<憑依>俺は親友の母親になってしまった③~未来~(完)

②にもどる!

憧れのクラスメイトに憑依しようとしたはずなのに失敗ー…
見間違えてしまったことが原因で、
親友の母親に憑依してしまった彼は、
そのまま親友の家にお邪魔することになってしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「は、は、は、はじめましてー」
源太の姉・美琴があまりにも美人だったことに驚くと同時に、
ドキッとしてしまった俊平は、
美琴からすれば母親である幸恵の身体で
そう言葉を口にするー。

「え?」
源太の姉・美琴は実の母親から”はじめまして”と言われて
困惑した表情を浮かべるー

「うっ、うわあああああああああ!!!
 違う!違う!今のは誤解だ!」
源太は慌てた様子で姉の美琴に対してそう言葉を口にすると、
青ざめながら、俊平が憑依している母・幸恵のほうを見つめるー。

「なっ!母さん!
 今のは美琴に言ったわけじゃなくて、な!?」
源太は必死にそう叫ぶー。

幸恵に憑依している俊平も、
自分がミスを犯したことに気付くと、
すぐに「あ、ふふふふ~そうそう~ちょっとね~」と、
誤魔化しになっていない誤魔化しで、
そんな風に言葉を口にするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ったく、勘弁してくれよー」

部屋に異動した源太は、
母・幸恵に憑依している俊平に対して、
そんな不満の言葉を口にするー。

源太からすれば、不満を口にするのは
仕方のないことだー。

「ーーご、ごめんー」
幸恵の身体で、俊平がそう言葉を口にすると、
「ってか、母さんの身体から出た後、姉さんに憑依したりするなよな!?」と、
釘を刺すかのようにそう言葉を続けるー

「わ、分かってるよー」
幸恵の身体でそう言うと、
「でもお前、上手く行ってたら津森さんの身体に
 憑依するつもりだったんだろ?」と、
心底呆れたような表情で浮かべるー。

「ーし、しない!もうしないってー」
慌てた様子でそう言葉を口にする幸恵に憑依した俊平。

源太はそんな様子を見て大きくため息を吐き出すと、
「まぁいいやー。とにかく、母さんから出ていってくれ」と、
再度、母・幸恵の身体から出ていくように促すー。

「ーさ、さっきも言ったけど、出てく方法が分からなくてー」
幸恵の顔でオドオドしたような表情を浮かべると、
源太は呆れ顔で首を横に振りながら
「でも、”憑依薬”だったっけー?どこかで買ったんだろ?
 説明書とかはないのか?」と、そう言葉を口にするー。

その言葉に、憑依薬を飲んだ際の”容器”が、
自分の部屋でそのままになっていることを思い出して
少し不安に感じながらも、
”説明書は確かなかった気がするなぁ”と、頭の中で
憑依薬を飲んだときのことを思い出しながら
そう言葉を口にするー。

すると、源太は少し考えるような表情を浮かべると
「だったらー、その”憑依薬”だっけー?
 それを買ったところに連絡して聞いてみろよ」と、
そう言葉を発するー。

「ーえっ…あ、あぁ…まぁーそうだなー」
幸恵に憑依している俊平は、
”憑依薬”などと呼ばれるものを売っているような人物と
話すことに少し気が引けるような表情を浮かべながらも
「そ、それしかないかー」と、観念した様子で
連絡先を調べ始めたー。

そしてー、”憑依薬”を販売していた出品者に連絡を取る幸恵ー。

「ーあの、すみませんー」
幸恵の身体で、俊平は自分が憑依薬を購入した人間であることや、
間違えて憑依してしまったこと、
そして、憑依した身体から抜け出す方法を聞きたい、ということを
電話越しに伝えたー。

がーーー

”ーー残念ながら、一度憑依したら
 その身体から出る方法はありませんー”

憑依薬の出品者からそんな無情な言葉が返って来たー。

「ーえっ…???
 は、いやー…?
 ま、間違えて憑依してしまったんですけどー
 そ、それじゃ、こ、この憑依された人はどうなるんですか!?」

幸恵の身体で焦ったような声を出す俊平ー。

そんな会話を横で聞いている親友の源太も不安そうだー。

が、そのまま会話を続けていると、
憑依薬の出品者は言ったー。

”残念ながらー、
 あなたが使った憑依薬は”一度きり”のものー。
 憑依から抜け出す方法はありません”

とー、先ほどよりもさらにハッキリと、
力強く、そう言葉を告げたー

「ーーふ、ふざけるな!!!そ、そしたら俺が憑依してるこの人はー」
幸恵の身体で、俊平がそこまで言葉を口にすると、
出品者は笑ったー。

”他人の身体を乗っ取っておきながら、
 他人の心配ですかー?”

