<MC>強制ニート②~破滅の術~(完)

①にもどる!

謎の覆面の男から
”他人を無気力にしてニートに変える術”を手に入れた男ー。

彼は、手始めに自分の姉をニートにすると、
その力をさらに悪用し始める…。

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孝信の大学時代の友人である昇が自宅に帰宅すると、
妻の晴美が無気力に座り込んでいたー。

生まれたばかりの子供の世話も放り出して、
ボーッとしてい晴美ー。

「晴美ー…だ、大丈夫か?具合でも悪いのか?」
昇がそう言葉を口にすると、
晴美はため息を吐き出しながら「なんか、やる気がなくなっちゃった」と
そう言葉を口にするー。

子供の世話も、家のことも何もしていない晴美ー。

ソファーに座って、無気力そうな表情を浮かべたまま
テレビをぼーっと見つめている。

テレビ自体も楽しそうに見ているわけではなく、
ボーッとしながら見ているだけで、
表情もほとんど無表情ー。

そんな状態だー。

「ーーー…具合が悪いなら、先に寝てても大丈夫だからなー?」
昇がなおも心配そうにそう言葉を口にすると、
晴美は面倒臭そうに頷くだけで、あとは返事をすることはなかったー。

「ーーーー」
夜になると、晴美はテレビを消すこともしないまま
ソファーでだらしない格好をして寝落ちしていたー。

「ーー…晴美にも、色々負担をかけちゃってるからなー…」
昇は、晴美の身に起きていることにも気づかず、
そんな言葉を口にすると、
晴美に毛布をかけて、そのまま自分も子供の世話をしながら、
1日を終えるのだったー。

しかしー…
翌日になっても、晴美は無気力のままー。

家のことを何もしなくなってしまい、
部屋に引き籠りがちになってしまったー。

「ーー晴美…いったいどうしたんだよ?
 どこか悪いのかー?」
昇がそう言葉を口にすると、
晴美は「面倒臭いー。何もかも」と、そう言葉を吐き捨てるー。

いつも一生懸命だった晴美ー
大学時代もそうだったし、結婚してからも、
とにかく頑張り屋で、昇はそんな晴美を少しでも
支えられるようにと、努力してきたつもりだったー。

けれど、ここ数日は明らかに晴美の様子がおかしい。

「ーー…今まで負担をかけすぎて悪かったー。
 でも、晴美ー、子供もいるし、俺も、晴美も
 まだまだ頑張らないとー…」
昇が、そう言葉を口にするー。

昇は決して家のことを放り投げているような感じではなく、
しっかりと晴美と共に家のこともこなしているー。

が、優しすぎる昇は、”俺が支えきれなかったせい”だと、
晴美の異変をそう考えてしまい、そう言葉を口にするー。

「ー子供なんてどうでもいいや」
晴美は面倒臭そうにそう言葉を返すー。

「ー…は、晴美ー…?そ、そんなことー
 そんなこと言っちゃだめじゃないかー…!」

”子供なんてどうでもいい”ー
晴美の口からそんな言葉が出るとは思わなかった昇は
心底驚いて動揺してしまうー。

がー、その時だったー。

インターホンが鳴り、昇は困惑の表情を浮かべたまま
「はいー」と返事をするー。

すると、そこには昇にとって大学時代の友人だった
孝信の姿が映し出されていたー。

”へへへー久しぶりだなー”
孝信の言葉に、昇は「何の用だー?」と、困惑するー。

学生時代はそれなりに仲良しだった二人も
今は絶縁状態ー。
それもそのはずー、孝信が働きもせずに
昇から金を借りて、それを返済していない上に
”まだ貸してくれ”と、しつこく迫っていたからだー。

「ー金なら、もう2度と貸さないからな」
昇が呆れ顔でそう言い放つと、
孝信は笑いながら言ったー

”お前の嫁さんー何かおかしいと思わないか?”
とー。

「ーーなに?」
昇は険しい表情を浮かべるー。

”へへー、いやぁ、ほら、急に何もやらなくなって
 俺みたいにー、”ニート”になっちゃってないかなってさ”

