<他者変身>この力は大切な”玉の緒-いのち-”を護るために④(完)

全てを終わらせるためー。
紅河と黒河の二人が待つ施設へ足を運んだ海斗たち。
その先に待つ、運命はー…?

☆本日(4/29)の通常更新はこの1個前に行っています!
通常の更新を見たい場合は、この1個前を見て下さいネ~!
こちらは通常の更新とは別に作った合作(新作)デス!☆

※果実ろあ様(@fruitsfantasia)との
リレー形式合作デス。
内容は一切打ち合わせなしで、
数百文字程度ずつで交代交代で書いた作品になります!
(※誰が書いているか、担当箇所ごとに表記しています (例 ②無名 など)

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㉛果実ろあ

ドキドキと、来瑠の心臓が騒がしいくらいに動悸を訴える。
紅河について来たのは、自分の意思。
彼を信じるのであれば、きっとそれほど危険なこともないはず。

それは分かっているが、どうしても言い知れない不安のようなものが拭い切れなかった。
更に、もうひとつ。
今の来瑠は海斗、海斗は来瑠の姿になっていることを、この二人に気づかれたりしないだろうか、と。
そう思ったら頬を冷や汗が伝うも、小さく深呼吸をし、そんな自分を必死で制した。
こんな状況だからこそ、堂々と感づかれたりされないようにしなければ。

「……紅河から、話は聞いているな?」

黒河の低く静かな声に、海斗と来瑠は無言で頷く。
それを確認したのち、黒河は背を向ける。
その先には、一人の女性――白夜お姉ちゃんの姿があった。

「なら、もう説明する必要はないだろう。さっそく、頼めるか」

来瑠も海斗も、思わず驚いてしまう。
紅河と比べ、些か冷酷のように見える黒河が素直に頼んでくるとは思わなかったのだ。
だが、二人ともそのために来た。
断る理由など、何一つとしてない。

ない……の、だが。
海斗は、来瑠の脳で必死に思案を巡らす。
この能力、「模写する外見(アピアランス・コピー)」は容姿や身体能力なんかはコピーできても、本人の特殊能力までも使えるようになったりはしない。
つまり今の状態では、来瑠と同じように白夜を治療することなど不可能なのだ。

しかし今この場で元の姿に戻ろうものなら、どうして姿を変えていたのかと怪しまれてしまうだろう。
ごくり、と唾を飲み込む。
意を決し、海斗はゆっくりと足を踏み出した。

そして、白夜の身体に手を翳す。
確か、このようにしていたな――と思い出しながら。
だが、残念ながら何も反応を示さない。

「……どうした。何をしている」

後ろでは、黒河が訝しみ眉根を寄せている。
海斗自身も、焦燥感が募っていく。
どくんどくんと海斗の心臓が高鳴り、強く目を瞑った――そのとき。

「あ、あの……っ!」

後方で、海斗の姿をした来瑠が慌てて声を張り上げる。
突然の声に、紅河と黒河はそちらを振り向いた。

 

㉜無名

「なんだ?」
海斗の姿をした来瑠の声に、
黒河がそう言い放ちながら、振り返るー。

紅河も、不思議そうにこちらを見ているー

”ーーーー…”
来瑠の姿をした海斗は、いざとなったら
”変身していた”ことを明かすつもりでいたー。

当然、黒河と紅河は怒りを露わにするだろうー。

しかしー
”これまで命を狙われてたんだー。罠を警戒して念のため用心
するのは当然だろ?”と、言ってから、
”あんたたちが罠を仕掛けてないことは分かったー。
今からこの人を治せば、文句ないだろ?”
と、言えば、黒河と紅河を納得させられる可能性は高いー、と
考え、そう口を開こうとしたその時だったー。

