＜憑依＞憧れのボイス②～夢の声～（完）

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憧れの声優に憑依して、
その憧れの”声”を自分のものにしてしまおうと画策した男。

ようやく理想の憑依を成功させた彼。
そんな彼に待っていたのは…？

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「えへへへーすげぇ…
　本当に茅原　美穂の声で俺が喋れてるー」

美穂に憑依した宗平は
嬉しそうに”自分の声”となった美穂の声で、
そう言葉を口にすると、
「すげぇ…へへーすげぇ…！」と、ニヤニヤしながら
興奮した声を出すー。

そして、しばらくすると何度か咳払いをしてから
「ーわたしは茅原　美穂ー
　わたしは茅原　美穂ー」と、
美穂の身体で、美穂自身の名前を名乗らせて
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべる。

「へ…へへへー
　茅原　美穂の身体で自己紹介できるなんてー…むふふふ♡」
思わずニヤニヤが止まらなくなってしまう。

”美穂の声”でしてみたいことが山のように浮かんできて、
興奮しておかしくなってしまいそうな状況の中、
ひとまず深呼吸をするー。

そして、美穂の声で、
美穂が演じているキャラクターのセリフを口にし始めると、
「すげぇ……生の声だー」と、
好きなキャラクターたちの生声を聞いているみたいで、
余計にドキドキしていくー。

さらには、友人の雄二の前で興奮した様子で語っていた
美穂が演じた操られてしまうキャラクター・彩菜のセリフを口にするー。

「ー愚民ども！みんなみんな死んでしまえ！あははははっ」
そのセリフを自分の口で言葉にしただけで、
身体中が火照ってしまうような、言葉にはならない興奮を感じるー。

「すげぇ…この可愛い声でこんなセリフを口にできるなんて」
思わずニヤニヤすると同時に、
「でも、なんかこうー、俺が言うと棒読み気味だな」
と、美穂は首を傾げるー。

確かに、”茅原　美穂”の身体を乗っ取って、
茅原美穂が演じているキャラクターのセリフを口にすれば
”それっぽく”はなるー。

しかし、あくまでも”それっぽく”なるだけで、
そのものではないー

同じ”美穂の声”でも、発し方だったり、感情の込め方だったり、
あとか美穂を乗っ取っている宗平が恥ずかしがってしまったり、
そういうことがあるために、
実際によく聞いていた美穂の声とはまた少し違う感じになる。

「ーーぐぐぐ…同じ声でも、俺が発すると
　”全く同じ”にはならないもんだなー」
美穂はそう呟くと、「よし、せっかくだし、いつもの声が
出せるように練習するか」と、そんな言葉を口にしてから、
美穂の身体で”発声練習”を始めるー。

美穂が演じているキャラクターの代表的なキャラたちの
セリフを口にしながら、普段テレビで見る”そのキャラたちの声”を
出せるように練習していくー。

「ーーすげぇなぁ…色々な声が出るー」
美穂は、感心した様子で自分の喉元に手を触れるー。

同じ美穂でも、可愛らしい声や、気が触れたような声、
愛想の悪い声、怒っている声ー、
本当に色々な声を出すことができる。

もちろん、宗平自身の”声”でも、
色々な声を出すことはできるものの、
他の人間の声で、そうすることができる…という状況は
とても背徳感があって、ゾクゾクしたー。
相手が大好きな声優であればなおさらだー。

「ーーへ…へへへー」
ニヤニヤしながら、美穂に憑依している宗平は
次の”やりたいこと”を試し始めるー。

「わたし、実は牧田くんのこと、ずっと好きだったの♡」
美穂にそんな言葉を言わせてみるー。
鏡に映る美穂の顔は少し赤面しているように見える。

こんなことを”言わされている”美穂の身体が
無意識のうちに恥ずかしさを感じているのか、
あるいはこんなことを”言わせている”宗平自身が
恥ずかしさを感じているのかー。
それは分からない。

いずれにせよ、今までに感じたことのないぐらいゾクゾクしながら、
「好き！好き！好きっ」と、絶対に言わないであろうことを
美穂の身体で言い続けたー。

それに飽きると、今度は美穂の身体で
卑猥な単語を口にし始めた。

美穂が絶対に言わないような言葉を、
次々と口にして、興奮していく宗平ー。

「ーはっははははー人気声優がこんなことを口にしちゃって」
ニヤニヤが止まらなくなった美穂は
その場で足をバタバタとさせると、
「ー何でも言わせ放題ってー…すっごいなぁ…」と、
そう呟くー。

