<憑依>熱血憑依~熱血教師VS憑依された女子高生~

メリークリスマス!!
と、いうことで(?)
通常の更新とは別に
今月初めに行われた、憑依ラヴァー様の「憑依モノ祭り」向けに作った新作
「熱血憑依~熱血教師VS憑依された女子高生~」をお送りします!

内容は、憑依モノ祭りに投稿したものと同じになってしまいますが
まだ読んだことがない!という方はぜひお楽しみください~!

通常の私の小説の3話分以上の長さになっています!

※今日の通常の更新「今夜は性夜③(完)」はいつもの時間(お昼前後)に
 更新します!


-------------------------–

”熱血生徒指導”

彼は、そう呼ばれていたー。

生徒指導を担当する教師・
藤田 勝義(ふじた かつよし)は、
非行に走る生徒や、乱れた生徒を正すことに
命を懸けていたー

「--あ、藤田じゃん!おはよ~!」
ギャルのような女子生徒が声を掛けるー。

「--おう!笠田!ちゃんとやってくるか?
藤田先生が立ち止るー

この笠田というギャルも、
以前は、授業をサボり、破壊行為ばかりしていたのだが
藤田先生の熱血指導によって立ち直った生徒の一人だー

生徒に心から向き合い、
多くの生徒を救ってきた藤田先生のことを慕う生徒は
多かったー

生徒からも、先生からも愛される”熱血生徒指導教師”

それがー
藤田先生だったー

「--あ、おはようございます」
真面目そうな女子生徒が頭を下げるー

綺麗な黒い髪に
整った顔立ちー
表情からも優しそうな雰囲気が漂っている
女子生徒・笹原 冬香(ささはら ふゆか)-

「--おう、今日も仲良しだな」

冬香の隣にいる男子生徒・久保田 隼人(くぼた はやと)の方も
見ながら藤田先生は笑うー

「ええ、からかわないでくださいよ!先生~」
隼人が苦笑いするー

隼人は、冬香の彼氏だー。
小学生時代からの付き合いで、
高校に入学してから付き合い始めたー

ちょっと気弱で臆病なところもあるけれど、
その反面、とても優しく、穏やかだー。

「--ははは!俺はお前らのこと、応援してるからな!」

”恋愛禁止”の校則はこの学校には存在しないー
藤田先生は、隼人と冬香のことを堂々と応援していたー

冬香も隼人も真面目で、生徒指導の対象になることは無いー。
”生徒指導”とは、縁のない生徒たちだー

しかしー
それは、”この日”までのことー

「-----」
素行不良の生徒・菅井 源治(すがい げんじ)が、
隼人と冬香のことを見つめるー

”チッ”

面白くもないー
いつもいつも仲良さそうにしやがってー。

「先生に気に入られてるからって、
 調子に乗るんじゃねぇぞ」

源治はそう呟いたー

”あの二人を、もしも壊すことができたらー?”
源治の頭の中に、ふとそんな考えがよぎったー

”悪魔のような”考えー。

隼人かー
それとも冬香か。
どっちかを”悪の道”に堕とすことができたのならー

「---ククク…そんなこと、あるわけないよな」
源治が笑みを浮かべるー

もしも他人を好き勝手できる力があればー

「----」
源治は、悪女になった冬香の姿を”妄想”するー
あの真面目な冬香が悪女になったら、
それこそドキドキするだろうー

”冬香を支配して、悪女に堕とす”

そんなことができたらー
どんなに面白いだろうかー。

普通であればー
この”妄想”は、妄想のまま終わるはずだったー

だが、それはそこにあったのだーーー

夜ー

笑みを浮かべながら画面を見つめるー

”憑依薬”
ネットの闇サイトで販売されている闇の薬ー

世の中に存在してはならないその力がー
そこにはあったのだー

パソコンの画面に表示された”憑依薬”
それは、既に手元にあるー

そして、もう一つのパソコンに表示された画面にはー
”冬香”の写真が写っていたー

「--次は、お前だー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----…はぁ~…ちょっと休憩~」
自宅で勉強していた冬香は、勉強する手を止めて
スマホをいじり始めるー

優等生扱いされてはいるものの、
冬香だって息抜きはするし
勉強が面倒臭くなることはあるー

スマホで彼氏の隼人とのやり取りをして、
嬉しそうにほほ笑む冬香ー

”-み~つけた”

冬香は、気付いていなかったー

”それ”が迫っていることにー

もっともー
気付いたとしても”霊体”相手じゃ
何もできないのだがー。

霊体が、冬香の身体に触れるー

「---!?」
冬香が綺麗な黒髪を揺らしながら、
振り返るー

”おっとー”

冬香の予想以上に鋭い反応に、一瞬驚いたものの、
どんな反応をしようと
霊体は見えないし、逃げることもできないー

”霊感でも強いのか?”

だがー
流石に冬香にも霊体は見えなかったのだろうー

「--なんか今、気配がした気がするんだけどなぁ…」
などと呟きながら冬香は、再び視線をスマホの方に落としたー

”お邪魔します”

今度こそー
冬香の身体に、霊体を重ねてーーー

「--ひぅっ!?」
冬香がビクンと震えて、スマホを落とすー。

”ふふふ…これだこれ”

相手の身体を奪うこの瞬間は、
何度経験してもたまらないー

相手がどんな行動をしていようがー
どんなことを考えていようが
霊体を重ねた瞬間に、その全てを奪い、蹂躙し、
支配することが出来るー

この快感は、他の何事にも代えがたい最高の瞬間。

「--…」
冬香の手からスマホがこぼれ落ちるー

ガクン、と冬香の身体がぐったりと崩れ落ちるー

全てを奪ったこの瞬間ー
たまらない。

「---へへへっ…」
冬香は、笑みを浮かべながら立ち上がったー

「乗っ取られる瞬間のビクン!って感じ、
 一度、乗っ取られる側で味わってみたいよなぁ~」
冬香の声で、自分の願望を口にすると、
冬香は部屋の鏡を見つめたー

「ふふふ…
 身体も心も、何もかも、俺のもの…」

冬香が笑みを浮かべるー

そうー
乗っ取ってしまえば、
何もかもすることができるー

冬香に胸を揉ませることもー
冬香に色っぽいポーズをさせることもー
髪の毛のニオイを嗅ぐこともー
冬香の綺麗な指を舐めることもー

「--くくくくくくっ…」
汚らしい笑みを浮かべる冬香。

こんなこと、絶対に本人はしないー
それを、強引に、しかも笑みを無理やり浮かべさせながら
出来るー

”冬香を支配して、悪女に堕とす”

