<憑依>初詣の悲劇2026(後編)

毎年の元旦に
決まって、近くの神社を訪れる男ー。

彼は今年も、自身の力で霊体となった状態で
その場所を訪れて、
わらしべ憑依を堪能していくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーぁ…」
巫女服姿のOL・美也子がその場に倒れ込むー。

美也子に憑依していた俊夫は、
この神社の主の娘である美琴を探す最中に、
ちょうど、”美也子より少し可愛い子”を見つけて
その女子大生にキスして、美也子からその女に移動していたー。

「へへへーなかなかいいじゃんー
 ちょっと鼻のバランスがアレな気がするけど、
 結構いい感じだぜー」
その女子大生・未美(みみ)の身体を乗っ取った俊夫は
失神してしまったOL・美也子の身体を見つめながら
「ここだと目立つなー」と、未美の身体で
美也子の身体を木陰まで引きずっていくー。

そして、そのまま神社の奥の方に向かって行き、
この神社の主の娘・美琴を探そうとするー。

”あの女ー、今年こそ俺を速攻で見つけて
 すぐに文句を言ってくるかと思ってたけどなー”
未美の身体で、俊夫はそんなことを思いつつ、
神社の関係者に声を掛けようとするー。

そして、ようやく一人、
神社の関係者らしき中年の男性を捕まえると、
「ーあの、ちょっと聞いていいかー?」と、
そう言葉を口にする未美ー。

神社の関係者と思われる男性は、
未美が突然、男のような口調で話したことに驚いたのか、
表情を歪めるー。

未美に憑依している俊夫も、それに気づいて
「あっ、い、いえ!ちょ、ちょっと聞きたいことがあるんですぅ」と、
不自然な誤魔化し方をすると、
「ー実はー」と、この神社の所有者の娘である美琴と
昨年、ある約束をした、ということを告げるー。

流石に”来年は憑依してやる”と約束したとは言えず、
適当に誤魔化した上で、美琴が神社内のどこにいるのか
それを確認しようとしたー。

がーーー

「ーーーーー…すみません。娘はーー…いえ、美琴はー」
と、神社の関係者らしき男ーー…
美琴の父で、この神社の主である男・治樹(はるき)は
そう言葉を口にしたー。

「ーーえ?あれ?今年はいないんですか?」
未美の身体で俊夫がそう言葉を口にすると、
美琴の父・治樹は言ったー。

「ー美琴はー…秋にー」

「ーーえ…」
未美が困惑するー。

そしてーー

「ー美琴は秋に、持病でーー」

美琴の父・治樹は、
美琴は去年の秋ー…2025年の秋に元々患っていた持病で
死んだのだと、そう言葉を口にしたー。

「ーー…え……」
どこかニヤニヤしていた未美から、笑顔が消えるー。
「今、何て言ったー?」
未美に憑依している俊夫が、未美のフリをするのも忘れてそう言葉を
吐き出すと、美琴の父親・治樹はもう一度、
今度はハッキリと言葉を口にしたー。

”娘は、去年の秋に亡くなった”
とー。

「ーーーーーー」
呆然としてその場に立ち尽くす未美ー。

未美に憑依している俊夫はー、
ここ数年は毎年、”俺のこと”を幽霊だと勘違いしながらも
認識していた美琴と会うのを、何となく楽しみにしていたー。

実際に今年も美琴に憑依したかどうかは別としても、
また、自分のことを見つけ出してきて、
煩いことを色々と言ってくるのではないかと、
そんな風に思っていたー。

”わらしべ憑依”のタイミング以外では一切接点もないし、
会おうと思ったりもしなかったけれど、
わらしべ憑依を楽しむうえでの”副菜”的な存在として
美琴とのやり取りも少し楽しみにしていたー。

「ーそういえば最後に、娘は”あっちに行ったら、幽霊さんに会えるかな”
 なんて言ってましたねー」
父・治樹はそう言葉を口にする。

そして、話を終えると頭を下げて立ち去っていくー。

そんな後ろ姿を見つめながら、未美に憑依している俊夫は
しばらくの間、その場に立ち尽くしていたー。

”「ー”今年も”嘘をついたらー
 許しませんからねー。
 わたし、結構根に持つタイプなんでー
 もし逃げたら来年、必ず幽霊さんを見つけ出して
 成仏させちゃいますから」”

去年、美琴はそう言っていたー。

「ーーバカがーーー
 俺を成仏させるんじゃなかったのかよ」
未美に憑依している俊夫は不満そうに言うー。

ただーー…
ただ、あの時ー…

”「ーこの女には来年、会えないかもしれないー。
 でも、君はこの神社の娘だから、また来年も会えるだろー?」”

俊夫が去年、ベストの身体に選んだ子の身体で
そう伝えた時に、確かに美琴は”寂しそうな”表情を
浮かべていたのを思い出すー。

”あの時、アイツは既にー”

