★800万アクセス記念★<憑依>闇を歩む者たち~国際犯罪組織ガルフ~

★憑依空間800万アクセス達成記念★

世界規模で暗躍する謎の組織「国際犯罪組織ガルフ」
その首領と幹部が、とあるビルに集結しているという情報を得た
特殊部隊はビルに突入する…。

そして、ついに首領が姿を現すー…?

※本日(10/27)の通常更新は
 いつも通り、明るくなってから行います~!★
 こちらは800万アクセス記念の+αの更新デス~!

※800万アクセス達成のご挨拶はこちらからどうぞ★

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーお父さん、次はいつ帰って来れるのー?」

娘の朱音(あかね)が、そんな言葉を口にするー。
朱音は高校2年生ー。
ちょうど難しい年頃だがー、
幸いにも、朱音は父親とも、母親とも、
特に険悪な様子にはなっておらず、
普通に話すことができる間柄だー。

父・卓(すぐる)も、
”いつかは朱音に”うざい”とか言われるんだろうなぁ”と
昔から覚悟はしていたもののー、
”そういう風にならない家庭もあるんだな”と、
そのありがたみを実感していたー。

「ーー次はー……また少しかかるかもしれないー」
父・卓が申し訳なさそうにそう言うと、
朱音は少しだけ寂しそうに頬を膨らませた後に、
「ーでも、それだけ大事な仕事なんでしょ?」と、
微笑みながら言葉を口にするー。

「ーーーーーそうだなー。
 でもー、俺にとって一番大事なのは、朱音と、翔子(しょうこ)だぞ?」
卓が笑いながら娘と妻の名前を口にすると、
「ーじゃあ、明日からも家にいてくれる?」と、
朱音が言葉を口にするー。

「ーーーはははー…参ったなぁ」
”仕事より、家族が大事なんでしょ?”と言う意味の問いかけをされて、
困った笑みを浮かべる卓ー。

しかし、すぐに朱音は
「な~んて、うそうそ!
 ちょっとお父さんを困らせて見たかっただけ」と、
いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、
そんな言葉を口にしたー。

「ーーおいおいおい、本気にしたぞ~!」
卓が少しホッとしながらそう言うと、
「ーーでも、一つだけ、”いつもの約束”はして」と、
朱音は、そんな言葉を口にするー。

”いつもの約束”
その言葉が意味するものを、卓は良く知っているー。

そうー
それはー

”生きて帰ってくる”
ことー。

「ーーもちろん。必ず帰ってくるー」
卓がそう言うと、朱音は笑いながら
「約束!」と、微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

卓の仕事は”警察内に組織された特殊部隊の隊長”ー

表に出ない
”特殊”な部隊の隊長として活動しているー。

”表にできない危険な組織への対応”や、
場合によっては制圧任務を行うー。

そんな、部隊だー。

そして、卓の率いる部隊の前に、
数日前、ある情報が入ったー。

それがー
”国際犯罪組織・ガルフ”の、重要な集会があるー…
という、そういう情報だー。

謎に包まれた国際犯罪組織ガルフの首領ー、”ガルフ”とー、
各国に存在する国際犯罪組織ガルフの支部長たちが
一堂に会するのだと言う。

そんな絶好の機会を逃すわけにはいかないー。

”ガルフ”と、各支部長を一気に一網打尽にするチャンスー、
ということで、
その会場であるビルに乗り込むーー

そんな危険な任務を今日、実行に移すー。

「ーーーーー…」
卓は、自分のチームに所属する隊員8名に向かって
作戦を説明すると、
「ー最重要ターゲットは首領の”ガルフ”ー
 だが、未だに”ガルフ”を名乗る人物は謎に包まれているー。
 各自、警戒を怠るな」と、
隊員たちに向かって言い放つー。

