<入れ替わり>わたしは物語の中に①~山賊~

読書好きの女子大生がある日の帰宅後に読書をしていると、
突然、光に包まれてー…

気付いた時には、本の中の登場人物と身体が入れ替わってしまっていたー。

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女子大生の奥村 加奈(おくむら かな)は、
大学から帰宅すると、本を読むのが日課だったー。

小さい頃から、大人しい性格で、本が大好きな加奈は、
学校でも図書室がマイホームのような感じだったし、
高校時代からは本屋でバイトをしているほどの本好きー。

今日も、帰宅してからいつものように、本を読んでいたー。

最近、読んでいるのは
姫の幼馴染でもある王国の新人騎士が、
王国内で起きる問題を次々と解決していく…
そんな、小説だったー。

主人公のエミールは美少年風の容姿で、
”姫の幼馴染”でもあることから
先輩の騎士や、一部の大臣たちからは
その存在を疎まれたり、嫉妬の対象になっていたりして、
先輩騎士たちから、数々の嫌がらせも受けている。

仲間であるはずの騎士たちからの嫌がらせや、
エミールを蹴落とそうとする陰謀、
そして、数々の悪党との戦いー
そういった色々な要素が絡み合って、
先が気になる物語が展開されていて、
最近の加奈はこのお話を夢中になって読んでいたー。

だがー

「ーーーえ!?」
突然、手にしていた小説から光のような輝きが
放たれ始めるー。

「ーーえ…?なに…!?なにこれ…!?」
加奈が困惑していると、次の瞬間、光はさらに強くなりー
周囲が何も見えないほどの眩しさを感じー、
加奈は思わず目を閉じたー

「ーー親分…!親分!」

ふと、そんな声が聞こえて来たー

加奈が「え…」と、戸惑いながら、
目を開くとー、
そこは荒れ果てた集落だったー

「ーーえ…ど…どういうー?」
そこまで言葉を口にして、加奈は思わず自分の口元のあたりを
手で押さえたー。

自分の口から、”図太い男の声”が出たのだー。

「ど…どういうー?」
加奈が男の声でそう呟きながら、
ふと、自分の身体に目を落としたー

すると、そこにはゴツイ装備、ゴツイ体格の男の身体があったのだー

「えっ!?!?!?えっ!?!??!!?」
加奈が思わず声を上げると、
「へへへ…ガストンの兄貴ー…そんな乙女みたいな仕草して、
 どうしたんですか?」と、
子分のような男が笑みを浮かべたー

「ーーガストンー?」
加奈は、表情を歪めたー。

ふと、小説の中の序盤のある場面を思い出すー。

”村を焼き払って略奪かー。
 心の腐った獣(けだもの)がー”

”ぐはははは!お前のような貧弱そうな騎士に何ができる!
 我が名はガストン!泣く子も黙る山賊の王だ!

”ーー黙るのは泣く子じゃないー。貴様だー”

「ーーーーー!!!」

ガストンー。
加奈が最近読んでいた小説の登場人物の名前だー。

辺境の村を襲っては略奪を繰り返している山賊の頭で、
女子供も、なりふり構わず虐殺するー。
女と酒が好きで、どうしようもない山賊の典型的なパターン…
とも言えるキャラクターだ。