未美に憑依している俊夫は、どこか悔しそうな表情を浮かべるー。

俊夫は、毎年この神社で
”わらしべ憑依”を楽しんで好き勝手しているー。

ただー、それ以外の日はー普通に生活していて
憑依能力も使っていないし、
憑依した人間の身体を”殺す”ようなことはしたことがないー。

彼は決して善人ではないし、
他人の身体を好き勝手に使う”身体の泥棒”だー。

でもーー
それでも、俊夫は”人の死”には慣れてはいなかったー。

「ーーくそっー…あの巫女ー…」
未美の身体で、俊夫は今一度、
どこか悔しそうに表情を歪めると、
未美の身体で目に涙を浮かべるー

「って、何だよこの女ー
 涙腺が脆い女だなー」

こんなことで涙を流すなんて、と、
未美に憑依した俊夫は少しだけ不満そうにしながらも
「くそっ!」と、
”こんなことになるなら、去年憑依してやるんだったー”と、
そう言葉を口にするー。

そしてー、
その複雑な感情を紛らわすかのように、
歩き出すと、
近くにいた着物姿の女を見つけてなりふり構わずキスをしたー。

「ーひっ…!?ぁ…」
ビクッと震えてその着物姿の女に憑依を終えた俊夫ー。

未美がフラッとして意識を取り戻し、
「???」と、言わんばかりの表情を浮かべているのを見て
そのままお構いなしに歩き出すー。

「ーーくそっ!くそっ!くそっ!」

あの巫女ー
美琴は、最後まで俊夫のことを”幽霊さん”だと思っていたのだろうー。
別に、それはそれでいいー。
そう思われている方がこちらも好都合だったー。

しかしー…

そんなことを考えながら、俊夫は着物姿の女の身体から、
”もうワンランク上”の身体を見つけて、その女にキスをするー。

「ーへへへへー」
今度は女子大生の身体をゲットし、だんだんと”可愛い”身体に
なってきた俊夫はゾクゾクしながら、
神社内をまるで男のような歩き方で徘徊しながら
”次の身体”を求めて歩き回るー。

”ーーあの女ー
 死んだら、俺に会えると思ってたんだろうなー”

女子大生に憑依している俊夫は、そんなことを思うー。

「ーあっちに行ったら、幽霊さんに会えるかなー?だとー…?」
女子大生の身体で、俊夫は不満そうにそう呟くと、
「会えるわけねぇだろー。俺は幽霊じゃねぇー」と、
そう言葉を口にしながら、近くにいた制服姿の女子高生にキスをして、
そのまま”憑依”したー。

「ーはぁ…はぁー」

何となくー、
何となくではあるものの、
”美琴”に憑依して存分に楽しめなかったことを後悔する俊夫ー。

しかも、”幽霊さんに会えるかな”などと言われて、
そのまま死なれたとなると、何故か妙にその言葉が
心の中に残ってしまうー、染みついてしまうー。

あの世があるのだとすればー、
今頃、美琴は”幽霊さんいないじゃん!”などと怒っているだろうかー。

「ーーチッー」
女子高生の身体で、俊夫はさらに徘徊すると、
友達と二人で歩いている女子大生を見つけて、
その片方に憑依ー

「ーえ……ちょ、ど、どうしたのー!?」

そしてー、
憑依した子の”友達”の方がさらにもうワンランク可愛いことを
確認すると、続けてその子にキスをして
その身体を奪ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへへへーーー
 この人、美魔女って感じだなー
 なかなかいいぜー」

ニヤニヤしながら、そう言葉を口にしつつ、
物陰で胸を揉む女ー

俊夫は”わらしべ憑依”を続けながら、
中年女性ながら、俊夫的に”いい感じ”の身体を見つけて
その女に憑依ー。

笑みを浮かべながら、
持っていた鞄を漁ると、
その中から、笠原 紀香(かさはら のりか)と書かれた
保険証を確認できたー。

「ーーなるほどなるほどー…
 紀香さんかー」
俊夫は、紀香の口でそう呟くと、
鞄の中からさらに写真を見つめるー。

夫らしき人物と、娘らしき人物が一緒に写った写真ー。
可愛らしい娘は”咲”と書かれた誕生日ケーキの前で微笑んでいるー。

「ーーーーー」
俊夫は憑依する直前、
”咲がどうか、昔のように良い子になりますようにー”と、
そう願うようにして呟いていた紀香のことを思い出しつつ、
”今はこの写真のように、家族関係が上手く行ってないってことかー”と、
内心でそんな風に呟くー。

がー、それは俊夫には関係のないことだー。
笠原 紀香の身体を使って移動すると、
「おっ!」と、彼氏と一緒に歩いている一人の女のほうを見つめたー。

「ーーあの身体はかなりいいなー
 今年のベストは”アレ”だー。
 決めたぜー」

紀香はニヤッとそう言葉を口にすると、
そのままそのカップルの方に近付いていくー。

「ーーはははー…愛唯(めい)は何も悪くないさー」
彼氏らしき男が、そんな言葉を口にしているー。

それを聞いて、紀香に憑依している俊夫は
「愛唯ちゃんかー…クククー」と、そう笑うと、
「今年のベストの身体は愛唯ちゃんで決まりだー」と、
そんな言葉を小声で囁いたー。