「---わたしは、悪い女の子…クスッ」

人間の脳は、単純だー
支配している間に強く念じ、刻むことで、
人格まで歪めることができる。

そう、冬香のような、優等生であってもー
歪めることができるー

それが、憑依の力ー
好き放題するだけではなくー
”染め上げてしまう”ことも、できるー

「---ふふふふふ」
椅子に座って、足を組んで、悪そうな笑みを浮かべる冬香ー

「--わたしは、これから悪女になるの…
 くく、、くくくくくっ…」

冬香の不気味な笑い声が、部屋に響き渡ったー

・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

隼人が学校に登校すると、
冬香が頬杖をつきながら
スマホをいじっていたー。

不自然に口元が動くー

どうやら、ガムを噛んでいるようだー

「--おはよう」
彼氏の隼人が声を掛けると、
冬香は「あ、おはよ」と、ガムを噛みながら答えたー

「---」
”なんだか、いつもと雰囲気が違うような”と
思いながらも、隼人はいつも通り、冬香と雑談をするー

「-ーーー…」
冬香はいつも通り雑談に応じたー

しかしーー
化粧のニオイがいつもより強いー、
よく見ると、スカートもいつもより短い気がするー。

「---1時間目数学だったよね?面倒くさいなぁ~」
冬香は、隼人にそう確認すると、ごみ箱に直接ガムを
吐き捨てて、そのままロッカーの方に向かっていくー

少し戸惑う隼人ー

その様子を不良生徒の源治は、ニヤリと笑みを浮かべながら見つめていたー

”なんだかおかしい”

その”嫌な予感”は
”確信”へと変わったー

昼休みー
冬香が、女子トイレで喫煙していたのを発見されてー
生徒指導室に連行されたのだーー

その知らせを聞いて、隼人は生徒指導室に駆け込んだー

「冬香!!!」
隼人が生徒指導室に入ると、
腕を組んで不貞腐れた様子の冬香と、
熱血生徒指導の藤田先生がいたー

「---おぅ、久保田ー」
隼人の方を見て、藤田先生は戸惑う。

「--笹原が、、これ、吸っててな」
煙草の箱を見せる藤田先生ー

冬香が舌打ちをするー

「え…い、、いったい…?何かの間違いじゃ…?」
隼人は戸惑いを隠せないー

冬香が、学校で喫煙したー?
そんなこと、あるはずがー…。

「--せ、先生、冬香が煙草を吸うなんて、
 絶対何かの間違いです!」
隼人は、冬香に確認もせずにそう叫ぶー

それだけ、隼人は冬香のことを
強く信頼していたー。

「---俺も、そう思ったんだけどなぁ…」
藤田先生が、頭を掻くー。

「-わたしが、吸ったの。」
冬香がクスクスと笑いながら言うー

「---え…」
唖然としてしまう隼人ー。

冬香は、椅子に座ったまま足を組むと、
偉そうな態度で続けたー

「-煙草吸うって、大人の階段上ってる感じがして、
 ゾクゾクするじゃない?」
冬香の発言や仕草一つ一つが信じられないー

「ふ、、冬香…どうしちゃったんだ…?」
戸惑いの表情を浮かべる隼人ー

”豹変”
そう表現するのが正しいのだろうか。

明らかに”いつもの”冬香ではないー

「-せ、先生、きっと誰かにやらされてるんです!」
隼人が言う。

藤田先生は「う~~~ん」と、困り果てた様子で
椅子のよりかかって腕を組むー

藤田先生の態度からも、いつも真面目にやっている
冬香を信じてあげたい、という雰囲気が滲み出ているー

「--あのさ」
冬香が笑うー

「--人に言われて煙草を吸うなんて、すると思う?」
冬香がうんざりした様子で、隼人の方を見つめているー

「--隼人さ、他の子から”煙草吸えよ”って言われたら、吸うの?」
冬香の口調にも違和感を感じるー

だが、冬香の言う通り
いくら何でも”吸えよ”と脅されたから
煙草を吸う、なんてことはしないだろうし、
先生に見つかってもなお、こんな挑発的な態度を取るとは、
思えないー

「--やれやれ…参ったな」
熱血生徒指導の藤田先生も困り果てているー

”素行不良の生徒”とは、
今までに何度も何度も、ぶつかってきたー

だがー
”豹変した優等生”が相手なのはー
初めてかもしれないー。

「---…校則は校則だー。
 3日間の停学処分……

 本当にいいのか?
 理由があるなら、俺が聞くぞ?
 久保田の言う通り、誰かに脅されてるならー」

「--先生」
冬香が、藤田先生の言葉を遮った。

「--わたしは、自分の意思で煙草を吸ったの。
 停学にするなら、すれば?」

挑発する冬香ー

「ちょ、やめなってば!」
隼人が慌てて言うー

だがー
そのまま冬香は停学処分になってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----…」
絶望の”昼休み”

そう表現するのが正しいだろうかー

隼人は落ち込んだ様子で教室に戻ってきたー。

「---おぅ」
不良生徒の源治が、隼人に声を掛ける。

「ーーー」
気の弱い隼人ー
普段なら、不良生徒の源治に声を掛けられたら
ビビッてしまうところだったがー
今日は違う。

”そんな気分”
では、ないー。

「----お前の彼女、やらかしたらしいな?」
いじわるそうな笑みを浮かべる源治ー

「---…」
隼人は答えないー

「まじめな女子が、悪の道に堕ちていくって…
 ゾクゾクするよなぁ…

 へへへ…まさかあの笹原が、煙草吸っちまうなんてなぁ…」

源治がニヤニヤしながら、隼人に語り掛けるー

隼人は「うるさい」と、だけ呟いて
舌打ちする源治を無視して座席についたー。

冬香が、どうしてー?

