人々に”術”を掛けて、その相手を”ニート”に変えていく男がいたー。
彼に術を掛けられた人間は、
どんなに真面目な人間でも、
ニートになってしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー孝信(たかのぶ)もさぁ、
そろそろ何でもいいから働いたら?」
姉の凛香(りんか)が、そう言葉を口にすると、
大学を卒業後、既に既に2年以上ニートを続けている
弟・孝信が不満そうに「うるせ~なぁ」と、そう言葉を口にする。
「ーわたしはあんたのこと、心配して言ってるの!
わたしが実家を出て、お母さんとお父さんがいなくなったら
あんた、どうやって生活していくつもりなの?」
姉・凛香は困惑した表情を浮かべながらそう言葉を口にするも、
やはり、弟の孝信は聞く耳を持たずに、
そんな言葉を鼻で笑うー。
「そうなったら、その時考えればいいだろ?
自分がちゃんとした企業に就職したからって偉そうに」
大学卒業後に、有名な企業に就職した凛香は、
今も順調に、仕事も私生活もこなしているー。
昔から姉の凛香は優秀で、
弟の孝信はよく、姉の凛香と比べられていたー。
そんなことが続いたからだろうか、
あるいは元々歪んでいたのだろうかー。
孝信はすっかりと歪み、堕落した生活を送りー、
大学卒業後も就職先が決まらないまま、
学生時代から続けていたバイトだけ続ける生活を
送っていたものの、それも辞めてしまい、今はニートの状態だ。
「ーー偉そうにーって…
わたしは本気であんたを心配してー!」
凛香が不満を露わにしながらそう声を上げると、
孝信は「別に頼んでねーし、いつもいつも俺を見下しやがって」と、
不満の言葉を吐き出すー。
「ーーー…見下してなんかー」
姉の凛香は戸惑うー。
弟の孝信を見下しているつもりはないし、
そんなことは思っていない。
ただ、将来のことが心配で、
そして、ずっとニートをしてて就職をしようとする努力も
一切していない孝信に苛立って、声を掛けているだけー。
見下しているつもりは、姉の凛香には毛頭なかったー。
けれど、弟の孝信からすれば、
見下されているように感じたのかもしれない。
「ーーーもういい。勝手にすれば」
凛香は色々なことを考えながら、不満そうにそう言葉を口にすると、
立ち去っていくー。
「ケッ」
孝信も不満そうにしつつ、自分の部屋へと戻ると、
「うるせーんだよ!クソが!」と、一人、不満を露わにしたー。
姉の凛香に対して強い不満を抱きながら、
日々を送る孝信。
が、そんなある日”その憎しみ”や、歪んだ感情に目をつけた人物ば
孝信の前に姿を現したー。
雨が降る中、
コンビニ帰りの孝信に、その男は声を掛けて来たー。
「ーお前には、”闇”が見える」
覆面の男が、そう言葉を口にする。
「ーーあ?何だお前」
孝信は不満そうに、コンビニで購入したコーラのペットボトルを
口に運びながらそう返すと、
「ニート、ニート、ニート、ニート、ニート、ニートー」と、
覆面の男は、”ニート”という単語を連呼したー。
「ーーはぁ???お前、俺に喧嘩売ってんのか?」
孝信がそう言うと、覆面の男の胸倉を掴もうとするー。
しかし、覆面の男は笑みを浮かべながら、
その手を止めると、
「クククー落ち着け。俺はお前の敵ではない」と、
そう言葉を口にするー。
「ーー敵ではない?だったら何だよ。
舐めてんのか?」
不満そうに言い放つ孝信。
「クククー、まぁそう言うなー。
お前に”力”を授けようと思ってなー」
覆面の男はそう言葉を口にすると、
孝信に鋭い視線を向けるー。
「ーー力…?」
困惑の表情を浮かべる孝信。
そんな孝信に対して「あぁ、そうだ」と、頷くと、
覆面の男は、光の球体のようなものを
孝信に見せ付けたー。
「こ、これは…?」
黒と紫が混じったようなー”やる気のない光”を放つ石ー。
「ーこれは、他人を堕落させる力だー。
お前はいつも、”優秀な姉”に対して不満を抱いて来たのだろう?
周囲のやつらに対して不満を抱いて来たのだろう?
だったら、この力を使って
周りのやつらを”仲間”にしてやればいいー。
お前と同じ”ニート”にー」
覆面の男のその言葉に、
孝信は困惑した表情を浮かべたまま、
光の球体を見つめる。
「どうした?臆したのか?
