<憑依>サンタさんのひみつ

小さい頃、彼女はサンタクロースを目撃したー

彼女は、確かに見たー。
近所のお姉さんがサンタさんとして
プレゼントを配りに来ているのをー…。

--------------------—

女子大生の冬松 莉彩(ふゆまつ りさ)は、
サンタクロースを今でも信じていたー。

何故ならー

小さい頃に実際のサンタクロースを見たことがあるからだー。

まだ小さい頃、
莉彩は、サンタさんからの
プレゼントを純粋に楽しみにしていて、
”寝たふり”をして
サンタさんを待っていたことがあったー。

そんな時だったー。
静かに家の扉が開きー
莉彩の寝ている部屋に、
赤い服を着た人がやってきたー

”サンタさんだ”

莉彩はドキドキしながら、
自分の枕元にプレゼントを
置こうとしているサンタクロースの
姿を細目で確認したー。

するとー。
そこにはー
サンタクロースの格好をした
”美里お姉ちゃん”がいたー。

美里お姉ちゃんとは、
近所に一人暮らしをしていた
若い女性で、
小さい頃の莉彩は、よくその人に
遊んでもらい、
美里お姉ちゃんと呼んで
懐いていたー。

そんな、近所のお姉さんが、
サンタクロースの格好をして、
莉彩の枕元にプレゼントを
置いて行ってくれたのだー

「--お姉ちゃんが、サンタさんだったんだね!」

後日
”美里お姉ちゃん”に会う機会があった
莉彩は、嬉しそうにそう言ったー。

けれどー
”美里お姉ちゃん”は「え?」と首をかしげるだけだったー

当時は、美里おねえちゃんがとぼけているだけだと
思っていたー。

でも、違う気がするー。

サンタさんは、
その人の知っている人間の姿に変身して
プレゼントを届けに来るんだー。

莉彩は、そんな風に思っていた。

だから、サンタさんは実在するー

と…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

クリスマスがやってきたー。

大学生の莉彩は、
もうサンタクロースから
プレゼントを貰う年齢ではない。

今年は、友達との都合が合わず、
クリスマスイブには特に何の予定もなかったー。

「--ふ~、たまにはのんびりって言うのもいいよね」
莉彩は、一人暮らしのアパートで、
静かにクリスマスイブの夜を過ごしていた。

明日は夜から友達と一緒に
ちょっとしたパーティをする約束をしているから
のんびりとするなら、今日しかないー。

莉彩は、クリスマスイブの夜を
一人、堪能するのだったー

・・・。

・・・・・。

サンタ界。
サンタクロースは実在したー

だがー。
人間の思っているものとは違うー
サンタクロースには”実体”がなかったー。
霊体のようなー
人間からは言い表すことの難しい存在。

それが、
サンタクロースだったー。

ボウ…

サンタクロースが、子供たちの欲しがっているものを
確認すると、それを”魔法”のような力で
出現させたー。

これが、サンタクロースの力。
サンタ界に、子供たちが望むものが
集まって行くー。

そしてー…

”プレゼントを配る時間”がやってきたー。
今年も、各地のサンタクロースを待つ子供たちに
プレゼントを配らなくてはならないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そろそろ明日に備えて寝ようかな~」
莉彩は、そんなことを呟きながら
友達とのLINEを終えて
寝る準備に入るー