隼人は、それしか考えることができなかったー

・・・・・・・・・・・・・・

「------」

放課後の校舎ー

「な~んか、煙草吸った子がいるんだって~?」
ギャルな女子生徒・笠田 萌々が、藤田先生に声を掛けるー

「--ったく、相変わらず噂が早いな」
藤田先生が頭を掻くー。

この萌々も、かつて、藤田先生の”熱血指導”により
更生した生徒だー。

今でもギャルな装いは変わっていないがー
それでも今は”ふつう”に生活をしているー

「---きゃはは!まぁね~
 ま、どーせ、あたしの時みたいに、
 その子のこと、助けてあげるんでしょ?」

萌々が言うと、
藤田先生は
「もちろんだ。」と頷くー

生徒が、路頭に迷っているのであればー
それを助けるのが、教師の使命だ、とー。

・・・・・・・・・・・・・・

「----あははははははっ!最高~♡」
だらしない格好で、椅子に座りながら
スカートの中に手を突っ込んでいる冬香ー

停学処分になっても、冬香は全く気にする素振りも見せずー
帰宅後に、再び憑依されてしまったー

「もっともっと悪い子になった方がー
 面白いからなぁ…」

冬香は唇をペロリと舐めると、
冬香の舌で冬香の唇の味を味わっていることに
興奮しながら、笑みを浮かべたー

「---どんどん、悪い子にしてやるぞぉ…くくく」
冬香は、太ももをイヤらしい手つきで撫でまわすと、
そのまま呟き始めるー

「わたしは、悪い子ー」
「わたしは、悪い子ー」

優等生の冬香を”悪女”に染めているー。
それだけで、ゾクゾクするー

部屋の中を、モデルのように歩いて
ポーズを決めたりしながら、
脳に直接、”わたしは悪い子”だと刻み付けていくー

先生への憎しみー
反抗的な態度ー
大人に対する反抗心ー

色々なものを植え付けていくー

「親なんて、うざい」
冬香の口で、冬香が絶対に言わなかったであろう言葉を
口にさせる。

「--うざい、うざい、うざい、うざい、うざいー」
呪いのように呟く冬香ー

憑依されている状態ー
冬香の思考は完全に乗っ取られているー

だが、それと同時に、
冬香を乗っ取っている者が”物事を思考”するときには、
冬香の身体ー
つまり、脳が使われているー

憑依したこの状態でー
強く念じ続けることによってー

「--わたしは、悪い女…くくく」

冬香の思考そのものをー
染め上げてしまうことが、できるのだー。

「ーーーわたしは、、エッチな女…クスッ」
冬香はそう呟くと、今度はだらしのない格好で
椅子に座って、両手で胸を触り始めたー

冬香が、どんどん変わっていくー

いいやー
”この手で、変えてやっているー”

どんどん悪くて、エッチな女に変わっていくーー

・・・・・・・・・・・・・・

冬香が停学処分になった翌日ー
隼人は、藤田先生の元を訪れたー

「---絶対、何か理由があると思うんです」
隼人は、冬香の豹変について
藤田先生に相談していたのだー。

「---俺も、そうは思うんだけどなぁ…」
今まで数々の問題行動を起こしてきた生徒と
向き合ってきた藤田先生も、
今回ばかりは、という様子で頭を掻きむしるー

”真面目だった優等生が豹変したー”
その理由に”憑依”が絡んでいるなどと、
一般人は、想像できるはずもないー

「---…」
隼人が暗い表情を浮かべるー
藤田先生にも、どうすることもできないのか、
という絶望の表情ー

「-ーそんな顔するな」
藤田先生が言う。

「-お前も、笹原も、いつも真面目に頑張ってるのは
 俺がよく知ってる。
 他の先生たちもだ。

 ーー大丈夫だ。笹原が停学明けで登校してきたら
 俺がちゃんと、アイツから話を聞いてやるー」

藤田先生は
”どんな理由であろうと、冬香を見放したりしない”と、
隼人に約束してくれたー

豹変した理由を聞きだして、
それがどんな理由であったとしても、
全力で、それに向かっていくー、と。

「--藤田先生がいてくれて、本当に良かったです」
隼人は、少しだけ明るい表情を浮かべたー

”絶望”の中に
”希望”を見つけたー

「---
 教え子は、俺にとって、みんな家族だー

 我が子が困ってたら、
 助けるのは、当然だろ?」

藤田先生が笑うー

藤田先生の机の上には、写真が飾られているー
妻と息子ー。

二人は、既にこの世にいないー

この学校の生徒のほとんどが知っている”話”だー。

藤田先生の妻と子供は、交通事故で、まとめて命を奪われたー

そんな辛い過去からだろうかー
藤田先生は、教え子たちを、本当に、我が子のように
可愛がっているー。

「笹原が、学校に来たら、
 俺がしっかり話してやる。安心しろ。な?」

藤田先生の強い想いを受け取り、
隼人は、少し安心した様子で頷いたー

職員室から外に出ると、
不良生徒の源治がそこにはいたー

源治が、笑いながら隼人に近づいてくるー

「お前の彼女…急に悪い女になっちゃったみたいだなぁ?
 何があったんだよ?聞かせろよ」
ニヤニヤと語り掛けて来る源治ー。

隼人は表情を歪めて「--僕にもわからないよ」とだけ答えたー

源治は「へへ」と笑いながら足を止めるー
そして、立ち去っていく隼人に向かって声を掛けたー。

「--興奮するよなぁ!
 急に真面目な子が悪い子になっちゃうのって!
 特に女子なら、なおさらだ!」

「----」
隼人は、暗い表情のまま、源治のことを無視して、
そのまま、教室へと戻ったー

・・・・・・・・・・・・・

そしてー
冬香の停学期間が終わったー

投稿してきた冬香はーー
スカートが短くー
髪が派手にー
制服もどこか着崩した感じだったー。
化粧も濃い気がするー。

「---冬香…大丈夫…?」
隼人が戸惑いながら、停学明けの冬香に話しかけると、
冬香は笑みを浮かべたー

「-ーーー大丈夫」
とー。

だがー
隼人には、とても”大丈夫”には思えなかったー

冬香の態度は停学になる前よりも最悪だー
授業を明らかに聞いていないし、
周囲の友達だった女子たちにも、横暴な態度を取り、
周囲が冬香から離れていくー

見かねた隼人は、昼休みに冬香を呼び出したー

空き教室にやってくる冬香ー
冬香は面倒臭そうに、髪をいじりながら、
隼人の方を見るー

「話って?」
冬香が言うと、
隼人は答えたー

「--ふ、、冬香…急に…急にさ、
 どうしちゃったんだよ?」
隼人が単刀直入に聞くー

真面目で優しい冬香の”豹変”
明らかに、様子がおかしいー

「--真面目にやるなんてさ、馬鹿らしいと思わない?」
冬香が馬鹿にしたように笑うー

そして、冬香は持っていた鞄から煙草を取り出すと、
さらに、ライターを取り出して煙草に火をつけようとしたー

「冬香!!!」
隼人が冬香の手から煙草を奪い取るー。

「ダメだよ!煙草なんか吸っちゃ!」
とー、声を荒げながらー

「返して」
冬香が、イライラした様子で隼人を見るー

「ーーダメだよ…
 最近の冬香は…何かおかしいよ!
 何があったんだよ!」

隼人が言うと、
冬香は髪をイライラしながら掻きむしって
隼人の手から無理やり煙草を奪おうとしたー

「いいから早く返してよ!」
冬香が声を荒げるー

「ダメだってば!」
隼人が冬香を無理やり押しのけるとー
冬香が舌打ちをして、
信じられない口調で怒鳴り声を上げたー

「---うぜぇな!吸わせろよ!」

ーーと。

隼人は思わず目に涙を浮かべそうになってしまうー

”怖い”
そう思ったからー

「ど、、どうして…
 どうして、そんな…
 悪いことだって、冬香なら、分かるはずだよね…?」

隼人がおびえながら言うー

未成年で煙草を吸うことは、いけないことであると、
冬香ならわかっているはずなのにー

「---悪いことをすると、、興奮するの!
 わたしがどんどん変わって行っちゃう…
 ううん、自分から悪い子になっていくことに
 わたし、、すっごく興奮するの…!」