さっきまでの威勢のいい振る舞いはどうした?」
覆面の男が、揶揄うようにして言うと、
「うるせぇ!!!色々考えただけだ」と、孝信はすぐに反論するー。
そして、黒と紫色に光る不気味な球体を手にすると、
「ー使ってやるー…この力を使ってやるー!」と、
そう言葉を口にしたー。
そんな孝信の様子を見つめながら
謎の組織”闇.net”の一員である覆面の男・ビショップは
覆面越しからでも分かる不気味な笑みを
浮かべるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーー姉貴ー」
そう言葉を口にしながら、孝信が姉・凛香の元へとやって来るー。
凛香は少しだけ首を傾げながら、
「どうしたの?改まってー?」と、不思議そうにそう言葉を口にするー。
いつも文句ばかりの弟・孝信が、
真面目な雰囲気で話しかけて来るのは、
珍しいことだったために、少し驚いた様子を見せると同時に、
凛香は一瞬、”ようやく、真面目にやる気になってくれたのかなー?”と、
心の中で嬉しく思いながら、
「なに?就職の相談とかー?わたしにできることなら何でも力をー」と、
手を差し伸べるような言葉を口にするー。
しかしー…
孝信がやってきたのは、自分のこれまでの振る舞いを反省したからではないし、
真面目に働くつもりになったからではないし、
姉・凛香の力を借りようとしてやってきたわけでもないー。
ただー……
”姉”を壊したかったー。
それだけのことー。
自分の手を黒と紫色に光らせながら、
姉・凛香の目にその光る手を近づけるー。
「ーえっ… ぁ…」
凛香がビクッと震えながら、その光から
目を離せなくなるー。
「ーへへへへー
いつもいつも俺を馬鹿にしやがってー
これは姉貴ー、お前も俺と同じようにニートになるんだ!」
孝信がそう言葉を口にすると、
凛香はその場でへなへなと力を失ったかのように座り込んで、
「今日、仕事行きたくないー」と、そう呟き始めたー。
「ーへ…へへへー…すげぇー」
まだ少しだけ耀きを発している自分の手を満足そうに見つめながら、
孝信は、そんな言葉を口にするー。
それと同時に、孝信は脱力感を感じたかのように
座り込んでいる姉・凛香を見て、
「へへへー姉貴ー。仕事行かねぇのかよ?
いつもニートの俺を馬鹿にしてたくせにー」と、そう言い放つー。
しかし、凛香はため息を吐き出すと、
「面倒臭いー」と、それだけ言葉を口にして、
ダラダラとした様子を見せながら、
そのままゆっくりと部屋の中へと戻ってしまったー。
「へへへへ いい気味だぜ」
孝信はそう言葉を口にすると、満足そうに自分の部屋に戻っていく。
そして、先ほど”力”を使った自分の右腕を見つめながら
ニヤリと笑うと、
「ーーすげぇ力だぜー…最高だー」と、自分の手を嬉しそうに
撫で回すのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
姉の凛香は、術をかけた翌日も、その翌日も
仕事に行かなかったー。
髪もボサボサで手入れしていない状態の凛香が
トイレに出て来たのを見て、
「ーへへ、姉貴ー。姉貴も俺と同じで引き籠りになったのか?」と、
孝信は揶揄うようにして笑うー。
「ーーー面倒臭いんだもん」
凛香は無気力な様子でそう言葉を口にする。
数日前まで、あれだけキラキラしたオーラを
漂わせていたのに、今ではこのザマだー。
堕落したオーラを漂わせる凛香を見て、
「へへへへー。姉貴もニートの仲間入りかー?」と、そう言い放つ孝信。
凛香は「ーーそれもいいかなぁー。仕事、辞めちゃおうかな」とだけ
言葉を口にすると、そのままゆっくりと部屋の中へと
戻っていくー。
「へへーすげぇ力だぜ」
邪悪な笑みを浮かべながら、そう呟く孝信。
姉の凛香が嘘のように無気力になってしまったー。
あの覆面の男から授かった力は”本物”なのだと、
孝信は改めて確信すると、
姉・凛香の部屋の扉を蹴り飛ばしながら
「今まで散々俺のことを馬鹿にしてたくせに、姉貴もニートの
仲間入りか!いい気味だぜ!」と、そう叫ぶー。
がー、姉・凛香からは返事はなく、
凛香は部屋の中でもやる気のない様子で、
無気力な表情を浮かべていたー。
その数日後ー
凛香は職場に退職届を出して、突然退職したー。
