毎年、新年を迎えると、
”わらしべ憑依”を楽しんでいる男…。
しかし、今年は思わぬ声を掛けられて…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あの!またわたしに憑依してください!」
この神社の持ち主である父親の娘・美琴が
そんな言葉を口にするー。
「な、なんだってー?」
大人しそうな雰囲気の女の身体のまま、
俊夫は突然の美琴の言葉に困惑するー。
「一昨年、幽霊さんに憑依されてから、わたしー…
ずっと、幽霊さんのことを探しててー」
美琴の言葉に、俊夫は衝撃を受けるー。
確かに、2年前に憑依はしたー。
当時、アイドルの身体で次の身体を探している際に
声をかけて、この女に憑依したのだー。
その時よりも、さらに可愛くなっているー。
そんな美琴を前に、
女の身体のまま、俊夫は言葉を続けるー。
「ーー憑依されたいって、正気かー?」
とー。
「ーーはい。正気ですー。
あの時、意識を取り戻したあと、
なんだか身体中が火照ってる感じで、すっごく興奮しちゃってー」
美琴のそんな言葉に、
大人しい女の姿のまま、俊夫は少し困惑するー。
「ーーつ、つまり、お、俺に憑依されて、
君は、興奮したってことかー?」
「ーはいっ!」
美琴の嬉しそうな顔に
”やべぇ奴を生み出しちまったー”と、俊夫は少しだけ表情を歪めるー。
「ーーそれに、なんだか幽霊さんに憑依されると
霊感みたいなものが上がる気がして!
ほら、わたし現役女子大生の巫女なんで!もっと、霊感アップ
しておいた方がいいかなって!」
ぐいぐいと近づいてくる美琴ー。
”おいおいー、まぁ、俺がただの男だって知ったら
絶対、”変態!”とか叫びそうだけどー…
俺のこと幽霊だと思ってるみたいだから、こんな感じなんだろうなー”
俊夫は心の中でそんなことを思いながら今一度美琴のほうを見るー
”いや、可愛いなー…スタイルもいいしー”
巫女服だから余計に可愛く見えるのか?
などと思いつつ、
大人しそうな女の身体のまま、俊夫は口を開いたー。
「いや、ダメだー」
とー。
「え~?なんでですか~!?」
美琴が不貞腐れた表情を浮かべるー。
「ーーー俺の憑依は”わらしべ憑依”ー。
どんどん、俺から見て可愛いと思う身体にランクアップしてく憑依だー。
だからー…まだ君には憑依できない」
大人しそうな女の身体のまま、
俊夫はそう言うと、自分を指差して、
「この女と比べて、君は可愛すぎるー。
だから、まだ君には憑依できないー」と、そう説明したー
そう説明すると、美琴は照れくさそうに
「そんな…可愛いだなんてー…よく言われますぅ」と、
自惚れた表情を浮かべるー。
”なんかーこんな子だったかなー…”
女の身体のまま、俊夫はそんなことを呟くと、
「だから俺はこのまま、わらしべ憑依を続けるー。
もうちょっと神社内の可愛い女に憑依してから、
君に届く可愛さになったら、君に憑依するー
それでいいか?」と、
言葉を口にすると、美琴は「はいっ!」と、ワクワクした様子で
笑みを浮かべるー。
”クククー…しかし…一昨年は別の身体に移動したからまだしもー…
”今年の1番”に選ばれたらー…”
俊夫はそんなことを考えるー。
毎年、俊夫は”その年の一番”を決めていて、
その身体に憑依したら、わらしべ憑依は終了ー、
その日、1日はその身体で存分に楽しむー。
美琴も、まさか憑依されて自分がイかされたり、そんなことまで
させられるとは思っていないのだろうー。
前回は確かに、そこまでのことはしていないからだー。
”まぁ、でも、憑依されたいって言ってるんだしー
気付いたところで、俺のこと幽霊と思ってるみたいだし、
問題ないよな”
俊夫はそんなことを思うと、
”次の身体”に移動するー。
トイレに行った友達を待っている様子だったが、
そんなことは関係ないー。
”渥美ちゃんかー”
身分証を確認して、そう呟くと、
自分の顔を触りながら
「へへ…大分”ランク”も上がって来たー」と、笑みを浮かべるー。
だが、まだあの変態巫女に憑依するには早いー。
美琴は正直、かなりかわいいー。
2年前ですら”今年の一番”にしようとしていたぐらいだー。
それよりもさらに可愛いとなればー、
それなりの身体に憑依してから、あの変態巫女に憑依しなければならないー。
「しかしー、元々変態だったのか、
