ごく普通の平穏な日々を送っていた家族の元に
一人の来客がやってきたー。
その人物に”皮”にされていく家族を前に、
父親はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
勝本(かつもと)家では、今日も平穏な一日が流れていたー。
父・典久(のりひさ)と、母・百恵(ももえ)、
そして長男の辰治(たつはる)と、その妹・架純(かすみ)ー。
4人は、とても仲良しで、
夫婦喧嘩も親子喧嘩もないー。
そんなー、いつも笑顔の絶えない家族だったー。
「ーーそうだー。来月は架純の誕生日だったなー
何か欲しいものはあるか?」
典久が、来月に控えた娘の架純に、
誕生日プレゼントとして何か欲しいものはないかどうか、確認するー。
現在高校2年生の架純は「何にしよっかな~」などと
嬉しそうに言葉を口にしながら、
”親にお願いする誕生日プレゼント”を考え始めるー。
がー、思い出したかのように架純は
「あ!そうだ!お兄ちゃん!”去年みたいなの”やめてよね?」と、
笑いながら、チクッとした指摘をするー。
「ーーえ… あ、あぁ、ははー…
大丈夫大丈夫ー今年は、大丈夫ー」
大学生の兄・辰治が申し訳なさそうにそう言葉を口にするー。
兄の辰治は妹の面倒見もよく、
大学でも成績優秀なのだがーーー
ちょっと下心を隠しきれていない…そんな感じの人物だー。
去年は何を考えたのか、妹の架純にメイド服をプレゼントしてしまい、
両親からは苦笑いされ、
架純から散々「え~~?なんでメイド服~!?」と、
文句を言われたー。
結局、「1回しか着ないからね!」と、1回だけメイド服を
着てくれたものの、以降、その時のことをネタにされたり、
「メイド服着てあげたんだから、お願い~!」と、無理なお願いをされたり、
散々な目に遭っているー。
「今年はメイド服にはしないから!」
兄・辰治のそんな言葉に、架純は「ちょっと!その言い方だと
なんかもっと変なの買って来そうで怖いんだけど!」と、ツッコミを入れるー。
「ーーふふふ、辰治ー
あまり、架純を困らせちゃだめだからね?」
母・百恵のそんな言葉に、辰治は「は~~い」と、少し残念そうに、
けれども素直にその言葉に応じるー。
そんな、いつも通りの平和な日常ー。
兄の辰治が自分の部屋に戻りー、
母・百恵が台所で後片付けを始めるー。
「ーーじゃあ、俺は先にお風呂に入るよー
みんな、順番詰まっちゃうだろうし」
父・典久がそう言うと、百恵は「うん。お願いー」と、
そう返事をするー。
父親が、お風呂場の方に向かったその時ー…
♪~~~~
インターホンが鳴ったー。
後片付け中の母・百恵が一瞬反応しようとしたものの、
「あ、いいよいいよ、わたしが出る~!」
と、娘の架純がそう答えながら、インターホンの方に向かうー。
「ーーはい」
架純が応答すると、すぐに”宅急便です”と、声がしたー。
宅急便の制服を着ている男ー。
来客は、どうやらお届け物のようだ。
特に怪しい点も感じられなかったため、
架純がそのまま荷物を受け取るために玄関の扉を開けたー。
がーーー
「ーーーー」
男はニヤリと笑みを浮かべたー。
ぷすっ、と架純の手首に”注射器のようなもの”が
突き立てられるー。
「え…?」
何が起きたのか分からず、戸惑う架純ー。
それと同時に、架純は自分の身体から
急激に力が抜けていくことに気付くー
”え…な、なにこれー…?”