その時だったー

「うっ…!?」
莉彩が突然ビクンと震えて
色っぽい声を出すー

そして、目の輝きを失い、
その場にがくんと崩れ落ちると、
少しして、莉彩が起きあがった…

「---」
目の光が失われたままの莉彩は呟く。

「メリークリスマス」
とー…。

莉彩は立ち上がると、
「えいっ!」と外でやったら
恥ずかしそうな変身ポーズのようなポーズを取るー。

すると、
莉彩の身体が光に包まれてー
ミニスカートのサンタコス姿へと変化したー。

「さぁ、みんなにプレゼントを配らなくちゃ!」
そう言うと、莉彩は
もう一度「えいっ!」と可愛らしく言うと
”サンタ界”からプレゼントが転送されてくるー。

莉彩は、部屋のベランダに出ると、
「おいで~!」と可愛らしく叫んだー

すると、そこに
空飛ぶトナカイとソリがやってくるー

「--ふふふ…いい子じゃな」
莉彩はそう呟いて
「おっと、口癖が」と言うと、
トナカイに乗るー

高所恐怖症の莉彩なら
ひっくりかえってしまいそうな光景ー。

だが、今の莉彩は気にも留めず、
空飛ぶソリに乗って―
プレゼントを配りに向かうー

サンタ界のサンタはー
”一人暮らしの人間の体”を借りて
プレゼントを配るー。
実体がない以上、身体を借りないと
プレゼントを配れないからだー。

一人暮らしの人間の体を
借りる理由は、
単純に”心配されないため”。
家族と同居している人間の体を借りれば
疑問に思う人間や、心配する人間が増えてしまうー

「えいっ!」
莉彩が空を飛びながら可愛らしく呟くと、
ソリとトナカイの周りに
不思議な光が出てくるー

”人間たちから”空飛ぶサンタ”が
見えないようにする魔法”だー

時々ー
純粋な子供には見えてしまうことがあるがー
子供は夢だと思うから問題はないー

「えいっ!」
莉彩は、魔法を放つと、
透明人間のような状態になって
家に侵入しー
そこの家の子供にプレゼントを届けたー

魔法で姿は見えないようにしているからー
心配はいらないー

子供の枕元にプレゼントを置くー

「---あ…」
子供が目を覚ましたー。

サンタ界の魔力で、
莉彩の姿は今は、人間には見えないー

けれどー
時々、子供が相手だと
見えてしまうことがあるー

この子供も、莉彩の姿が見えているようだー

「さ、、さんたさん…?」
子供が小声で呟く。

莉彩は可愛らしく「しー」と指でポーズを取ると、
優しくウインクしたー。

子供は、夢だと思うかもしれないー
目を覚ました時に、親に「サンタさんを見た」と言うかも
しれないー

だがー。
それでも問題はない。
”よかったね~”で親たちは流すからだー。

「--もうひと頑張り!いっくよ~!」
莉彩が元気よくトナカイたちに告げると
再び空を移動する。

ミニスカサンタ姿の莉彩は
「うぅ~さむい~」と呟きながら
プレゼントを配っていくー

サンタ界では、
条件さえ満たしていれば
好きな人間に憑依することが
許可されているー。

このサンタは、毎年若い女性に憑依しては
可愛らしい仕草をしながら
プレゼントを届けているー。

「--ふふふ~完了~!」
莉彩が小さくガッツポーズをすると、
トナカイたちの頭を撫でて
「今年もおつかれさま~」と呟いた。

トナカイたちが声を上げて、
返事をするー。

先にサンタ界へと帰って行く
トナカイたちー。

莉彩は、自分の家に戻ると、
鏡を見つめるー。

サンタ姿の自分を見つめる莉彩―。

「--メリークリスマス☆」
莉彩はポーズを取りながら
鏡の前で微笑んで見せたー

「うふふふふふふふ!」
自分の可愛い仕草に
嬉しそうに足をばたばたさせる莉彩。

”プレゼントを配り終えたあと”は、
本人に迷惑をかけない程度に
少しだけ楽しむことが許可されている。

「--わたしがサンタさん~」
莉彩が嬉しそうに鏡の前で
くるくると回るー。

「まさか、自分がサンタさんに
 なってるなんて思わないだろうなぁ~」
莉彩はにこにこしながら
鏡に映る自分をつんつんしながら微笑むー。

こんな風に、ミニスカサンタになって
トナカイと一緒に空を飛んで
色々な子にプレゼントを届けているー

…なんて、
この子は一生気付かないだろうー。

「--ふふふ」

あれー?

