向かった際に
ここを往復したのであれば、この複雑な建物の構造を
覚えているのもおかしな話ではないー。
「ーーーーそうかー。それならいいんだー」
五十嵐船長は100%疑いを払拭できたわけではないものの、
”船は沈没” ”海底に存在している謎の都市にいる”という状況を前に
この海底都市にいる存在に力を借りないと、
生きては帰ることができないと判断ー、
ひとまず、海底都市の”女王”に会って話をすることを改めて決意するー。
「ーーーーふふー」
前を向いた円花は少しだけ笑みを浮かべると、
その先にあった大きな部屋の扉の前で立ち止まったー
「この先で、海底都市アイリスの女王様が待っていますー
皆さんも、失礼のないようにしてくださいねー」
まるで、女王に仕えているかのようなそんな言い方に、
五十嵐船長は不安そうに表情を曇らせるー。
「ーーーー大丈夫かなー?」
姉の美彩が隣でそう言葉を口にしたのを聞いて、
弟の洋輔は”姉さんを不安にさせないように”と、
不安そうな表情は一切見せず、
「大丈夫さー。こんな豪華な建物を海底に建てられるぐらいの
技術があるんなら、きっと地上に帰る方法も見つけてくれる」
とー。
どこか冷めた一面もある洋輔は、
この状況でも、なおも動揺した様子は見せずに、
そう言葉を口にするー。
「ーーあはは、それならいいけどー」
姉・美彩が少しだけ笑うと、
洋輔は「地上に帰ったら100年ぐらい経過してたりしてな」と
冗談を口にするー。
「何その浦島太郎みたいな状態ー」
美彩もそう笑うと、立派な扉が開いてー、
その奥にはー、豪華なドレスを着た若い女性の姿があったー。
「ーー女王様ー
わたしと一緒に、船に乗っていた人たちですー」
副船長の円花がそう言葉を口にすると、
海底都市アイリスの女王は笑みを浮かべながら、
「突然の嵐に巻き込まれたと聞きましたー。大変でしたねー」と、
穏やかな口調で言葉を口にするー。
「ーーいえ。勝手に皆さんの土地に足を踏み入れて申し訳ありません」
五十嵐船長は、まず”海底都市”に勝手に足を踏み入れたことを謝罪するー
ここが何かは知らないー。
ただ、”勝手に足を踏み入れた”のは事実だー。
そのことは礼儀として詫びなければならないと五十嵐船長はそう思ったー。
「おいおいーここは何だ?あんたは誰だ?」
大企業”真柴グループ”の会長の弟の息子である真柴 芳樹が、
女王の近くに歩いて行きながらそう言葉を口にすると、
副船長の円花が「女王様に対して失礼ですよ」と、
まるで女王の側近かのように、そんな言葉を口にするー。
「へへーうるせぇよー
なんだよ、お前、こいつに忠誠でも誓ったのかー?」
真柴 芳樹は円花に対してそう言うと、
女王の方を見つめたー。
「ー俺ァ、地上じゃ有名な真柴グループの会長の弟の息子でなー。
早く地上に帰らないとみんな心配しちまうー。」
芳樹はそれだけ言うと、「ここは何だ?あんたは誰だ?俺たちが帰る方法は?」と、
質問をいくつも続けたー。
「ーーーー」
五十嵐船長は不満そうにその様子を見つめるー。
「あの人ー…」
船の中で真柴 芳樹に絡まれていた女性スタッフの冬美(ふゆみ)が
困惑した表情を浮かべるー。
すると、女王は、そんな失礼な真柴 芳樹に対しても
笑顔を振りまくと、
「分かりましたー。説明しましょうー」と、そう続けるー。
ここは、海底都市アイリスー。
かつて”伝説”とも言われた海底都市の一つー。
海底深くに沈み、人類とは接点を持たず、
独自の文化を築きあげてきたのだと言うー。
その存在は、海底都市アイリス独自の技術で
カモフラージュしていて、
人類が使う探知機などでは、”探知”されないように、
そんな仕組みが取られていて、
世間からは海底都市アイリスの存在は認知されていなかったー。
「ーわたしはここ海底都市アイリスの女王ー、
アイリーンと申しますー」
アイリス女王・アイリーンがそう名乗ると、
「あなたたちの船が沈没の危機にあるのを察知して
勝手ながら、皆さんを救出させていただきましたー」と、
たまたま海底都市アイリスが存在する海域で、沈没しそうになっていた
豪華客船を見つけて、それを助けたのだと、
アイリーンは説明したー。
「ーー…ーーー」
がー、その様子を見ていた美彩は、
ふと呟くー。
「あの人、どこかで見たことあるようなー」
とー。
「ーえ?」
弟の洋輔が聞き返すと、