孝信のその言葉に、昇は
無気力になってしまった妻・晴美の方を見つめると、
ハッとした様子で、孝信に対して叫んだー。

「お前…!お前が晴美に何かしたのか!?」
昇の怒りの言葉ー。

孝信はケラケラと笑うと、
”ー知りたいだろ?だったら、玄関の扉を開けてくれよ”と、
そう言い放つー。

「ーーーー…」
昇は困惑の表情を浮かべながらも、部屋の奥にいる子供と、
そして、無気力になってしまった晴美の方を見つめるー。

このままにしておくわけにはいかないー。

昇は怒りの形相で玄関の扉を開けると、
孝信の方を見てすぐに言葉を口にしたーー。

「晴美を元に戻せ」
とー。

「へへー…まだ俺は”俺がやった”とは一言も言ってないんだけどな」
ニヤニヤしながら、そう言葉を口にする孝信ー。

が、昇は「自白したようなもんだろ」と、
さっきの孝信のセリフを指摘すると、
「へへへー」と、孝信は笑みを浮かべながら、
「俺さ、幸せな奴らとか、頑張ってるやつを見ると
 ムカつくんだよな」と、ケラケラと笑いながら
そんなことを口にするー。

「ーーーだから、こうしてやったんだー」
孝信はそう言葉を口にすると、無気力に座り込んでいる晴美に
近付いてから、
右手の”力”を解放したー。

黒い光と紫の光ー、
禍々しい光を放ち始める孝信の右手ー。

それを見た昇は「お、おいっ!その光は何だー!?」と、そう叫ぶー。

しかし、孝信はそれを無視して
「お前の嫁にしたことを見せてやるよ」と、そう言葉を口にすると、
晴美にその手をかざしたー。

無気力に座り込んでいた晴美がビクンビクンと震えると、
「はぁ~~~~…面倒くさい♡」と、そう言葉を口にしながら、
晴美はぐったりとその場に寝転び始めるー。

「ーーは、晴美ー!?おいっ…!くそっー!晴美を元に戻せ!」
昇が怒りの形相で叫ぶ。

しかし、孝信は「ー俺は必死こいてるやつらを、みんなみんな
”ニート”にしてやるんだー」と、笑みを浮かべるー。

「そ、そんなことして何になるー!?
 晴美を元に戻せ!」
なおも叫ぶ昇ー。

「みんなニートになりゃ、ウザ絡みもされなくなるだろー?
 へへー、それにみんな俺と同じだっていう
 安心感も得られるー」
孝信はそう言うと、昇に対しても、”その手”をかざしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

孝信は、見境なく、周辺の人間を”ニート”して回るようになったー。

働け働けとうるさい両親をー、
近場に住んでいる学生時代の友達をー、
スーパーやコンビニなどの店員たちをー。

自分が働いていないせいか、
働いている人間を見るだけで腹が立つようになってしまったー。

次々と術を使って無気力な人間を作り出していく孝信ー。

「ーーーあ~~~~だる」
「やる気出な~い」
路上でだらしなく横たわっている女を見て、孝信は
「へへーそのままホームレスになっちまえよ」と、
揶揄うようにして言葉を口にすると、
そのまま満足そうに帰宅するー。

今では、街中無気力な人間だらけー。

孝信はそんな様子を満足そうに見つめながら、
自分の部屋へと戻っていくと、
姉の凛香が、突然会社に行く準備をし始めていることに気付いたー。

退職して無気力になったはずの凛香の予期せぬ行動に、
「何してんだよー姉貴」と、孝信は不満そうに言葉を口にするー。

すると、姉・凛香は
「面倒臭いけどー…でも、ずっとこのままじゃいけないからー」と
だるそうにしながらそう言葉を口にするー。

「ーーはぁ?姉貴にはニートがお似合いだぜ?
 もう退職したんだろー?」
孝信がそう言葉を口にすると、凛香は首を横に振ったー。

「ーわたしは、”病気”なのー」
とー。

「は??」
孝信が首を傾げると、
凛香はスマホを手に、ボサボサ頭のまま、
スマホに表示されたニュースを見せて来たー。

スマホにはー、
孝信が住んでいる地域周辺で
”無気力”になってしまう人々が続出、とそんなニュースが表示されていて、
”奇病の可能性”などとも書かれているー。

「ーわたしは、負けないー」
凛香は”面倒臭い”という思いを必死に押し殺しながら、
会社に向かおうとするー。

闇.netのビショップから授かったこの力は、
そう簡単に打ち破れるものではないー。
どんなに強靭な精神力を持つ人間でも、
術に掛かればあっという間に無気力になってしまうー。