冬香が今まで聞いたことのないような
”感情が高ぶっている声”で、そう言い放つー

「--冬香…!どうしちゃったんだよ…!!ねぇ…!!!」
隼人がたまらず叫ぶー

「あぁぁぁ…わたし、、もっと悪い子になっちゃう…
 ふふふふ…あぁ…ゾクゾクする…」

冬香の”異様な様子”に
隼人は唖然とすることしかできなかったー

「---ふふふ、な~んて、顔してるの?」
冬香は笑いながら、もう1本、煙草を取り出して
机に飛び乗ると、そのまま足を組んで
煙草を吸おうとしたー

「だめだってば!!!」
隼人が叫ぶー

ドン!

空き教室の扉が開いたー

「--!」
隼人と冬香が驚くー

空き教室に入ってきたのはー
生徒指導の藤田先生だったー

「笹原ー…」
藤田先生が、豹変した冬香を前に戸惑いの表情を見せる-

「-…」
冬香が表情を歪めるー

流石に、先生の前で煙草はまずい、と思ったのだろうー。

「---笹原…停学明け早々、さっそく喫煙か…?」
藤田先生があきれた様子で言うー。

「---ふん」
冬香が反抗的な態度を取るー

隼人は”また停学になっちゃうよ!”と、叫ぶー。

藤田先生は、隼人の方は見ずに、
近くの椅子に座ると、
冬香の方を見た。

「なぁ…笹原…急に何があったんだ?」
藤田先生が、煙草のことを責めずに、心配そうな表情で
冬香の方を見るー

「なにって?べつに?先生には、関係ないでしょ?」

あくまでも反抗的な態度ー

本当に、冬香はどうしてしまったのだろうかー。

「--悩みがあるなら、先生に相談してみろー。」
藤田先生の言葉に、
冬香は、笑いながら立ち上がると、
藤田先生を睨んだー

そして、藤田先生にビンタを喰らわせるー

「--ーー!」
藤田先生が少しだけ驚くー

「わたしの悩みはね…
 あんたみたいなうぜぇ教師が絡んでくることよ!」

それだけ言うと、冬香は空き教室から不機嫌そうに
飛び出して行ってしまったー

「--せ、、先生」
残された隼人が、藤田先生の方を見つめるー

「はは…嫌われたな」
自虐的に笑う藤田先生ー

「--ふ、、冬香…また、停学ですか…?」
隼人が心配そうに言うと、
藤田先生は首を振ったー。

「--安心しろ。俺がなんとかするー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ドラマのような熱血教師になりたかったー”

藤田先生は、小さいころから
”熱血教師”に憧れていたー。

親が学園モノのドラマを見ていた影響だー

いつしか彼は、熱血教師になるために
教師を志すようになったー

ドラマや、漫画に登場するような、
そんな、熱血教師にー。

「---笹原」

藤田先生は、豹変してしまった冬香に、何度も何度も言葉を掛けたー。

「うざい!」
冬香が、飲んでいたカルピスの空き缶を放り投げて、そのまま立ち去っていくー

「--俺はいつでも、待ってるからな!
 悩みを話してくれる気になったら、いつでも話してくれよ!」

立ち去っていく冬香に呼びかける藤田先生ー

隼人も、黙ってはいないー
必死に冬香が豹変してしまった理由を
探ろうとするー

「--悪い子になるのって、最高!」
冬香が笑いながら立ち去っていくー

どうすることもできないー

それでも、
諦めるつもりはないー

不良生徒の源治が笑みを浮かべるー

隼人はそんな源治の方を見つめるー

”源治が何かしたのか”
隼人はそんな風な疑念も抱くー

けれどー
隼人がどんなに努力しようともー
冬香が豹変してしまった理由にたどり着けるはずなどないー

何故なら冬香はー
連日夜に憑依されてー
思考を捻じ曲げられているのだからー

「--わたしは、悪い子ぉぉぉ♪」
冬香が、自分の身体中を触りながら
嬉しそうに呟くー

夜にー
毎日毎日憑依されている冬香ー

その思考は、次第に捻じ曲げられていくー
少しずつーー
けれども、確実にーー

冬香の行動はエスカレートするばかりー

やがて、他の先生たちからも
冬香の問題行動が指摘されるように
なりはじめるー

「俺は、あの子を助けたいーーー」
職員室で、藤田先生は土下座したー。

驚く他の先生たちー

「どうか、どうかもう少しだけ、
 笹原への処分は、待ってもらえないでしょうか」
藤田先生が、涙ぐみながら土下座をするー

生徒のために、涙を流す熱血教師ー

「-----」
禿げ頭のー
けれども鋭い目つきの
丹澤(たんざわ)校長が、藤田先生の方を見つめるー

「-----優等生の笹原冬香が、非行に走ったー。
 それには、何か理由があるはず…だ」
丹澤校長が呟くー

「----」
藤田先生が、涙ぐみながら顔を上げるー

「--あなたはきっと、そうおっしゃりたいのでしょうな。」
丹澤校長はイヤらしい笑みを浮かべると、
藤田先生に向かって言葉を投げかけたー

「ですがーー
 藤田先生。
 一人の生徒を特別扱いする、ということは、
 他の生徒に対しての示しがつかないー。

 一人を特別扱いしたが故に、
 ”均衡(バランス)”が壊れてしまうー。

 分かりますかな?
 誰であろうと、
 問題を起こせば、相応の処分が下るー。

 それが、
 平等というものであり、学校というものであるー。

 違いますか?」

丹澤校長の言葉に、
藤田先生は、床に額をこすりつける勢いで土下座をするー

「分かってます。
 ですがー、
 ですが、俺はそれでもーーー」

藤田先生は、そこまで言って
歯を食いしばるー

最近の冬香の態度が目に余るのは事実ー
このまま放置しておけば、周囲の生徒に示しがつかない、というのも分かるー。

だが、それでもー

”俺はー”