俺が2年前憑依したせいで変態になっちまったのかー…
もしー、俺のせいで変態になったんだとしたら興奮するなー」
そんなことを、渥美の身体で勝手に呟いていると、
「あ!渥美!」と、背後から声が聞こえたー
「ン?」
渥美の身体のまま振り返ると、
どうやら、トイレに行っていた友達の方が戻って来たらしく、
「ーーどこ行っちゃったのかと思ったよぉ~」と、
息を吐き出しながら、少し頬を膨らませていたー。
「ーーーーーかわいい」
渥美はニヤッとそう呟くと、
その友達に迷わずキスをしたー。
”渥美より”かわいいー。
次の身体はこいつだ、と思いながらー。
友達に突然キスをされて、驚く女ー。
が、すぐに笑みを浮かべると、
ぼーっとした状態の”憑依から解放された渥美”を見て、
「あ、わたし、急用思い出しちゃったぁ~」と、言いながら
そのまま走り去っていくー。
「えーー…?」
たった今まで憑依されていた渥美は、一人残されて
呆然とした表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
その後も”わらしべ憑依”を続けるー。
渥美の友達の身体から、着物姿の人妻にー。
夫らしき男は呆然としていたものの、
そんなことお構いなしに、その夫らしき人物の目の前で
さらに別の女子大生にキスして、移動ー。
その女子大生になった後に、
倒れ込んだ人妻を無視して、今度は可愛らしい雰囲気の姉妹に憑依ー、
姉の方に先に憑依して、続けて姉の身体で妹にキスをし、
妹の方に移動したー。
どんどん身体を乗り越えて、どんどん可愛い身体を手に入れていくー。
「へへへへ…」
姉妹の妹の身体で、神社内をウロウロしながら、
”そろそろ、この子より可愛い身体が見当たらなくなってきたなー”と、
言葉を口にするー。
「ーーよし、あの巫女のところに戻るかー
この女の身体からなら、十分に釣り合うだろ」
そんなことを呟きながら、姉妹の妹の身体で、
巫女・美琴を待たせている場所に戻ろうとするー。
「ーーん?」
だが、その時だったー。
お嬢様っぽい、少し強気そうな雰囲気の
少女が目に入るー。
「ーーー…ーーへへ…あの子に先に憑依するかー」
そう呟くと、姉妹の妹の身体で近付いていきー、
「あの~~~」と、声をかけてから、
いきなりその女にキスをしたー
「ーうっ…」
ビクっと震えて、少し強気な雰囲気の子に憑依した俊夫ー。
「ーーさて、名前を確かめるかー」
所持品から、名前を確かめる俊夫ー。
「後藤 沙苗(ごとう さなえ)かー」
どうやらこの子は女子高生のようだー。
身元を確認し終えると、美香はニヤニヤしながら
自分の胸をその場で揉むー。
顔つきから、ワガママそうな雰囲気が漂っている沙苗ー。
もし、本人に意識がある状態でこんなことを
されていると知ったら、確実に怒り狂うだろうー。
どうせ学校でも、他の子にきつく当たってそうな雰囲気だー。
しかしーー
「へへへ…どんな子であろうと、俺の意思に従って俺の意のままに動くー
これも憑依の醍醐味だなー」
沙苗の身体で勝手にそんなことを呟いていると、
「あ!後藤さん、こっちにいたよ」
と、同じ高校生ぐらいの子たちが近付いてくるー。
この子の友達か何かだろうかー。
そう思いながら”へへー俺はわらしべ憑依で忙しいんでなー”と、
その二人が近付いてくる前に走り出すと、
美琴が待っている方向に向かって歩き始めたー。
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「ーーさて、今度こそお望み通り、あの巫女にー」
そう言葉を口にする沙苗ー。
「そういや、この子ー、気が強そうな顔つきの割に、
一人で寂しそうに歩いていたなー」
と、思いつつ、”いや、そんなことよりもー”と、
美琴の方に向かうー。
「ーーーー!」
がー……
彼は”見て”しまったー。
「ーう… う… おぉぉぉぉ…!?」
沙苗の身体のまま、変な声を出す俊夫ー。
見つけてしまったー。
”女神”をー。
「ーな、なんて綺麗な人なんだー」
自分が女に憑依していることも忘れて、
変態顔をしてしまうと、その”女神”に駆け寄っていくー。
女子大生ぐらいだろうかー。
とにかく、可愛いー。
俊夫から見て、超がついてしまうほどのストライクだー。