全員が「はい!」と返事をすると、
「作戦開始だ!」
と、卓は国際犯罪組織ガルフの”会合”が行われるという
ビルに向かって移動し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーこちらの報告は、以上ですー」
国際犯罪組織ガルフの日本支部代表・クロサワがそう言い放つと、
「フンー」と、ガムを噛んでいるサングラスの男が、うすら笑みを浮かべたー。

「ーーーおや、何か我が支部の報告におかしなところは
 ありましたか?」

日本支部代表・クロサワが笑みを浮かべながら言うと、
国際犯罪組織ガルフ、アメリカ支部代表のジェイクー
サングラスをかけた男が笑みを浮かべたー。

「いいや、別にー」
ガムを噛みながら今一度、鼻でクロサワを笑うジェイクー。

「ーあなたのその人を小馬鹿にした態度、直した方がいいわよ?」
貴族のような格好の女性ー、ガルフ・イギリス支部代表のマデリーンが
笑みを浮かべるー

「ーははは、そうだな!こりゃ失敬。マデリーンお嬢様」
ジェイクがふざけた調子でそう言い放つと、
クラシック音楽家のような風貌のフランス支部代表・オーレリアンと、
全身に鎧を纏っているドイツ支部代表・ヴィルフリートが表情を歪めるー。

その時だったー。
ビルの警報が鳴り響くー。

「ーこれは…!?」
アメリカ支部代表・ジェイクがビルの警報音に驚いた様子で表情を歪めると、
イギリス支部代表のお嬢様・マデリーンが「何が起きてるのかしらー?」と、
困惑の表情を浮かべるー。

「ーどうやら、ネズミが迷い込んだようだな」
フランス支部代表・オーレリアンは冷静な振る舞いのまま、
会議室のモニターを見つめながらそう呟くー。

ざわつく会議室ー。

だがー
日本支部代表・クロサワは余裕の笑みを浮かべていたー。

「ーー安心してくださいー
 警察がここを嗅ぎつけることは想定済みですー。」

クロサワはそう言うと、
「ーガルフ様ー」と、国際犯罪組織ガルフの総帥・ガルフに向かって笑みを浮かべるー。

そして、言葉を続けるー。

「ーーせっかく、我が日本支部までご足労頂いたのですからー
 ガルフ様と、そして各支部代表の皆さんにもー
 最高のショーをお見せしましょうー」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

激しい銃声が響き渡るー

国際犯罪組織ガルフの構成員たちと
ビルの内部では銃撃戦が繰り広げられていたー。

「想定以上に人数が多いー、油断するな!」
卓がそう叫ぶと、
部下の隊員8名も、それに応じながら
相手の攻撃を躱しつつ、的確な反撃を加えていくー。

「ーー…!ゲートが封鎖されます!」
隊員の一人が叫ぶー。

ビルのさらに上層階に進むための道の
ゲートが閉じていくのが見えるー。

「ーー!」
卓は、すぐに自分と部下たちの位置関係を把握するー。

卓と、自分の近くにいる二人の隊員は、
今から走ればあのゲートが閉じる前にゲートを突破することができるー。

一方、卓から離れた位置の遮蔽物に隠れている隊員二人と、
壁から敵に銃撃している隊員一人、
そして、離れた場所から援護射撃をしている三人は、
今から走ってもゲートが封鎖される前に
あのゲートを越えることはできないー。

「ーー隊長!俺たちが援護します!
 隊長たちは先に!

 俺らはここを片付けたら別のルートを探します」

部下の一人がそう叫ぶー。

卓はその言葉を聞いて、0.5秒もしないうちに
すべきことを判断したー。

「ーー井沢(いざわ)と川東(かわとう)は
 俺と共にー!」

近くにいた隊員二人にそう指示をすると、
すぐに遮蔽物から飛び出して、
銃を放ちながら、封鎖されかかっているゲートの方に向かって走るー。

「死ぬなよ!」
この場に残る6人に向かって叫ぶと、
6人のうちの一人が「隊長こそご無事で!」と、
そう叫んだー。

そのままゲートが封鎖される直前に
ゲートを突破した卓と、残り2名の隊員ー。

「ーもうすぐ、最上階だー」
卓がそう呟くと、
「ーー”ガルフ”の親玉は本当にいるのでしょうかー?」と、
部下の一人で女性隊員の一人、井沢 和美(いざわ かずみ)が
そう呟くー。

