再び、物語の世界の登場人物と入れ替わってしまった加奈ー。
しかし、今度はー…!?
”2度目の入れ替わり”の先に待つ未来はー?
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー何を言っておられるー…?」
若き騎士・エミールが困惑の表情を浮かべるー。
「ーあ、い、いえ、分かるわけないですよねー
今度は違う人と入れ替わっちゃったんだしー」
オディロン(加奈)がボソボソと呟いていると、
エミールが、険しい表情でオディロン(加奈)を見つめていることに
加奈は気づくー
(こ、こうなっちゃったらもう…
素直に言うしかないよねー…)
”もう一度この世界に来る”
そんな願いは適ったものの、
まさか、”ガストン”の身体ではなく、
別の登場人物”オディロン”の身体と入れ替わるとは
思ってもみなかったー。
正直、失脚後の騎士・オディロンの身体では、
山賊頭・ガストンの身体とあまり状況は変わらないのだが、
元の世界で加奈になっているのがオディロン…ということは、
中身がガストンよりはマシであると言えたー。
「ーわ、わたし!こ、この前まで、山賊のガストンの中にいたー…」
そこまで言うと、エミールがさらに表情を曇らせたのに気づき、
オディロン(加奈)は慌てて
「え、えっと!身体が、入れ替わってしまっていて、
わたしは実は別の世界から来た人間でー!」と、
半分パニックになりながら話したー
「ーーーー」
その言葉に、エミールは表情を歪めながらも
”元に戻った”ガストンに言われた言葉を思い出すー。
「ー俺と別世界にいた女が入れ替わっていたー…
かもしれないってことだー」
「ーーーー」
エミールは、そんなガストンの言葉と、
ガストンの態度が急に何度も変わったことー、
そして、この前までガストンは、まるで”未来”を知っているかのような
振る舞いをしていたことから、
目の前のオディロン(加奈)の話を
すぐに”嘘をつくな”と一蹴するようなことは
しなかったー。
「ーーー……詳しく教えてくれ」
エミールはそう言うと、
近くに椅子を持ってきて、オディロン(加奈)のほうを見つめたー。
オディロン(加奈)は、エミールに全ての
出来事を包み隠さず話したー
”どうして未来が分かるのか”という点も
含めて、だー。
「ーーすると、俺たちの世界は、君たちの世界にある本の中だと?」
エミールが言うと、
オディロン(加奈)は「信じられないと思いますが、エミール様の言う通りです」
と、頷くー。
エミールはしばらく険しい表情で考えるー。
”オディロン殿が、
軟禁から逃れようとしてデタラメを言っているようには思えないー
だがー…そんなことがあり得るのか?”
騎士・オディロンは剣術だけではなく、
兵法や策謀にも長けている騎士だ。
大臣の謀殺事件で、エミールを犯人仕立て上げて
陥れようとした件も、
”ガストン(加奈)が未来を教えてくれなければ”
エミールは今頃罠にはまっていたことだろうー。
だからー
”でたらめ”を口にして、逃亡する可能性も十分にあるー。
しかしー。
「ーーでは、”この先の未来”は分かるのか?」
エミールが問うー。
オディロン(加奈)は不安そうな表情を浮かべてから
「はいー」と答えると、
恐らくは近いうちに
魔物たちによる奇襲攻撃があり、
その最中にリゼット姫が攫われてしまいー、
魔物たちに洗脳されたリゼット姫と戦うことになってしまうー…
と、伝えたー
「な…なんだと…姫様がー」
エミールは呆然とした様子で呟くー
「ひ…姫様が敵の手に落ちるだと!?」
その言葉に、オディロン(加奈)は困惑した様子で頷くー。
「ーそ…そんなことがー…」
立場は違えど、エミールとリゼット姫は
幼馴染の間柄だー。
小さいころは、よく遊んだこともあるー。