近くのいた二人の両親も不思議そうな表情を浮かべるー。
「ううんー気のせいかもしれないけど」
美彩はそう呟きながら、
海底都市アイリスの女王、アイリーンの方を見つめるー。
「ーーってことは、地上に帰る方法はあるってことだな?」
真柴 芳樹がそう言葉を口にすると、
「えぇ。ただし、皆さんの船が地上に浮上できるようにするため
メンテナンスが必要になりますー。
ーー完了まで1週間程度お待ちくだされば、地上に帰ることができます」
と、女王アイリーンはそう説明したー。
「ー1週間もかよ!チッ、使えねぇなー」
真柴 芳樹のその言葉に、
女王の横に立っていた客船の副船長・円花が
怒りの形相を浮かべて芳樹に近付こうとするー。
が、それを女王アイリーンが止めると、
「ーーそれまでの間は、わたしたちなりにおもてなしをさせていただきますー」と、
そう言葉を口にすると、円花にお願いして、
隣の部屋の扉を開かせるー。
まるで”海底都市側”の人間であるかのような円花の振る舞いに
さらに不安を強めていく五十嵐船長ー。
「ーー皆さん、どうぞー」
そんな不安を余所に、円花はそう言葉を口にすると
豪華なテーブルに豪華な食事が並んでいる部屋に案内したー。
「ーーうぉぉぉぉぉ!すげぇ」
真柴 芳樹は途端にご機嫌になるー。
が、五十嵐船長は警戒した様子で、
「失礼ながら、我々とあなたたちの文化は違うー。
もしかしたら生物としての身体のしくみも違うかもしれないー
ここにある食事は、我々が食べても問題ないものでしょうか」
と、そう確認するー。
その言葉に、円花は「船長、せっかく女王様がー」と、そう言いかけたものの
女王アイリーンは笑みを浮かべながら
「皆さんが食べられるものをご用意させていただきましたー」と、そう口にした上で
「大丈夫ですー。毒など入っていませんよー?」と、
クスッと笑いながらそう言葉を口にしたー。
豪華な食事を前に、乗り気になった乗客や船員たちは
それを食べ始めるー。
五十嵐船長は少し表情を歪めながら、円花に近付くと、
「ーあの者たちに何かされたりはしていないか?」と、
そう確認するー。
「何かー?
ふふー問題ありませんよ?船長ー」
クスッと笑う円花ー。
五十嵐船長は”円花が偽物なのではないか”と、
そんな懸念を抱きながら、いくつか質問をするー。
「緊急事態だー。用心のために疑うことを許してほしい」
五十嵐船長はそう言葉を口にした上で、
円花に質問を続けるー。
仮に円花が”偽物”であれば、答えることができないであろうことばかりを
確認するー。
しかし、円花はちゃんと、”円花本人でなければ知らないであろうこと”を
答えて見せると、
「ーこれで、満足していただけましたか?」と、
不気味な笑みを浮かべながら、静かに微笑んだー。
「ーーー分かったー。すまない」
五十嵐船長は、円花は本物であると確信するー。
がー、五十嵐船長の前から立ち去る円花は
不気味な笑みを浮かべていたー
”無駄ですよー。この人間の記憶は、全て読み取れるのだからー”
円花はそう言葉を口にすると、後頭部のあたりを触りながら
”人間は、便利な器なのだからー”と、そう言葉を口にしたー。
豪華なもてなしを前に、豪華客船が海底に沈むという事態で
パニックになっていた乗客たちも少しずつ落ち着きを取り戻していくー。
「ーそれでは皆さんー、皆さんの船が地上に浮上できるように準備が
終わるまでの1週間ー、
この海底都市アイリスで、ゆっくりとお過ごしください」
女王アイリーンがそう言葉を口にすると、
真柴グループの会長の弟の息子である真柴 芳樹は
「ーー俺は、早く帰らないといけねぇんだよー」と、不満そうに呟くー。
がー、女王アイリーンは、芳樹に近付くと、
「ー真柴様には豪華な部屋をご用意してありますー
それに、お望みであれば、”可愛い子”もおつけできますがー?」と、
そう囁くー。
「ーへ、へへーマジかー」
真柴 芳樹はニヤニヤとすると、
女王アイリーンは静かに微笑むー。
すると、アイリーンは「各お部屋に皆様をご案内いたしますー」と、
そう言葉を口にすると、待機していた女たちが姿を現し、
船で同室だった家族などは同室に、
それぞれ案内していくー。
「ーーーー」
船で真柴 芳樹に絡まれていた女性スタッフ・冬美が
少し不安そうな表情を浮かべるー。
”ーーこの人たちは、わたしたちと同じ人間なのかしらー…?