「ーー分からんー。
 だがー、少なくとも支部長クラスの幹部は複数人揃ってるはずだー…
 油断はするなよ」

卓の言葉に、
「ーへへへー…隊長こそー」と、皮肉屋の川東 昌義(かわとう まさよし)が
そう言葉を口にしたー。

そのままビル内の地図を確認しつつ、
上層階へと向かうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その様子をモニターで見つめていた
国際犯罪組織ガルフの幹部の面々ー。

「ーーもうすぐ、ここに到着するようだがー
 ”最高のショー”とやらはまだかね?」

クラシック音楽家のような風貌の
国際犯罪組織ガルフ・フランス支部代表のオーレリアンが
冷静な振る舞いを崩さぬまま、そう言葉を口にするー。

「ーへへー俺たちが追いつめられるのが”ショー”ってか?」
サングラスを輝かせながら、アメリカ支部代表のジェイクとが言うと、
日本支部代表・クロサワは笑みを浮かべたー。

「ーーいやー」
不敵な笑みを浮かべながらクロサワが言うと、
「ーそろそろ、始めましょう」と、そう言葉を口にして、
何か”合図”をしたー。

「ーーー!」
イギリス支部長のお嬢様・マデリーンが表情を歪めるー。

そこに現れたのはーー
制服姿の女子高生だったー。

弱弱しく、怯えた表情を浮かべているー。

「ーこの女はー?」
アメリカ支部長・ジェイクが言うと、
日本支部長・クロサワは笑うー。

「ーここに突入した部隊の隊長の”娘”ですー」
とー。

「ーーな…何なんですかここはー…!?
 た、助けて下さいー!」
卓の娘・朱音ー

朱音は今日、犯罪組織ガルフの構成員に捕まりー、
この場に連れて来られていたー。

「ーーーほぅ。なるほどー
 娘を人質に侵入者どもを追いつめる、ということだなー」
クラシック音楽家のような風貌のフランス支部長・オーレリアンが言うと、
クロサワは笑ったー。

「いえー」
とー。

クロサワはそう言いながら立ち上がると、
ゆっくりと朱音の方に近付いたー。

「ーーーひっ…た…助けてー」
朱音の懇願するような言葉ー。

それを聞いて、クロサワは笑みを浮かべたー。

「ーー安心しなさいー。
 君をここに連れてきたのは、君を痛めつけるためではないー」

クロサワはそう言うと、
邪悪な笑みを浮かべたー。

「ーその身体を、少しお借りしたいー」
とー。

「ーー…へへー何言ってやがるー」
アメリカ支部長のジェイクがガムを噛みながら立ち上がるー。

がー、次の瞬間ー…
クロサワは、朱音にキスをしてーー
そのまま光の雫のようになって、朱音の中に吸い込まれていったー。

「ーな、何なの!?」
イギリス支部長のお嬢様・マデリーンが声をあげるー。

するとーー
苦しそうに咳き込んでいた朱音が、ゆらゆらと立ち上がって
笑みを浮かべるー。

「ーこれで、この小娘の身体は、この私のものー」
邪悪な笑みを浮かべながら、朱音が支部長たちを見つめるー。

「ーな…」
冷静だったフランス支部長・オーレリアンも表情を歪めるー。

「ーどうです?素晴らしいでしょう?
 我々が秘密裏に開発した”憑依薬”の力はー?

