<皮>伝説の海底都市③~真意~(完)

②にもどる!

海底都市アイリスー。

突然の嵐に巻き込まれて、
謎の海底都市に救われた豪華客船の面々。

しかし、海底都市の本当の目的はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへへへへー…」
真柴グループの会長の弟の息子・真柴 芳樹は
”豪華な部屋”と称して案内された部屋で、
笑みを浮かべていたー。

そこに待ち構えていたのは、
たくさんの美女たちー。

芳樹は「ここの女王も、なかなかよく分かってるじゃねぇか」と
感心した様子でそう言葉を口にすると、
「この俺が、”誰”なのかをー。
 俺をどうもてなすべきなのかを」と、偉そうな態度でそう言葉を口にするー。

そこに、副船長の円花が姿を現すと、
芳樹は「あ?なんであんたがここにー?」と、不思議そうに首を傾げるー。

そんな芳樹を見て、
円花は笑うー。

「女王様に対する数々の無礼ーーー。
 あなたは万死に値しますー」
とー、そう言葉を口にしながら。

「ーはぁ?何言ってんだお前ー。
 ”女王様”だぁ?
 なんだよお前ー。
 さっそくあの女王に忠誠でも誓ったのか?」

芳樹がそう言葉を口にしながら、円花に近付いていくと、
円花はニヤッと笑みを浮かべると、口を開いたー

「ーー”食べて”良いとの仰せですーー
 存分に喰らいなさい」
とー。

「ーーあ?」
芳樹が表情を歪めるー。

それと同時に、部屋で待ち構えていた美女たちの後頭部が
割れるようにして、中からクラゲとヒトデが混じったかのような
人型の怪物が姿を現すー。

「ーー!?!?な、な、なんだこれは!?!?!?」
芳樹が悲鳴に似た声を上げるー。

クラゲとヒトデが混じったかのような化け物が
次々と近づいて来る状況の中、
芳樹は思わず悲鳴を上げて、
その場に尻餅をつくー。

そして、背後にいた副船長の円花に助けを求めると、
円花はしゃがみ込んで芳樹の胸倉を掴みながら
笑みを浮かべたー。

「ーーあんたたちは”器”と”エサ”ー」
円花がそう言うと、震える芳樹は
「な、何を言ってー…」と、そう言葉を口にするー。

「人間の女は、我々の身体によく適合してー、
 繁殖にも使えるー。
 だから、”器”にするー」

円花のその言葉に、芳樹はすっかり怯え切った表情を浮かべたまま
「ーー…あ…あ…あんたは誰だー!?」と、
目の前にいる円花に対してそう叫ぶー。

円花は笑みを浮かべると「ーこの女は、わたしの器になったー」と、
そう言葉を口にすると、円花は自分の後頭部に手を触れて
それを”脱ぎ捨てて”見せたー。

円花の中から姿を現したのは
醜悪な風貌のクラゲとヒトデが混じったかのような
人型の”怪物”ー。

「ーひぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
芳樹が泣きながら命乞いをするー。

そんな芳樹に対して、円花を乗っ取っていた
”海底人”は、不気味な”声”で言葉を続けたー。

「男は”エサ”」
とー。

海底人は、”人間”を器とエサにしていたー。

女は、”器”にー。
男は、”エサ”にー。

女の身体は海底人の能力で”皮”にして
まるでファッションのように身に着け、その身体を奪うー。
外見が”幻想的”であるという海底人の価値観からの理由と、
女の身体を利用することで、海底人は繁殖をすることができるために、
人間の女の身体は、器として利用されていたー。

一方で、海底人の繁殖には”男”は必要ないために
海底人たちは男の身体を乗っ取ることはせずに
そのまま”エサ”としていたー。

「ーーーぁ… ぁ……」
海底人たちに生きたまま喰われていく真柴 芳樹は
瞳を震わせながら、”これはきっと夢だー夢なんだー”と、
そう自分に言い聞かせるー。

けれど、これは夢ではないー。
真柴 芳樹はその人生を終えることになってしまったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

連日のように、豪華な食事が振る舞われる中、
船員や乗客は”少しずつ”支配されていったー。

男は喰われ、女は乗っ取られるー。

そんな中、
洋輔の姉・美彩は、海底都市アイリスの女王を名乗る
アイリーンに会いに行くことを決めていたー。

「ー姉さんーやめておいた方がいい」
洋輔はそう言葉を口にするも、美彩は
「どうしても気になるのー」と、そう言葉を口にするー。

「お父さんとお母さんには言わないでー
 二人とも、心配するからー」
美彩はそう言葉を口にすると、「大丈夫。必ず地上に帰れる」と
そう言葉を口にしてから、そのまま女王アイリーンの元に向かうー。