とー。

”憑依薬を使うこと自体が、人を傷つけることー。
 あなたもその覚悟があったから、憑依薬を使ったのではー?”

出品者の男はそれだけ言葉を口にすると、
最後に”ノークレームノーリターンでお願いします、と書いておいたはずですけどね”
と、そう呟いて、電話を切ってしまうのだったー。

電話を切られてしまった
幸恵に憑依している俊平は、呆然とした表情を浮かべながら
振り返ると、
目に涙を浮かべながら言葉を発したー。

「ーーないってー」
とー。

「ーない?何が?」
親友の源太も、青ざめた様子でそう言葉を口にするー。

その言葉に、幸恵に憑依した状態のままの俊平は
振り絞るようにして、言葉を口にしたー。

「ー身体から抜け出す方法がー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

源太の母・幸恵から抜け出すことは出来ないー。

そう判明した時には
源太は物凄く激怒したー。

親友の今まで見たこともないような怒りっぷりに、
俊平は気圧されながらも、
自分がしてしまったことの重大さを改めて認識したー。

そしてー、その日から
死に物狂いで、源太の母・幸恵としての振る舞いを学び、
1ヵ月が経過した今では”幸恵”として
完全に振る舞うことができるようになっていたー。

「ーお母さんーただいま」
源太の姉である美琴がそう言葉を口にしながら
大学から帰宅するー。

「ー!
 あ、お、おかえりなさいー」
未だに源太の姉・美琴を見るとドキッとしてしまうー。

しかし、何とかそれにも慣れて、
源太の母・幸恵として必死に振る舞いを続けていたー。

”親友の母親を奪ってしまった”ことー、
そして”親友の母親の人生を奪ってしまった”ことー

強い罪悪感を感じた俊平は、
”自分を押し殺して”、源太の母・幸恵として
振る舞い続けたー。

「ーーーーーー」
そんな、母・幸恵のー、俊平に憑依された幸恵の様子を
毎日見ていた源太は、
最初は、事あるごとに俊平に怒りをぶつけていたものの、
やがて、そんな俊平の様子を見ていたからか、
何も言わなかくなったー。

そんな生活が続きー、源太はついに”卒業式”を迎えたー。

本来であれば、俊平も同じ日に卒業するはずだったー。
しかし、今、俊平は源太の母・幸恵だー。

源太の母親として、PTAの会長として
卒業式に出席したー。

「ーーーわたしたちは、今日、卒業をーー」
生徒会長でもあった萌香が卒業生代表の挨拶を
壇上で続けているー。

萌香を見ると、今でも俊平は
”津森さんに憑依したかったー”と、
そう思わずにはいられないー。

ただー、
もしー、もしもあの時ー、
萌香に憑依を成功させていたら、
自分は萌香の人生を奪ってしまっていたことになるー。

もちろん、”幸恵だからいい”ということではないけれど、
”津森さんの人生を奪わずに済んでよかったのかもしれない”と、
そんな風にも思うようになったー。

「ーー3年間、本当にありがとうございましたー」
萌香が挨拶を終えるー。

源太の母・幸恵として生きていく以上ー、
萌香を見るのはこれがもう最後かもしれないー。

結局ー、
親しくなることもできなかったし、
憑依することもできなかったー。

けれどー、それで良かったのかもしれない、と、
幸恵に憑依してから既にそれなりの時間が経過した俊平は、
どこか寂しそうに、そんな風に思うのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがてー、
源太は大学生となり、
幸恵に憑依した俊平は”母親”として源太を支えたー。

「ーーあら、おかえりなさいー」
この日も、大学から帰宅した源太を”幸恵”として
出迎える俊平ー。

「ーーあぁ、ただいまー」
源太はそれだけ返事すると、
少しだけ表情を歪めるー。

最近は、母・幸恵から”俊平らしさ”を
全く感じなくなっているー。

元に戻れないと知ったあとは、
源太と二人きりの時は”俊平”として
話をすることもあったー。

けれど、大学生になったころぐらいからは、
そういう機会もなくなって、
二人きりの時でも、俊平は俊平として
振る舞ったり、話しかけたりしてくることもなくなったー。

幸恵に憑依している俊平からすれば、
夫であるはずの輝明とも、娘である美琴とも上手くやっていてー、
結局、最初の頃は怪しい行動を取ってしまうようなこともあったものの、
”気付かれずに”今に至っているー。