 こんな小娘の身体も、全て意のままに使うことができるー」

朱音はそう言うと、自分の胸を揉みながら、
ニヤリと笑うー。

「ーす…すげぇー」
アメリカ支部長・ジェイクがガムを噛みながらそう言うと、
朱音はゆっくりと部屋の外に向かって歩き出すー。

「ーーー今から、皆さんにご覧いただきましょうー
 ”可愛い可愛い娘”に殺される”哀れな父親”の姿をー」

憑依された朱音はクスクスと笑いながら、
そのままエレベーターに乗り込むー。

「ーーーーー」
エレベーターに乗り込んだ朱音は
腕組みをしながら冷たい表情を浮かべると、
エレベーター内の鏡を見つめながら静かに微笑むー。

「ーー”憑依”の前には、誰も逆らうことなどできないー」
と、静かに囁く朱音ー。

完全に支配されてしまった朱音は、
父・卓を”殺すため”に、そのまま、父の元へと向かうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「よしー、この先のエレベーターに乗り込めば
 最上階だー」

卓がそう言いながら、
部下の和美・昌義の二人と共に、
警戒しながらエレベーターの方に向かっていくー。

がー、エレベーターのボタンが見えるぐらいの距離まで
近付いたところで、卓はあることに気付いたー。

「ーー!」
卓はすぐに、身を隠すように部下二人に指示をするー。

エレベーターが動いていて、最上層階から
誰かが下りて来るのが分かったからだー。

「ーーー…油断するなよ」
卓が言うと、和美と昌義が頷くー。

やがて、エレベーターが到着しー、
その扉が開くー。

しかしー、エレベーターの中から出てきた相手を見て、
卓は表情を歪めたー。

制服姿の女子高生ー
しかもー、その相手はーー
自分の娘である朱音だったからだー。

「ーあ、朱音ー…!?」
思わず声を漏らしてしまう卓ー。

「ーーえ?」
部下の和美が戸惑いの表情を浮かべるー。

すると、朱音が声を発したー。

「ーお、お父さんー…?」
とー。

不安そうな表情を浮かべる朱音ー。

もちろん、このような状況は”罠”である可能性が高いー。
卓は身を隠したまま表情を歪めるー。

”どういうことだー?何故、朱音がここにー!?”
意味が分からないー

ここは、国際犯罪組織ガルフ日本支部の息がかかったビルー。

朱音は今朝、確かに学校に向かったはずー。
それなのに、どうしてー?

”まさか、人質にされたのかー?”

