<憑依>初詣の悲劇2025(後編)

今年も”憑依”を楽しむ男ー。

彼の1年の1度のお楽しみ
”わらしべ憑依”の、
今年の結末はー…!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーえっ!?」
神社内を慌てた様子で走っていたツインテールの少女が
突然、”誰か”に肩を掴まれて驚いて振り返るー。

すると、そこにはニヤニヤと下品な笑みを浮かべた
女性が立っていたー。

”わらしべ憑依”を楽しんでいる最中の俊夫に憑依された
子連れの母親だー。

「ーー…な、なんですかー!?」
ツインテールの少女が戸惑いの声を上げると、
女はニヤニヤしながら
「うんーなかなか可愛いなぁ。次はお前だー」と、
そう言葉を口にしながら、そのまま有無を言わさずキスをしたー。

今まで憑依していた女が、その場でよろめいて、
すぐに意識を取り戻すー。

”憑依”のあと、一度失神する人間もいれば、
すぐに意識を取り戻す人間もいるー。

俊夫は最初、憑依を始めた頃は
”憑依している長さ”が関係しているのか?などと、
そう思っていたものの、それは関係ないようで、
年齢も性別も憑依した時のタイミングも、憑依している長さも、
あまり関係ないようだー。

恐らくは”個人差”によるものなのだろうー。

俊夫が抜けると、その場に倒れる者もいれば、
ふらっとするぐらいですぐに意識を取り戻す者も、
逆に倒れて痙攣して白目を剥くような人間もいるー。

”この女は、早かったなー”
今まで憑依していた子連れの母親を見つめながら
そう呟くと、
「ってーおいっ!」と、ツインテールの女に憑依した俊夫は、
いきなり、スカートの中から水滴が落ち始めたことに声を上げるー。

「ーーっ、ダメだー、もう止まんねぇー」
ツインテールの女の身体のまま、そう呟く俊夫ー。

彼女が神社内を走っていたのは
”トイレ”に駆け込もうとしていたためー。

そんな子に憑依してしまったため、
そのはずみで漏らしてしまったー。

「ーーえ…だ、大丈夫ですかー?」
今まで俊夫が憑依していた子連れの母親が、
ツインテールの子が漏らしたことに気付いて
困惑するー。

「ーえ、えへへーこういうのも意外と興奮するんですよぉ~?」
俊夫はツインテールの女の身体でそう答えると、
顔を赤らめながら「そ、それよりもー、子供、早く探した方がいいんじゃないですか?」と、
ニヤニヤしながらそれだけ言うと、
そのまま走り出したー。

「ーーあ~~…漏らす瞬間はたまんねぇぜー…
 でも、このままだと汚いから、早く次の身体を探すとするかー」

そんな言葉を口にしながら、神社内を足早に移動していた
ツインテールの女ー。

がー、その前に、先ほど、一瞬だけ憑依されていた
この神社の所有者の娘ー、
毎年巫女として年始には父の手伝いをしている美琴が
姿を現すー。

「ーー見つけた!
 ニヤニヤしながらそんな歩き方をしてるのー、
 幽霊さんぐらいだし!」
美琴が、はぁはぁ息を切らしながら、
ツインテールの女に憑依した俊夫の前に姿を現すー。

「くっ…お、おまっ…ま、まるでストーカーだなー」
目の前に姿を現した美琴に対して、
ツインテールの女の身体で、俊夫は困惑の表情を
浮かべながら言葉を口にするー。

「ーーちゃんと”憑依”してもらうまで、わたしは
 諦めませんからー…!

 去年、言ってましたよねー?
 幽霊さんの憑依は”わらしべ憑依”だってー」

美琴のその言葉に、
ツインテールの女の身体のまま、
「あぁ、言ったー。でも、お前は”可愛い”からまだ駄目だー。
 去年も言っただろー?
 憑依するなら”最後”だって」
と、そう呟くー。

が、美琴は不満そうに「去年もそう言って、戻ってこなかったくせにー」と、
ボソッ呟くー。

「ーー悪かった!悪かった!
 今年はちゃんと最後に憑依するから、だからここで待っててくれー」
そう言葉を口にすると、
ツインテールの女の身体のまま、俊夫は自分のスカートを指差したー。

「ー?」
美琴が表情を歪めるー。

「ーこ、こいつ、憑依した瞬間に漏らしちまってー
 だから、早く次の身体に移動したいんだー!
 道を開けてくれ!」

ツインテールの女が、濡れたスカートを指差しながら言うと、
美琴は「あー…そ、それで変なニオイがー」と、
苦笑いしながら道を開けるー。

「ー”今年も”嘘をついたらー
 許しませんからねー。
 わたし、結構根に持つタイプなんでー
 もし逃げたら来年、必ず幽霊さんを見つけ出して
 成仏させちゃいますから」