「ーーあ、あ、あの…す、好きですー!」
沙苗の身体のまま、そんな言葉を掛けると、
「え…?」と、その女は戸惑いながら、沙苗のほうを見つめたー。
いきなり見知らぬ女から告白された相手からすれば
”戸惑い”以外の文字はないだろうー。
が、それをお構いなしに沙苗はその女に名前を尋ねるー。
「ーー…な…尚美(なおみ)ですけどー」
尚美がそう答えるー。
苗字を答えなかったのは、警戒しているのだろうかー。
「ーーへ…へへへへ…尚美さんー
素敵な名前ですねー」
沙苗は興奮した様子でそう言うと、
「こ、こ、今年のベストの身体は、あなたです!」
と、そう言葉を続けるー
「ーーえ…?な、なんですかーさっきからー?」
尚美の表情に不快感が露わになるー。
流石に、沙苗の意味不明な言動にうんざりしてきたようだー。
がー、沙苗に憑依している俊夫はお構いなしに、
沙苗の身体で尚美にキスをすると、
尚美は驚いて沙苗を振り払ったー。
しかしー…
もう、俊夫は沙苗から尚美に移っていたー。
振り払われた沙苗は気を失ってその場に抜け殻のように
倒れ込むー。
「ーク…くふふふ…最高の身体を手に入れたー
去年と一昨年は酷い目に遭ったけどー…
今年は…今年は最高の身体をゲットしたぞ!」
尚美になった俊夫は嬉しそうにそう叫ぶと、
”誰かを待っていた様子”の尚美の都合など
完全無視して、笑いながら神社を後にしたー
「へへへへへへ…
今日はたっぷり楽しまなくちゃな!」
下品な笑みを浮かべる尚美ー。
俊夫は毎年、あの神社でわらしべ憑依を楽しみー
”その年で一番の身体”を見つけたら
その身体でお楽しみをしているー。
色々あって、去年はおっさん、一昨年は男の娘に
憑依してしまったけれど、
今年こそは間違いないー。
スカートの上から”ついてない”ことを確認して
尚美は笑みを浮かべると、
「へへへっ…今年こそ…今年こそはやったぜ!」と
ガッツポーズをして、そのまま”遊べる場所”を探し始めるー
「ーそういや、この女、声もすごいいいなぁ…
たまに見かけだけで憑依して声を発してみて”えっ”ってこともあるけどー
この子は声もあたりだー」
自分の手を見つめながら、満足そうに微笑む尚美ー。
「ーーへへ…声もいいとくれば、まずはカラオケでも楽しむかー」
尚美はそう呟くと、”この声”で存分にカラオケを楽しもうとー、
そしてついでに身体もタップリ堪能して、
”今年のベストな身体”の写真を撮ろうと、嬉しそうに笑みを
浮かべるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
神社ー。
来場者も、とっくに帰り、
既に日が暮れているー。
がー、その場所で彼女は
にこにこしながら待ち続けていたー。
”幽霊”のことをー。
「ーーー………”わらしべ憑依ー”」
巫女・美琴はニコニコしながら呟くー
「最後にわたしに憑依するって、あの幽霊さん言ってなかったっけー?」
既に真っ暗になっても、家の中に戻らず、
神社の敷地内でずっと俊夫の帰りを待っている美琴ー。
「ーーーー……んふっ…騙されたみたいー」
美琴はそう呟くと、ニコニコしたまま不満そうに立ち上がるー。
「ーーまぁいいやー
どうせ来年も来るんだろうしー」
美琴はそう言いながら、家の中に入ると、不満そうに巫女服を脱ぎ捨てるー。
「ーーわたし、嘘つかれるとずーっと恨むタイプだからー…
覚悟しておいてねー 幽霊さん」
着替えながら美琴はそう呟くと、
不気味な笑みを浮かべたー…。
おわり
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コメント
”初詣の悲劇”3年目でした~★!
体越しとは違い、毎年続くかどうかはまだ”未定”ですが、
来年もまた会えるといいですネ~笑
今年も初詣の悲劇をお読み下さりありがとうございました~!
勿論、初めての皆様もありがとうございます~!☆
コメント
今年はついにうまくいったみたいですが、結果的に約束を破ったせいで巫女さんに妙な恨みを持たれてしまいましたね☆
来年とかに厄介なことにならなきゃいいのですが。
コメントありがとうございます~!☆
3年目(描かれているのは)にしてついに成功ですネ~!
来年「初詣の悲劇」があるかどうかはまだ分かりませんが、
来年があったら怖いですネ~笑