「ーーー朱音ー…どうしてここにー?」
警戒しながら、卓は、朱音に対してそう声を発するー。

身を隠したまま、
周囲に他の人間の気配がないかどうかを必死に探りながら、
朱音の返事を待つ卓ー。

「ーーわ、わたし、変な人たちに捕まってー
 気付いたらここにいてー」

目に涙を浮かべながら朱音が言うー。

「ー隙をついて、逃げ出して来たのー…」
朱音はそこまで言うと、その場で足を抑えて蹲るー。

「ーーうぅ…」

どこか怪我しているのだろうかー。
卓が心配そうに表情を歪めると、
「ー隊長、俺がー」
と、皮肉屋の昌義が周囲を警戒しながら
朱音に近付くー。

「ー大丈夫だったかー?
 もう、安心していいからなー?」
昌義がそう言うと、朱音は目に涙を浮かべながら頷くー。

そんな様子を見て、昌義が
卓の方を見つめると、
「ーへへへー隊長ー
 家族を危険な目に合わせちゃ、だめでしょうがー」
と、少し呆れ笑いを浮かべるー。

「ー俺みたいに、独身の人間なら、こういう時は
 身軽なんですけどねー」

昌義がそう言葉を口にしながら、
卓の方に向かって歩き出そうとしたその時だったー。

「ーー!?」
卓が思わず目を疑うー。

それもそのはずーー
突然、朱音がスカートの中に隠していたナイフを手に、
それを、昌義の首筋に突き立てたからだー

「ーーーぇ…?」
昌義の首から血が溢れ出すー。

昌義は、信じられない、という様子で振り返ると、
そこには笑みを浮かべた朱音の姿があったー。

「ーふふーバカな人ー」
朱音が心底馬鹿にした様子でそう言うと、
返り血を浴びた手で、昌義の首に刺したナイフを引き抜くー。

「ーーがっ…」
そのまま息絶えて、その場に倒れ込む昌義ー。

「ーー…か、川東さん!?」
隊員の和美も驚いて叫ぶー。

「ーーーな…な……あ…朱音ーーーな…何をしてるんだ!?!?」
訳も分からずそう叫ぶ父・卓ー。

朱音は血のついたナイフを嬉しそうに舌で舐めると、
「見てわからないー?人殺ししてるの♡」と、
不気味な笑みを浮かべたー。

「ーー…な……ーーー」
衝撃で言葉を失う卓ー。

「ーふふー
 わたし、”国際犯罪組織ガルフ”ってところから
 た~くさんお金を貰って、
 ガルフの仲間になったの♡

 すごいでしょ?」

朱音の言葉に、信じられないという様子で震える卓ー。

もちろん、”嘘”だー。

朱音は”憑依”されてー、
身も心も乗っ取られているー。

今、話している言葉も、
今、していることも、朱音の意思ではないー。

しかしー、
今の朱音には、逆らうことはできないー。

”クククククー
 自分の娘に裏切られて絶望するその顔ー…
 素晴らしい表情ですよー”