小さいころに憧れたテレビドラマの
熱血教師を思い出すー

”俺は、なりたかった俺になるんだ”
藤田先生は歯を食いしばって叫んだー

「--俺はー
 俺は、教職員生命を掛けます」
藤田先生が言う。

周囲の先生がどよめくー

「---ほう」
丹澤校長が笑うー

「笹原冬香を、今週中に説得してみせますー
 だから、どうか、、
 どうか、それまで待ってほしいー

 俺は…俺は、
 生徒を救いたいんです!!!」

藤田先生が、気迫せまる表情で叫ぶとー
丹澤校長は、にっこりと笑って頷いたー

「---来週になっても、笹原冬香が問題を起こすようであればー
 辞表をお書きになると?」

「--ええ」

藤田先生は即答した。

そして、そのまま職員室から外に出るー

”すべては生徒のために”
テレビドラマのような熱血教師の姿が、そこにはあったー

「-----…」
丹澤校長は、立ち去って行った藤田先生を見つめながら、
静かに笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・

「----うぜぇんだよ!」

冬香が両親に向かって、食器を投げつけるー

「冬香…どうしちゃったの…?」
母親が目に涙を浮かべながら言うー

「--うるさい!どうしようが、わたしの勝手だろ!」
憑依されてひたすら、負の感情を植え付けられた冬香は、
両親に対しても攻撃的で、反抗的な言動を
繰り返すようになっていたー

”原因の分からない豹変”に、
冬香の両親も、戸惑うことしかできない。

何が起きているのか、さっぱり理解できないー。

”いいぞ…くくく”

ちょうど、冬香を乗っ取ろうとしていた霊体は、
笑みを浮かべたー

今や冬香は、完全に非行に走っている少女だー
憑依の力は、素晴らしいー

乗っ取るだけではなく、
冬香のような真面目な子であっても、
このように、悪の道に突き落とすことができるー

そして、それこそが、憑依の醍醐味ー

”優等生が、悪女になる…くくく…美しいな”

そう呟くと、
部屋で不機嫌そうに、机を蹴り飛ばした冬香に
憑依するー

「うっ…!」
冬香がビクンと震えたあとに、笑みを浮かべるー

「今日も、たっぷり楽しんでやるぜ」
冬香は低い声でそう呟くと、笑みを浮かべたー

冬香の身体をたっぷり堪能しー
同時に”調教”するー。

更なる悪女にするためにー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

冬香は、不良生徒の源治と共に、
教室の隅っこでゲラゲラと笑っているー。

周囲のクラスメイトたちも、
冬香に近づかなくなってしまったー。

隼人もーー
冬香の豹変に戸惑うことしかできずー
話しかけることすら、出来ない状態になっていたー

先生たちの間にもー
生徒たちの間にもー

冬香に対する”諦め”が広がっていたー

だがーー
それでも、藤田先生だけは、決して諦めなかったー。

「笹原!」
藤田先生が、冬香のところにやって来るー。

冬香は、すっかりと、”悪女”になってしまったー

派手に装飾された爪をいじりながら、
「うぜぇなぁ…」と呟く冬香ー。

「ーー笹原。何か悩みがあるなら、俺に相談してくれ。
 絶対に力になると誓う。」

「---」
冬香は周囲の不良数名と笑っているー

「ーーー笹原!ご両親も、お前の彼氏も!友達も!
 みんなみんな心配しているぞ?
 いったい、何があったんだ!
 少し前までの、お前はどうしたんだ!」

藤田先生が叫ぶー

だがー
その、”魂の叫び”も今の冬香には、届かないー

「---真面目にやってるなんて、馬鹿みたいじゃない?」
冬香が笑うー

「わたし、気付いたの。
 どうせ人生は1回きりー
 だったら、思うままに楽しんでやろうって!

 真面目にやって、大人の言いなりになって、
 バカみたいなわたしを演じるの、やめたの!」

”今の冬香”は心からそう思っているー

それがー
憑依されて、捻じ曲げられてしまった意志であるとも
気付かずに、
本人は本気で”真面目にやるのが馬鹿らしい”と思っているー

「へへへ…先生よぉ」
不良生徒の源治が笑うー。

「--いい加減、しつこいんじゃねーの?
 笹原が、こうしたいって言ってるんだから、尊重してやれよ」
源治の言葉に、
藤田先生は、源治を睨み返すー。

「ーーーーーーお?なんだ先生?やるのか?あ?」
源治が不愉快そうに表情を歪めるー

「---」
隼人はその様子を気まずそうに見ていたー

冬香の豹変は、もはや手に負えないー
元々、気の弱い隼人は、そう感じてしまって、
委縮し、諦めかけていたー
冬香のことは大好きだー
でも、冬香が”真面目にやるなんてばからしい”という考えに
心から染まってしまったのであればーーー

もう、どうすることもー…

「---俺は、笹原だけじゃなくて、お前たちにも
 ちゃんとした道を歩んでもらいたい」
藤田先生が言う。

冬香だけではなく、源治と、その他数名の素行不良の生徒にも
道を踏み外さないで貰いたいー

藤田先生の熱い思いが、周囲の生徒たちにも伝わるー。

「---笹原。俺は絶対にお前を見捨てたりはしない。
 絶対にー。」

藤田先生はそれだけ言うと、立ち去っていくー

「何よアイツ!」
冬香が不機嫌そうに机を蹴り飛ばすー

変わり果ててしまった冬香ー。
何もできない隼人は、己の無力さを、呪ったー

・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー

「---あと2日ですな」
今日は水曜日ー

”今週中にどうにかする”と、
藤田先生は”教職員生命”をかけて、
丹澤校長と約束した。

丹澤校長は、優しい笑みを浮かべて呟くー。

「--笹原冬香のような、不良生徒は、
 学校の毒だ。

 ”腐った果物”をひとつの箱に入れておくとー
 他の腐っていない果物まで、腐ってしまうー

 ”退学処分”
 それが、生徒たちのためなのです。

 そしてー
 あなたのような”面倒臭い熱血教師”も、ね?」

丹澤校長の”脅し”

だがー
藤田先生は、丹澤校長を強いまなざしで見つめたー

「笹原冬香は、必ず、今週中に改心させます」
とー。

そして、叫んだー

「我々教師が、生徒のために命を掛けずして、どうするんです!」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・