そんなリゼット姫と敵対することになるなんてー…
「ーーー…い、いつなんだ!?」
エミールが目の色を変えてオディロン(加奈)に対して言い放つと、
オディロン(加奈)は「それは、具体的には分かりませんー」と、
申し訳なさそうに呟くー。
”騎士・マルタンの反乱”ー
これが終わると、次のお話が”魔物の襲撃”だー。
だがー
”小説”には何日経過したのか、などは書かれておらず、
順番的に”次”起きることは確かであっても
それが何日後かは分からなかったー。
オディロン(加奈)はそのことも包み隠さず口にするー。
「ーーー…なるほど…」
エミールは困惑しながらも、
オディロン(加奈)のほうを見つめると、
「ーーーーまだ信じたわけではないがー…」と、付け加えた上で、
「ーー可能性としては、あり得ない話ではない。注意しよう」と、
そのままオディロンの屋敷から立ち去ろうとするー
「ーエミール様!」
オディロン(加奈)が、エミールを呼ぶと、
エミールは「ー分かってくれ。もしもこの世界が君の世界の本の中で、
君が最後までこの世界の物語を知っているというのであればー
オディロンが油断ならない男だということも、分かるだろう?」
と、少しだけ申し訳なさそうに言ったー。
「ーここから自由にすることはできないー。
だが、定期的に話を聞きに来るし、放置はしないー。」
エミールはそれだけ言うと、オディロン(加奈)に向かって
少しだけ頭を下げると、そのまま立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーな、なんだこれはー…」
加奈になった騎士・オディロンが自分の手を見つめながら呟くー。
「ー私が女にー…これは、いったいどういうことだー?」
自分の胸を見下ろしながら加奈(オディロン)が困惑するー。
”私は自邸に軟禁されていたはずだがー…”
加奈(オディロン)は表情を歪めるー。
憎き騎士・エミールを陥れようとして失敗、
失脚した自分は、屋敷に軟禁状態となり、
正式な処分を待つ身だったー
”そこに、あのエミールの小僧がやってきてー”
オディロンはまだ若いエミールを
”姫の幼馴染というだけで重用される小僧”と侮っていたー。
その嫉妬が、膨らんでいき大臣のサロモン毒殺事件を起こし、
エミールをはめようとしたのだー。
「ーこれが…私への処分だというのか!?」
大きな声で叫ぶ加奈(オディロン)ー
騎士としての誇りや、地位ー、
そういったものを全て奪われた上で
一介の町娘にされてしまったー
これこそが、大臣を暗殺した件の
自分に対する処罰であると、加奈(オディロン)は考えたー。
「ーーーあ…あの…」
急に様子のおかしくなった加奈(オディロン)の背後から
加奈の家にちょうど遊びに来ていた友人・亜樹美は
戸惑いながら声をかけたー。
加奈は、亜樹美が遊びに来た直後、本が光り、
オディロンと入れ替わってしまったー。
そう、タイミングとしては最悪のタイミングだったー
「何者だ!?」
加奈(オディロン)が髪を揺らしながら振り返るー
「ーひっ!?…ちょ、ちょっと…な、何よいきなりー?」
亜樹美が困惑した表情で呟くと、
「ーー貴様…なんだその態度はー?」と、不満そうに呟くー
「ーーー…な、なんだって何よー?」
亜樹美が少しムッとして言い返すと
加奈(オディロン)は
「小娘ー…どこの者だ?」と、不満を露わにしながら
亜樹美を睨みつけたー
亜樹美は混乱しながらも、
「ど、どこのってー…ど、どういうー?」と、
首を傾げるー
「ーー私を誰だと思っているー!?
今はこんな姿だが、
私は王国騎士団第6部隊団長のオディロンであるぞ!」
加奈(オディロン)がそう叫ぶとー
亜樹美は思わず笑ってしまったー
「ーちょっと~~何それ~??