先に海斗の姿をした来瑠が口を挟んだのだー

事前にこうなった時の打ち合わせはしていないー。
紅河と共に歩いている時だったから
そんなに細かく打ち合わせをする時間はなかったー。

まさか、こんなにあっさり、ただ単に治療をお願い
してくるとは思わなかったのだー。

「く、来瑠は力を何度か使って、消耗してるー…
だから、わた…お、俺も手伝わせてくれー」

海斗の姿をした来瑠が言うー。

「ーーー…」

”能力を持つ者同士”
生命力が共鳴するーー

そんなことも、もしかしたらあるかもしれないし、
ないかもしれないー。

だが、これで来瑠が、海斗の側に近寄ることができれば、
海斗の姿をした来瑠が能力を発揮しー、
白夜を治療することができる。

あの二人には、互いに変身して姿を入れ替えていることは、悟られずにー

「いいだろう」
黒河はそう呟くと、海斗の姿をした来瑠も白夜の方に近付くことを許可するー

「助かったー。ありがとな」
来瑠の姿をした海斗が言うと、
海斗の姿をした来瑠は、
「かいとにも何度も助けてもらったもん」と、
小声で言葉を口にしたー。

そして、海斗の姿をした来瑠が
”「玉の緒(テラスポース)」”を発動して、
白夜を回復させ始めるー

まるで、屍のような状態の”白夜お姉ちゃん”

果たして、本当に能力で治療できるのだろうかー。
そう、思いながらー。

「ーーーーー」
そんな二人を背中から見つめている黒河と紅河ー。

「ーーーーーーー」

しかしーーー
腕組みをしながら黒河は以前も使った自身の能力ー
”探知する目(レーダーズ・アイ)”を発動したー。

立体映像が映し出されるー。

「ーーーーー(なるほど)」

”来瑠”の居場所を探知しようとしたはずなのに、
そこには”海斗”の姿が映し出されているー

それはつまりー
”来瑠は海斗に変身している”ことを意味するー

「ーーーーーー」
”二人が互いに変身している”ことに気付いた黒河は、
その目に残忍な光を宿らせたー。

 

㉝果実ろあ

「……ん、んぅ」

決して瞳は開いていない。
そして身体に然程動きが生じたわけでもない。
しかしそれでも、確かに意識がないはずの白夜が小さな声を漏らした。

「……!」

後ろで様子を見ていた紅河が、思わず身を乗り出す。
黒河もまた、あまり感情が感じられない表情ではあったものの、薄く眉をぴくりと反応させた。
ずっと待ち望んでいた。
白夜お姉ちゃんが意識を取り戻すそのときが、ついにやって来たというのだ。
感情を失った黒河でさえ、胸の内側に何だか少し温かいもの感じた。

だが、それは来瑠の姿をしている海斗とて同じことだった。
まさか本当に、来瑠の能力で回復ができてしまうとは。
ほぼ無意識に、横にいる自分の姿を見る。
疲労が重なったのか、肩を上下させていた。

「……大丈夫か、来瑠」

「……うん、大丈夫。ありがと」

紅河や黒河に聞かれないよう小声で訊ねると、同じく小さな声で返事を返す。
これで本当に完治できたのかまでは分からない。
だけど、大きく前進したのは間違いがなかった。

よかった……これで、来瑠もこの二人から開放される。
そう、安堵に胸を撫で下ろした瞬間。

「助かった。来瑠、お前のおかげで、おそらくいずれ意識を取り戻すだろう」

こつ、こつ、と。
足音を響かせながら、黒河は海斗や来瑠のほうへと近づいていく。
そして――。

「だから、お前はもう用済みだ。来瑠――いや。海斗、だったか?」

――低く冷たい声色が海斗の鼓膜を震わせて。
その後頭部に、銃口が突きつけられた。

 