職員室から出で、正門前で一息つこうと
歩いていた藤田先生が、
正門近くのベンチに座っている隼人の姿を見つけるー

ベンチに座ってー
隼人は一人、夕焼けを眺めていたー

優しい冬香の笑顔を思い出すー。
冬香の笑顔が、消えてしまったー。

冬香が豹変する前ー
隼人は、冬香とよく、ここで一緒に話をしていたー。

不良生徒の源治ー。
隼人は、彼のことを考えるー

冬香の豹変をとても楽しそうにしていてー
しかも、最近は冬香と仲良さそうにしているー

あいつが、何かしたのかー?
隼人は、そう考えるー

そこに、藤田先生がやってきたー

隼人は、藤田先生の顔を見つめると、
目に涙を浮かべながら、苦しい胸中を語ったー。

冬香が豹変してしまったことの辛さー
何もできない自分の無力さー

どうしたら良いか分からない気持ちを
藤田先生に吐き出すー。

「--心配するな」
藤田先生は、隼人の肩を両手でつかんだ。

そして、まっすぐと隼人の方を見るー

「---俺は、笹原を信じるー
 だから、お前も、笹原を信じてやれ。

 それだけでいい。

 彼氏なんだろ?
 彼女を、信じてやれ。」

藤田先生の強い言葉に、
隼人は、力強く頷いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---くくくくくくくっ」
夜ー
自宅で、冬香は悪い笑みを浮かべていたー

綺麗な髪をいじりながら、
足を開いた状態で座っている冬香ー

「あ~~~~…最高」
冬香は、胸を触ったり、
自分の指を舐めたりー
太ももをいやらしく触ったりー

完全に乗っ取られて、エッチな行為を繰り返していたー

そして、これは”仕上げー”

冬香の思考をさらに染め上げてー
最後のショーを楽しむー

”全てを憎めー”

冬香は自分の脳に刻み付けるようにして呟いていくー

”この世界に生きていたって意味はない”
”全員敵だ”
”憎め 憎め 憎め”

冬香の身体がゾクゾクしながら
”外部からの意志”に染め上げられていくー

全てに憎しみを抱いた冬香ーー

「--くくく…じゃあな」
冬香はそう呟くと、そのまま意識を失ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

冬香が暴れ出したー
教室で髪を振り乱しながら暴れる冬香ー

隼人は戸惑うー

「ふ、、冬香!落ち着いて!
 本当にどうしちゃったんだよ!ねぇ!!」

必死の呼びかけも、今の冬香には届かないー

「うるさい!どうせわたしなんか死ねばいいって思ってんだろ!」
支離滅裂な言動ー

冬香はー
どうしてしまったのかー

「---へへ」
笑いながら冬香を見つめる不良生徒の源治ー

「冬香に何かしたのか!!!!」
隼人は泣きながら源治の胸倉を掴むー

源治はニヤニヤと笑うー。

「---死んでやる!」
冬香が叫んだー。

「-!」
源治の胸倉を掴んでいた隼人が唖然とするー

「-みんなみんな、わたしのこと、死ねばいいって思ってる!
 だったら、屋上から飛び降りて、死んでやる!」

冬香はそう叫ぶと、
落ち着かせようと声を掛ける友達を突き飛ばして
そのまま教室から立ち去ってしまったー

「冬香!」
隼人は冬香を追いかけるー

何があったのかは分からないー
でも、とにかく、止めなくちゃいけないー

・・・・・・・・・・・・・・

「---せんせーも大変だねぇ~?」
かつて藤田先生が立ち直らせた女子・笠田萌々が笑うー。

「---笠田か」
藤田先生が立ち止る。

「---どうしてそんなに熱血になれるの?
 あたしの時もそうだったけどさ…」

萌々の言葉に、
藤田先生は、笑うー。

「--漫画みたいな、先生になりたかったんだ」
とー。

小さいころ憧れた、漫画やドラマのような
”熱血教師”になりたかったー。

現実は、そう甘くはない。
そうは分かっていながらも、
藤田先生は、なりたかった。

熱血教師にー

「ふぅん」
萌々が笑うー

萌々は相変わらずいかにも”ギャル”な感じだが、
それでも今は学校にはちゃんと通っているし、
藤田先生にも感謝していたー

「ーーま、藤田は十分熱血教師だよ!
 あたしから見ればね」
萌々の言葉に、少しだけ笑う藤田先生ー

その時だったー
校内がどよめいているー

「--!」
藤田先生が、耳を傾けると

”笹原が自殺しようとしてる”という
言葉が聞こえてきたー

「--悪い。笠田!また今度な!」
藤田先生は走り出したー

残された萌々は、静かに笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・

屋上にやってきていた冬香は、
混乱していたー

”最近のわたし、どうしちゃったのー?”
とー

何に対してもイライラしてー
急にエッチな気持ちになったりー

頭がごちゃごちゃだー。

時々、そう不安に思いながらも、
全てに反抗したくなるー

まるでー
”何かにそう、させられているかのようにー”

「--冬香!」
隼人が屋上にやって来るー

隼人の声を聞くだけで、冬香の中に激しい怒りが湧いてくるー

「来るな!」
冬香は、手にナイフまで持っていたー

「---ふ、、冬香」
隼人は戸惑うー。

「--ーーわたしのこと、、おかしいと思ってるんでしょ???
 頭おかしいって思ってるんでしょ???」

冬香が怒り狂った様子で叫ぶー

何が、冬香をこんなに変えてしまったのか、
サッパリ隼人には分からないー

ついこの間まで、ごく普通の心優しい子だったのにー
容姿は派手になり、変わり果てた冬香の姿がそこにはあるー

「---そ、、そんなこと思ってないよ」
隼人が言うと、
冬香は、目から涙を浮かべながら叫ぶー

「わたし、、訳が分からないよ…
 どうして、、、どうして…もう、、、いや」

頭を抱えてその場に蹲ってしまう冬香ー。

”憑依”で強引に性格を捻じ曲げられ続けている冬香は
既に”限界”だったー

思考が激しく混乱しー
錯乱状態に陥りかけているー

「----うぅぅぅ…うぅぅぅ…」
泣きじゃくる冬香。

隼人は、どうしていいか分からず、困惑するー

でも、それでもー。
隼人に今、出来ることは、冬香の側に行って、
冬香を抱きしめてあげることだけだったー。

「---隼人…」
冬香が、涙を流しながら呟くー

「--だいじょうぶ。だいじょうぶだから、落ち着いてー」
隼人が言うと、冬香は少しだけ、ほんの少しだけ
穏やかな気持ちになったー

だがーー

冬香がビクンと震えるー

”ここで終わっちゃ困るんだよ、もっと楽しませてくれよ”
冬香は”憑依”されてしまったー

「どけ!」
冬香がナイフを振るー
隼人がとっさにそれを避けるー

「ひひひひひひひっ!わたしは、悪女、、
 わたしは、、、エロくて、わる~い女よぉ♡」
冬香が狂ったように叫びながら
屋上で両胸を揉み始めるー

歪んだ表情ー
目から涙をこぼしたまま狂気的な笑みを浮かべるー

声は裏返りかけていて、
完全に狂っているー

「はははははははっ♡♡ これぞ、、乗っ取ってるってかんじぃぃぃぃぃ!ぎゃはははは!」
冬香とは思えない声で叫ぶ冬香ー

「あぁぁぁ…きもちいいよぉぉぉぉ きもちいいよぉぉぉぉ」
顔を真っ赤にしながら手をペロペロ舐め始めー
やがて、屋上にうつ伏せになって、
屋上の地面に胸を押し付けたりして、喘ぎ始めるー