なんの冗談?」
亜樹美は笑いながらそう言うと、
「ー加奈ってば、小説の読みすぎじゃない?」と、
笑みを浮かべながら、例の小説を手にしたー。
「ー確かオディロンって、この本の登場人物だよね?」
亜樹美の言葉に、
加奈(オディロン)は「な…何を言っている?」と、表情を歪めたー
「ー脱獄しようとして失敗して、最後には民に殺される没落騎士!」
亜樹美が笑いながら言うと、
加奈(オディロン)は「ぼ…ぼ…ぼ…没落…?」と、身体を震わせながら
亜樹美のほうを見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーそれは真か?エミール殿」
騎士長の一人、ベランジェが表情を歪めるー。
「ーー間違いありません。
私の配下の者が、魔物の軍勢の動向を探り、
持ち帰った情報です」
エミールが答えると、
騎士・ベランジェは表情を歪めたー。
「ーーかようなこと、信じられぬなー…」
整えられた髭を触りながら、
ベランジェはエミールのほうを見つめるー。
「ーですが、近ごろ、魔物たちが王国の周辺で度々目撃
されているのは事実ですー。
姫様の警備の強化を早急に行う必要がー」
エミールがそこまで言うと、
騎士団会議に参加していた別の騎士長・ダミアンが口を挟むー。
「そのような必要はあるまい」
腕組みをしながら椅子に座ったまま
不敵な笑みを浮かべる騎士・ダミアンー。
「ーーダミアン殿ー。それはどういうことでしょうか?」
エミールが言うと、ダミアンは答えるー
「ーエミール…お前は知らないかもしれないがー、
リゼット姫の護衛を任されているのは
この俺の部隊だー。
万が一、お前の言うように魔物がやってきたとしても
我が精鋭部隊が、魔物など軽く蹴散らしてくれようぞ」
ダミアンの言葉に、エミールは「しかしー」と、ダミアンのほうを見つめるー。
「ーーそれともお前は、この俺と、俺の部隊では
力不足であるー、と、そう言いたいのかな?」
鋭い目つきでエミールを睨むダミアンー。
失脚したオディロンや、マルタンのように、
エミールを表立って批判し、実際に行動を起こした人間以外にも
”姫の幼馴染”であり”若くして功績を上げている”エミールに対して
良い感情を抱いていない騎士長は複数存在する。
ダミアンもその一人だー。
「ーーまぁ、ダミアン殿がそう思ってしまうのも無理はないー。
エミール殿の部隊の情報を疑うわけではないがー
大規模な攻撃を魔物たちが仕掛けてくるとは考えにくいー。
ここはひとつ、ダミアン殿により一層の警戒をお願いする、
という形でーー
どうですかな?ダミアン殿」
騎士・ベランジェの言葉に、ダミアンは
「まぁ、それならば異論はないー」と、腕組みしながら答えるー
”くそっー”
エミールは表情を歪めたー。
”若き実力者”であるエミールを疎む人間は多いー。
ベランジェ他、数名は比較的エミールに友好的だが、
ダミアンのような人間は多く、なかなかエミールの意見は通らないのだー。
「教えてくれー。」
その夜ー
エミールは密かにオディロン(加奈)の元を訪れるー
エミールが騎士団会議で加奈のことを口にしなかったのは
余計な混乱や火種を招くことになる可能性もあったためだー。
「ーー君が、俺たちの世界の出来事を知っているというのであればー
”ダミアン殿”がどうなるのか、覚えていたら教えてほしい」
エミールのその言葉に、
「ーダミアン…」と、オディロン(加奈)は呟くと
記憶の中を探るー
確かに騎士長の中に”ダミアン”というキャラはいたー。
だが、これと言って目立つ活躍の場面が
”加奈が読んでいた原作”にはなかったー。
「ーーーダミアン…ダミアン…ダミアンー…」
オディロン(加奈)は真剣に”ダミアン”という
キャラがいたかどうかを考えるー
「ーーーーー」
目の前にいるエミールが険しい表情を浮かべるー
”賊のガストンや、反乱を起こしたマルタン殿ー…
毒殺されたサロモン殿は覚えているのにー
ダミアン殿のことは覚えていないのかー?”
そんな風に思っていると
「あっ!」と、オディロン(加奈)が声を上げたー
「ーー思い出しました!」
オディロン(加奈)は、やっと”ダミアン”のことを思い出したー
「ー…ど、どうなるんだー?」
エミールが言うと、
オディロン(加奈)は「そ…それがー」と、苦笑いしながら答えたー。
「ー魔物の襲撃の際に真っ先に部下を置いて逃げ出してー
そのあと、登場しないんですー」
その言葉に、エミールは唖然とした表情を浮かべるー。
「ーそう、確か名前が2回ぐらいしか出て来なくてー
それで、忘れてましたー」
その時だったー
ドォン!
王宮の方で轟音が響いたー。
「ーーー!」
エミールが「まさか!」と叫びながら
オディロン(加奈)の屋敷を飛び出していくー
そうー
魔物の襲撃が始まったのだったー。
<第3章>へ続く
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コメント
元々本編は2話完結でしたが
続編はまだ続きます~(笑)
いつも通りの理由で、土曜日の作品は
週1回進行なので、またお待たせしてしまいますが、
楽しみにしていてください~!
今日もありがとうございました~!
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