<憑依>初詣の悲劇2024(前編)

また、初詣の時がやってきたー。

男にとって、1年に1度のお楽しみ、
”わらしべ憑依”の日がやってきたー。

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「ククククー」
彼…里中 俊夫(さとなか としお)は、
今年もお正月を迎えて、
邪悪な笑みを浮かべていたー。

彼の前には、”餅”ー。

彼は以前、餅を食べて喉に詰まらせて
死にかけた経験をきっかけに、
”餅を食べると幽体離脱する”ー
そんな、特異的な体質の持ち主となっていたー。

その理由は彼自身にも分からないが、
彼はそれ以来、お正月になると餅を食べて幽体離脱、
”わらしべ憑依”を楽しんでいるー。

わらしべ憑依とはー…
霊体になった状態で行きつけの神社に向かい、
”俊夫から見て一番ブスだと思った女”に憑依するところから
スタートする遊びだー。

その後、俊夫は乗っ取った身体で神社を徘徊、
”今、自分が憑依している身体よりも、ワンランク上の身体”を
見つけ次第、今憑依している身体を捨てて、その身体に乗り換えるー…

こうして、どんどん”俊夫から見て可愛い”身体へと移動していき、
最後に”今年の一番”を決定するー…
そんな遊びだ。

しかし、ここ2年は酷い目に遭っているー。

昨年ー、2023年のお正月には
せっかく可愛い身体を手に入れたのにも関わらず、
酔っ払いのおじさんにキスをされて、酔っ払いの身体に憑依してしまったー。

”身体を移動する条件”はキスであるため、
酔っ払いのおじさんにキスされた俊夫は、おじさんになってしまったのだー。
しかし、”神社を出たあとは、もう別の身体に移動しない”と固く、ルールを
定めている俊夫は、結局”2023年のベスト”をその酔っ払いのおじさんにしてしまったー…

ついでに、2022年の時もゴスロリ風の”男の娘”に間違えて憑依してしまい、
2年連続で”最後の身体”は男になってしまったー。

が、今年こそ失敗しないー。

「ーー今年は最強の美少女を見つけるぞ」
俊夫は嬉しそうにそう宣言すると、そのまま餅を口に運び、
そのまま幽体離脱して神社の方に向かった。

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”さて…今年はどうするかー”
俊夫は、いつもの神社にやってくると、霊体のまま
空中を浮遊しながら、最初に憑依する身体ー…
つまりは、俊夫から見て”一番ブス”に見える女を探すー。

”しかし、毎年この神社で俺が好き放題やってるのに、
 案外、悪い噂って立たないもんだなー”
俊夫は心の中でそんな風に思うー。

確かに、毎年のようにここで色々な人に憑依して、
時には騒ぎを起こしているのにも関わらず、
この神社には悪評は立っていないー。
それだけ、お正月にはみんな浮かれているということだろうかー。

”まぁ、多少頭のおかしな行動をしているやつがいてもー、
 みんなそこまで気にしねぇかー。
 憑依なんて、誰も考えもしないだろうしー”

そう思いながら、俊夫は”最初の身体”にふさわしい身体を見つけたー。

「へへ…ガリガリじゃねぇかこの女ー」
今年、最初に乗っ取った身体は、顔色も悪く、かなり痩せている
身体つきの女だったー。
顔立ちも”俊夫から見て”かなり微妙な感じで、顔色も悪いせいで
ゾンビのようにも見えるー

「よし、まずはゾンビ女からだー」
とても酷い発言を、その本人にさせてしまうー。
やはり、憑依というものは恐ろしいー。

「ーーって…コイツ、何か病気かー?
 すげぇ体調悪いぞー?」
そう思いながら、乗っ取った女の身体で
激しいめまいを感じながらよろめくー

「ーま、まぁ…俺には関係ねぇけど、
 さっさと”次”の身体を探すかー」

そう思いながら、女の身体でめまいと吐き気に耐えながら
ベンチで休憩していたおばあさんを見つけるー。

小汚い感じのおばあさんだが、
今にも倒れそうなゾンビよりマシだ、と、
よろよろそっちに向かって歩いていくー。

がー
その時だったー。

「大丈夫ですか~?」と、
ふと背後から声が掛かったー。

「ー!」
”ゾンビ”の身体のまま振り返ると、
そこには巫女服の女がいたー。

「ーあ、いえ、大丈夫ですー」
そう返事をすると、にこっと笑って
「体調が悪い時は無理なさらないでくださいねー」などと
優しい言葉を掛けて来る巫女ー。

”へ…へへ…可愛いじゃねぇかー
 でも、まだ”いきなりランクアップ”するわけにはいかないんだよなー”