朱音に憑依している日本支部代表・クロサワは笑みを浮かべるー。

そのクロサワと同じ笑みを浮かべながら
朱音は笑うー。

「ーーわたしは、国際犯罪組織ガルフの朱音ー…
 ふふー…素敵な響きでしょ?」

笑いながらも、冷たい表情を浮かべる朱音ー。

「ーー…そ、そうかー…朱音ー
 やつらに脅されているんだなー…?」

卓が、”そうとしか思えない”と言わんばかりにそう言い放つー。

「ー大丈夫だー…俺がなんとかするー。
 だからー…俺を信じてくれー。
 あいつらの言うことなんて、聞く必要はないんだー」

卓がそう言いながら朱音に近付くー。

がー
朱音は容赦なく、卓に対してナイフを振るって来たー。

「ー!?」
驚く卓ー。

その隙に朱音は、
格闘術のようなもので、卓に猛攻撃を仕掛け始めるー。

「ーーっっ!?あ、朱音!やめろ!」
卓が叫ぶー。

しかし、朱音の攻撃は止まないー。

髪を振り乱しながら、
”朱音ができるはずのない”格闘術を次々と叩きこんでくるー。

「ーど、どこでそんな動きー!?」
卓がそう言うと、朱音は「どこだっていいでしょ~?」と、
笑いながら卓を攻撃するー。

やむを得ず、一旦、朱音を止めようと反撃しようとする卓ー。

しかし、朱音はバク転すると、その攻撃を躱して、
笑みを浮かべるー。

スカートがめくれることも、
髪が乱れ切るのもお構いなしー。

「ーふふふーなかなかいい身体ですねー」
ボソッと呟く朱音ー。

その言葉は、卓には聞こえないー。

「ーー隊長!!」
部下の和美が戸惑いながら叫ぶと、
卓は「ーーむ、娘を一旦確保する!手伝ってくれ!」と、
朱音を行動不能にして、捕らえることを指示したー。

「ーーククククーー
 ”娘”を捕まえるんだー?
 できるものなら、やってみなー!」

朱音が笑いながら、
二人を相手に、激しい動きで互角に渡り合うー。

日本支部代表・クロサワは、あらゆる格闘術を使いこなす強敵ー。

朱音の身体に憑依していても、
その実力はかなりのものだったー。

だがーー

「ーーはぁ、はぁ、はぁ…」
朱音の”身体”が、クロサワの体術についてこれなかったー。

やがて、朱音の身体から息が上がり始めるー。

「ーチッー…貧弱な小娘ですねー」
ボソッと呟く朱音ー。

そしてー、ついに朱音は
卓の部下である和美の攻撃を受けて、
その場に押し倒されると、
和美に取り押さえられてしまうー。

「ーーくっ…くくくくくー」
取り押さえられて笑う朱音ー。

そんなー
”娘の異様な姿”を前に困惑した表情を浮かべる卓ー。

「ーーー朱音ー…どうしてこんなことをー!」
卓が悲しそうに言うと、
朱音はニヤッと笑みを浮かべたー

「ーーいいでしょうー」
とー、突然敬語を口にしながらー。

「ーー!?」
卓がさらに表情を歪めるー。

「ーーーあなたに教えてあげましょうーーー
 
 ”こういうこと”だとー」

朱音がそう言葉を口にすると、
朱音が突然、ガクッと意識を失って、
そのまま痙攣しながら苦しそうに声を上げるーー

「ー!?」

そしてー、朱音から飛び出した”煙”のようなものが
”実体化”するーーー

「ーーお、お前はーー…!」
銃を構える卓と、部下の和美ー。

「ーー初めましてー
 私が国際犯罪組織ガルフー、日本支部のクロサワですー」

クロサワはそう言葉を口にすると、
ピクピクと痙攣している朱音の方を見つめたー。

「ーあなたの娘の身体はー、なかなか良かったですよー」
と、そう言葉を口にしながらー

「ーーー!!!!」
卓は、すぐにその言葉の意味を理解したー。

この男が、娘の朱音を操りー、
”あんなこと”をさせていたのだとー。

「ーーーー貴様…!」
卓が、クロサワを睨みつけると、
クロサワは両手を挙げたまま笑みを浮かべたー。

「ー動いたら、撃ちますー」
卓の部下・和美もそう言いながらクロサワに迫るー。

だがーー
ニヤッと笑みを浮かべたクロサワが、再び煙のようになるとー、
そのまま和美の口に向かって飛び込んでいくーー

「ーひっ…!? ぁ…」
和美が苦しそうに喉を抑えるー。

「ーい、井沢!」
すぐに卓がそう叫ぶもー、
もう、和美は邪悪な笑みを浮かべていたー。

「ーーこれが、”私”の憑依ですークククー」
と、そう言葉を口にしながらー。

「ーー…そ…そんな馬鹿なー…」
卓は思わずそう言葉を口にするー。

しかし、和美はいつもとは別人のような態度で笑うと、
気絶して痙攣している卓の娘・朱音を足で乱暴に転がすと、
「ーあなたの娘が、自分の意思で人を殺したり、
 犯罪組織の仲間になるとでも思っているのですか?」と、
和美は邪悪な笑みを浮かべるー。

「ーーーっ…」
確かに、さっきまでの朱音の行動は
”憑依されている”と、言われた方が説明がつくー。

自分の意思で朱音があんなことするわけないし、
脅されていたとしても、あそこまで自然に敵意をむき出しに
できるわけがないー。

「ーーくっ…!井沢の身体から出ていけー…!
 朱音を解放しろ!」

卓は銃を手に、言葉を口にするー。

しかし、和美は笑みを浮かべながら
自分の身体を触るー。

「ー撃ってもー、死ぬのはこの女ですー。
 試してみますかー?

 まぁ、仮にこの女に憑依している私にもダメージを
 与えられるのだとしても、
 この女の身体が傷つくことには変わりありませんがー」

和美はクスクスと笑うと、
冷徹な眼差しを卓の方に向けたー。

「ー使えないゴミは処分ー
 逆らうクズには地獄を見せるー

 それが、我々の鉄の掟ですー」

和美はそう言うと、
卓は銃を向けたまま、「動くな!」と再度叫ぶー。

がーー

「ーー銃なんて、私には怖くねぇんですよー」

和美は、そう言葉を口にすると、
口から煙のようなものを吐き出してー、
そのままその場に倒れ込むー。

そして、今度はその”煙”のようなものが
卓の方に向かって突進してきたー

「ーーー!!!」

それと同時に、卓の意識は途切れたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!!!!」

卓が目を覚ますー。

すると、そこにはー

サングラスをかけたガムを噛んでいる男ー
音楽家のような風貌の男ー
お嬢様のような風貌の女ー

怪しげな人物たちが並んでいたー

「ーーーー!!」
卓が、困惑しながら周囲の状況を見つめると、
「へへー目覚めたかー」
と、サングラスの男…国際犯罪組織ガルフのアメリカ支部長・ジェイクが
笑みを浮かべながら呟いたー。

