わたしはー
あなただけのもの。
あなたはー
わたしだけのもの。
わたしは、あなたを逃がさない。
こんなに、こんなに愛しているのだからー
理紗は、あなたのものー。
あなたは、理紗のものー。
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水が音を立てて顔の汚れを落とすー。
洗面台の前で、智香は微笑んだ。
「--ふふふ…最高じゃない」
智香に憑依している理紗は
”あること”に気付いた。
まさか、憑依にそんな力があったなんて
思わなかった。
「この子も可愛いけど…
わたしには遠く及ばないわね…ふふふ」
智香は自分の顔をつねくりながら、
不気味にほほ笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イケメン先輩の将司と、
優奈は大学の廊下を歩きながら
話を続けていた。
「そっか…友達との関係か」
将司はそう呟いた。
優奈は、せっかくの先輩の好意を無駄にはできない、と、
憑依のことだとか、細かい部分はかくして、
将司に相談した。
「--まぁ、女の子の関係って色々難しいよな」
将司がそう言いながら微笑む。
「はい…色々難しいところはありますね」
優奈がほほ笑むと、
将司が顔を赤らめた。
「--あ、ごめん。僕、このあと講義の予定があるんだった」
将司がそう言うと、
優奈はお礼の言葉を口にした。
「また時間があるときに相談に乗るよ!じゃっ!」
将司はそう言って、立ち去って行った。
立ち去りながら将司は不気味に口元をゆがめた。
「---ゆ・う・な」
そう呟きながら将司は
イケメンとしての顔を不気味に歪めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---そっか、分かったよ。じゃ、
そのことは俺に任せて」
義信がそう言うと、
サークルの後輩・奈津子が嬉しそうにほほ笑んだ。
「--先輩、本当に頼りになりますね」
奈津子は顔を赤らめながら言う。
「え、あ、いや、それほどでもないよ」
サークル内のトラブルの仲裁を買って出た
義信も、顔を赤らめながらそう答えた。
そんな二人のところに、優奈がやってきた。
「--あ、義信!取り込み中?」
優奈がほほ笑む。
優奈は、他の女子と喋っていても、別に
束縛するような子ではないし、
ちゃんと理解してくれている。
「あぁ、サークルでトラブルがあって、ちょっとな」
義信が言うと、
優奈が「そうなんだ」と言って、
サークルの後輩、奈津子に会釈した。
奈津子と優奈は面識がほとんどない。
「--彼女さん、ですか?」
奈津子が言うと、
義信が「あぁ、そうだよ」と笑いながら答えた。
すると、奈津子は今一度、優奈に会釈をした。
「--じゃ、また何かあったら、すぐ言ってくれれば
俺がどうにかするから」
義信がそう言うと、
奈津子は嬉しそうに会釈した。
義信はサークルでも慕われている中心人物ともいえる存在だった。
義信と優奈が立ち去る。
一人残された奈津子は呟いた。
「--先輩…わたしが・・・」
そこまで呟くと、奈津子は、
優奈の後姿を睨みつけた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3日が経過したー。
智香が指定した”タイムリミット”
優奈が食堂で義信と一緒に昼食を食べていると、
そこに智香がやってきた。
「--3日。お別れしなかったのね」
智香が二人を睨む。
ミニスカート姿で女を強調した格好の智香を
見て、優奈が言う。
「り、理紗さんなんでしょ?
智香にそんな格好させないで…!」
優奈がそう叫ぶと、
智香は笑う
「--ふふふ、私の身体よ?
わたしがどうしようと、勝手じゃない。
二人がお別れすれば、
出て行ってあげてもいいけど?」
智香が挑発的に言う。
迷う優奈。
そんな二人の会話に、
義信は割って入った。
「---理紗…
俺たちはお前に屈したりはしない」
義信が鋭い目付きで理紗を見つめる。
「---お前とは、お別れしたんだ!
何があろうと、俺はお前と付き合ったりはしない!」
義信がさらに叫んだ。
「--しつこいんだよ!このストーカー女!」
ーーーブチン
理紗の中で何かがはじけ飛んだ。
「--くくく…あははは…あははははははははははっ!」
智香が大声で笑う。
そしてーー
「--ぶっ壊す…
二人の愛を滅茶苦茶にする・・・・!