そして…
そのガストンはー…

加奈は今一度、ガストンが出てくるシーンを思い出すー。

物語の序盤ー
主人公であるエミールが、物語の中で最初に戦う相手が
この山賊頭・ガストンだ。

「村を焼き払って略奪かー。
 心の腐った獣(けだもの)がー」
悲惨な村の状況を見て、駆け付けたエミールがそう呟くー。

美少年風のエミールは、普段、王宮では物腰が低く、
民にも優しい性格だが、
一たび悪を前にすれば、鋭い目つきで、相手を睨み、
果敢に戦うー。
そんな、主人公だー。

そして、エミールの言葉を聞いた
山賊頭のガストンは確か、こう言うー。

「ぐはははは!お前のような貧弱そうな騎士に何ができる!
 我が名はガストン!泣く子も黙る山賊の王だ!」

とー。

エミールの美少年風の容姿に、
ガストンは”こんな奴に負けるはずがない”と
油断したのだー。

エミールに襲い掛かるガストン。
斧を振り下ろしたガストンを
エミールは、一瞬にして斬り捨てるー。

「ーー黙るのは泣く子じゃないー。貴様だー」
倒れるガストンに対して、エミールはそう言い放つー

”かっこいいー”
物語を読んでいて、加奈はそう思ったー

しかしー

「ーーえっ!?ちょっと待って…
 わたしがガストンってことはー…
 
 ここは…物語の世界の中ー!?」

序盤で瞬殺されてしまうキャラ・ガストンになってしまった加奈は
困惑の表情を浮かべたー。

何らかの原因で、物語の中の登場人物になってしまったー
しかもー

「よりによって、前半ですぐ死ぬガストン!?なんで!?」
ガストン(加奈)が頭を抱えると、
子分の男が「親分…どうしたんで?」と、不安そうに呟くー

「ーーはっ!」
ガストン(加奈)が周囲を見渡すと、その村は
既に荒れ果てていたー

「ーーこ、これってー」
表情を歪めるガストン(加奈)ー

たしかー

”村は荒れ果て、ほんの少し前まで
 ここでのどかな光景が広がっていたとは
 いったい、誰が予想できようかー”

と、書かれていたー

そのあと、エミールがやってきて
さっきのような戦いが繰り広げられるのだー。

「ーーって…やばっ!」
ガストン(加奈)が叫ぶー。

ここが本当に物語の世界の中ならー
原作と同じように物語が進むのであれば、
間もなくここに主人公のエミールがやってくるー。

そして、ガストンはあっけなく斬り捨てられてー
”死ぬー”

「ーに、逃げないと!」
一目散に逃げ出そうとするガストン(加奈)ー

子分たちは「えぇっ!?」という表情を浮かべているー。

だが、遅かったー

村の入口にー
物語の主人公であるエミールが立っていたのだー。

「村を焼き払って略奪かー。
 心の腐った獣がー」

エミールがそう言い放ったー

「ーーひっ…ひぃっ!?」
ガストン(加奈)は、このままじゃ
自分の推しキャラでもあるエミールに殺されちゃう!?と
悲鳴を上げたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーあ?」

一方ー、
現実世界では本から放たれた謎の光に包まれて
気を失っていた加奈が目を覚ましていたー

「ーーな…なんだここはー?」
加奈が険しい表情で呟くー

「ー”俺”は確か、ローズ村を襲撃してー…」
加奈はそう呟くー。
普段、一人称で”俺”など使わない加奈の様子が
どこか、おかしいー

「ーーーーーー…ってーー」
加奈は下を向いて叫ぶー

「ーーおぉぉ、、お、お、、、お…お、、、
 おっぱい!?!?!?!?!?!?」

大声で叫ぶ加奈ー。
そこに、あるはずのないものが、あった以上、
叫ぶしかなかったー

「お、おい!お前ら!どうなってるんだ!?
 おいー!」

近くにいるはずの”子分”達に向かって叫ぶ加奈ー

しかし、ここに”子分”はいないー。
加奈はー
いいや”彼”は、本来自分がいるはずのない世界の人間と
”入れ替わって”しまったのだからー

「ーーま、まさか俺…っていうか…声も…なんだこれ…?
 王国のやつらに捕まったのかー?」

加奈になってしまったガストンは
険しい表情でそう呟きながら
今までのことを思い出す。

何度も何度も今までのことを思い出しては見たものの、
自分が王国の連中に捕まった記憶はないー

「ーーー…ん…なんだこれ?」
加奈(ガストン)は、片方の胸を左手で触りながら
足元に落ちていた本を拾ったー

それをパラパラとめくる加奈(ガストン)ー

加奈(ガストン)は、内容を見て表情を歪めるー

「こ…これはー…!」

そこにはー
ガストン自身が主人公のエミールに斬り捨てられる場面やー
その後の激動の物語が描かれていたー

「ーーこ、これはいったいー…」
加奈になったガストンは、自分の身に起きていることを
理解できないまま、困惑の表情で
”自分たちのこと”が書かれている本を
見つめることしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー!」
エミールが表情を浮かべるー