さらには、美穂の口で乱暴な言葉を叫んだり、男のような口調で
叫んだり、そういったことも試し始めるー。

「すげぇなぁー男みたいな言葉を喋ると
　興奮するぜー」
美穂は、ゲラゲラと笑うと、
「俺！！俺！！俺！！へへへー」と、美穂に自分のことを”俺”と
言わせて更なる興奮を覚えるー。

ニヤニヤが止まらない状況の中、
さらに「わたしは牧田　美穂ですーふふ」などと、宗平の名字を名乗らせて
嬉しそうに笑うー。

「ーー俺は牧田　宗平ーへへへへ」
今度は、美穂に宗平自身の名前を名乗らせて、
そんな状況にも興奮し始めるー。

興奮も冷めない中、今度は美穂の身体で
誘惑するような声を発したり、
甘い声を発するー。

まるで、AVのような作品にでも出そうな
甘い声が出続けて、美穂の身体のままニヤァ、と笑みを浮かべると
美穂は満足そうに立ち上がって、
「何でも喋り放題なんて、ホントに夢みたいだ」と、そう言葉を口にするー。

そして、美穂はチラッと時計を見つめたー。

「そろそろいいだろ」
美穂はそう呟くと、いったん服装を整えて、
外出すると、
コンビニ受け取りで注文しておいた”ある荷物”を回収して、
そのまま家に戻ったー。

”茅原　美穂”だとバレると面倒なので、
変装しておいたために、
途中で誰かに気付かれることもなく、
憑依前に事前に手配しておいた荷物を回収することができたー。

「へへへへー」
憑依前に購入しておいたものー。
それは”ボイスレコーダー”だ。

これに美穂が普段絶対に言わないようなセリフを
録音しておいて、憑依を終えたあとも
いつでも聞けるようにしておきたいー。
そう思ったのだー。

「へへへへーさ～て、どんなセリフを録音しようかなー」
ニヤニヤしながら、美穂のどんなセリフを録音しようかを
考え始める宗平ー。

やがて、可愛らしいセリフを言ってみたり、
ツンデレのようなセリフを口にしてみたり、
男のような口調で喋ってみたり、
狂暴なセリフを口にしてみたり、
目覚まし代わりのボイスを録音してみたりー、
思いつく限りのセリフをボイスレコーダーに録音した。

「へへーこのぐらいでいいか」
美穂は、どこかまだ名残惜しそうにしながらも、
納得したような表情を浮かべると、
「さて、今度はこのボイスレコーダーを俺の家に送らないと」と、
発送する準備を済ませて、
それを先程とは別のコンビニに持って行くー。

”茅原　美穂”だとバレないように適当に髪型を変えて、
マスクをして、別人のような雰囲気でコンビニへと向かうと、
”美穂の声”をたっぷりと録音したボイスレコーダーを無事に発送して
そのまま家に向かって歩き始めるー。

「えへへへーそれにしてもスカートで外を歩くと
　なんかー、変な気分になるな」
ニヤニヤが止まらない様子の美穂ー。

”声”以外の部分も、
この前、”憑依薬Lite”を使って楽しんだ時よりも
存分に楽しむことができている気がするー。

やはり、”声”もあってこその憑依だと、
美穂に評した宗平はそんなことを思いつつ、
満足そうに美穂の家に帰宅すると、
「ーわたしの声って本当に可愛い声だなぁ～」と、
わざと、美穂っぽい口調でそう言って見せると、
「ーさて…もう少しだけ遊ぶかぁ」と、時計をチラッと見つめながら
美穂の声で色々な言葉を堪能し始めたー。

やがてー、
十分に遊び終えた宗平は
”ホントはもうちょっと遊んでいたいけど…”と、内心でそう思いつつ、
自分自身にも明日の大学の準備があったし、これ以上はー、と
そう判断して、美穂の身体から抜けることに決めるー。

美穂をこの前と同じように”寝落ちしてた”と思わせるような配置にして、
そのまま笑みを浮かべると、
美穂がなかなか意識を取り戻さないことに少し不安を覚える宗平。

失神した状態の美穂はピクピクと震えていて、
うめき声を上げているー。

”ーー…え…、い、いや、大丈夫だよなー？”
宗平はそんな様子を少し不安そうに見つめていたものの、
やがて、美穂が無事に意識を取り戻したのを見て
ホッとため息を吐き出すー。