一方、真柴 芳樹に絡まれていた女性スタッフ・冬美は、
副船長の円花に違和感を抱いて、円花を尾行していたー。

そしてー…

「ーー明後日で1週間が経過しますねー。
 人間たちはどう誤魔化しますかー?」

円花が女王アイリーンに対してそんな言葉を口にするー。

アイリーンは笑みを浮かべながら振り返ると、
「ーそろそろ狩りましょうー」と、そう言葉を返すー。

「ーー本当は、もう少し”熟成”させたほうがいいのですけどねー
 あまり長い時間、誤魔化し続けるのも無理でしょうー」

女王アイリーンは笑みを浮かべるー。

人間たちに連日、豪華な食事を与えてもてなしている理由ー。

それはーー
”男”は、美味しいものを食べさせて”熟成”させることで
より極上の味に仕上がるからー。
人間が、家畜によいエサを与えて、より美味しく熟成させると同じー。

そして、”女”は出来る限り栄養を与えておくことで、
乗っ取る時に拒絶反応が出にくいー。
だからこそ、”熟成”させているー。

「ーこの人間も、最初は拒絶反応が強かったですからねー。」
副船長の円花は笑いながらそう言うー。

人間たちを船内からおびき出すために、円花の身体はその場で
すぐに乗っ取る必要があったー。
そのため、熟成させる時間がなく、乗っ取った直後は
強い拒絶反応が出ていて、円花を乗っ取った海底人は
苦しむ羽目になったー。

「ーーーーー…~~~!!」
そんな会話を聞いてしまった冬美は、慌てて逃げ出すと、
五十嵐船長に”報告”するー。

「ーやはりー……」
五十嵐船長はそう言葉を口にすると、
「今夜中にここを脱出するー」と、そう呟くー。

「けれど、どうやってー…」
冬美がそう言うと、
「ーー…分からないー。が、何とかしなくてはー」と、
五十嵐船長はそう言葉を口にするー。

そして船に2名の船員を残していて、
万が一の時のために可能な範囲内で脱出の方法を検討、
加えて救助を呼ぶ方法を探すように指示を出していたことを告げるー。

「ーまだ希望はあるー。諦めちゃだめだ」
五十嵐船長は、そんな言葉を力強く口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーお話とは、何でしょうー?」
女王アイリーンが微笑むー。

すると、洋輔の姉・美彩は、
アイリーンに対して、”宮下 雪菜さんー?”と、
そう言葉を口にしたー。

アイリーンは少しだけ表情を歪めるー。

が、すぐに笑みを浮かべると、
「ーわたしはアイリーン。海底都市アイリスの女王ですー。」と、そう言葉を口にするー。

しかし、美彩はアイリーンに対して
「宮下 雪菜さんじゃないんですかー?」と、
バイト先のかつての先輩から見せて貰った写真や、
失踪してみんな心配していたことを告げるー。

アイリーンはクスクスと笑うと、
「そうですかー。この”器”のことを知っているのですか」と、
そう言葉を口にするー。

「う、うつわー…?」
美彩が表情を歪めるー。

すると、アイリーン=宮下 雪菜は笑みを浮かべながら
「ーこの身体は、あなたの言う”宮下 雪菜”ですー
 ですがーー」と、そう言葉を口にしながら、
”皮”を脱ぎ捨てるー。

「ですがーーその身体は既にわたしのものー」
中から姿を現したクラゲとヒトデが混じった人型の生命体=海底人の
女王が姿を現すと、美彩は悲鳴を上げたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

五十嵐船長は海底都市アイリスからの脱出を
何とか実現させようと、動き出すー。

「ーー…くそっーだが、誰が支配されているのか分からんー…
 一体、どうすればー」
そう思いつつも、五十嵐船長は、
冬美と共にできる限りの乗客たちを引き連れて、脱出しようと
その準備を進めていくー。

冬美から聞いた話を総合すると、
既に、”男”の一部は喰われていて、”女”の一部は乗っ取られているー。
副船長の円花も既に乗っ取られているようだー。

”もっと早く気付いていればー…すまないー”
円花に対して、心の中で詫びる五十嵐船長ー。

がーー
その時だったー。

”ー皆さんー、船の整備が完了しましたー。
 地上へとお帰り頂く準備が出来ましたので、
 アイリス港へとお集まりください”