㉞無名

黒河が銃を来瑠の姿をした海斗に突き付けるー。

海斗の姿をした来瑠が「かいと!」と叫ぶー。

「ーー何だよー気付いてたのかー」
変身が気付かれていたことに驚きながら
来瑠の姿をした海斗が声を上げるー。

そしてー、変身を解除しー、
来瑠の姿も、元の姿に戻すと、
黒河のほうを見つめたー。

「おい…なにしてんだよー…!
白夜お姉ちゃんが生き返ったなら、もういいだろ!?」

黙ってみていた少年のような風貌の紅河が言い放つー。

だが、黒河は何も表情を変えずに続けたー。

「ー我々には、彼女がいればそれでいい。
他には、何もいらないー。

余計なことを知ってる人間は、排除した方がいい」

黒河のその言葉に、
来瑠は「約束は守ったのに…!ひどい!」と、声を上げるー。

「ーー白夜お姉ちゃんさえ帰って来ればそれでいいんだ!
黒河、もうやめろって!」

紅河がそこまで言うと、
黒河は少しも表情を変えずに、海斗のほうを見つめたー。

「ー礼は言うー。
悪く思うな」

それだけ言うと、黒河は銃弾を容赦なく放とうとしたー。

だがーーー

「ーーー!?!?!?!?」
生気のない表情の黒河が、初めてその表情を歪めたー

いや、黒河だけではないー
紅河も、来瑠もーーー。

「ーーーーお前に、撃てるのかー?」

海斗の声が、女の声に変わるー。

「ーーーーッッ…」
黒河が困惑の表情を浮かべながら海斗のほうをーー

いいやー
”白夜”の姿に変身した海斗のほうを見つめるー。

「模写する外見(アピアランス・コピー)」ー
その能力で、今度は海斗が白夜に変身したのだー

いかに、人の心を失った黒河と言えど、
姉のように慕いー、時に母のように慕ったーー

そんな相手をー
そんな大切な相手の姿をした人間を撃てるはずがないー、

とー。

「ーーー……ーーー…」
動揺を見せる黒河ー。

こんな、人の弱みにつけ込むことはしたくなかったー。

だが、こうしなきゃ、やられるー。

動揺を見せた黒河に、白夜の姿をした海斗が近付きー
すぐに、変身を解除すると、渾身の蹴りを黒河に食らわせたー

「こ、黒河ー!」
紅河が叫ぶー。

銃が吹き飛びー、
黒河が装置に叩きつけられるー。

海斗が慌てて銃を蹴り飛ばして、黒河と紅河の手の
届かない方向に銃を移動させると、
そのまま二人のほうを見つめたー

「かいとー…」
駆け寄って来る来瑠ー

海斗は、来瑠の無事を確認しながら、
二人のほうを見つめると、言葉を口にしたー。

「ーもう、終わりにしようー。
お前たちの”大切な人”が無事に帰って来たー。

それで、いいだろー?」

その言葉が、黒河と紅河の二人に届くことを信じてー。
海斗は優しくそう言い放ったー。

 

㉟果実ろあ

「……ッ」

俯いたまま、黒河は奥歯を噛み締める。
強く強く。血が滲むほどに強く。

黒河の世界は、大切な人の存在が全てだった。
それ以外の有象無象など、どうなろうと知ったことではない。
他人がどんなに無残な散り方をしても、この人さえ笑っていてくれるなら。

でも――黒河の胸中を蝕むのは、今までのそれとはまた異なる感情だった。
その大切な人を救うことができたのは誰だ。他でもない、この二人だ。
そして、自分たちが白夜を想うのと同時に、海斗や来瑠にもまた大切な人が――。

「……黙れ。俺に指図をするな」

首を小さく左右に振り、海斗を睨みつける。
その言葉にはとても強い殺意に彩られてはいたが、それ以上に。
まるで自分自身の感情を誤魔化すかのようでもあった。

感情はとっくに失ったと思っていた。
他人がどのような事情を持ち、どのような想いでどう生きようが、どう死のうが知ったことではないと思っていた。
その、はずなのに。

「……ッ」

眉間に皺を寄せ、再び強く奥歯を噛み締める。
ただただ苛立つ。
海斗たちに、ではない。黒河自身に対して。

「……もうやめよう、黒河」

優しい声色でそう言ったのは、いつの間にやらすぐ近くに立っていた紅河だった。
無論、紅河はずっと同じ目的で行動をともにしていた仲間だ。
しかし今の黒河に、そんなものは関係がなかった。