自分の身体に強い異変を感じた架純は、
すぐに助けを呼ぼうとしたー。
だがー、
”ひゅう”と、喉が変な音を出すだけで
声を発することが出来ないー。
慌てて、家の中に逃げ込もうとする架純ー。
しかし、今度は歩くこともできずに
バランスを崩して、その場に倒れ込んでしまうー。
倒れる際に”音”もしなかったー。
普通、人間が倒れれば音がするはずなのにー、
物音もせずー、
台所にいる母・百恵も、お風呂場の方に向かった父・典久も
自分の部屋にいる兄の辰治もその異変には気付かなかったー
「ーーーー~~…」
声も出せず、身動きも取れず、身体のどこにも力が入らないー。
そんな状況に陥った架純ー。
そして、その直後、頭を掴まれて”引き裂かれるような”感覚と共に
架純の意識は途切れたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
リビングの方に戻って来る架純ー。
「ーーごめんね 出て貰っちゃってー。
それで、何が届いたの?」
母・百恵が何も知らずにそんな言葉を口にすると、
架純はニヤニヤしながら、突然、自分の胸を揉み始めたー
「ーーな…何してるの…?」
母・百恵が戸惑うー。
「ーーいやー、へへーいい身体だなって思ってー」
架純がそんな言葉を口にするー。
「ーーー…え……」
戸惑う母・百恵。
娘の突然のおかしな行動に、どう反応していいか分からないー。
そんな様子だー。
「ーーんふふふふふー…
家族の行動が急におかしくなって、戸惑うそういう顔を見るのってー
とってもーー
興奮するよなぁ♡ ひひひひひひひ」
架純が不気味な笑みを浮かべながら母・百恵の方に近付いてくるー。
「ーーーえ…な、なに?何を言ってるのー?」
戸惑う母・百恵ー。
そんな百恵の前に近付いてきた架純は、
ニヤニヤしながら、自分の頭をペリッとはがすように”脱ぐ”とー、
中から宅急便の男に扮していた男が姿を現したー。
「ーーじゃ~~~ん!
どうだ?驚いただろう!」
架純の”中”から出て来た男が笑うー。
「ーーな…… ……」
声を失う母・百恵ー。
「ーーか、架純は…ど、どこ!?」
百恵がそう叫ぶー。
どうやら、”目の前にいる架純”は、偽物だと判断したのだろうかー。
男は笑みを浮かべながら、”架純の頭”を再び着ると、
「ーお母さん、わたしはここだよー」と、
自分を指差しながら微笑むー。
「まァーー…
身体を乗っ取られている状態だけどー ね」
クスッと笑う架純ー。
「ーの…のっと…… ど…どういう…こと?」
呆然とする百恵に対して、
架純は「これから自分の身体で体験すれば、お母さんも分かるよ」と、
そんな言葉を口にしながら、
注射器を手に近付くー
悲鳴を上げる母・百恵ー。
「ーーいいねぇ。平和だった日常が壊れて
恐怖に怯えるその顔ーー
興奮するーーー」
架純はニヤニヤしながらそう言うと、
そのまま百恵に注射器を突き立てたーーー
「ーーぁ…」
”皮”になっていく百恵ー。
「ーーーー…!」
そんな光景を、2階で悲鳴を聞いた兄・辰治が
表情を歪めながら見つめていたー。
どうにか妹の架純と、母の百恵を助けようと考える辰治ー。
”くそっ…なんなんだあいつはー”
そう思いながら、周囲を見渡すー。
スマホはリビングの方にあるし、固定電話もリビングー…
ここから通報することはできないー。
自分の方が玄関の近くにいるため、一人だけ逃げることはできるかもしれないー。
しかしー……。
「ーーー…」
辰治は、背後から”皮”になっていく百恵を見つめて
ニヤニヤしている架純に近付くと、
架純を羽交い絞めにしたー。
「ーー!?!?!?」
ニヤニヤしていた架純の表情から笑みが消えて、
険しい表情に変わるー。
「ー架純を解放しろ!
それと、母さんも!」
辰治がそう叫ぶと、架純は一瞬驚いたような表情を
浮かべていたものの、
やがて、にやりと笑みを浮かべたー。
「お兄ちゃんー痛いよー」
そう、苦しそうに呟きながらー
「ーー!」
その言葉に、一瞬力を緩めてしまう辰治ー。
「ーバカが!」
架純はそう声を上げると、辰治を振りほどいて、
その急所を蹴りつけるー
「ぐあっ!」
苦しそうにその場に蹲る辰治ー。
「ーあはは 残念でしたぁ~」
架純は笑いながらそう言うと、
蹲る辰治を見下すー。
「ーーぐ…く、くそっ…お、お前は誰だー…」
さっき”架純”の皮を少し脱いでいる時に
一瞬、顔は見たー。
が、兄の辰治には”覚えのない”相手だったー。
すると、架純は笑いながら
自分の頭を掴み、”乱暴に”それを脱いで
素顔を晒したー。
「ーーーーーお、お前はー…!」
辰治が表情を歪めるー。
「ーークククー
俺の顔なんざ、みても誰だか分からないだろ?