と、そんなアナウンスが入ったー。

”アイリス港”とは、海底都市内の
豪華客船が停泊している場所のことだー。

そこで、
女王アイリーンは、残る”エサ”を喰らうつもりだー。

五十嵐船長は「そうはさせるか…!」と、
アイリス港を目指すー。

そこには既に、たくさんの人々が集まっていて、
副船長の円花が乗客たちを船に乗せる案内をしていたー。

男たちを先に船に乗せ、
女たちを広間に残す円花ー。

が、そこに駆け付けた五十嵐船長は
「ーー待て!」と、そう叫ぶと、
そこにいた円花や、女王アイリーンが、五十嵐船長の方を見つめたー。

「ーこの者たちは、我々を喰らい、身体を乗っ取るつもりだー」
五十嵐船長は乗客たちに向かってそう叫ぶー。

しかしーー…

「ーあら、船長ー。
 助けてくれた命の恩人に対して、それは失礼じゃありませんかー?」
副船長の円花は冷たい笑みを浮かべながらそう呟くー。

「ーーーーーー…ふざけるな。
 海底人よー貴様らの目的は既に知れているー」
五十嵐船長が怒りの形相で円花を見つめると、
円花は「船長~~怖いですぅ~」と、ふざけた口調で笑うー。

その様子を見ていた洋輔が船に乗り込むのを迷っていると、
姉の美彩ー…

既に、女王アイリーンに会いに行った際に乗っ取られてしまった美彩が
「ーあの船長は頭がおかしいだけー。中に入って」と、
無理矢理、洋輔を船の中へと押し込もうとするー。

「ーーー」
”残りの男たち”は、食料として”冷凍”するー。
船に乗せて、海底都市内の冷凍庫に船を移動ー、
そこで冷凍するつもりだー。

「ーーでも、姉さんー」
船に乗っていない男は、洋輔と五十嵐船長だけー。

姉の美彩は「ーーいいから、乗れよ!」と、
声を荒げて洋輔を船の中に押し飛ばすー。

「ー姉さん!」
洋輔は困惑しながらそう叫ぶも、
美彩は船の入口を乱暴に閉めると、
「女王様!そいつ以外は全て乗せ終えました」と、
そう言葉を口にするー。

「分かりましたー。ご苦労様ですー」
女王アイリーンがそう言葉を口にすると、
五十嵐船長は「何をするつもりだ!」と、そう叫ぶー。

この場に残された女性客や女性スタッフらも戸惑う中ー、
女王アイリーンは言ったー。

「男たちは、エサー、女たちは、器ー」
とー。

隠れていた海底人たちが姿を現し、船の外に残っている
女性客や、冬香をはじめとする女性スタッフらを皮にして乗っ取っていくー。

男たちを乗せた船は、海底都市内の”冷凍庫”に向かって移動させられ始めー、
それを阻止しようとした五十嵐船長は、
必死に海底人たちを押しのけていくー。

がーー…

五十嵐船長の奮闘も空しくー、
五十嵐船長は副船長だった円花に取り押さえられてしまうー。

「ーー船長ーーーいい加減にして下さい」
円花はそう言葉を口にすると、
倒れ込んだ五十嵐船長の頭を踏みつけながら笑うー。

「ー”エサ”の分際で、見苦しいですよ」
円花のその言葉に、五十嵐船長は顔を上げながら
「ー目を覚ますんだー」と、円花に呼び掛けるー。

それが無駄であると分かっていてもー、
もう、どうすることもできないと分かっていてもー、
言わずにはいられなかったー。

今はもう、それしかできないからー。

「ーーわたしは、正気ですよぉ~?
 正気で、女王様にお仕えしているんですー」

乗っ取られている円花は煽るような口調でそう言うと、
五十嵐船長はその場で、近寄って来た”海底人”に捕食されてしまうー。

逃げ惑っていた女性客らが、ほとんど”皮”にされて支配されていく光景を
見つめながら、女王アイリーンは笑みを浮かべるー。

「ーーー」
そもそも、”船の事故”も、海底人たちが仕組んだことだー。
この周辺海域に儀式によって嵐を発生させて、
ここに豪華客船を導いたー。

「ーーふふふふー
 これで当分、食料と器には困りませんね」
女王アイリーンはそう言葉を口にすると、
ゆっくりとその場から立ち去っていくのだったー

おわり

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コメント

全滅エンドな結末でした~★!

海底都市に引き込まれた時点で、
もう逃げ場もないので、
どうにもならないですネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~!★!

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