再び物語の世界の登場人物と入れ替わりー
王国に訪れる最大の危機を前に、
物語の世界にいる加奈の行動はー…?
そして、現実世界で加奈になった騎士・オディロンは…?
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「没落騎士だと!?この私が!?」
加奈(オディロン)が机を叩いて、亜樹美のほうを睨むー
加奈の目つきは
本気で怒っているー
いやー、殺意すらみなぎっている目つきだったー
「ーーー…か…加奈…?」
突然、自分はオディロンだと名乗り始めた加奈に対して
”冗談”だと思っていた亜樹美は困惑の表情で
加奈(オディロン)のほうを見つめるー。
「ーーー…それにしても貴様ー…
なかなかいい女だなー」
加奈(オディロン)がニヤリと笑みを浮かべるー
騎士・オディロンは女好きな一面もあり、
自分の周囲にお気に入りの女を何人か仕えさせているー。
「ーーちょ…ちょっと…加奈…?」
後ずさりする亜樹美の腕を加奈(オディロン)は
無理矢理掴むとー
「ーなかなかいい女だー。少し生意気だが、気に入った」と、
イヤらしい笑みで亜樹美の髪を触るー
「な…な…なにしてるの…?」
亜樹美はまるで”男”に触られているかのような
奇妙な感覚を味わいながら、加奈(オディロン)のほうを見つめるー
「ー私の女になれ」
加奈(オディロン)が笑みを浮かべながら囁くー
「ー…え…え… …え?い、いきなり…ど、どうしたの…?
こ、告白ー?」
顔を真っ赤にする亜樹美ー
加奈(オディロン)は、そんな亜樹美の返事をすることなく、
自分が女の身体であることもお構いなしに
亜樹美にキスをしたー。
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「ーーくそっ!」
王宮の方で突如轟音が響き、
騎士エミールは王宮の方に向かっていたー
「エミール様!」
オディロン(加奈)も、そのあとを追い走るー。
「ー君は今、軟禁中の男の身体にいるー
あの屋敷から出るべきではー」
エミールが言うと、オディロン(加奈)は
「そんなこと言ってる場合じゃありません!」と
叫んだー。
「ー魔物の襲撃は、王宮の爆音から始まるんですー。
そのあと、リゼット姫は王宮で魔物に果敢に立ち向かいますー」
オディロン(加奈)は走りながら
物語の描写を必死に思い出し、その言葉を伝えていくー。
「ーエミール様の言っていたダミアンって騎士はあっという間に
敵前逃亡してしまうのでー
警備はほとんどー」
オディロン(加奈)の言葉に、
「ベランジェ殿は?」と、表情を歪めるー
「ーベランジェー…」
オディロン(加奈)はハッとしたー。
「ーそ、そのベランジェって人はー…!
魔物のスパイです!」
オディロン(加奈)の言葉に、
エミールは「なんだと!?」と叫んだー。
騎士ベランジェは、
魔物と内通しているスパイー。
小説内では、この場面には登場せず、
中盤以降に登場するキャラのため、
”このタイミングでのベランジェ”のことは
全く無警戒だったがー、
そういえば小説の終盤ではー
”私は以前からずっと、魔王様に王国の動きを報告していたー”
というベランジェのセリフがあったー。
「ーーくそっ…!リゼット姫ー」
エミールは焦りながら城へと向かうー。
実際の物語では、
この時、エミールは王宮から少し離れた場所にいてー
駆け付けた時にはリゼット姫が姿を消しているー
と、いう悲劇が描かれているー
しかし、加奈がこの世界に来たことで運命は変わり、
エミールは王宮のすぐそばにあったオディロンの屋敷にいたー。
もしかしたらー
間に合うかもしれないー。
オディロン(加奈)はそんなことを思いながら
心配そうに騎士・エミールのほうを見つめたー。
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「ーーぐふふふふふー
お前が、姫かー」
巨大な骸骨のような魔物が、王宮の最深部にまで
侵入し、リゼット姫と対峙していたー。
「ーーー…このような所業ー…
いったい、何のつもりですかー?」
リゼット姫は王家に伝わる剣を手にしながら
巨大な魔物のほうを見つめるー。
「ーー人間共と我々は共生することなどできぬー
それだけのこと」
魔物がそう言うと、
背後からローブを羽織った魔術師のような者が
リゼット姫のいる部屋に入ってきたー。
「リゼット姫ー…我らに力を貸してもらいたい」
笑みを浮かべる魔術師ー
「ーわたしが、あなたたちにー?