「---ふ、、ふゆ…か」
隼人は唖然としながらその光景を見つめるー

そしてー
”狂え”ーー

冬香は、ボソッとそう呟いたー

冬香に憑依していた人物が抜けるー

屋上の様子をー
不良生徒の源治がニヤニヤしながら見つめるー

”あぁぁぁ…あの真面目な笹原冬香が、こんな…”

屋上のショーを、屋上の入り口付近からこっそり見つめている源治ー。

「---あ、、、あ、、、、あ…いやあああああああああ!」
狂ったように泣き叫ぶ冬香ー

隼人は、「冬香!」と叫ぶのが精いっぱいー

冬香が、自分の首筋にナイフを当てるー

「--し、、死んでやる!死んでやる!」
冬香が叫ぶー。

隼人は”どうしたらいいんだよ”と、
泣き叫びたい気持ちでー
そして”絶望”の気持ちでいっぱいになるー

そこにーーーー

「--笹原ぁ!」

熱血生徒指導の藤田先生がやってきたー

・・・・・・・・・・・・・・・

職員室ー

騒動が起きていても、冷静な丹澤校長は呟いたー

「---”面倒なことを”」

ーと。

・・・・・・・・・・・・・・・

「---なに??何なの??どいつもこいつも!」
冬香が鬼のような形相で叫ぶー

優しかった冬香の面影は、
もはや、そこにはないー

憑依で好き放題されて、
本人の意志まで捻じ曲げられてしまった、
”哀れな”冬香の姿がそこにはある。

「---…笹原…もう、やめるんだ」
藤田先生が、ナイフをこちらに渡すように、と手を差し伸べるー

「先生!」
隼人が叫ぶ。

藤田先生は、隼人の方を見て頷くと、
そのまま冬香の方に近づくー

「-ーみんな、心配してるぞ。死ぬなんて、言うんじゃない」
藤田先生が距離を詰めていくー

不良生徒の源治は、物影からその様子を見つめているー。

校舎の下からは、騒動を聞きつけた生徒たちが
屋上の様子を見つめているー。

「--来ないで!!来るな!」
冬香が怒りの形相で叫ぶー

ナイフを藤田先生の方に向けるー

「---はは」
藤田先生は笑ったー

「--それでいい」
とー。

隼人も、冬香も、源治も、
藤田先生が何を言っているのか分からず、困惑する。

「---そうやって、ナイフをこっちに向けてくれれば…
 お前は、死ななくて、済むもんな」

藤田先生はそれだけ言うと、
”死ぬなら、俺を殺してからにしろ”と、笑みを浮かべるー

自分の命を懸けてまで、冬香の命を守ろうとする
藤田先生ー

藤田先生の方にナイフを向けている冬香。

隼人は叫ぶ。

「藤田先生!!!
 冬香は、、今までの冬香じゃない!!!
 これ以上近づいたら、刺されちゃいますよ!!!」
とー。

冬香は、変わってしまったー
今の冬香なら、躊躇なく、藤田先生にナイフを刺すかもしれない。

「---」
藤田先生は立ち止って隼人の方を見たー

その表情は、とても穏やかだったー

「久保田ー、心配してくれてありがとな」
藤田先生は、優しい口調で言う。

「--生徒のためならー
 それも本望だー」

刺されることすら恐れないー
藤田先生は、その決意を示すと、
冬香の方に向かっていくー

「---馬鹿かあいつは」
物影から見ていた不良生徒の源治が呟くー

暑苦しいやつー
そう思っていたが
その熱血ぶりは、源治の想像をも、超えていたー。

「--来るな!来るな!!!」
冬香が声を荒げているー

冬香が、こんな、狂気的な声で叫べるなんて
夢にも思わなかったー

隼人は、そんな風に思いながら、
”もう、自分には見守ることしかできない”と、
藤田先生を信じて、
その成り行きを見つめるー

「----笹原ー
 いろいろ、悩みもあると思うし、
 辛いこともあると思うし、
 先生とか、友達に対して
 いろいろ不満もあると思う。

 でもなー…
 みんな、笹原のこと、心配してるんだ」

藤田先生は、冬香の目の前までやってくると、
「うざい!」と叫ぶ冬香の頭を、静かに撫でたー

「-----…辛かったなー。
 でも、先生はどんな時でも笹原のー
 みんなの味方だ」

優しく撫でられた冬香が、
手を震わせながら、ナイフを落とすー。

「---友達も、家族も、
 みんなみんな心配してるー。

 悩みなら、俺がいくらでも聞いてやるー

 だから、もう、終わりにしよう。

 ほら、見てみろよ」

藤田先生が、隼人の方を指さすー

「--笹原がどんなになってもー
 あいつは、あんなにお前のことを心配してるー。

 いい彼氏じゃないか。」

そう、呟きながら、
冬香は、目から涙をこぼすと、
その場に膝をついたー

「ごめんなさい…わたし…わたし…」
”憑依”によって植え付けられた悪意が
急速に消えていくー

「---わたし…ごめんなさい…」
その場で蹲って泣き出した冬香ー

そんな冬香に、藤田先生は優しく手を差し伸べたー

・・・・・・・・・・・・・・・

藤田先生に連れられて屋上から、
一旦生徒指導室に向かう冬香ー。

「--心配するな。
 停学にも、退学にもならない。

 俺が、なんとかする」
藤田先生は、そう言うと、泣いている冬香の背中を叩いて、
そのまま屋上から立ち去っていくー

去り際ー
冬香は隼人の方を見て”迷惑かけてごめんね”と
悲しそうに謝罪の言葉を口にしたー

「-----」
隼人は、ほっ、と一安心しながら
考えるー

冬香が豹変した理由がー
”分かっていない”

