<憑依>サブリミナル・ポゼッション

サブリミナル効果ー。

ごくわずかな時間、特定の映像を流したりすることにより
潜在意識に影響を与えると言われる効果ー。

それを利用した”憑依”を行う男がいた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーよぉ、萩原(はぎわら)ー」
男が、そう言葉を口にしながら、”萩原”と呼ばれる男の家へと入って来るー。

「ーククー。よく来たなー。
 で、”今度の依頼”は、なんだー?」

そう言葉を口にするのは、この家の主・萩原 竜吾(はぎわら りゅうご)ー。
危険そうな雰囲気を持つ男だー。

「ーーひとり、”お前の力”で消してもらいたい人間がいるー」
そう言葉を口にしながら、
家にやって来た男・犯罪組織アビスに所属する重松 亮(しげまつ りょう)が、
笑みを浮かべるー。

「ーーへへー…まぁ、お前からの依頼だー。
 安くしとくぜー」
竜吾は笑いながらそう言葉を口にすると、
そこに、”失礼します”と、女の声がしたー。

「ーーおぅ」
竜吾はそう返事をすると、中にはメイド服姿の可愛らしい女が入って来たー。

「ーーーー」
来客である犯罪組織アビスに所属する男・亮が、
メイド服姿の女に見入っていると、
その女は、お茶を2つ、運んできて
それをまずは竜吾に手渡すー

「ご主人様ー。どうぞ」
メイド服の女がそう言葉を口にすると、
竜吾は「ククーご苦労だったな」と、そう言葉を口にしながら、
笑みを浮かべる。

続けて、来客の亮のもとにやって来ると、
「どうぞ」と、亮にも優しい笑顔を振りまきながらそう言葉を口にしたー。

「ーーおいおいおいおいーこの子、誰だー?」
亮がそう言葉を口にすると、
竜吾は「ん?あぁー、俺の忠実なしもべで、メイドの美鈴(みすず)だー」と、
そう言葉を口にすると、
美鈴と呼ばれたメイド服姿の女は
「美鈴ですー。よろしくお願いします」と、そう言葉を口にするー。

「ーーよ、よろしく」
亮はそう言葉を口にすると、竜吾のほうを見てから
「おいおいおいおい、どこであんな可愛い子を見つけたんだー?」と、小声でそう言葉を口にするー。

「ーお前みたいな悪党に自分からついてくる女なんて
 なかなかいないだろうしー…
 どうやってあの女を手に入れた?何か弱みでも握ったのか?」

亮のそんな言葉に、竜吾は「クククーそうじゃない」と、笑うと、
「美鈴ー」と、指で美鈴を呼ぶと、
近付いて来た美鈴にその場でキスをしたー。

美鈴はとても嬉しそうに顔を赤くしながら微笑んでいるー。

「ーー嬉しいか?」
竜吾が言うと、美鈴は「はいー…幸せですー」と、嬉しそうに呟くー。

「おいおい、一体、こりゃどうなってる?」
犯罪組織アビス構成員・亮は困惑した様子で声を上げる。

とても、メイド服を着ている美鈴が
脅されて”やらされている”ようには見えないし、
それどころか、心の底から幸せそうにさえ見える。

これは一体どういうことなのだろうか。

そんな風に思っていると、
竜吾は「そんな顔すんなよ」と、そう言葉を口にしながら、
「俺の力は知っているだろ?」と、
そう続けたー。

「”力”ってー…憑依のことか?」
亮が困惑しながら言うと、竜吾は「そう。憑依だ」と、そう呟く。

しかし、亮の目の前に、竜吾は存在している。
メイド服を着ている女・美鈴に竜吾が憑依しているのであれば
目の前に竜吾はいないはずなのだ。

「ーー…で、でも、この女に今、お前は憑依してるわけじゃないよな?」
亮は、美鈴の目の前だからか、少し戸惑いながら
美鈴をチラチラと見つつ、そう言葉を振り絞ると、
「ーまぁな」と、竜吾はそう言葉を口にしてから、
メイド服姿の美鈴を近くに立たせる。

「ーー”サブリミナル効果”って知ってるか?」
竜吾がそう言うと、
亮は「サブリミナル。」と、少しきょとんとした表情を浮かべる。

「あぁ、そうさー。
 例えば、映像の中に、普通では認識できないような
 映像を一瞬だけ、何度も何度も仕込んでおくー

 そうすると、映像を見ている本人は、無意識のうちに
 その一瞬だけ何度も表示されている映像の影響を
 受けるー…

 ーーそんな感じのやつさ」

竜吾がそう説明すると、亮は
「あぁ、聞いたことはあるなーそれがどうした?」と、
そう聞き返すと、
竜吾は「憑依サブリミナル」と、そう言葉を口にしてから、
椅子から立ち上がって、美鈴の頭をポンポンと優しく叩いた。