「ーー思ったよりイケメンですわねー」
イギリス支部長・マデリーンがそう言うと、
卓は声を上げたー。

卓は、”憑依されて”ここまで自らの足で移動してきてしまったのだー。

「ーーき…貴様らー…!朱音はどこだ! 井沢はー!?」
娘と部下の名前を叫ぶと、
音楽家のような風貌の男ー、フランス支部長のオーレリアンが
「見たまえ」と、リモコンを手に、近くのモニターの電源を入れたー。

そこにはーー
憑依された部下の和美が、笑いながら
マシンガンを乱射している映像が映し出されていたー。

「ーーー!!!!!」
卓は表情を歪めるー。

途中で分かれた残り6人の部下たちの元に、
和美に憑依したクロサワは、和美のフリをして接近ー、
マシンガンを笑いながら乱射していたのだー。

「ーーそ、そんなー…」

憑依された和美の手によって、6人が全滅するー。

そしてー、
憑依されている和美は笑いながら
カメラの方を見つめたー。

「ー隊長~…わたしも、死んじゃいま~す!」
笑いながら和美は自分に銃を突きつけると、
そのまま、恐ろしい光景がカメラに映し出されたー

「ーーーーーーい、井沢ーーー…」
絶望の表情を浮かべる卓ー。

部下を全員、失ってしまったー。

「ーークククー
 残念でしたねー」

ふと、”娘”のー、朱音の声がしたー。

ビルの数階下のフロアで、和美の身体を使っていたはずの
クロサワが、もう最上階であるここに戻って来て、
また娘の朱音に憑依したのだー。

「ーくそっ!朱音から出ていけ!」
卓が叫ぶー。

しかしー、朱音は笑みを浮かべながら
卓に銃を向けるー。

「ーーくそっ!!!!朱音にそんなものを持たせるな!」
卓がそう叫ぶも、朱音は「わたし、お父さんのこと、殺したいの!」と、
嬉しそうに笑うー。

「朱音のフリをするなーー!!!この野郎ーーー!」
卓が怒りのあまり声を上げるー。

がーーー
部屋の奥に座っていた人物が、
声を発したー。

「ーー我々に歯向かう者には、容赦なく地獄を見せるー」

「ーー!」
卓がその人物の方を見ると、
そこには、仮面を身に着けた人物が座っていたー

「ーー貴様はー…?」
卓が表情を歪めながら、そう問うと、
仮面の人物は答えたー。

「ーー我が名は”ガルフ”ー
 国際犯罪組織ガルフを支配する者ー」

その言葉に、卓は目を見開くー

”こいつがー、巨大犯罪組織のトップー”