いや、エミールだけではない。
その場にいた山賊たちも、驚きの表情を浮かべたー

極悪非道の山賊頭・ガストンが突然ー
エミールの前で土下座をしたからだったー。

「ーーお許しくださいー。エミールさま…!」
ガストン(加奈)のあり得ない行動に、
エミールは「ーーー何のつもりだ?」と、
その幼くも見える美少年風の顔に険しい表情を浮かべたー。

「ーーお、親分!こ、これはいったいー?!」
突然土下座した親分に対して、山賊たちも戸惑いの様子を見せるー。

荒れ果てた村の中でガストン(加奈)はひたすら土下座をするー

「ーわ…わたしが…わたしが間違っておりました!!!!!!」
大声で叫ぶガストン(加奈)ー。

「ーーー…村をこのような惨状にしておいてー…
 今更、どういうつもりだ?」
エミールが言うー。

「ーーー…そ…そ…それはー…」
ガストン(加奈)が、怯えたような表情で呟くー。

”こ…こ…このままじゃ…エミールに殺されちゃうー!”

本来の物語の展開はー
ガストンが強気にエミールに襲い掛かり、
あっという間に瞬殺されるー、という、そういう展開だー。

物語の進行通りになったら、
加奈は、ガストンの身体のまま死んでしまうー。

”ゆ…ゆ…夢だとは思うけどー”
加奈はそんなことを思いながらも、
このローズ村の空気感に
ガストンの身体の感触ー
あらゆる状況がー
”もしかしたら、本当にわたし、物語の中にー”と、
認めざるを得ない空気を作り出していたー。

もし、夢じゃなかったらー
死んだらどうなってしまうのだろうかー。

「ーーー死んでいった村の人たちに、あの世で詫びろ!」
正義感の強いエミールが叫ぶー

「ーま、ま、待って!待って!待ってください!」
半泣きでガストン(加奈)が言うと、
エミールはガストン(加奈)を睨みながら、その言葉を待つー

「ーーわ、わたしは…村を襲うことに反対したのですー… 
 で、ですが、この者たちが無理やりー」

ガストン(加奈)の言葉に、エミールは「どういうことだ?」と
困惑の表情を浮かべるー

「お、親分!?」
部下の山賊たちに”罪をなすりつけようと”するガストン(加奈)

罪をなすりつけることに、罪悪感を感じながらも
”この人たちは悪い人だから…… ごめんね”と、
ガストン(加奈)は、必死に命乞いの言葉と、
自分は悪くないという言葉を繰り返したー

それでも、エミールは疑いの目を向けたままー。

だがー……
そんな状況は変わったー
山賊の一人が「この裏切者!」と叫んで、ガストン(加奈)に
襲い掛かってきたのだー

山賊たちが、ガストン(加奈)と、エミールに襲い掛かるー。
二人は仕方がなく応戦することにー

堂々とした戦いをするエミール。
その一方で
戦い方も分からないガストン(加奈)は
まるで女子のように悲鳴を上げながら斧を振り回すだけだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーあぁぁっ♡ たまんねぇ♡ ふぅぅ…♡ はぁぁぁ…♡」
加奈になったガストンは、
自分たちの世界が描かれた本を見て、
困惑したものの、

”そんなことよりも、女だ!”と、
下品な笑みを浮かべながら、加奈の身体で何度か絶頂を迎えたー。

「ーーはぁぁ…♡ 女…♡ おんなおんなおんなおんなおんな
 うひひひひっ…ひひひひひひひひひひっ♡」

胸を狂ったように揉みまくりながら、
大人しい雰囲気だった加奈は、まるで別人のように
下品な振る舞い・笑みを浮かべているー

「ーーちょっと!さっきから何やってんの!?」
隣の部屋の住人が、加奈の喘ぐような声に耐えかねて
玄関の扉を叩きながら叫ぶー。

加奈(ガストン)はそんなこともお構いなしに
喘ぎ続けたー。

②へ続く

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コメント

思いついてから、しばらく書かずに封印していた作品ですが、
3月に当初予定していた作品も全部書き終えたので、
余った2日間(?)で書くことにしました~!☆

物語内の山賊との入れ替わり…!
大変なことになってしまいそうですネ~!

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