義信、あなたはわたしのもの!
わたしはあなたのもの…!」
狂ったように笑みを浮かべる智香を見て、
優奈は恐怖の笑みを浮かべた。
そしてーー
「行こう…」
義信が優奈を守るようにして、
足早に食堂から立ち去った。
「---そろそろかな」
智香は不気味にほほ笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日から、智香の執拗な嫌がらせが始まった。
鳴りやまないスマホ。
「--くそっ!」
義信は困惑した様子でスマホを見つめる。
智香は、義信の連絡先を知らない。
だが、智香の中に憑依している理紗は
義信の連絡先を知っている。
”愛してる”
”狂っちゃいそう”
”わたしを抱いて”
次々と愛の言葉が送られてくる。
義信は、すべての着信やメッセージを
拒否して、頭を抱えた。
一方、優奈の方にも、智香は
嫌がらせを行っていた。
「ねぇねぇみんな聞いてよ!」
優奈が友達たちと昼食を食べている最中に
智香が声をあげた。
「--優奈、彼氏と毎晩エッチしてるんだって~!
大学では真面目そうな顔しちゃって
案外、ヤルよね~くふふふ!」。
周囲が優奈の方を見る。
智香は意地悪そうな笑みを浮かべて、
続ける。
「パイズリとか、フェラとか、
なんでもやってあげてるんでしょ~
優奈ったら~」
智香が優奈のあることないことを
言いふらし続けて笑う。
「---やめてよ!」
優奈が叫ぶと、
智香は舌打ちして言った。
「--あんたみたいなビッチ女、
地獄に堕ちろ!」
吐き捨てるようにして言うと、
智香は不機嫌そうに立ち去っていく。
「--ねぇ、智香ちゃんと何かあったの?」
優奈と智香が仲良しであることを
知っている周囲の友達は、
不安そうに尋ねた…。
大学からの帰り道、
突然、優奈は後ろから髪を引っ張られた。
驚いて、振り向くと、
そこには智香が居た。
人気のない路地に引っ張り込まれて、
優奈は怯えた表情を浮かべる。
「--義信はあんたには渡さない」
智香の表情には狂気が浮かんでいる。
「--や、、、やめて!もうやめてよ!」
優奈が涙を浮かべながら叫ぶ。
しかしー
智香にーー
智香に憑依している理紗にそんな言葉は通じない。
「--やめない…!
義信の愛はわたしのもの…
わたしはこんなに義信のこと愛してるのに…!」
智香が、ミニスカ-トを湿らせながら言う。
「あぁ…義信のこと考えてたら
この身体、欲情してきちゃった…くふ、くふふ」
大人しい智香がこれまで見せたことのないような
飢えた表情を浮かべて言う。
「--と、智香を返して!」
優奈が叫ぶ。
しかし、智香は笑うだけだった。
「--あんたが義信と別れるまで、
この身体は、わたしのおもちゃよ!
そうだ、
この子も結構可愛いよね?
エッチな動画、あげちゃおっかな~?」
智香が横目で優奈を見ながら言う。
「や、、やめて!智香の人生を壊さないで!」
優奈が嘆願するようにして言う。
そんな優奈の胸倉を智香は掴み、
睨みつけた。
「なら、別れろってんのよ!」
智香の目は本気で優奈を憎んでいる。
「智香…目を覚まして・・・!」
優奈が悲痛な叫びをあげる
「--ふふ、覚まさない!