そう思いつつ、朱音の方を見つめるー。

「ーーわたし、昔から
 ず~~~っと、お父さんのこと、大っ嫌いだったのー」

憑依しているクロサワが、朱音のフリをして笑うー。

「そうだー。死ぬ前にすっごいものを見せてあげる」
朱音がそう言うと、近くに座っていた
フランス支部長のオーレリアンが再びリモコンを操作したー。

そこはーー
”卓の家”だったー

「ーーー!!!」
卓が青ざめるー。

さっきまでこの場にいた
国際犯罪組織ガルフ・ドイツ支部代表の
全身鎧の男・ヴィルフリートが、
卓の家に乗り込んでいたー。

そしてーー

家にいた卓の妻・翔子を赤に輝く剣で
斬り捨てたーーー

「ー…し、翔子…!
 う…うあああああああああああああああっ!」

卓が怒りの雄たけびを上げるー。

さらに、ヴィルフリートは卓の家の飼い犬も斬り捨てると、
偶然、それを目撃した隣人の男も斬り捨て、
そのまま無言で立ち去っていくー。

「ーーくそっ!貴様ら!!ぜったいにーぜったいに許さない!」
卓が目から涙をこぼしながら叫ぶー。

がー
銃を持った娘の朱音は卓に銃を向けて
笑みを浮かべたー。

「ーそろそろ死になさいー」

そう、呟きながらー。

「ーーーーー…」
卓は、冷静に状況を判断するー。

この状況でーー
逆転できる可能性があるとすればー、
娘の朱音が助かる可能性が1%でも上がるとすればーー

”国際犯罪組織ガルフのトップを砕くことー”

このまま大人しくしていれば、死ぬだけー。
朱音も助からないだろうー。

だがー
その混乱に乗じれば、あるいはー…

「ーーー」
卓は咄嗟に、靴の中に隠し持っていた銃を手にすると、
それを、国際犯罪組織ガルフのトップ、”ガルフ”に向けて
発砲したー。

「ーーー!!」
アメリカ支部長のジェイクが驚くー。

がー、
銃弾は正確にガルフの頭部に命中ー
仮面が砕け散るーーー。

「ーーーー!!」
卓が表情を歪めるーーー

予想に反してー、仮面の下から出てきたのはー
若い女の顔だったからだー。

「ーーー…!?」
卓が表情を歪めるー。

先程までの声は、仮面で本来の声と変えていたのだろうー。

”ガルフ”のトップだと名乗る女が、
無表情のまま座っていた椅子から立ち上がると、
憑依されている朱音から銃を受け取ったー。

「ーー逆らう者は皆殺しー
 裏切者と無能は、廃棄処分ー」

国際犯罪組織ガルフ首領を名乗る女は、そう言葉を口にすると、
卓の前まで歩いてくると、
不気味な笑みを浮かべたー。

「ーー好きなように生きてー、
 好きなように死ぬー。
 誰にも、邪魔はさせないー」

そう、言葉を囁くと
”ガルフ”は、そのまま卓に向かって無情にも銃を放ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”国際犯罪組織ガルフ”の最終目標ー。

それは”ルールに縛られない自由な世界”ー。

人間は、ルールという枷に縛られているー。

”ガルフ”を名乗る彼女も、そうー。
彼女もまた、ずっとずっと、ルールに縛られてきたー。

だからこそー、”自由”を求めるー。
法律という枷すら超えた、自由をー。

「ーーわたしは好きなように生きー
 好きなように死ぬー

 誰にも縛られないーーー」

”ガルフ”を名乗る女は、そう言葉を口にすると、
”国際犯罪組織ガルフ”の本部に存在する
自分の部屋の机に飾ってある写真を見つめたー。

そこにはー
幸せそうに写真に写る4人の家族ー。

両親らしき人物と、
ガルフを名乗る彼女らしき人物、
そして現在、国際犯罪組織ガルフのイギリス支部長を務める
お嬢様・マデリーン…

”ガルフの妹”である彼女が笑顔で写っているー。

もう、戻れないー。
あの頃にはー。

好きなように生きて、好きなように死ぬー。

そのための”力”が、
”国際犯罪組織・ガルフ”ー。

”ガルフ”は仮面を身に着けると、
少しだけ笑みを浮かべてからー、
今日もー”悪事”を働くために立ち上がるのだったー。

おわり

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コメント

800万アクセス到達デス~!★
改めて、ありがとうございます~!★

700万の時には、
憑依空間の作品に時々出て来る「闇.net」を取り上げたので、
今回は同じく時々出て来る「国際犯罪組織ガルフ」を取り上げてみました~!★

どちらも、この名前で憑依空間内で検索すると、登場作品を見れるので、
気になる人がいたら、見てみて下さいネ~!

次は900万を目指して頑張ります~!!

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