どうせ誰だか分からないだろうし、見せてやるよ~!ひはははっ!」
架純の”首から上”だけを脱いだ状態の男は
愉快そうにそう叫ぶと、
「ここで問題です 俺は誰でしょう?」と、
笑いながら自分を指差して見せたー。
煽るような態度に、辰治は「く…か、架純を返せー!」と、
そう言いながら声を上げるー。
男はー、有名人でも指名手配犯でも何でもない一般人ー。
しかも、そもそも勝本家とも何の関係もないー。
男はただ、楽しんでいるー。
”無関係の幸せそうな家族をこうして弄び、破壊すること”をー。
再び架純の頭を着こんだ男は、架純の顔で笑みを浮かべるー。
「まぁさー、俺、お前たちの誰とも面識ねぇからさー。
ハハッ!
たまたまお前たちが俺の”遊び”相手に選ばれたってわけ」
架純の言葉に、辰治は「架純を返せ!」と、そう叫ぶー。
「ーふふふふー
お兄ちゃんー
”今のわたし”なら、メイド服でも何でも着てあげるよー?
ほら、わたしにどんな格好してほしいのー?
言ってごらんー?」
女のような喋り方をして、架純として辰治を煽る男ー。
「ーーふ、ふ、ふ、ふざけるなー」
ぷるぷると震える辰治ー。
「ー”わたしと組めば”どんな服だって着てあげるー
どんなことだってヤラせてあげるー
だから、どうー?」
クスクスと笑う架純ー。
「ーーー架純の身体で、そんな言葉を口にするなぁ!」
辰治はそう言いながら、架純を取り押さえようとするー。
しかし、架純は思った以上に素早い身のこなしで辰治の攻撃を
避けると、「俺さー、学生の頃は格闘技とか、陸上とか、
色々やってたんだよね」と、ニヤニヤしながら言葉を口にするー。
そしてー
ぷすっ、と嫌な感触がしたー。
「ーーーぁ」
辰治はバランスを崩し、その場に崩れ落ちるー。
「ぐ…く、くそっ…お、お前ー」
必死に力を振り絞りながら、架純の方に手を伸ばすー。
しかし、乗っ取られた架純に無情にも唾を吐き捨てられた
辰治はそのまま力尽き、完全に”皮”に変わっていくー。
「ーーくくくく…楽しいなぁ♡」
架純は興奮した様子でそう言うと、
笑みを浮かべながらゆっくりと歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お風呂場で、頭を洗っていた父・典久。
泡だった髪を、シャワーで流していくー。
普段と同じように鼻歌を歌いながらー、
いつもと何も変わらぬ手順で、髪を洗い流していくー。
家族思いの典久は、
これまでも、これからも、家族のことを第一に考えて
生活していくーーー
はずだったー…
しかしー
「ーー?」
お風呂場の扉が開いたことに気付き、典久が
「どうした?」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーお前が、最後のひとり」
お風呂場に入って来た娘の架純は、そう呟いたー
「ーーえ?」
父・典久が”どういう意味か”聞き返そうとしたその直後ー、
その首筋に”人を皮にする注射器”が突き立てられたー。
邪悪な笑みを浮かべながら嬉しそうに
皮になっていく父親を見つめる架純ー。
典久が持っていたシャワーが床に落下して、
架純の方に向かって、お湯が放出されるー。
シャワーのお湯に濡らされながらも、
父親が皮になっていく姿を最後まで見届けると
架純は満足そうに笑みを浮かべながら
その場から立ち去っていくー。
玄関の扉を開けて、家から出る架純ー。
シャワーのお湯に濡れてずぶ濡れ状態の架純はニヤニヤしながら
そのまま、夜の闇に消えていくー
”幸せそうな家族”を見つけては
”皮”にすることでその幸せを破壊する男ー。
彼は”架純”の皮を着たまま夜の闇へと姿を消しー、
またー、”別の家族”に狙いを定めるのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
久しぶりに1話完結の皮モノでした~!★
皮モノの1話完結は確か久しぶり書いた気がします~~!★
お読み下さりありがとうございました~!
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