この身体も、心も、わたしのものよ!」
智香は笑いながら優奈から
手を離すと呟いた。
「-早くしないと
”取り返しのつかないこと”になるよー」
そう言って、智香は立ち去って行った。
「--うっ…う…ごめん…わたしのせいで…」
優奈は智香のことを想い、
その場に泣き崩れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜ー
智香の部屋は
義信の写真だらけになっていた。
智香は下着姿になって、
義信の写真の唇にキスをした。
「はぁ…♡ 義信…♡」
写真に向かって舌を出して
くちゃくちゃと音を立てながら
それを舐める智香。
「義信…♡ 義信ぅ♡ はぁ♡ はぁ♡」
智香の身体は、理紗に支配されるがままに
興奮して、液体を垂れ流しにしている
「んふ…♡ あぁ…♡ 義信♡
すき♡ すき♡ すき♡ すき~~~~♡」
机の角に張り付けた義信の写真に
向かって角オナを始める智香。
智香の喘ぐ声が部屋中に響き渡った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---そっか」
先輩の将司が、優奈の元気がないことに
気づき、悩みを聞いて、
友人の智香との間にトラブルがあることを知り、
悲しそうにつぶやいた。
「---」
優奈は、昨日のことで、”智香を助けるために
義信と別れなきゃいけないのか”と
ずっと考えていた。
今日は、義信のことを意図的に避けている。
どこにいても、智香に見張られている気がする。
これ以上、義信と一緒に居たら、智香は…
「---・・・・・・今夜、話がしたい」
将司は、真剣なまなざしで優奈を見て
微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕方ー
「-ありがとうございます」
サークルの後輩、奈津子と、
サークル内のトラブルを解決させた
義信は「いや、構わないよ」とほほ笑んだ。
ふと、義信が目をやると、
笑いながら大学から出ていく優奈と、男の姿が見えた。
「--優奈?」
義信が首をかしげると、
サークルの後輩、奈津子が言った。
「あ~、倉橋先輩、最近、あの人とよく一緒に居ますよー」
奈津子が言う。
「え?」
義信がそう返事をすると、
奈津子は続けた。
「---浮気、されてるんじゃないですか?」
奈津子がそう言うと、
義信は「優奈はそんな子じゃないよ」と
即答で否定した。
「--あ、そろそろ俺行くよ!」
義信が言うと、
奈津子は「あ、はい、ありがとうございました」と
言って頭を下げた。
一人残された奈津子はーー
舌打ちをしたーー。
義信は思う。
そう言えば今日は、優奈に避けられている気がした。
もしかしてー
不安が義信の脳裏をよぎった。
そしてー
その様子を、智香が物陰から見つめて笑っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日 朝。
「--ご苦労様でした」
智香が足を組みながら笑う。
一緒にいるのはーー
優奈の先輩・将司だった。
「--ちゃんと、撮れたのか?」
将司の言葉に、智香がうなずく。
「えぇ、あなたと仲良さそうに食事している
写真を撮れたわ」
智香がそう言いながら笑うと、
将司が言った。
「なぁ、本当に、優奈を、
今いる彼氏と別れさせてくれるのか!?」
将司の言葉に、智香は笑う。
「えぇ、もちろん。
そしたら、優奈は、あなたの好きにしなさい」
そう言って、智香は立ち去った。
智香は、
優奈に密かに好意を寄せている先輩、将司に
話を持ちかけた。
”優奈と彼氏の義信を別れさせてあげるから、
協力して欲しいー”と。
二人を別れさせて、
智香は、義信を、
将司は、優奈を手に入れるための同盟ー。
智香は歩きながら笑うー
「義信ーー…
あなたはわたしのもの」
と。
昼ー。
義信は、食堂で、優奈と鉢合わせをし、
一緒に昼食をとることになった。
「--なぁ、どうして俺を避けるんだ?」
義信が言う。
優奈は悲しそうに目をそむける。
”このままじゃ、智香はー”
そこに、智香がやってきた。
「--私が教えてあげる…
今夜…”思い出の場所”で待ってるから、
二人で来なさい」
そう言うと、智香は義信に微笑みかけて
立ち去って行った。
「・・思い出の場所」
義信には、それがどこかわかった。
義信と理紗が、付き合いだした場所のことだ。
「--」
義信は不安そうに、立ち去る智香の後姿を見つめた。
智香は立ち去りながら、不気味な笑みを浮かべていた。
「---今夜が、私たちの”第2の記念日よー”」
③へ続く
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元カノの狂気は未だに
とどまるところを知らないようです!
次回が最終回です!お楽しみに~!
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