美琴がにこっと笑うー。

”ー俺は、幽霊じゃねぇんだけどなー”
ツインテールの女に憑依している俊夫は、
そんなことを思いつつも、移動を始めるー。

その時だったー

「ん~~~~…あの女ー
 何だか幸薄そうで、イイ感じだなー」

神社にやってきていた一人の女ー。
その女を見つめるツインテールの女に憑依している俊夫ー。

「ーあの女にするか」
ニヤッと笑みを浮かべながら、すれ違いざまにいきなりキスをして、
ツインテールの女から、その女に憑依した俊夫ー。

「さて、こいつの名前はー」
持っていた鞄から、”身分証明書”を確認すると、
”波野 若菜(なみの わかな)”と、
そう書かれていたー。

「波野さんかーへへー
 なんだかー…生気のない表情ー
 ゾクゾクするぜー」

”何があったのか知らねぇけど、余程のことがあったんだろうなー”

若菜に憑依した俊夫はそんなことを思いつつも、
「ま、いいやー」と、そのまま若菜の身体で移動を始めるー。

”さてさて、大分”上のランク”になってきたしー
 そろそろさっきの友達の子に憑依するかなー”
若菜はニヤニヤしながらそう言葉を口にするー。

”何か”に絶望して、生気のない表情をしていたのに、
それを強引にニヤニヤさせてしまうー…という状況に
俊夫は快感を感じながら、
周囲を見渡すー。

”中身が変わりゃ、病んでそうなやつも
 一瞬で笑顔にできるのが憑依の醍醐味だよなー
 
 善人をいきなり悪人にしたりー”

そんなことを思いつつ、若菜は「おっ!」と、
声を挙げると、
可愛らしい女子高生らしき子を見つけたー。

先程憑依した梨沙子の友人・由美ではないがー、
それに匹敵するぐらいの可愛さだー。

「あの由美って女も、今、神社のどこにいるか分からねぇしー、
 とりあえずあの子にするかー」

若菜は少し先にいる子が”若菜~”と呼ばれているのを聞いて
”あれ?この女も若菜じゃなかったっけ?”と、首を傾げるー

「ーへへ…たまたま同じ名前ってことかー」
俊夫は少しだけニヤニヤと笑みを浮かべるー。

同じ名前の身体に続けて憑依するのは初めてかもしれないー。
いや、今までに名前も調べずに使った身体もたくさんあるから
もしかしたら初めてじゃないかもしれないけれどー。

そう思いつつ、若菜の身体で、”女子高生の若菜”の方に近付いて行くと、
「ねぇねぇ」と、ニヤニヤしながらいきなり声をかけたー。

「ー”お前”若菜っていうのー?」
いきなり失礼な話し方をする若菜ー。

女子高生の若菜は「えっ…だ、誰ですか?」と困惑の表情を浮かべるー。

「ーへへーわたしも”若菜”って言うのー。
 若菜と若菜ー えへへへー なんだか興奮するねー?」

若菜がニヤニヤしながらそう言うー。

が、相手の若菜は”意味が分からない”と言いたげな表情を浮かべながら
そのまま立ち去ろうとするー。

「ーーへへーまぁ待ちなよー
 ”若菜同士”、せっかくなんだしキスでもしよ?」
若菜は、全く理由になっていない理由を口にしながら
女子高生の若菜にキスをすると、
そのままその場に倒れ込むー

「ーーへへへ…若菜から若菜へ移動~ ぐへへへ」
女子高生の若菜の方に憑依した俊夫は、
嬉しそうに笑うと、”さて”と、周囲を見渡すー。

かなり可愛い身体に移動できたー。
あとは、”今年のベスト”を決めるだけー。

そう思いつつ、”女子高生の若菜”になった俊夫は
「そろそろさっきの由美って子を見つけるかー」と、
そう言葉を口にしながら歩き出すー。

がーー
巫女の美琴のことを思い出した俊夫は
その場で腕組みをしながら「うーん…」と考えるー。

もちろん、”美琴”もとても可愛いー
去年会った時よりもさらに可愛くなっていて
”今年のベストの身体”にはふさわしいー。

しかし、さっき憑依した梨沙子の友人・由美も
とても可愛かったー

「クククー…どっちを今年のベストにするか悩めるほど
 豊作なんてー最高だぜー」
若菜の身体のまま、ニヤニヤと笑みを浮かべる俊夫ー。

そしてー、
俊夫は”今年のベストの身体”を決定したー。

「ーーそうだーあの巫女はどうせ来年も俺の前に
 姿を現すだろー。
 だからー、今年は”由美”って女の方に決定だなー!

