物語の中の山賊と入れ替わってしまった
読書好きの女子大生ー。
彼女の運命はー…?
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「ーーー未来が、分かる?」
エミールが言うと、山賊頭のガストンになってしまった加奈は
頷いたー。
山賊たちに”裏切者”として襲われたあと、
エミールがほとんどの山賊たちを倒したことで、
ガストン(加奈)は何とか助かったー。
だが、”ガストン”は、本来、極悪非道人の山賊頭で、
この場所でエミールに倒される”最初にやられる雑魚キャラ”だー。
”運命”は既に決まっているのだろうかー
他の山賊を倒したエミールが剣を手に、
ガストン(加奈)の方に向かってきたタイミングで、
ガストン(加奈)は思わず叫んだのだー
「ーわたし…未来が…未来が分かるんです!」
とー。
助かりたい一心だったー。
加奈は、この小説を既に何回か最後まで読み終えているー。
だからこの先、何が起こるのかは、よく分かるー。
「ーーー大臣のサロモン様が、まもなく毒殺されますー」
ガストン(加奈)がそう言うー。
この物語のこの後の展開ー。
それは、王国の大臣の一人、サロモンが食事中に毒殺されて
”誰が殺したのか”という展開になる。
古株の騎士の一人、オディロンが、
エミールのことを蹴落とそうと仕組んだ罠で、
オディロンの配下が、サロモンを毒殺ー。
その罪をエミールに着せようとするー。
と、いう展開だー。
「ーーサロモン様が毒殺される?貴様が仕組んだのか!?」
エミールが叫ぶー。
確かに、そう勘違いされても仕方がないー
ガストン(加奈)はそう思いながらも、
咄嗟に「違います!」と叫ぶー
「ーわたしには、本当に未来が分かるんですー」
ガストンになった加奈は、
”騎士様に話す口調なら、これでおかしくないよね”と、
思いながら言葉を続けるー。
「ーーーー」
エミールはなおもガストン(加奈)を警戒した様子で
見つめていたが、やがて剣をしまうと、
「ならばお前を城で拘束させてもらうー。
本当に未来が分かるのかどうか、見させてもらおう」と、
エミールはそう言い放ったー。
「ーーー……ほっ」
ガストン(加奈)は安堵からか、ため息をつくとー
「拘束されるのに、ため息をつく山賊など、初めて見たな」と、
エミールはおかしそうにガストン(加奈)のことを見つめたー。
エミールがガストン(加奈)を秘密裏に城まで運び、
エミールが管理する城の一角に、ガストン(加奈)は幽閉されたー。
”この者の力ー…
未来を見る力というのは、本当だろうかー。”
エミールは表情を曇らせるー。
他の騎士や大臣たちに、ガストン(加奈)の存在を伝えず、
秘密裏に幽閉したのは、
”もしも、本当に未来を見ることができるのであれば
それを悪用しようと考える人間も出てくるかもしれない”と
考えたためだったー。
「ーーー詳しく聞かせろ」
牢屋の前でエミールが言うと、ガストン(加奈)は改めて
間もなく起きる出来事を説明したー。
大臣のサロモンが食事中に毒殺され、
エミールが罪を着せられるー。
真犯人は騎士オディロンで、動機はエミールに対する嫉妬であると。
「ーーオディロン様が俺に嫉妬…?
そんなことする方ではないぞ?」
エミールが疑問を投げかけてくるー。
「でも、本当に起きるんですー」
その言葉に、エミールは戸惑いながらも
「ーー分かったー。虚言であった際には、覚悟はできているな?」と、
ガストン(加奈)に言い放ったー。
一人になったガストン(加奈)は
”どうしてこんなことに…”と思いつつも
「というか…この人…臭いー」と、ガストンの身体の体臭を感じて
不愉快そうに呟いたー。
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「ーーーへへへへへへ!おい女!こっちに来いよ!」
加奈になったガストンは、
どこで知ったのか、メイドカフェで女に囲まれて
嬉しそうに笑っていたー。
加奈(ガストン)は、メイドたちに囲まれながら
下品な笑みを浮かべるー
”なんだかよく分からねぇけど、たまんねぇぜ…!”