どうしてー

いやーーー

「---さっきからそこで、何をしてるんだよ」
隼人が、怒りの口調で言うー

物影で屋上での出来事を見ていた不良生徒の源治がニヤニヤしながら
出て来るー

「くくく…優等生だった笹原が…
 あそこまで悪女になっちまうなんてなぁ…
 興奮が止まらないぜ」

源治の言葉に、
隼人は源治を睨んだー

隼人は気の弱めな男子高校生だー。
だがー
源治に対しては、激しい怒りを抱いていたー

冬香に、源治が何かしたんだー。

”何を”したのかまでは分からないけどー
冬香を豹変させたのはー源治だ。

隼人は、源治を睨むー。

「---僕は、お前を許さない」
とー。

源治は「へへへ」と薄ら笑みを浮かべたまま、
立ち去っていく隼人の後ろ姿を静かに見つめたー

「--ほんとうに、ごめんなさい」

翌日ー
教室で、冬香は、クラスメイトたちに頭を下げたー

藤田先生の言葉が届いたのだろうー。
豹変する前のように、優しい雰囲気に戻った冬香は、
今までの自分の行動を、謝罪したー。

「--ごめんね」

隼人にも、お詫びの言葉を口にする冬香ー。

「ーーーー」
隼人は、”どうしてあんな風になっちゃってたの?”と聞こうとしたが、
それは聞かなかったー

こうして、冬香が戻ってきてくれただけで、十分だからー

「--おかえり」
隼人は、冬香に、優しく手を差し伸べたー

・・・・・・・・・・・・・・

「----」
丹澤校長が、歯ぎしりをしながら
藤田先生の方を見つめているー

「--笹原冬香は、約束通り、立ち直りました」
とー、藤田先生の報告を聞きながらー

「-----」
丹澤校長は、藤田先生の方を悔しそうに見つめているー

とても嬉しそうな藤田先生と、
悔しそうな丹澤校長が見つめ合うー。

しばしの沈黙が流れー
やがてー

「-ーー失礼します」
と、
藤田先生が頭を下げて、
職員室の外に出るー

「--ーー」
残された丹澤校長は机を叩いたー

丹澤校長は”自分の運命”を悟ったー

何故ならー

・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

丹澤校長は”自殺”したー。
自宅で、首を吊ったのだと言うー。

「--あ、藤田じゃん!おはよ~!」
ギャルの萌々が言う。

萌々もかつて、
藤田先生の”熱血指導”で更生した生徒。

「--はは、今日も元気だな」
笑う藤田先生ー

萌々は、藤田先生に心を開いているー
自分を更生させてくれた、藤田先生のことを、気に入っているー

”俺は、熱血教師になりたかったー”

藤田先生は、廊下を歩くー
たくさんの生徒に声を掛けられているー。
生徒たちは、藤田先生のことを、信頼しているー

”でも、現実は厳しかったー。
 ドラマのような、道を踏み外した生徒はなかなか現れないしー
 たまにいるそういう生徒に、情熱を持ってぶつかってもー
 ドラマのように、上手くはいかないー”

「--先生、本当にありがとうございました」
冬香と隼人が、藤田先生を見つけて、頭を下げるー

冬香はすっかり元通りー
隼人は、冬香との幸せな日々を取り戻したー

「--笹原、もう、大事なモノを手放すなよ」
藤田先生が笑いながら言うと、
冬香は、隼人の手を握って「はい!」と嬉しそうに答えたー

”だからー「憑依」した”

藤田先生は、廊下を歩くー

”ドラマのような展開が起きないのなら、
 自分で作ればいいじゃないか”

廊下を歩いていた藤田先生が凶悪な笑みを浮かべるー

”そうー
 この手でー。
 
 ターゲットの生徒に憑依して、
 その身体を楽しんだ後に、思考を歪めて
 非行に走らせてー

 そして、その生徒に対し、
 情熱を持ってぶつかっていくー”

悪魔ー。
藤田先生は、熱血教師などではないー

悪魔だー

”最後に、再び憑依してー
 少しずつ、改心したような”演出”をし、
 騒動を終わらせるー

 周囲は、まるで、俺が熱血指導で、生徒を更生させたかのように
 俺を英雄としてたたえ
 ありがとうございます、と頭を下げるー”

藤田先生は、職員室に到着すると「おはようございます」と
他の先生たちに頭を下げたー

憑依していたのは、藤田先生自身ー
冬香を非行に走らせー
”熱血教師として、冬香を説得する自分”に酔いしれー
そして、最後に、冬香の歪めた部分を憑依で修復しー
”更生”したように見せかけたー

以前、更生させたギャル女”萌々”も同じだー。
藤田先生が憑依し、歪め、
そして藤田先生が説得し、更生させたー。

「-----校長先生」

自殺した丹澤校長の机に向かって
手を合わせる藤田先生ー

丹澤校長は、藤田先生の本性に薄々と気づいていたー

だからー
藤田先生を追放しようとしたー。

しかし、失敗しー
丹澤校長は”死”を覚悟したー
自分も消されるー、と。

そして、案の定、
丹澤校長は、藤田先生に憑依されて”自殺”させられたー。

「----」
手を合わせ終えると、悲しそうな表情を浮かべて
頭を下げる藤田先生ー。

周囲の先生たちは、藤田先生の本性を、知らないー

”自作自演の熱血指導”を繰り返し、
周囲から”熱血教師”としてチヤホラされて
自分に酔っている
偽りの熱血教師の本性をー。

冬香はー
元に戻ったわけではないー

一度、悪女に歪めてー
その上から、再び真面目に歪めたー

”白い画用紙に黒い絵具をぶちまけて、
その上から、新しい白い画用紙を貼り付けたー”

今の冬香は、
確かに”白”

でも、最初の”白”とは違うー

憑依によって染められた冬香が
”完全に元に戻る”ことは、もう、ないー

そしてー

「---次の熱血指導はーーー」
藤田先生は笑みを浮かべたー

”彼女が元に戻ったと思ったらー
 今度は彼氏が非行に走るーーー”

「---ってのも、面白いな」

歪んだ笑みを浮かべた藤田先生ー

彼の本性を知る者は今、この世にいないー
周囲は”生徒に体当たりでぶつかっていく熱血教師”として
藤田先生をもてはやすだろうー

これからもー
藤田先生が教師で居続ける限り

永遠にー

彼が
行っているのはー
”熱血指導”
などではないー

”熱血憑依”

だー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

私がこのサイトを始める前に、よく訪れていた
「憑依ラヴァー」様の企画、
「憑依モノ祭り」の参加作品として書いた作品デス!

まさか、私が憑依ラヴァー様のページに掲載される
小説を書くことになるとは、夢にも思いませんでした!☆
本当に、びっくりデス!

憑依空間で今回初めてお読み下さった皆様も、
2回目だ!という皆様も
ありがとうございました!

良いクリスマスを!
メリークリスマス☆

…普通の更新はお昼前後に!!

小説
憑依空間NEO

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