「……お前も、俺の邪魔をするのか」

「邪魔? 違うよ。お前こそ、何やってんだよ。僕だって、最初はこいつらなんか犠牲になったっていいと思ってた。でも、もう違うだろ」

「……なに?」

眉根を寄せ、問う黒河に。
紅河は黒河の目をまっすぐ見据え、心の底から叫ぶ。

「こいつらは、他でもない命の恩人だろ……! お前がそんなことすんなら、僕はこいつらの味方してやるよ」

黒河は目を見開く。
直後に、目を伏せる。
その様子は、海斗にも紅河にも、何だか泣いているようにさえ見えた。

だが――黒河はすぐに顔を上げ、慌てて背後を振り向く。
そこにいた白夜が目を開け、黒河の手首を掴んでいたのだった。
そして静かに、ゆっくりと首を左右に振った。

流れ落ちる。
幼き頃に止まり、もう溢れさせることなどないだろうと思っていた涙が。
黒河は全身から力が抜け、その場に崩れ落ちる。

「黒河……?」

紅河は名を呼ぶも、返事はない。
訝しみ、しゃがみ込んで黒河の顔を覗き込む。

眠っているのか。気絶してしまっているのか。
目を閉じ、身体を揺らしても全く反応を示さなかった。
でも。紅河は思わず深く息を吐き出す。
それは安堵からか、喜びからか、はたまた両方か。

黒河の口角は微かに上がり、確かな笑みを刻んでいたのだ。
彼のそんな顔を見たのは、本当に久しぶりのことだった――。

 

