元カノ・理紗の狂気に満ちた報復は終わらない。
義信への歪んだ愛を抱き、
義信と優奈を恐怖に陥れていく。
義信を巡る、狂気の憑依ー。
その結末は…。
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「---」
義信と優奈は、
理紗に指定された場所へと向かっていた。
「--思い出の場所って?」
後ろから歩いている優奈が不安そうに尋ねた。
「--俺と、理紗が付き合い始めた場所ー
始まりの場所だよ」
義信が答える。
草木をかき分けて、
険しい道を登るー。
そしてー、
少し開けた場所に出た。
そこはー
地元では隠れた観光スポットになっている岬だったー。
辺りは既に日が沈み、
暗くなっていた。
岬の端の方で、海を見つめながら、
立っている女性が居たー。
理紗に憑依されている智香だ。
「---理紗!」
義信が叫ぶと、
智香は不気味な笑みを浮かべて振り向いた。
「--”最後”のチャンスよ」
智香は笑いながら歩み寄ってくる。
「--義信…わたしは今でもあなたのことを
愛しているの…
義信、わたしの愛を、受け止めて…」
優しく微笑む智香。
その表情は、笑っているが、
どことなく不気味さが漂う。
波打つ音だけが聞こえるー。
しばしの静寂。
そして、義信は口を開いた。
「俺には、優奈が居る」
義信は優奈の方に向かっていき、
優奈を抱き寄せた。
「--義信…」
優奈は嬉しそうに、義信に身を任せる。
「理紗ー、
お前とはもう終わったんだ。
お別れしたんだ!
わかってくれ!
お前はもう、”元彼女”なんだ!
俺がお前の”彼氏”に戻ることはない!」
そう叫ぶと、
智香は不気味に微笑んだ。
「あっそ」
そして、鞄から、写真を撮り出してばらまく。
ばらまかれた写真には、
優奈と、先輩の将司が楽しそうに
食事をしているシーンが映し出されていた。
優奈は、先輩のご厚意ということで、
断りきれず、先日、将司と食事をしている。
しかしー
食事後すぐに別れており、あくまでも
相談というスタンスだった。
が、智香と将司は共謀していた。
優奈と将司が笑いあっているシーンだけを
智香が少し離れた場所から撮影して、
まるで浮気しているかのように、仕立て上げたのだ。
「これは・・・」
義信が唖然とした様子で写真を拾う。
「--ほ~ら、そいつ、浮気してるのよ!」
智香が笑いながら言う。
「ち、違う!それは…!」
優奈がすぐに反論した。
「--動かぬ証拠ってやつじゃない。
わたしなら、そんなことはしないー
わたしは、義信だけを愛して、
わたしは、義信に全てを捧げる。
あぁ、義信…
はやく、わたしを抱いて…♡」
辺りはすっかり暗くなり、
波打つ音が、不気味に聞こえた。
「----…」
義信は写真を睨みつけるようにして見ている。
そう言えば最近、優奈は自分のことを避けていた、
と義信は思う。
義信と一緒に居ることで、智香が酷い目に遭わされると
危惧した優奈の行動が、裏目に出た。
「--よ、義信!信じて!わたしは、、
浮気なんかしてない!
先輩からのご厚意で…!」
優奈はそう言いながら思う。
確かに、強引に誘われたとは言え、
他の男性と二人で食事に行ってしまったことは
浅はかだった。
「--いいよ」
義信はそれだけ呟くと、
智香の方に向かって歩き出した。
「--ふふ、そうよ!そんな浮気女より、
わたしでしょ!?」
智香が嬉しそうに叫ぶ。
「あぁ…ぞくぞくする♡
義信!わたしを抱いて!滅茶苦茶にして!!
あぁ、興奮しちゃう!