しかし、それでも、凛香は
元々精神力が強かっただけではなく、
会社の後輩や仲間たちから必死に説得されたこと、
そして世間が”謎の病気かもしれない”と騒ぎ出したニュースを見たことで
”何もかもだるいけど、行かなくちゃ”と、そう思い始めたのだったー。

”ーーほぅー……この俺の力を破るとはー”
孝信が”力”を使う様子を観察していた闇.netのビショップは
少し驚いた様子でそう言葉を口にするー。

”人間の底力ーか…良いデータが取れたー”
と、不気味な笑みを浮かべるー。

がーー
孝信は、そんな凛香の頭を背後から掴むと、
「お前はニートだ!!!ニートだ!!!!
 いいか?お前はニートだ!!おいっ!分かったか!」と、
言いながら、黒と紫の光を何度も何度も凛香にかざしていくー

”クククーやはり人間とは醜いものだなー”
透明の状態でその様子を見つめていたビショップは笑みを浮かべるー。

ビクンビクンと震えながら、
術の影響をさらに受けていく凛香ー。

凛香はその場に寝転んだまま、
何もしなくなってしまいー、
孝信は「姉貴はニートだ!!!2度と働くなんて言うんじゃねぇ!」と、
そう言葉を吐き捨てて立ち去って行ったー…。

凛香はその場で口を半開きしにしたまま何もしなくなってしまいー、
凛香が餓死しているのに気づいたのは、その半月以上先のことだったー。

「ーーーチッ、メシぐらい自分で喰えよ!」
凛香の亡骸に向かってそう叫ぶ孝信ー

まさか、”食事”まで無気力になってしまい、
そのまま死んでしまうとは思わなかったー。

孝信の”想像を超えた”事態に孝信自身も
戸惑いつつも、
姉の凛香を不本意な形であるとは言え、死なせてしまったことに
困惑しー、その不安や戸惑いをぶつけるかのように、
今まで以上に街の人々に”術”を掛けていくー。

がー、それを続けた結果ー、
孝信はさらに恐ろしい光景を目にすることになってしまったー。

「ーーー~~~あ????」
コンビニにやってきた孝信は、
ほとんど商品が置かれていないことに気付くー。

「ーー何だよ…これー」
久しぶりに外に出た孝信は困惑しながら周囲を見渡すと、
コンビニは窓ガラスも割れた状態で荒れ果てていたー。

「ーすみません」
孝信は不満そうにしながら”俺はとっととコーラを買って帰りたいんだよ”と、
そんなことを思いつつ、店員を呼ぶー。

が、店員は奥の事務所で、面倒臭そうに昼寝をしている最中で
「ー面倒だから持っていいよ~」などと、そんな言葉を口にしているー。

「ーーは…はぁ…???っていうか、品物がほとんどないんですけど」
孝信は不満そうに、さらに店員に叫ぶ。

が、店員は「どうだっていいじゃないか」と、そう返事を返して来たー。

「くそっー」
不満そうにコンビニから飛び出した孝信ー。

しかし、自動販売機は品切ればかりー。
他のお店も閉まっているか、品物がないか、荒れ果てている状況のままー

「おい!!!なんだよ!!! おいっ!!!!」
孝信はそう叫ぶも、誰も反応しないー。

孝信の住んでいる街の人々は”面倒臭い”という感情に支配されて、
誰も、何もしなくなってしまいー、
街は崩壊してしまったのだったー。

そしてーー

「ーーーぁっ…!?」
苛立ったまま足を滑らせて、一人、階段から盛大に転落してしまった孝信ー。

頭から血を流しながら、孝信は力を振り絞って、
救急車を呼ぶー。

がーーー

「ーーー階段から転落した人から、救急の連絡がー」
救急隊員の一人が言うと、
もう一人の救急隊員は面倒臭そうに「だるっ…放っておけー」と、
無気力な様子で呟くー。

救急車の出動も”面倒臭い”という理由で拒まれてしまった孝信は、
「なんだよ…これー」と、身体から力が抜けていくのを感じながら、
そのまま眠りについてしまうのだったー

おわり

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コメント

恐ろしい結末になってしまいましたネ~!!

でも、孝信くんの場合は
自業自得なのデス……!

お読み下さりありがとうございました~!★!

「強制ニート」目次

作品一覧

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MC<強制ニート>

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