「ーーお前ら、俺の女にならねぇかぁ~?」
加奈(ガストン)が言うと、
メイドの一人が「ご主人様ってば、まるで男の人みたい!」と、
笑いながら言うー
加奈(ガストン)はご機嫌そうに大声で笑うと
「ははははは!俺はついこの間まで男だったんだぜぇ!」と、
大声で叫ぶー。
メイドたちは、商売だからか、ニコニコしているものの、
周囲の利用客たちは、加奈(ガストン)の様子を見つめながら
正直、引いている感じだったー。
「ーーぐはははははは!俺は泣く子も黙る山賊頭のガストン様だ!」
加奈(ガストン)が大声で笑い、メイドを抱き寄せてキスをするー
男のような振る舞いをする大人しそうな風貌の女子大生に
キスをされたメイドは、顔を赤らめながら困惑の表情を浮かべたー。
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「ーーサロモン様を殺したのは、エミールよ、貴様だな?」
騎士オディロンが、エミールを睨みつけるー。
ガストン(加奈)の言う通りだったー。
大臣のサロモンが、食事中に毒殺されたー。
サロモンの毒殺が本当なら、阻止することも考えたが、
”エミール一人の力ではどうにもできない”こと、
”ガストン(加奈)の力が本物かどうか確認したい意味もあった”こと、
そして”サロモン自身が不正を働いている悪い噂などがあった”ことから、
エミールは、”サロモン救出”には動かなかったー
その結果ー
ガストン(加奈)の言う通り、サロモンは毒殺されたのだー。
「ーーー貴様の部屋から、サロモン殿が殺された毒と同じものが見つかったのだがー
これはどういうことかな?」
騎士オディロンの言葉に、
エミールは首を横に振りながら笑ったー
「オディロン様ー。
御冗談をー」
とー。
女王と、大臣、他の騎士たちの視線が集まる中、
オディロンは、”元の展開”通りに、エミールを蹴落とそうと、
エミールに罪をなすりつける演説をするー。
だがー
エミールが合図を送るとー
そこに、エミール配下の兵士に連れられた捕虜がやってきたー。
「ーーー!」
オディロンが表情を歪めるー。
「ーーー…オディロン様ー。あなたの配下のものが、全て自白しました」
エミールは、予めガストン(加奈)に
”自分がどのようにして陥れられるのか”を確認しておいたのだー。
その情報を元に、エミールの部屋に毒物を置いた兵士を捕まえておいたのだー。
「ーーーわ、私はオディロン様の命でー…
サロモン様の食事に毒を盛り、その毒をエミールさまの部屋に起きましたー」
「ーーーなっ」
オディロンが表情を歪めるー
「ーわ、、わしはそんな奴、知らぬぞ!」
叫ぶオディロンー。
「ー見苦しい!」
他の騎士が叫ぶー
「ーオディロンよ、貴様、エミールに嫉妬し、このようなことを起こすとはー
なんと情けないー」
その言葉に、オディロンは喚くようにして反論しているー。
だが、その日ー
オディロンは、サロモン毒殺事件の犯人として、
そのまま失脚したー。
「ーー助かったよ」
エミールが、ガストン(加奈)のいる牢屋を訪れると、
ガストン(加奈)は少しドキッとしながら
「お役に立てて光栄ですー」と、言葉を口にするー。
「ーー本来は、どうなるはずだったんだ?」
エミールが言うと、ガストン(加奈)は
「”本来”の未来はー」と、言葉を口にするー。
本来は、エミールが牢屋に閉じ込められて
1か月以上監禁生活が続くー。
そんな中、疑問を抱いたエミールの部下たちが
オディロンの悪事を暴き始め、
部下の一人がそのことをエミールに伝えるー。
そして、エミールは部下の協力を得て、
命懸けで牢屋を抜け出し、オディロンの部屋に深夜、忍び込んで
”サロモン毒殺”の証拠を入手ー
それを元にオディロンの陰謀を打ち破るー
そんな、展開だったー
「ーーはははは そうかー…大変なことになるところだったー。
感謝するー」
エミールが頭を下げるー。
そして、次はー
”オディロン派の騎士様…マルタン様が反乱を起こします”
「ーーー何だって?」
エミールが表情を歪めると、ガストン(加奈)は
「どうか、お気を付け下さいー」と、頭を下げたー。
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加奈(ガストン)はニヤニヤしながら