当然、凛香の頑張りを知っていた職場の人間は、
凛香のいきなりの豹変ぶりに驚くー。
「ーも、もう一度考え直すことはできないかいー?」
いきなり退職を突き付けられた上司が、
心底困惑したような表情を浮かべると、
凛香は無気力な表情のまま言ったー。
「なんかもう、どうでもよくなっちゃったんでー
仕事辞めます」
とー。
「ーー~~~~」
上司は困惑するー。
凛香を慕う後輩の女性社員も「先輩!!急にどうしたんですか!?」などと
悲しそうに叫ぶも、
その言葉も、今の凛香には届かないー。
凛香は「あなたも仕事なんて辞めれば?」と、
面倒臭そうにそう言葉を口にすると、
そのまま立ち去って行ってしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
凛香は、弟の孝信と同じように”ニート”になったー。
「ーへへへ このニート女」
孝信は嬉しそうに凛香のことを馬鹿にするも、
凛香は「何とでも言えばー?」と、無気力な返事をするだけー。
「ケッ」
部屋も散らかって来て、
髪もボサボサになっている凛香ー。
そんな様子を見つめながら、孝信は失笑すると、
「ーへへへ、だらしないなぁ」と、そう言葉を口にする。
そして、満足そうに部屋に戻ると、
退屈そうにスマホを弄り始める孝信ー。
特にやりたいことがあったわけではないものの、
何となくダラダラとスマホを手に、
SNSを見たり、ネットを見たりしながら
時間を潰していくー。
そんな中ー、
孝信は不満そうに、スマホを持つ手を止めるー。
そこに表示されていたのは、
孝信の大学時代の友人の”近況”ー
その友人のSNSによれば、
大学卒業後にすぐに結婚して、
幸せな生活を送っているようだったー。
「ーーケッー。相変わらずムカつくやつだぜ」
長いニート生活のせいか、あるいは元々そういう人間だったのかー、
すっかりとねじ曲がった性格の持ち主になってしまっている孝信は
元友人の幸せそうな近況にも強い不満を露わにすると、
「そうだー…俺のこの力を使えばー」と、
邪悪な笑みを浮かべるー。
そしてー…
孝信は翌日、大学時代の友人の家に
早速足を運ぶと、インターホンを鳴らしたー。
”はいー”
中から女の声が聞こえて来たー。
親友・清宮 昇(きよみや のぼる)の妻・晴美(はるみ)だー。
晴美自身も同じ大学に通っていたため、
孝信と晴美も”一応は”面識のある状態ではあるー。
しかし、互いに親しい間柄ではなく、
”同じ大学にいたなぁ~”ぐらいの認識しかないー。
「ーーあ、あのー昇はいるかなー?」
孝信は軽く名乗ってからそう言葉を口にすると、
晴美も孝信のことを覚えていたのか、”あー、久しぶりだね”と、
そんな言葉を返して来たー。
”昇は今、仕事に出かけてるけどー”
晴美のその言葉に、孝信は内心で”ケッー…まぁ、そりゃそうか”と、
仕事中であることを内心で納得すると、
「ーーあぁ、そうかー…まぁいいやー、じゃあー…これ、昇に
渡しておいて貰えるかなー?」と、お土産の入った袋のようなものを
取り出したー。
晴美は一瞬、戸惑ったような声を出したものの、
孝信は咄嗟に「あぁ、いやー、昇のやつの誕生日、確か来週だっただろ?
せっかくだし、何か買ってあげようかなーってさ」と、そう説明した。
その言葉を聞いて、晴美は疑問に思いつつも、
孝信と昇が大学時代仲良しだったことは知っていたために、
扉を開けてしまったー
「へへー」
孝信は、扉を開けた晴美を見て、邪悪な笑みを浮かべると
黒と紫の光を右手から発しながら、”術”を晴美に掛けてしまうー。
「ーーーぁ…」
ビクッと震える晴美ー。
確かに同じ顔ではあるけれど、
どこか無気力な表情になると、
晴美はため息を吐き出して、
その場に座り込むー。
そんな様子を見て、孝信はにやりと笑うと、
”あいつにも、術をかけてやらなくちゃなー”と、
大学時代の親友だった昇にも術を掛けることを
頭の中で想像しながら、今一度笑みを浮かべたー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
手に入れた謎の力で、
周囲の人々を”ニート”にしていくお話ですネ~!!
続きはまた明日デス~!!
コメント