そう思いながら、当初の予定通りおばあさんにキスをすると、
そのまま”ゾンビ女”の身体を捨てて、おばあさんに移動したー。

「ーっっ…これはこれで歩きにくいなー…
 やっぱ、歳を取るってのは罪だぜ」
おばあさんの身体でニヤニヤしながら、
ふらふらと歩きだす俊夫ー。

”ーん…待てよー?さっきの巫女、見覚えがあるようなー…?”
ふと、そんなことを思うー。

そしてー、俊夫は思い出したー

「あっ…あの巫女…!一昨年憑依した巫女じゃないか!」
そう言葉を口にする俊夫ー。

そう、2022年の元旦にここで同じように憑依を楽しんでいた際に、
俊夫はわらしべ憑依の途中であの巫女に憑依した。
確か、直前に憑依していた”アイドル”のファンで、あの巫女の方から
駆け寄って来たところ、憑依したのだー。

”ん~そうかそうか、あの女、ここの神社の人間なのかー”
俊夫はそう思いながら”前より可愛くなってるじゃねぇか”と、
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

あの時は名前すら知らないままだったが
今回は名前ぐらい確認しておくか、と思いつつ、
”薄幸そうな母親”にキスをして、おばあさんから身体を移動するー

「ママ…?」
隣にいた小さな子供が首をかしげるのを見て、
「わたしはママじゃありませ~ん!」と、突然声を上げて
そのままその場を立ち去るー。

急に母親に置いて行かれて、困惑の表情を浮かべて
すぐに泣きだしてしまう子供ー

「あぁ、あぁ、面倒くせぇー…
 騒ぎになる前に次の身体に乗り換えるかー」

そう思いながら、泣きだした子供を放置して、
次の身体を探すー。
早くしないと、子供から事情を聞いて神社の関係者に、
声を掛けられてしまう可能性があるー。

「ーお!あの身体でいいかー」
そう思いながら、友達とおみくじを引いている
女子高生ぐらいの子の方に迫っていくー。

可愛いかどうかー、と言われると微妙なラインー。
だが、わらしべ憑依は少しずつ俊夫から見て”上質な身体”に
移動していく遊びー。

まだ今年の遊びも始まったばかりだし、
”可愛いかどうか”ぐらいのラインがちょうどいいのだー。

「あ~!ウチ、大凶なんだけど~!」
ターゲットの女子高生がそんなことを口にすると、
隣にいた子が「ーわたしは大吉~!」と嬉しそうに笑うー。

”隣の子は可愛すぎるー。まだ憑依できるランクではないー”
見知らぬ母親の身体でそう言葉を口にしながら、
その子の背後から声をかけるー。

「ーーふふふ…大凶…これから起きることにぴったりだね」
とー。

「ーえ?」
振り返った”大凶”を引いたその子にキスをする俊夫ー。

今までニヤニヤしていた母親が意識を失って
その場に倒れ込みー、
大凶を引いた女子高生の身体に移動するー

「えっ!!?えっ!?麻恵(あさえ)ちゃんー、
 だ、大丈夫ー?」
大吉を引いた方の友達が言うと、
「ーーへへ…わたしは麻恵って言うんだね?」と、
ニヤニヤしながら麻恵に憑依した俊夫は確認したー

「え…な、何を言ってるのー?」
友達の困惑した表情ー。

そんな困惑した友達を無視して、
さっきまで乗っ取っていた母親が失神したままなのを
確認すると、そのまま麻恵はゆっくりと歩き出すー。

「え??? ちょ、ど、どこに行くのー?」
友達のそんな言葉に、
麻恵はニヤニヤしながら「便所だよ便所ー」と、
言葉を吐き出したー。

”へへーこんな年頃の子、便所とか言わねぇか”
そう思いつつも、そんなことはどうでもいい、と
次の身体を物色し始める麻恵ー。

そういえば、この女ー、
本当にちょっとトイレに行きたくなってるなぁ、と思いつつも、
「そういや、前に憑依のせいで漏らしたやつもいたな」と、笑うー。

ゲラゲラと笑いながら、年頃の少女を歩かせるー
俊夫はそんなことにも興奮しながら、
”次”のターゲットを見つめるー。

「お!大人しそうななかなか可愛い子発見ー」

俊夫から見て”中堅”ぐらいの可愛さだろうか。
そろそろあのぐらいのレベルの子に移動するのも良いだろうー。

そう思いながら、麻恵の身体でその女に近付いていくと、
その女は、一人泣いていることに気付いたー。

「ーーんんん?」
麻恵は少しだけ戸惑いながら、その女を見つめるー。

初詣の日に彼氏に振られたりでもしたのだろうかー。
それとも、何か別の理由があるのだろうかー。

いやー…

”俺にはどうでもいいことか”
そう思いながら、
「あの~泣いている途中悪いんですけど~」と、
麻恵の身体で声をかけたー。

すると、大人しそうなその女は振り返って、
慌てて涙を拭こうとしながら、
「は…はいー」と、律義に返事をするー。

「ーちょっと、わらしべ憑依にご協力お願いしま~す!」
麻恵はそんなことを言いながら、返事を聞く間もなく、
当たり前のようにキスをすると、
驚く女を離さないように抱きしめながら、
自分の魂が”そっち”に移るまでキスを続けたー