「ーどうかしたの?」
母・幸恵がそう言葉を口にするー。

源太は少しだけ戸惑いながらも何も言わず、
「いやー、”母さんも”無理するなよ」と、
それだけ答えたー。

幸恵に憑依している俊平に対して
遠回しに”無理しすぎるなよ”と、そう伝えたつもりだったー。

「ーーふふー、ありがとねー」
がー、今の母・幸恵が俊平なのか、
それとも本来の幸恵なのか、もはや分からないぐらいに、
幸恵は幸恵だったー。

「ーーー……」
源太はそんな幸恵を背に、自分の部屋へと戻っていくー。

最近は、源太も、母・幸恵に憑依したままであろう
俊平に対して、”俊平として”接することは
しなくなっていたー。

理由はいくつかあるー。

ひとつは、姉と父はこの事実を知らないー。
どうすることも出来ない以上、知れば姉と父は悲しむし、
トラブルに発展する可能性もあるー。
だったら知らないままの方がいいし、
少しでも、”ボロを出すようなこと”はしない方がいいー。

もう一つは、俊平が一生懸命、”幸恵”として
頑張っている状況にー、
”おい俊平”みたいな話しかけ方をすれば、
俊平自身にも悪い気がしたし、本人を戸惑わせてしまうー
そんな気がしていたー。

そして、最後にー…
”怖かった”ー

最近では、母・幸恵が、本当の母ー、憑依される前のような
状態に、そんな風に見えているー。
もしかしたら、”母さんは正気に戻ったのかもしれない”ー
そんな風にも思っていて、
いやー、”そう思いたくて”、母・幸恵に対して
相手を俊平だとして接することができなくなってしまっていたー。

そうしたら、母がいなくなってしまうようなー、
そんな感覚に陥ってしまっていたー。

「ーーーー」
やがて、源太は”あの日々のことを忘れよう”とー、
そもそも母・幸恵が俊平に憑依されたことを、
記憶の奥底に封じ込めるようにして、
その話題に一切触れなくなってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、長い年月が経過したー。

源太は順調に大学を卒業しー、
社会人になって、
社会人生活にも慣れて、
30代、40代と歳を重ねたー。

社会人になった時に一人暮らしを始めたために、
実家も離れ、母・幸恵と会う機会は以前よりは
激減していたー。

がー、源太が40代になってすぐに、
母・幸恵が病気で倒れてしまったー。

源太は、母の入院する病院に通ったー。

しかし、既に高齢であった母は、日に日に弱っていくー。

「ーーー母さんー
 今日も来たよ」
源太はそう言葉を口にすると、
やせ細った母・幸恵は弱々しく、少しだけ微笑んだー。

「ーーーー」
源太は、そんな母・幸恵を見つめると、
意を決した様子で、静かに言葉を口にしたー。

「ーーー俺は、まだお前が母さんに憑依したことにはー
 怒ってるー。

 ーーでもーー
 悪かったなー…ずっと、母さんをやらせちまってー。

 それとー…ありがとな」

源太は、静かにそう言葉を口にするー。

”何十年ぶりに”ー
”俊平に対して”話しかけたー。

すると、母・幸恵は穏やかに笑いながら
「ーわたしは、あなたの母親だからー」と、
それだけ口にしたー。

「ーーーーそっかー」
源太は少しだけ寂しそうに、けれども穏やかに笑うー。

ついに、幸恵が”俊平として”振る舞うことは
最後までなかったー。

途中で俊平は消えたのだろうかー。
それとも、自分自身が誰なのか分からなくなったのだろうか。
あるいは、最後まで幸恵として、貫き通したのだろうかー。

それは、もう分からないー。

けれど、源太は、母・幸恵の墓前で手を合わせると、
「ーありがとうー」と、今一度そう言葉を口にするのだったー。

おわり

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コメント

間違えて親友の母親に憑依してしまう
お話でした~!!

一方通行の憑依薬を間違えて使ってしまうと
大変ですネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~!☆!

「俺は親友の母親になってしまった」目次

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