それともー…?”
冬美は、そんなことを考えるー。
人間とは”異なる知的生命体”なのかー、
それとも人間がこの海底都市に住んでいたのかー。
一見すると、自分たちと”全く同じ”そんな風に見えるけれど、
何か不安を感じるー。
五十嵐船長も同感のようで、
「ー君も警戒を怠るな」とだけ小声で呟くと、
そのまま、海底都市の女性の一人に案内されて部屋へと向かって行くー。
案内されていく乗客たちを見つめながら副船長の円花は
「ーわたしも、”今は船員”なのでー」と、女王アイリーンにそう言葉を
口にすると、「ーーえぇ。あなたの部屋もあるわ」と、女王はそう言葉を返すのだったー。
”この身体”は既に頂いたー。
けれど、まだ船員として行動していないと怪しまれてしまうー。
円花はゆっくりと自分のために用意された部屋に向かって歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
窓の外には、海中の景色が広がっているー。
どこか、幻想的な水が流れているその部屋で、
洋輔の姉・美彩は静かに言葉を口にしたー。
「ーーー……やっぱり、あの女王、どこかで見たことあるー」
とー。
「ーえぇ?女王様に会ったことあるのか?」
弟の洋輔がそう返すと、
美彩はスマホを操作しながら
「流石に海の中じゃネットに繋がらないから確認できないけどー」と
残念そうに”ネットに繋がっていないスマホ”を見つめるー。
その上で美彩は言葉を口にしたー。
「覚え違いかもしれないけど、何年か前にわたしのバイト先の
先輩だった大学生の友達が”行方不明”になったことがあったのー」
とー。
「ーーーーーーふ~ん…それで…?」
洋輔は、その話が今の状況とどう繋がるのか、と思いつつ
そう呟くー。
すると、美彩は言ったー。
「ーその子、海に遊びに行っている時に流されて行方不明になったんだけどー…
あの女王が、その子にそっくりに見えてー」
美彩は、バイト先の先輩から当時、写真で見せられたその子と、
”女王”がそっくりな気がするのだと、そう言い放つー。
「いやぁー……さすがにそれは」
洋輔は、”他人の空似じゃないのか?”と、そう言葉を口にするー。
しかし美彩は、あの女王が
数年前に働いていたバイト先の先輩の友達ー…
海に流されて行方不明になったままの、宮下 雪菜(みやした ゆきな)なのではないかと、
そんな疑念を頭の中で打ち消せずにいたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーふふふふふー
女王アイリーンは、豪華な装飾が施された部屋で、
後頭部を触ると、”服を脱ぐ”かのように、皮を脱ぎ捨てるー。
中から出て来たのはー、
無数の触手を持つ、クラゲとヒトデが混じったかのような人型の
不気味な生命体ー。
床に崩れ落ちた”宮下 雪菜”の皮を見つめながら
女王アイリーンは、「あなたたちは、我々の器とエサー」と、
静香にそう囁くのだったー。
③へ続く
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コメント
恐ろしい海底都市に迷い込んでしまった人々…!
どうなってしまうのかは、
明日の最終回のお楽しみデス~!!
今日もありがとうございました~~!!

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