えへっ…えへへへへへへ♡」
笑う智香。
義信は、智香の目の前にやってくると、
微笑んだ。
「ーーーーーうふぅ♡」
智香は目をつぶって、キスを受け入れる準備をした。
しかしー
顔に何かが当たった。
「--!?」
智香が目を開くと、
優奈と将司の写った写真が投げつけられていた。
「--俺は、優奈を信じる」
義信が言う。
強い決心。
「--お前が何か、仕組んだんだろ」
それだけ言うと、義信は、智香に背を向けて
優奈の方に向かって歩いていき、
「俺は、大丈夫だから」とほほ笑んだ。
優奈は嬉しそうに」「うん…」と返事をして涙ぐんだ。
「--あは、、あははははは、
あはははははははははは~~~」
智香が大声で笑いだす。
「--もう、我慢できない!
義信!あんたはわたしのものなのよ!」
智香がそう叫ぶと、
優奈の方を見た。
「--この女を助けたくないみたいね?」
智香が自分を指さしながら笑う。
「--ち、違う…でも…
でも、どうせ理紗さんは、わたしが義信と別れても、
智香を解放してなんかくれない!」
優奈が叫ぶと、
智香は笑った。
「あ~あ、ザンネン。
言ったよね、”取り返しのつかないことになる”って」
そう言うと、
智香が突然苦しみだした。
「--!?」
義信と優奈が不安そうに智香の方を見る。
「あぁ…あ・・・た、、、たすけ…
たすけて…」
智香がおびえきった表情で
頭を抱えながら言う。
「---ゆ、、、優奈…たすけ…」
智香の嘆願するような表情に、
優奈は慌てて智香に駆け寄ろうとした。
しかしーー
「あ、、ぎ…ぎぁあああああああああ!」
智香がその場で絶叫した。
そしてーー
「ぐふぅっ おっおぇ…おぉぁおああ」
智香の顔がぐしゃぐしゃになって変形していく。
顔だけじゃない、
身体も、何もかも、滅茶苦茶に歪んでいる。
「--ちょ…と、、智香!」
優奈が叫ぶ
「ぐあぉあああぁああおおおお!」
この世のものとは思えない悲鳴をあげて
智香が変形していく
そしてー
しばらくするとーー
整った姿になった。
その姿は、
”見覚えのある姿”だった。
「り…理紗…?」
義信が言う。
智香はーーー
理紗の姿に変異した。
「ど…どういうこと?」
優奈が目に涙を浮かべながら言う。
「--くふ、、、ふふふふふふ…」
智香だった目の前にいる人間はよろめきながら言う。
「--これで、わたしは理紗になった」
智香だったはずの目の前にいる女性は、
理紗の姿になって笑った。
「--な、何なんだよ」
義信が言うと、
理紗は笑った。
「私、智香の身体を使ってて気づいたの。
ある日、腕にほくろができたことに」
理紗が歩きながら言う。
「--そのほくろは、私の身体にあった
ほくろと全く同じもの。
憑依している時間が長くになるにつれて
次第に、身体が”わたし”に近づいてきていることに」
理紗は笑いながら言った。
「---私の使ってた憑依薬は、
身体を乗っ取るだけじゃなくて、
時間をかけて、私自身に作り替える
効力があったの…くふふ!」
優奈は恐怖に満ちた目で
目の前にいる智香だった人物を見る。
智香の身体は時間をかけて徐々に変異していき、
今、理紗の強く念じたことによって
完全に理紗そのものになってしまった。
「ふふふふ!やっぱり、わたしの身体が
一番…!あははははは!」
笑う理紗。
「と、、智香ちゃんはどうなったの!」
優奈が泣きながら叫ぶ。
理紗は笑いながら答えた。
「言ったでしょ?
”取り返しのつかないことになる”って。
智香とかいうコは、たぶんもう消えちゃった…
くくく…」
理紗はそこまで言うと、
義信を見た。
「さぁ、義信。わたしを抱いて…
ほら、あたなのために、わたし、戻ってきたのよ…」
理紗が顔を真っ赤にしながら言う。
「義信…義信…義信…ぅ!」
ゾンビのように歩み寄ってくる理紗。
「--やめろ!お前は狂ってる!」
そう言うと、理紗は嬉しそうに微笑んだ。
「あなたのためなら、わたし、狂っちゃうーー
うふふふふふふふ♡」
ガサ…
背後から物音がして、
義信は振り返った。
理紗も不思議そうに義信の背後の茂みを見ている。
「---先輩」
そこには、大学のサークルの後輩、
奈津子の姿があった。
「--三条さん?」
義信が、どうして彼女がここにいるのかと首をかしげる。
優奈も、涙に濡れた目で、不思議そうに奈津子を見ている。
「先輩、モテモテじゃないですかぁ」
奈津子が笑う。
「--ど、どうしてここに?」
義信が尋ねると、奈津子は笑った。
「知らなかったんですか?