と、莉彩に憑依しているサンタは思うー

そういえば、この子ーーー
随分前に…。

「----」
莉彩は、鏡を見つめながらにっこり微笑んだー

もしかしたら、
前にプレゼントを配った子かも
しれないー

そんな風に思いながら、笑うー。

莉彩に憑依しているサンタはー
莉彩が小さい頃に”美里おねえちゃん”に
憑依してプレゼントを配りに来たサンタと
同一人物だった。

「ほっほ…これだからサンタはやめられんのぉ」

莉彩に憑依しているサンタは
素の口調で喋ってしまうと
「あ、しまった!」と呟きながら
指揮者のようなポーズをして「お仕事おわり~!」と呟いたー

するとサンタの格好をしていた
莉彩が光に包まれてー
元の姿に戻るのだったー

「ふぅ…今年も疲れた~」
そう呟くと、莉彩はソファーに腰かけて
うとうとし始める。

プレゼントを配るのは、サンタにとって
大仕事だー。

その他の時期には、
クリスマスにプレゼントを配るために
魔力を高める修行をしたり、
子供たちの動向調査をしたり
色々なことをしているが、
プレゼントを配る、この1年に1回の
タイミングが、やはり、一番疲れるー

「はぁぁ…ぽかぽかするぅ~」
暖かい部屋で、ウトウトしてきた莉彩は
そのまま眠りについてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----」

莉彩がふと目を覚ます。

「あれ…?」

莉彩は周囲を見渡した。
自分の家。

いつの間にか、ソファーで
一人、眠ってしまったようだった。

「LINEしてて…それで…
 あ…寝落ちしちゃったのかな」
莉彩はそう呟くと、立ち上がる。

なんだかちょっと身体が疲れている気がするー。

「---もう朝かぁ」
莉彩は、スマホを確認し、
クリスマス当日の今夜、
友達と会う約束の確認をしたー

莉彩が、ゴミ出しに行くと、
男の子が莉彩に声をかけてきた。

「あ、サンタのお姉ちゃん!
 ありがと~!」

子供が言う。

「え?」
莉彩は首をかしげた。

「-サンタ?わたし?」
莉彩が困り果てた様子で言うと、
男の子は
「うん!お姉ちゃん!とっても綺麗だったよ!」と
にこにこしながら微笑んだー

「え…?あ、、う、うん、ありがと~」

この子は何か勘違いをしているのだろう…

そんな風に思いながら、
莉彩は微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・

夜ー

莉彩はかねてから約束していた
友達たちと、クリスマス当日の夜を過ごした。

「そういえばさ~」
ふと、友達の一人が口を開いた。

「わたし、今日、変な夢みたんだよね~」

「変な夢?」
莉彩が聞き返すと、友達が
苦笑いをしながら言う。

「うん~なんか、わたしがサンタさんの格好して
 空飛ぶソリに乗って
 子供たちにプレゼントを配る夢~!」

友達が笑いながら言う。

「しかも起きたらなんか、
 身体がドキドキしてて、
 変な気分になっちゃった!」

友達の一人の言葉に、
他の友達は笑いながら
「まだサンタさん信じてるの~?」と呟く。

莉彩に憑依したサンタとは別のサンタが
莉彩の友人に憑依して
莉彩とは別の家にプレゼントを配って
回っていたのだったー

「----!」

その話を聞いた莉彩の脳裏に何かが浮かぶー

自分が、サンタの格好をして
子供たちにプレゼントを配るイメージ…。

「あれ…」
莉彩は、そう呟くと、
友達に向かって微笑んだ。

「なんか…わたしもその夢見た気がする」

とー

「なぁにそれ?
 2人そろって同じ夢なんて、なんかヘンなの~!」

笑う友達ー

莉彩は、ふと、窓の外を見つめたー。

”やっぱり、サンタさんはいるのかも”

そんな風に思いながら、
莉彩は、少しだけ微笑むのだったー…。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

クリスマスを題材にした
優しい憑依モノでした~!

ダークなお話イメージが
私についているかもなので、
ホワイト(?)なお話も~☆笑

今日もありがとうございました~!

PR
小説

コメント

  1. 龍渦 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    憑依された後の莉彩が変身ポーズ的なポーズをとったり「えいっ!」って言ったりとかの行動の一つ一つが可愛くて好きだなぁ

    憑依されてない莉彩が子供に見つかって困り果てた様子になったりするのも可愛いなぁって思った

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 憑依された後の莉彩が変身ポーズ的なポーズをとったり「えいっ!」って言ったりとかの行動の一つ一つが可愛くて好きだなぁ
    >
    > 憑依されてない莉彩が子供に見つかって困り果てた様子になったりするのも可愛いなぁって思った

    コメントありがとうございます~☆
    えいっ!えいっ~