㊱無名

「本当に、ありがとうございましたー」

目を覚ました白夜が、海斗と来瑠に対して頭を下げるー

「い、いや、俺はー
ただ、巻き込まれただけみたいなものだし、
お礼なら来瑠に」

少し照れくさそうに呟く海斗ー。

年齢は海斗たちや黒河たちの少しだけ上、という感じだが
とても大人っぽい雰囲気も持つお姉さんという感じの白夜ー。

その話しぶりから、
黒河や紅河たちが慕うのも、よく分かるー
そんな感じの人だー。

「ーーかいと照れてる!」
笑いながら来瑠がそんな言葉を口にすると、
白夜の横に立っていた紅河が少しだけ笑ったー。

目を覚ました黒河は、相変わらず無表情だが、
少なくとも、もう敵意は感じないー。

白夜の両親も、あの事故で命を落としー、
既に身寄りがない状態ー

けれど、これからは、本当の家族のように、
白夜、黒河、紅河の三人で過ごしていければー、と
そう考えているー

「ーーわたしたちも、時々遊びに来ていいかな?」
笑いながら言う来瑠ー。

「ーえぇ、もちろんです」
穏やかに笑う白夜ー。

少し間を置いてから、
「ーわたしのことは、お姉ちゃんと思っていただいても
構いませんからー」と、そんな言葉を口にするー

「やった~!白夜お姉ちゃん!」
来瑠が笑いながら、そんな言葉を口にするー

身寄りのない来瑠にとっては、
本当に嬉しいことなのだろうー。

そんな風に思いながら、海斗が見つめているとー
白夜は海斗のほうを見て微笑んだー

「あなたもー」
とー。

「えぇっ!?俺もー!?」
海斗が顔を真っ赤にしながら叫ぶと、
来瑠が「ほら!かいとも恥ずかしがらずに!」と、
揶揄う様にして言葉を口にするー

「ーび、び、び、白夜お姉ちゃんー」

海斗が顔を真っ赤にしながら言うと、
来瑠も紅河も、そんな海斗を見て、面白そうに笑ったー

まだ恥ずかしそうにしている海斗は、
白夜のほうをもう一度見つめるー

優しくて、少しお茶目な感じもあってー
不思議な人だなぁー

そんな風に思いながら、海斗は
”家族みたいな存在かー”
と、自分にも身寄りがいないことを思い出しつつ、
少しだけ微笑んだー。

「本当に、ありがとうございましたー
また、いつでも遊びに来てください」

海斗たちが帰る時間になり、
白夜がそう言葉を投げかけるー。

「ー色々あったけどー、ありがとなー。
それとー…ごめんな」
紅河が海斗たちに向かってそう声をかけるー。

「ーーーーー」
黒河は、海斗たちのほうを見つめながら
何も言わずに、深々と頭を下げたー。

何も言わずとも、感謝の気持ちは、海斗たちに伝わったー。

海斗と来瑠は、そんな三人の姿を見つめながら
その場を後にしたー

「ーーそういや、”新しい義手”使う機会がなかったけどー
どんな機能があったんだ?」

紅河が聞くとー、
黒河は、紅河のほうを見ながら、
”新しい義手”の能力を見せたー。

「ーーー!」

紅河の前にバリアが展開されるー。

だが、反面、黒河自身は無防備な状態になっているー

「ーーお前を守るための、力だー」
黒河は、そんな言葉を口にするー。

黒河が海斗に破壊された義手の代わりに用意した義手は、
いざという時に”誰かを守るため”の能力を備えたものだったー。

そんなことを知った紅河は、
感情を失っても、ちゃんと黒河は自分のことを思ってくれていることを
改めて感じー、
「ーなんか…照れくさいなー」
と、笑ったー

そんな二人を微笑ましそうに見つめていた白夜は
「これから三人で、色々な思い出、作って行こうねー」
と、静かに微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ね~ね~、かいと!」

帰り道ー
来瑠が笑いながら海斗に声をかけるー

「海と~映画館と~ゲームセンターと~カラオケ~
いつ行く~?」

嬉しそうに笑う来瑠ー

「ぜ、全部一気には無理だよ!
ひ、一つずつ順番に!」

海斗は少しあたふたしながらそんな言葉を口にすると、
来瑠のほうを見て
”まるで妹が出来たみたいだなー”と、
嬉しそうに笑みを浮かべたー

 

㊲果実ろあ

「わぁ~……!」

眼前に広がる光景を見て、来瑠は感嘆の吐息を漏らす。
瞳はきらきらと輝き、口を大きく開けている。
そんな少女の姿に、隣に立つ海斗は思わず笑みが溢れた。

今、海斗や来瑠の目の前にあるのは。
どこまでも続く、広大な海だった。
既に朝から二人で遊び、水平線の向こうには夕陽が見える。

海斗自身も一緒になって楽しみ、疲れてきているはずだが。
何だか目の前の海や夕陽なんかを見ていたら、その疲れは消え去っていくかのような感覚を覚えた。

「……ねえ、かいと。ほんとに、ありがとね」

来瑠は海から目線を逸らさないまま、小さく独り言のように呟く。
その横顔に訝しみ、海斗はどこかからかうような笑みを浮かべた。

「何だ? そんなに海、気に入ったのか?」

「ううん。それもだけど、わたしを必死に守ってくれたこと。かいとに出会えて、ほんとに……ほんとに、よかった」

そう言いながら、来瑠の瞳から涙が零れ落ちる。
決して、悲しかったからではない。
それが喜びから来ているものなんだと、海斗にはすぐに分かった。
だから肩を抱き寄せ、優しく、明るく、笑顔を向けた。

「ああ。俺も、お前に会えて本当によかったよ。もちろん色々あったけど、お前と一緒にいられる時間は最高に楽しいからな」

「かいと……うんっ」

そこで口角を上げ、自身の頬を伝う涙を拭う。
そして踵を返し、来瑠は歩を進める。
海斗は何も言わず、その背中について行く。

すると、すぐに来瑠は意地悪そうな笑みで振り向いた。
年相応の無邪気な、それでいてどこか小悪魔な雰囲気を漂わせながら。

「ねえ、かいと。かいとって、彼女とかいるの?」

「か、彼女? 俺に、そんなのいるように見えるか?」

「見えないっ!」

「……笑顔で自信満々に言うなよ……」

「えへへー」

項垂れる海斗に対し、来瑠は心底楽しそうに笑う。
そんな様子を見ていたら、海斗もこのような他愛のない話ですらとても楽しいことのように感じた。

「でも、わたしはちょっと嬉しいかも」

「嬉しい? 何でだ?」

「んー……何でかなー」

「何だよ、それ」

話しながら。笑い合いながら。
どちらからともなく手が伸び、二人は手を繋ぐ。

そうして歩き出す。
また二人で過ごす、明日へ向かって――。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~!★

リレー形式(二人ですケド)で、
何度もキャッチボール的な感じで書いた作品だったので、
思った通りに進まなかったり、
相手から帰って来た内容に驚いたり、
色々楽しい合作でした~!★

最終的に、前作の同じ形式の合作
(俺の銀髪美少女デビュー)よりも、綺麗にまとまったような気がしています~!★

ここまでお読み下さった皆様、
ありがとうございました~~!

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