わたし、先輩のことなら何でも知ってるんです」
奈津子の言葉に
理紗も義信も怪訝な表情で奈津子を見た。
「--わたし、先輩のこと、
ず~っとずっと好きだった。
それなのに、そこの理紗先輩とか、優奈先輩とか、
違う女ばっかり!
わたしがこんなにアピールしてるのに、
全然気づいてくれない」
奈津子が不気味な笑みを浮かべた。
「--知ってます先輩?
わたしの部屋、先輩から貰ったLINEの画像、
ぜ~んぶ、印刷して貼りつけしてあるんですよ!」
義信は唖然とする。
「---な、、、何言ってんだ?」
義信は女運が悪いのかもしれないー
義信に付きまとう女は、
元カノの理紗だけではなかった。
ーー義信の気づかないところで、もう一人…。
「--ちょっと、私の義信はわたしだけのものよ!」
理紗が叫んだ。
「---くふふ、理紗先輩…!
死んだはずじゃなかったんですかぁ?」
奈津子が笑うと、
理紗が笑い返した。
「あんたみたいな小娘、義信には似合わないのよ!」
そう言うと、理紗が義信の手をつかんだ。
「--…!先輩はわたしのものよ!」
奈津子が義信の方に駆け寄り、
義信の手を引っ張る。
理紗と奈津子が義信の手を引っ張り、
義信は困惑した。
”なんだこの修羅場は…”と。
波打つ音が、
二人の女性のわめく声でかき消される。
そしてーー
「ちょっと、やめなよ!」
優奈が叫んだ。
岬の端っこの方に、3人は移動している。
このままでは転落する。
そう思った優奈が割って入る。
しかしーー
「あっ!」
義信と理紗が、バランスを崩し、
それを助けようとした優奈、
そして巻き込まれた奈津子が、4人そろって
岬から、海に転落した。
夜の岬でーー
4人の大学生は、海の藻屑になって、姿を消した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数時間後ー
”集団自殺”を目撃した
目撃者からの通報を受け、
救助隊が岬から二人の人間を救出した。
残り二人は消息不明ー。
助け出されたのは、
義信と優奈だった。
「--だ、大丈夫か?」
義信が言うと、
優奈は身体を震わせながら頷いた。
優奈は、海の方を見つめる。
義信も海の方を見つめて呟く。
「---あの二人は…」
理紗と、奈津子は、見つからなかった。
そしてーー
そのままーー
4人の転落は
自殺及びその未遂ということになり、
二人は警察から色々聞かれたものの、
事件性はないと判断されて、
解放された
1か月後―
半月ほど前、
理紗と奈津子の水死体が発見された。
義信は落ち込む優奈を励まし、
元気づけたー
そして、
二人は元通りの平穏を取り戻した。
・・・・・・・・・・・・・・・・
とある自宅ー
笑い声が響き渡る。
グチュグチュとキスをする音がする。
なんだー
最初からー
こうすれば良かったじゃないー
最初からー
わたしはーー
”あなたと一つになりたいぐらい、
愛していたのだからーー”
あなたの全てが流れ込んでくるー
わたしは、あなたになったー
あなたはもう、わたしだけのものーー
あなたはわたしのものー
わたしは、あなたのものー。
やっと、一つになれたーーー
わたしは、あなたに憑依したーーー
鏡に映る自分とのキスを終えると、鏡を見てーーー
義信は不気味にほほ笑んだ。
「--愛してるよ、理紗ーー」
「---うん、わたしも!」
義信は、一人でそう呟きながら、
嬉しそうに顔を赤らめたー
この身体はーーー
わたしのものーーーー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
元カノの報復の続編を
1年越しで書いてみました!
いかがでしたでしょうか!
ここまでお読み下さり、ありがとうございました!
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