心なしかー、
その”愛唯”という子は、
昨年亡くなったのだというこの神社の娘・美琴の顔に
どことなく似ていたー。

もちろん、別人であるために”同じ”ではないー。
ただ、どこか美琴の面影を感じるような
そんな顔立ちだったー。

俊夫が意識してなのか、それとも無意識のうちなのかは分からないー。
けれど、俊夫はその”愛唯”を今年のベストの身体に選び、
そして、憑依しようと近付いていくー。

「ーーへへへー
 彼女と楽しいデートのところわりぃなー
 お前の彼女は”わらしべ憑依”のために貸してもらうぜー」
紀香は、邪悪な笑みを浮かべると、
そのカップルの背後から近づきー、
”愛唯”と呼ばれた女の肩をポンポンと叩いたー。

「ーーーえっ?」
急に、紀香に肩を叩かれた愛唯は戸惑いの表情を
浮かべながら振り返るー。

そしてー
紀香はニヤリと笑みを浮かべると、
戸惑う愛唯に対して言ったー

「ーおめでとうー
 お前が今年の”ベスト”だー」
とー。

「ーーえ…?な、なにを言ってー…」
愛唯がそこまで言いかけると、紀香は有無を言わさずに
愛唯にキスをするー。

「~~~~~~~!」
その瞬間、俊夫は紀香から愛唯の身体に移動するー。

憑依されていた紀香はよろめきながらも
すぐに意識を取り戻すと、困惑の表情を浮かべるー。

それと同時にー、突然キスをされた愛唯の彼氏である男が
声を上げるー。

「ちょ、ちょっとあんたー…め、愛唯に何をー…!?」
彼氏が不満そうに紀香に詰め寄るー。

しかし、憑依されていた紀香には当然のことながら
憑依されていた間の記憶はないー。

「ーえ…ど、どういうことですかー?」
紀香が困惑の表情を浮かべるー。

が、それと同時にーーー

「ーーねぇ、その人は何も関係ないよ!
 わたしがキスしてって頼んだんだから!」

”憑依された愛唯”がそう言葉を口にしたー。

「ーーえ…???」
彼氏は戸惑いながら振り返るー。

どう考えても、紀香の方からキスをしているように
見えたものの、愛唯がそう言っているのならー…?と、
紀香を見逃して、愛唯の方に駆け寄るー。

しかし、愛唯は笑みを浮かべると、
「ー悪いけど、ちょっと”借りる”ねー」と、
愛唯に憑依した俊夫は、愛唯のような口調でそう言い放ったー。

「か、借りるー?何を?」
愛唯の彼氏は意味が分からずにそう聞き返すー。

が、愛唯はそのまま背を向けると、
「ーじゃ」とだけそう言葉を口にして
走り去ってしまったー。

”お前の彼女を借りるぞ”と、
そういう意味の”借りる”だったものの、
彼氏にはその意味は全く理解できないのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーははははっ♡ はははははははは♡」

立ち去ったあとに”巫女服”に着替えた愛唯は
カラオケ店の個室で一人、欲望の限りを
尽くしていたー。

巫女の美琴に憑依してやれなかったー
どこかそんな後悔を感じつつー、
”美琴の代わり”とでも言わんばかりに
愛唯に巫女服を着せて、
「わたしは美琴ー 幽霊さんありがとうー♡」などと、
美琴を名乗らせながら、俊夫はひたすらに
”今年のベストの身体”を楽しむのだったー。

彼のー、
”わらしべ憑依”は今年も終わったー。

また、1年間が始まるー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

巫女の美琴ちゃんの退場は
去年の時点から決まっていて、
私も忘れないように、メモしていました~笑

無事に忘れずに、その通りの展開が1年越しで
書けたので満足デス~!!

お読み下さりありがとうございました~★!

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憑依<初詣の悲劇>

コメント

  1. TSマニア より:

    美琴ちゃん亡くなっていてビックリしましたっ!!

    美琴ちゃんの退場は、そんかに前に決まってたんですネ(;∀;)泣

    どこにメモしてたんですか?笑

    来年からは美琴に似てる娘にわらしべ憑依になりそうですネ!☆!★

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!★

      私の創作用のメモがあって、
      そこに書いてありました~!★!

      去年からず~っと決まっていたことなのデス…!

  2. 匿名 より:

    今年の体越しからのゲストは咲ちゃんのママでしたか〜。以前にも出てましたし、出演率高いですね(笑)。巫女が死んじゃっていたのは予想外でしたね。幽霊を探して、自殺であの世に追いかけたようとしたみたいな展開ではなかったので、安心しました☆

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!★
      ゲストで使えそうなキャラが限られる問題…★!笑

      巫女の子は去年の時点から退場を決めていました~!★
      追いかけようとした……じゃなくて良かったですネ~笑

  3. 葉月 より:

    「咲がどうか、昔のように良い子になりますように」って願ってた女性、もしかして「体越し」の…?

    • 無名 より:

      葉月さま~!★感想ありがとうございます~!!

      実は、「初詣の悲劇」には
      毎年こっそりゲストが登場しています~★!