自分の家に帰ってきたー
「ーーへへへへ…なんなんだこの世界はー?」
加奈になったガストンにとっては驚きの連続ー
「ーーあの機械化された馬みてぇなやつもやべぇな…」
車のことをそう呟く加奈(ガストン)ー
そして、メイドカフェを堪能した帰りに
加奈(ガストン)は、
加奈が絶対着ないような服の数々を、
勝手に購入して、帰宅していたー
「ーーぐへへへへへへ…
これ…やばすぎるだろ…
俺のいた場所には、こんなものねぇぞ…」
ぐふふふふふふ、と笑いながら加奈(ガストン)は笑うー。
この世界が、何なのかを調べる必要があるし、
子分共がどこにいるのかも、確認したいー
だが、加奈(ガストン)は分からないことだらけで、
自分のいた世界とはまるで”ルール”の違うこの世界に戸惑っていたー
「それにしてもー」
加奈(ガストン)は、”本”を開くー。
ガストンが登場している小説だー。
「ーー俺たちのことが書かれているってことはー
どういうことだー?」
加奈(ガストン)は表情を歪めながら本を見つめるー。
ガストンはここが”自分たちの生きていた世界よりも未来なのではないか”と
考えたー。
実際にはその推理は間違っているものの、
”別の世界にやってきてしまった”という点では
ある程度は的を得ていた推理なのかもしれないー。
「ーーー……くそっ!」
加奈(ガストン)は本を読みながら不愉快そうにそれを睨みつけるー。
何故ならー
ガストンが、主人公のエミールに”あっという間に瞬殺”されている
描写があるからだー
「くそっ!くそっ!くそっ!」
怒りの形相で加奈(ガストン)は何度も何度もそう呟きながら
”自分が殺される描写”を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー…お前のおかけで、
マルタンの反乱を事前に阻止できた。ありがとうー」
エミールが、ガストン(加奈)に向かって言い放つー
「いえ、そんなー」
一瞬、顔を赤らめそうになるも
”わ、わたし、ゴツイ山賊だったー”と、
自分の今の身体を思い出して、それを押さえるー。
そして、加奈は”次の展開”を頭の中で考えるー
”あっー!”
次の場面は、魔物の襲撃によって、姫が魔物に
操られてしまい、エミールが酷く落ち込むー
そんな…展開だったー
”早く伝えないとー”
「ーエミールさま!この先のみらーー」
「ーーー!」
一瞬、閃光のような光が走ったー
「ーーーど、どうした?」
エミールが言うと、ガストンが表情を歪めたー
「ーーお…!?!?お…!??!
な、なんだこれは!?なんで俺が牢屋にー!?
俺は…女になってたはずなのに!?
お、おい!?
まさか元の世界にー!」
急に別人のように騒ぎ出したガストンを見て、
エミールは表情を歪めることしかできなかったー
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「ーーこの先の未来は、姫様の身に危険がーー!」
そこまで叫んで加奈は表情を曇らせたー
「ーーって…あれー?」
周囲の光景に見覚えがあるー。
紛れもない、自分の部屋だー。
「ーーえ…嘘…戻っちゃったの…?」
戸惑いながら、本を見つめる加奈ー
”ど…どうしてー?”
そう思いながらも、本のほうを見つめた加奈は、
ふと、部屋の横の方に置かれていた
”ガストンが加奈の身体で買ってきた服たち”を見て
悲鳴を上げたー
「ーーえ……ま、まさか…」
加奈は、自分がガストンになっていたということはー
もしかして、ガストンがわたしになっていたのー?と、
頭の中で考えて、
”へ…変なことされてないよねー…?”と、
顔を赤らめながら周囲を見渡したー。
「ーーーーー」
少しして、本のほうを再び見つけた加奈は、
「ーーエミール様に…姫の危機を伝えなくちゃ…」と
寂しそうに呟くのだったー。
おわり
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コメント
物語の中の登場人物と入れ替わってしまうお話でした~!
お読み下さりありがとうございました!☆
コメント
続きが気になります。
三流無能様~!コメントありがとうございます~!
続きもあるかもしれないですネ~!
楽しみにしていてください~!☆