<憑依>憧れのボイス①~目当ては声~

憑依薬を手に入れたとある男ー。

彼は憧れの声優に憑依して、
その声を自分のものにしてしまおうと、
画策するー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーお前、本当に、茅嶋 美穂(かやしま みほ)のキャラ
 好きだよなぁ」

男子大学生の小倉 雄二(おぐら ゆうじ)が、
少し呆れた様子でそう言葉を口にすると、
「ーえへへー、だってあの声ー…聞くだけでーえへへへー」と、
隣にいた男子大学生の牧田 宗平(まきた そうへい)が
ニヤニヤしながらそう言葉を口にするー。

彼は、若手人気女性声優の茅嶋 美穂の大ファンで、
親友の雄二が引いてしまうぐらいには
美穂のことが大好きだったー。

茅嶋 美穂が演じたキャラクターは全部暗記しているだけではなく
ほとんどのセリフも暗記しているー。

「ーー中でも、彩菜(あやな)ちゃんは最高だぜー?」
宗平が興奮した様子でそう言葉を口にするー。

彩菜とは、少し前に放送されたアニメに登場するキャラクターの名前だー。

「ーーん~~~?確かに可愛いけど、他の子と似たような感じじゃね?」
雄二は苦笑いしながら”彩菜”というキャラクターを見つめるー。

確かに可愛いキャラクターではある。
が、その一方で”よくいる感じ”の美少女キャラクターであるのも確かで、
さっき見せられた別のキャラクターの方が可愛い、と
雄二はそう言葉を口にしたー。

「ーーいやいやいや、見た目の話じゃないんだよ」
宗平はそう言うと、
「ほら、これ見てみ?」と、
サブスク系の動画配信サービスにログインをすると、
そのままそのアニメを再生してみせたー。

”彩菜”が、敵の術にかかって洗脳されてしまい、
狂ったように笑いながら一般市民を攻撃しているシーンが
流れていくー。

”ー愚民ども!みんなみんな死んでしまえ!あははははっ”
気が触れたように笑う彩菜ー。

それを見て、宗平はニヤニヤしながら言うと
「ー茅原 美穂のボイスで一番イカれたセリフが聞けるからさぁ~」と、
そう言葉を口にするー。

「~~~~~~~」
雄二は、困惑した表情を浮かべながら首を横に振ると、
「わりぃ、興奮するポイントが俺にはよく分からねぇ」と、
そう言葉を口にすると、それを聞いた宗平は
「ーへへー、まぁ最初から分かってくれるとは思ってないさ」と、
苦笑いしながらスマホをしまうー。

「ーなんだよその”最初から期待してませんでした”みたいな感じー」
雄二が不満そうにそう言葉を口にすると、
宗平は「へへー悪い悪い」と言いながら、
「でもなぁ~茅原 美穂みたいな声で生まれることができたらなぁ~
 いくらでも、とんでもないセリフを口にできるのにー」と、
ニヤニヤしながら言うー。

「ーーー~~」
雄二はそんな、宗平の茅原 美穂に対する熱意に
圧倒されながらも、
「ーお前が可愛い声の持ち主だったら、大変なことになってそうだよなー。
 R18通り越してR36になりそうだぜ」
と、呆れ顔で呟くー。

「R36ってなんだよ」
宗平はそう言いながらも、
「まぁ、残念ながら俺はこんな声だから、
 茅原 美穂みたいに可愛い声は出せないんだけどな」と、
自虐的に自分の口を指差しながら、そんな言葉を口にするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

がー、”茅原 美穂みたいな声になりたい”という願いを
叶えるための”それ”を見つけてしまったー。

いや、”茅原 美穂みたいな声”になるのではないー。
”そのもの”になるための”それ”を見つけてしまったー

「ーー憑依……薬ー?嘘だろー?」
帰宅後、”あの声になりたい”というような内容の言葉を
ネット上で、暇つぶしにと繰り返し検索をしていた宗平はー、
”憑依薬”と呼ばれるものをネット上で見つけてしまったー。

憑依薬は名前の通り、相手の身体に憑依して、
その身体を乗っ取ることができるというものー。

「マジかー…」
”本当に使えるのか?”と思いつつも、
”憑依薬”と”憑依薬Lite”と呼ばれる2種類の憑依薬が
表示されているのを見て、
宗平は困惑の表情を浮かべるー。

”憑依薬”の方は、”恐らく偽物”な憑依薬にネタとして払うお金としては
金額が大きすぎるー。

が、”憑依薬Lite”であれば、
仮に憑依もできず、何もできないゴミだったとしても、
ネタにして笑っていられるぐらいの金額で、
それほど大きく損をすることはないー。

「ーーよし…Liteを買うか」
そんな言葉を口にすると、宗平は
「もしも本当に茅原 美穂に憑依できたら最高だなぁ~」と、
ニヤニヤしながら、そう呟くのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」