「ぁ…」
麻恵の身体がその場に倒れ込むー

「ーーは~… って、結構泣いてるじゃん
 この女ー」

喉の感じから、
”だいぶ泣いてたんだろうな、この女”と、思いつつも、
「ーーへへ…泣いたところを強引に乗っ取るのもいいよなー」と笑うー。

この子の身体からしてみれば
数秒前まで悲しい気持ちでいっぱいだったのに、
今は欲望で満ちているー。

きっと、身体も混乱しているだろうー。

そんなことを思いつつ、今まで使っていた麻恵のほうを見つめると、
麻恵は泡を吹いて痙攣していたー

「あらら…憑依に強い身体と弱い身体がいるんだよなぁ…
 まぁ、前もこういう子いたけど、死にはしないから、
 そこでしばらく痙攣しててくれよ」

新しい女の身体でそう言い放つと、
早速その場から移動を始めるー。

がーー
その時だったー。

「ーーあの~~~」

「ー!?」
女の声がして、大人しそうな女の身体のまま振り返ると、
そこにはー、巫女服の女がいたー。

2022年の時だったかー。
一時的に憑依したこともある女だー。

「ーーー今、見ちゃいましたー」
にっこりと笑う巫女ー。

「ーーえ…み、見たってー…?」
泣いていた女の身体で俊夫が戸惑いながら言うと、
巫女は笑ったー。

「ーー”身体”を乗り換えるところー」
とー。

「ーーー…!」
女の身体のまま、俊夫は”な、なんだコイツー”と、
心の中で困惑するー。

”憑依に感づかれたー?
 いや、いくら何でもそれはー…
 けどー、見たって言ってるし、このまま放っておくことはできないー…
 じ、じゃあどうするー?”

そう思いながら、目の前にいる巫女のほうを見つめるー。

2年前に憑依した時ならまだしも、
彼女も成長したのか、より綺麗になっているー。

俊夫の中での”ランク”は、前に憑依した時よりも
上がっていると言ってもいいー。

”くそっー…口封じのために憑依してもいいんだがー
 でも、俺のわらしべ憑依の条件に合わないー。
 まだ今はこの子に憑依できるほどの身体に憑依してないー”

あくまでも”少しずつ”ランクを高めて行こうとする俊夫ー。

そんな彼ー…いや、今は”彼女”のほうを見ながら
巫女は口を開いたー

「あ、いえ、あ、あのー
 誰かに言うとか、そういうつもりじゃないんです!」

その言葉に、「え?」と、言葉を口にすると、
彼女はとんでもないことを言い始めたー

「ーあなた、2年前にわたしに”憑依”した幽霊さんですよねー!?
 覚えてますかー?
 わたし、美琴(みこと)です!

 この神社、わたしのお父さんの神社なんですけど、
 ずっとずっと、あなたのことを探してたんです!

 …去年は見つけられなかったけどー…」

巫女・美琴はそう言うと、
俊夫が憑依している女のほうを見つめたー。

「ーーーっ…やっぱりお前ー…憑依のことー」
俊夫が女の身体のまま、そう言い放つと、
美琴は慌てた様子で言葉を口にしたー。

「わっ!わっ!違うんです!
 別に幽霊さんのことをどうにかしようって言うんじゃなくてー
 
 その…お願いがあるんです!」

美琴の言葉に、俊夫は首を傾げるー

「お願い?」

そんな反応を見て、美琴は嬉しそうに言葉を口にしたー。

「ーあの!また、わたしに憑依してください!」
とー。

「ーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーは?」

俊夫は、思わず女の身体のまま変な声を出してしまったー…

<後編>へ続く

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コメント

今年も無事に”初詣の悲劇”が登場デス~!

年末年始の体越しのように
定着するかどうかはまだ未定ですが、
今年で3年目になりましたネ~!

火曜日のみ予約投稿の都合上、
続きはまた来週になりますが、
今年も初詣の悲劇を楽しんでくださいネ~!

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憑依<初詣の悲劇>

コメント

  1. 匿名 より:

    泣いてた女の子はもしかして、体越しの聡美ちゃんですかね?

    そして、前の巫女さんが再登場したと思ったら、自分に憑依して欲しいとか、どういう魂胆なんでしょう?

    憑依されたことでおかしな趣味に目覚めたのか、それとも何かの罠の可能性もありそうですね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      危険な巫女さん…★!
      泣いていた子は、聡美ちゃんではないですネ~!
      無関係の子デス~!

      でも、来週の②に誰か出て来るかもしれませんネ…★!