時間にすれば、2分ぐらいではあったものの、
前回は憑依から抜け出してすぐに意識を取り戻していたために
不安になったー。

が、意識を取り戻した美穂は、
周囲を見渡すと「あれ……？また寝ちゃったー？」と、
不安そうに呟きながらも、
特に体調には異変がない様子で、ゆっくりと動き出したために、
宗平は安堵の表情を浮かべるのだったー。

そして、自分の家に戻り、
憑依薬の説明書を確認すると、
”憑依時間が長ければ長いほど、被憑依体が意識を取り戻すのに
　時間がかかりますが、健康状態には影響ありません”と、
そう書かれているのを確認したー。

「ーーなるほどー
　前回の”憑依薬Lite”の時は、声が俺の声だったから
　すぐに抜け出したから、すぐに意識も戻ったんだな」
宗平は、説明書を手にしながら
納得した様子でそう呟くと、
思わず苦笑いをする。

「ー説明書は、ちゃんと読まないとダメだなー」
そう思い直した宗平は、自虐的な笑みを浮かべながら、
きちんと憑依薬の説明書を読み始めるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

友人の雄二が、苦笑いしながら
「お前、今日もなんかニヤニヤしてるな？」と、
呆れ顔でそう呟くー。

宗平は「え？いや、そんなことはないよー」と、
そう否定するも、ニヤニヤが止まらず、
それを隠しきれない様子を見せているー。

「な～に、ニヤニヤしてんだよ。また茅原美穂か？」
宗平が大好きな声優の美穂のことを口にすると、
宗平は「え？え？いやぁ～、ははー…」と、
明らかに図星であるかのような反応を示すー。

「ホント、好きだなぁ」
雄二は呆れ顔でそう呟くと、
「ー今日もイベントか何かあるのか？」と、首を傾げる。

別に茅原　美穂には全然詳しくない雄二の言葉に、
宗平はまさか”今日はまた憑依する予定で”などとは言えずに
「まぁ、そんなもんかなー」と、笑うー。

がー…
その時だったー。

二人組の見知らぬ男が近付いて来るー。

大学の敷地内とは不釣り合いな男たちだー。

そして、そのうちの一人が警察手帳を示したー。

「ーー牧田　宗平さんですね？」
警察官の言葉に、宗平は「え？あ、はいー」と、少し表情を歪める。

近くにいた雄二は「え？お前、何かしたのか？」と、困惑した状態ー。

そんな雄二に対して「い、いや、何もー」と誤魔化すと、
警察官に”話を聞きたい”と、そう言われて、宗平は”憑依は…バレてないよな？”と
思いつつ、警察官に協力的な姿勢を示して、そのまま警察官に
求められた同行に応じたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”俺は牧田　宗平ー　へへへ♡”

憑依された美穂の映像を見せ付けられて、宗平は固まるー。

「お前が”憑依薬”とやらを購入して、
　茅原美穂に憑依したことは既に分かっているー。」
警察官の言葉に、宗平は必死に言い訳をしようとするー。

が、何故か、2度目の憑依の際に、美穂の部屋にカメラが
セットされていたようで、美穂に憑依している最中の行動が
全て映像として記録されてしまっていたー。

「ーこ、これは、一体ー…」
宗平がそう言葉を吐き出すと、
警察官は言ったー。

”1回目”の憑依のあとに、美穂は周囲に意識が飛んでいることを相談ー、
彼女のマネージャーを務める女性が、
色々調べた結果、
美穂のパソコンに残っていた”憑依薬”のサイトの履歴を発見したー

その内容を不審に思った女性マネージャーは美穂にも内緒で
カメラを設置、
2度目に美穂が憑依されて、美穂本人が”今度は数時間意識が飛んでいて”と、
相談してきたために、カメラを確認、
美穂が憑依されていることが発覚したのだというー。

「ーーーー！！！」
宗平は表情を歪めたー。

1回目の憑依のときーー
憑依薬Liteで美穂に憑依した際に、
美穂の身体のまま、美穂のパソコンで”憑依薬Lite”…声について
確認してしまって、履歴も削除せずにそのままにしてしまっていたー。

「ーーーーー……っっ」
宗平は”ま、まさかあんなところでミスをするなんて”と、
悔しそうに険しい表情を浮かべると、
警察官に”憑依”のことを追求されて、
ついには観念ー、美穂に憑依したことを自白するのだったー

おわり

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コメント

憑依している際に、
自分の名前を名乗ったりしなければ、
大丈夫だったかもしれませんネ～笑

お読み下さり、ありがとうございました～！★！

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