 由美って女は来年もこの神社にやってくるか
 分からないしー」

そう言葉を口にしながら、移動を始める若菜ー。

なかなか”由美”は見つからないー。

しかし、神社を徘徊しているとようやく
”由美”の姿を見かけたー。

「ーねぇ…本当に大丈夫ー?」
心配そうに呟く由美ー。

梨沙子は「記憶が、飛んでてー」と、困惑した表情を
浮かべているー。

どうやら、さっきまで憑依された梨沙子のことを
心配している様子だったー。

”へへー…まぁ、友達の身に何が起きたかも
 ハッキリ分かってないだろうし、
 心配だろうなー”

若菜の身体のまま、俊夫は物陰から
二人の様子を見つめつつ、ニヤニヤと笑みを浮かべると
やがて、二人に向かってゆっくりと歩き出したー。

「ーまァ、由美って子の方にも教えてやるかー
 友達の身に何が起きたのかー」

そう言葉を口にしながら、
若菜の身体で由美に近付くと、
「ー”今年のベスト”に決定ー。おめでと」と、それだけ言葉を口にして、
戸惑う梨沙子を無視して、
若菜は由美にキスをしたー。

その場でバランスを崩して、座り込むようにして倒れた若菜の身体ー

「えっ!?えっ!?えっ!?」
戸惑う梨沙子ー。

が、俊夫からすれば”そんなにランクの高くない身体”には
もはや用はないー。

ニヤリと笑うと、乗っ取った由美の身体で、
「わたし、急に用事を思い出しちゃったー」と、
嬉しそうに笑いながらそのまま走り去っていったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”今年のベストの身体”を決定したー。

今年のベストは、神社に来ていた女子高生の由美だー。

「へへ~…に、しても可愛いよなぁ」
由美に憑依した状態で神社の外にたどり着いた由美ー。

しかしー…
そこにこの神社の所有者の娘である美琴が姿を現すー。

ぜぇぜぇと息を切らしながら、
美琴が由美の方を見つめると、
「幽霊さんーまた”裏切る”んですねー?」と、
不満そうに言葉を口にするー。

「ーー…え…え…な、何のことですか~?」
由美に憑依している俊夫はとぼけるー。

が、美琴は「さっきまでニヤニヤしてるの見ましたから!」と、
そう叫ぶと、
「ーわたしより、その女の方が可愛いってことですか!?」と、
さらに不満をあらわにするー。

由美に憑依している俊夫は観念すると、
「ーこの女には来年、会えないかもしれないー。
 でも、君はこの神社の娘だから、また来年も会えるだろー?」
と、由美の方を選んだ理由を素直に、なるべく穏やかな口調で伝えたー。

「ーーーーーー」
悲しそうな表情を浮かべる美琴ー。

「それに、毎年可愛くなるなら、来年”今年のベスト”に選んだほうが
 得だろー?」

由美がそう言うと、美琴は頬を膨らませたまま、
「じゃあ、来年は絶対に憑依して下さいよ?」と、
不満そうな表情のまま呟くー。

由美に憑依している俊夫は
”に、しても憑依されたいとか、変な子になっちまったもんだなー”と、
内心で思いつつも、
”でもまぁ、来年は憑依してやるか”と、そう思い、
手を差し出すー。

「約束だー。来年こそ憑依してやるー」
由美がそう言うと、美琴は少し機嫌を直したのか、
握手に応じたー。

「ーじゃ、俺は”今年のベスト”を楽しむからこれでー
 今年もいい1年を過ごせよ」

由美はそれだけ言うと、そのまま立ち去っていくー。

「ーーーー」
一人残された美琴は、神社にそびえたつ
木を見つめると、小さく”幽霊さんの馬鹿”と、
そう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへへへっ♡ 今年もいい身体が手に入ったぜ!
 サイコー!!」

神社を出て、”今年のベストの身体”を堪能する俊夫ー。

由美の身体で散々楽しんだ俊夫は、
その日の夜に由美を解放しー、
”また来年ー”と、満足そうにそう言葉を口にするのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

今年で4年目を迎えた「初詣の悲劇」デス~!!

体越しと同じように年末年始の定番の一つに~★!

いつも、”来年はあるかどうか未定デス”と、あとがきで言っていますが
今回は…いかにも続きがありそうな感じで終わっているので、
”来年もきっとあると思います~★”と、言っておきますネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!☆!

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憑依<初詣の悲劇>

コメント

  1. 匿名 より:

    今年の体越しからのゲストは若菜ですか〜。
    若菜は夫が死んだり、息子に嫌われたりで絶望のどん底状態のはずなのに、初詣に来れるような気力が残っていたのが驚きですね。普通なら引き篭もりにでもなっていそうですけど。もしかして、新年早々、自殺でも考えて徘徊してたとか?

    あと、美琴は、何だか、単純に憑依される事に執着してるというより、まるで憑依人に片思いでもしてるみたいな感じもありますね。

    来年ではどうなるか楽しみです☆

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!★!

      最近は体越しからのゲスト出演が
      定番になりつつあるのデス…笑

      若菜は、自暴自棄になってふらふらと
      神社を訪れていた設定ですネ~~!!!

      美琴ちゃんは…来年のお話では…
      …これ以上は今はまだ言えないのデス…!