そんなこと、死んでもあり得ません!
わたしは、この王国のために、命を懸けて、戦いますー」
その言葉に、笑みを浮かべる魔術師と巨大な魔物ー。
「ー素晴らしいー
それでこそ、王家の姫ー」
魔術師の言葉に、リゼット姫は表情を歪めたー。
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「ーーダミアン殿!」
王宮に向かっていたエミールが叫ぶー
エミールを敵視して、偉そうな態度を取っていたダミアンが
情けない表情で、王宮から逃げ出してきたのだー。
「ーーうるさい!どけ!」
ダミアンがエミールを突き飛ばそうとするー。
しかしー
エミールは怒りのあまり、ダミアンの胸倉を掴んだー。
「ーーそれともお前は、この俺と、俺の部隊では
力不足であるー、と、そう言いたいのかな?」
「ーーあの時の偉そうな態度は何だったんだ?」
エミールは怒りの形相でダミアンに言い放つー
「ーーわ、若造が…調子に乗りおって!」
そんなダミアンの言葉に、エミールはあきれ果てたのか、
ため息をつくと、そのままダミアンを地面に突き飛ばして
王宮に向かって走り出すー。
オディロン(加奈)はそんなダミアンが
王宮の外れの森の方に走っていく姿を見つめながら、
エミールの後を追う。
「ーーくそっ…姫様…!」
エミールは必死に走ったー。
只々、姫の無事を祈ってー
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「ーーーはぁっ…はぁっ…はぁっー」
王宮から敵前逃亡した騎士長の一人・ダミアンが
荒い息をしながら、森の中でため息をつくー。
だがー
魔物たちは、当然”城から姫が逃亡する”ことも
承知の上で周囲の逃げ道となりそうな場所には
兵士を配置していたー。
狼の雄たけびのようなものが聞こえて
ダミアンは困惑の表情で周囲を見回すー
「ーーーや…やめろ…!
俺は、俺は別に、姫様が、王宮がどうなろうと知ったことではないー!」
ダミアンが周囲を見渡しながら叫ぶー。
プライドだけは高くー、本当は小心者であることを
悟られないように、今まで生きて来たー。
今の地位も、ダミアンの家系が代々、名門の騎士の家系だったために
手に入れただけの地位だー。
「ーー俺は…俺は何もしない…!だから、お前たちも俺に何もするな!」
狼のような姿をした魔物に取り囲まれたダミアンは
剣を遠くに放り投げて、その場で土下座したー。
「ーーこの通りー。俺は丸腰だ!」
どのみちー
助からなかったかもしれないー。
だがー
それでも、ダミアン自身がもしも生き延びることができるとしたらー。
わずかな可能性があったとすれば、
必死に剣を振り、狼の姿をした魔物を撃退すること以外には
なかったー。
剣を捨ててしまった時点で、
ダミアンは、己の死の確率を”100パーセント”にしてしまったー。
夜の森の中にダミアンの悲鳴が響き渡ったー。
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「バカッ!もう知らないー!」
現実世界ではー
加奈になったオディロンが、亜樹美にキスをして、
エッチなことをしようとしたことに、亜樹美が腹を立てて、
パチン!と、加奈(オディロン)の頬をビンタしていたー。
亜樹美が怒りを隠せない様子で、加奈の部屋から外に出て行くー
一人残された加奈(オディロン)は、
「ーーしかしー…ここはどこだ?」と、表情を歪めたー。
「ーこの私が小娘になっていてー
見たこともない場所ー…」
加奈(オディロン)には、まるで現在の状況が理解できないー。
「ーこれはいったい…なんだ?