数日後ー。
仕事を終えて、帰宅した声優の茅原 美穂は
今日も終わった~!、という様子で、一つ息を吐き出したー。

美穂は、声だけではなく、容姿の人気も高いために、
声優としての仕事以外にも、
イベントだったり、場合によってはテレビ番組に出演したりすることも
あって、とても忙しいー。

が、それでも、”声優”は本人にとって昔から
やりたかった仕事でもあるし、
充実した毎日を送っているのも事実だったー。

「ー明日も頑張ろっと」
そう言葉を口にしながら、美穂は明日のスケジュールを
チラッと確認すると、
そのままひと息つこうとしたー。

がー、その時だった。

ネットで購入して、届いた憑依薬Liteを使い、
霊体となって美穂の家にたどり着いた
宗平の霊が、美穂のすぐ側まで迫っていたー

”へへへへへー…
 茅原 美穂の声で何でも喋りたい放題だぜー”

宗平が購入した憑依薬は”本物”だったー。
それを使ってここまでたどり着いた宗平の目的は一つー。

「ーーお邪魔しま~す!」
宗平は嬉しそうにそう言葉を口にすると、
そのまま茅原 美穂の身体に突入ー、
美穂が「ひぅっ!?!?」と、声を上げたー。

憑依に成功し、美穂の身体の感覚が流れ込んでくるー。

”へー、へへー”
美穂の綺麗な手ー、
可愛らしい服ー、
綺麗な髪ー、

そんな自分の身体を見つめながら
美穂に憑依した宗平は、
”憑依の成功”を確信するー。

そして、それと同時にー

「ーーへへっ…やったぜー!これで俺が茅原 みーーー」
と、そう叫んだー。

がーー

「ーーえ…?」
美穂になった宗平は表情を歪めるー。

美穂の可愛らしい顔で、険しい表情を浮かべると、
「は????」と、そう言葉を口にしながら
喉のあたりに手を触れたー。

そんな反応をしてしまうのも無理はない。
何故ならー…

”自分の口”から出た声が、
美穂のものではなく、宗平自身のものだったからだー。

つまりは、美穂の身体なのに、宗平の声が出ている状態ー。

「お、おいおいおいおいおいおいおい!
 これ、ダメなやつ!憑依とか入れ替わりでやっちゃいけないやつ!!!」

美穂になった宗平は思わず叫ぶー。
”憑依”や”入れ替わり”などのシチュエーションが
それなりに”好き”だった彼にはある拘りがあったー。

それは、”憑依したあと” ”入れ替わったあと”は
”身体の声であってほしい”というこだわりだ。

当然、今も、美穂の身体に憑依すれば
美穂の声で喋ることができる、と、そう思っていた宗平。
けれど、美穂の身体を自由にすることはできても、
その口から出るのは、残念なことに宗平の声だったー。

「おいおいおい!この見た目で俺の残念な声が出るとかやめてくれよ」
美穂に憑依した宗平は心底不満そうにそう言葉を口にすると、
ハッとした様子で、美穂の部屋のパソコンを勝手に起動すると、
”憑依薬”の販売サイトを開いたー。

”憑依薬”
”憑依薬Lite”

本当に憑依できるかどうかも分からなかったため、
”安い方”の憑依薬を選んでしまった宗平ー。

しかし、そこの説明を見てみるとー…

「ーーーあっ!」
美穂の身体で、宗平自身の声を出しながら、
宗平は唖然とするー。

安いほうー…”憑依薬Lite”の説明文をよく見てみると、
”声は憑依者自身の声となります”と、そう書かれていたのだー。

「ーぐ…ぐぐぐぐぐぐぐ…く、くそっ!」
美穂の身体で、宗平は自分の声を悔しそうに出しながら
そう呟くー。

「安いほうだと、乗っ取った身体の声を出すことはできないのかー」
美穂の身体で険しい表情を浮かべながら
鏡を見つめるー。

美穂の姿にドキッとはする。
鏡の前で色々な表情を勝手に浮かべてみて、ニヤニヤはするー。

ただ…”それだけ”だー。

一応、美穂の身体で胸を揉んで、
ドキドキとゾクゾクを楽しみはしてみる宗平。

今まで感じたことのないような、気持ちイイ感覚にはなりながらも、
それと同時に空しさも感じてしまうー。

「へ…へへ…確かに気持ちイイけど…でも…」
美穂は宗平の声を発しながら、悲しそうに呟く。

「ー俺がしたかったことはこういうことじゃないんだよなぁ…」
美穂は宗平の声で、苛立ちを露わにしながら
しばらく髪を掻きむしっていたものの、
やがて、ため息を吐き出してから言葉を続けた。

「ーー仕方ないー今日は出直すか」
美穂に憑依した宗平は、
”声”が俺のままじゃ意味がない、と、そう判断して
パソコンの電源を切って、
美穂が元々座っていた場所に美穂を座らせると、
そのまま美穂の身体から抜け出すー