ーー私はエミールと話していたはずだがー」
加奈(オディロン)は今一度状況を整理するー。
だがー、
全く分からないー
自分への処分だとしても、
突然このような得体の知れない場所に
移動させられた挙句、
見ず知らずの小娘に自分がなっていて、
その上、よく分からない女が一緒にいたー。
全く状況が理解できないー
「ーーーーー……ん?」
そんな時だったー。
加奈(オディロン)は、
”本”に視線を向けるー。
オディロンたちの”物語”が
刻まれているその本をしばらく見つめた
加奈(オディロン)は、それを手に取り、
中を見つめるー。
「ーーーーーー!!!!」
加奈(オディロン)は、何気ない表情で
それを読み始めたものの、
すぐに「なんだこれは…!?」と声を上げるー。
そこにはー
”自分たちのこと”が書かれていたからだー。
”オディロン”の結末も含めてー
「ーーーーーっ」
加奈(オディロン)は呆然とした表情で本を床に落とすー。
「ーーこの世界はーもしやー」
加奈(オディロン)は、自分の手から零れ落ちた本のほうを見つめながら
困惑の表情で呟いたー
「この世界はーー”未来”の世界なのかー?」
とー。
自分が”本の世界”の住人だと夢にも思っていない
オディロンは、”自分たちの結末が記されている本”を見て
ここは未来の世界であると”勘違い”してしまったー
「ーークククククー」
笑い出す加奈(オディロン)ー
「まさか未来に来てしまうとはなー」
そう思いながら加奈(オディロン)は笑みを浮かべると、
そのまま玄関の方に向かって歩き出したー。
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「エミール様…あ、、足が…速すぎー」
オディロン(加奈)が、
王宮のリゼット姫がいる部屋にようやくたどり着くと、
荒い息をしながら、先に到着していた
エミールのほうを見つめたー。
騎士長と言うぐらいだから、
オディロンの身体も足が速いのかと
思っていたものの、
そんなことはなくー
エミールに置いて行かれそうになった
オディロン(加奈)は死に物狂いで、
走ってー
ようやくここにたどり着いたのだったー。
「ーーーー姫様!」
叫ぶエミール
背を向けて立っているリゼット姫とー
その横には大柄の骸骨のような魔物、
そして魔術師ー。
エミールの声を聞くと、
魔術師が笑みを浮かべながら振り返ったー。
「ーーおやおやー
まさか、ここにたどり着く騎士がいたとはー」
振り返った魔術師を見て、
オディロン(加奈)は表情を歪めるー
「ーあれは、魔界魔術師・ゼド…。」
魔界魔術師・ゼド。
この”物語”で最後に戦うことになる敵だー。
本来、エミールとゼドはまだこの場面では
対峙しないものの、加奈がこの世界に来て
ガストンやオディロンの身体で色々なことを伝えたことで
運命が変わったのだろうー。
「ーーお披露目はまだ先にしようと思っていたが
ちょうど良いー」
ゼドはそう言うと、笑みを浮かべるー
エミールはそんなゼドの不穏な態度に
「姫様!」と、エミールたちに背を向けたままのリゼット姫に
声をかけるー。
だがー
「ークククー
ほら、大切な家臣が呼んでいるぞー?姫様ー」
ゼドが笑みを浮かべながら言うと、
リゼット姫は言葉を口にしたー
「気安くわたしの名前を呼ばないで」
リゼット姫のきつい口調に、エミールとオディロン(加奈)は
呆然とするー。
「ーーーわたしは、魔王様の忠実なしもべー」
そう言い放ちながら、リゼット姫が目を赤く光らせて、
エミールのほうを見つめるー
「ーーー!!!!!」
エミールの表情が歪むー。
この上ないぐらいに悲しそうな顔で
「姫様……!」と、やっと呟くことしかできないー。
リゼット姫と、魔界魔術師ゼドはそんなエミールを見つめながら
不気味な笑みを浮かべたー
だがー
”本当の悪夢”は、まだこの先にあることを、
オディロン(加奈)もエミールも知らなかったー
<第4章>へ続く
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コメント
土曜日に掲載している都合上(土曜日のみ予約投稿)
週1の進行で、少しお待たせしてしまっていますが、
週刊誌みたいな感じで、のんびり楽しんでくださいネ~!
今日もお読み下さり感謝デス~!
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