「ぁ…」
その場でガクッと意識を失ってしまった美穂。

一瞬”大丈夫だよなー?”と心配になったものの、
すぐに美穂が意識を取り戻して
”あれ…わたし…寝落ちしてた…?”と、
不思議そうにそう言葉を口にしたのを見て、
安堵の表情を浮かべるー。

ちゃんと、意識を取り戻したことへの安心感ー。
そして、憑依されているという認識ー…
憑依されている間の記憶がないという安心感。

その二つを得ることができた宗平は
満足そうに笑みを浮かべると、
そのままその場から宙を浮いて去っていくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「おいおい、何か今日、ずっとニヤニヤしてないか?」
親友の雄二が呆れたような様子で言うと、
宗平は「え?えへへーそうかなぁ?」と、
そう言葉を口にする。

「どうせまた茅原 美穂だろ?」
雄二が呆れたような表情を浮かべたまま
そんなことを口にすると、
宗平は「ギクッ!」と、分かりやすい反応を示したー。

「お前、ホント好きだなぁ…」
雄二は苦笑いしながら、
首を横に振ると
宗平は「へへー…へへへへへ」と、
奇妙な笑みを浮かべながら
ニヤニヤが止まらない様子を見せた。

「ー?」
雄二は”なんだこいつ?”と言いたげな表情で
首を傾げるー。

いつも以上に、ニヤニヤが止まらない様子の
どこか不気味な宗平を見て困惑する雄二。

それもそのはずー…
今日は今度こそ、”茅原 美穂”の声を
自分のものにすることができる、
夢のような日ー
そう、”憑依薬”が届く予定になっている日だったのだー。

「ーーえへへへへへ…
 ついに、ついに、俺は茅原 美穂の声を
 自分のものにできるんだー」

ニヤニヤが止まらない様子の宗平は
そう言葉を口にしながら、意気揚々と帰宅する。

そして、待ちきれないという様子で
到着した憑依薬の箱を開封すると、
それをそのまま一気に飲み干すー。

早速、霊体となった宗平は、
美穂の家の近くまで、霊体のままやってきたものの
美穂は留守だった。

「しまったー…憑依薬を飲む時間が早すぎた」
待ちきれないあまり、美穂の仕事が終わるのを待つことも
忘れて、憑依薬をサッサと飲んでしまった宗平。

霊体のままでも最大24時間は活動することができると
書かれていたため、特に問題はないけれど、
宙を漂って待っているだけの時間は暇だー。

「ーーーーー」
とは言え、美穂に憑依することで頭がいっぱいの宗平は
そのまま美穂が帰宅するのを待つ。

そしてー、ようやく美穂が帰宅したのを把握すると、
宗平は「へへ…!!へへへへーお邪魔しま~~~す!」と、
嬉しそうに美穂に憑依したー

「ひっ!?!?」
ガクッと、その場で膝を折る美穂ー。

「ーー…あ、あ~…ぁ~~~…
 え、えへへへー
 すげぇ…今度はホントにー…」

美穂に憑依した宗平は、
今度こそ自分の口から”美穂の声”が出ていることを確認すると、
「へ…へへへーこれで…これで、俺はこの声で喋り放題なんだー
 へへへへー」と、邪悪な笑みを浮かべながら
一人、その場で笑い始めたー…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”声”目当てで憑依するお話デス~!!!

憑依薬Liteじゃ、宗平くんは
満足できなかったのデス~笑

続きはまた明日~☆!

続けて②をみる!

「憧れのボイス」目次

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憑依<憧れのボイス>

コメント

  1. TSマニア より:

    憑依薬Liteっ!?

    新商品!☆

    初心者や低価格で手を出しやすいですネ♪♪

    宗平の今後の運命は…!★!☆

    自分がこっそり無名さんのカラダに短時間、憑依する時は憑依薬Liteで充分そうですネ(*´艸`)笑

    自分は憑依薬と憑依薬Liteを上手く使いわけるのデス~(^_-)☆笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~~!!★

      私の声じゃなくても良ければ
      Liteでも十分かもですネ~★笑

      • TSマニア より:

        無名さんに内緒で憑依して短時間の間にメイクやヘアアレンジの練習してオシャレやコスプレ楽しんだ後に…無名さんの絶対領域やお尻触るぐらいですネ(^_-)☆笑

        声出す予定は無いのでLiteで済みそうですネ笑

        こんな時に限って配達員さんがピンポン押して

        無名さんのカラダに憑依した自分が自分の声のまま対応した後に…まったやってしまったのデス~!★!☆笑

        配達員さんネタ パート2でした(*´艸`)笑

        • 無名 より:

          声を出す予定が無ければ、お買い得なLite…!

          配達員さん以外にも、
          咄嗟の電話には注意が必要ですネ~!笑