「この女に何度も何度も、連続してごく短時間憑依して、
 俺の思想を脳に刻み付けたー。
 
 その結果がー、俺に忠実にお仕えするメイドの完成だ」

竜吾はそう言うと、美鈴の頭を掴みながら
まるで自分の所有物かのように、それを自慢してみせる。

「ーーーー…ま、まさかそんなことがー」
亮がそう言うと、
竜吾は「な?お前は俺のしもべだ」と、美鈴に確認する。

美鈴は嬉しそうに「わたしはご主人様のしもべです」と、
そう言い返すー。

「~~~~」
亮は呆然としながら美鈴を見つめるー。

「ついこの間まで、普通の女子大生だったこの女が、
 今じゃ俺のメイドだ。
 素晴らしいだろう?」

竜吾がなおも、自慢するような口調で
亮に対してそう言い放つと、
亮は「ーーそんな本人の前で、それを言っても大丈夫なのか?」と、
少しだけ不安そうな表情を浮かべるー。

憑依サブリミナルだのなんだの、さっきから竜吾は
美鈴本人の前で、平気でそんなことを言ってしまっている。

いくら思想を塗り替えているとは言え、
そんなことを直接聞こえるように言ってしまうのは
まずいのではないか、
そんな風に彼は思いながら、言葉を続けるー。

がー、
竜吾は「ククー問題ないさ」と、そう言うと、
「お前は、俺に何度も何度も短時間憑依されて、
 俺がご主人様だと刻み込まれた哀れな女だー。
 そのことはちゃんと理解しているだろう?」と、
そう続けるー。

「ーーうふふふふーはい♡
 でも、今のわたしはとっても幸せですー
 ここで働くこと以外、考えられません」
美鈴は嬉しそうにそう言い放つー。

「ーーククククー
 ”彼氏”も悲しんでたぞ?」
竜吾は、なおも、自ら憑依で支配した美鈴に
そんな言葉を投げかけると、
「ーわたしにはご主人様がいれば、それで十分です」と、
美鈴は嬉しそうに言葉を返したー。

その様子を見て、亮は流石に困惑した様子で表情を歪めると、
「ーす、すごいもんだなー。
 その”憑依サブリミナル”ってやつはー」と、
そう言葉を口にするー。

「ククーまぁなー。短時間で、憑依と解除を繰り返すことによって
 脳が異常な反応を示して、その結果、意のままに塗り替えることが
 できるんだー」

竜吾はそう言うと、
犯罪組織アビスの構成員・学は少しだけ引いたような笑顔を
浮かべながら、「お前の恐ろしさには敬服するよ」と、
そう呟いたー。

「ー”魔崎さん”も、その憑依サブリミナルとやらを聞いたら
 興味を示すだろうな」
亮がそう言うと、竜吾は「魔崎?あぁ、お前のところのボスだったな」と、
メイドと化した美鈴に煙草を持ってくるように指示をすると、
美鈴が運んで来た煙草に火をつけながら頷いたー。

”魔崎”とは、竜吾の友人・亮が所属する犯罪組織アビスの
現在のリーダーを務めている男だ。

「ーーなんだったら、今度、見せに行ってやってもいいぜー?
 魔崎さんとやらも喜ぶだろうー?
 
 俺の憑依サブリミナルで”思考を捻じ曲げてほしいやつ”を用意しておきなー。
 目の前でそれを実演してやる」

竜吾がそう言葉を口にすると、
亮は「へへーそれはいいなー」と、頷きながら、
ひとまず今日は、竜吾に対して”憑依による殺し”の依頼をして、
そのまま引き上げていくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

犯罪組織アビスの本拠地へとやってきた竜吾は、
笑みを浮かべながら奥の部屋へと案内されていたー。

そこには、リーダーである魔崎が待ち構えていたー

”なるほどなー。こいつがボスかー。
 確かに底知れねぇ感じはあるなー”

竜吾はそう言葉を口にすると、
「俺が萩原 竜吾だ」と、魔崎に手を差し伸べる。

「ー魔崎だ。話はお前の友人の重松から聞いてるー。
 ”憑依サブリミナル”だったかー?
 面白いことを考えるもんだなー」
笑みを浮かべながら、悪手に応じる魔崎ー。

「ーあぁー。色々思いついたことは試さずにはいられない
 性格なんでなー」
竜吾がそう言うと、魔崎は笑みを浮かべながら
「早速、その力を間近で見せてもらいたい」と、
そう言葉を口にすると、「おい」と、構成員に指示をして、
一人の女を連れて来させたー。

「ーその女はー?」
竜吾がそう言うと、魔崎は自分の手にはめている黒い手袋を触りながら
「ーアビスを嗅ぎまわっていたどこぞの探偵事務所の女だー。
 まぁ、俺たちは仕事柄、警察を始め色々なやつらが潜入してくるからなー
 別に珍しいことじゃない」と、そう説明しながら、笑みを浮かべるー。

「この女を、お前の”憑依サブリミナル”とやらで、
 俺たちの忠実な犬にしてもらいたい」

魔崎はそう言うと、
竜吾は「クククーいいだろう」と、笑みを浮かべるー。

すると、竜吾はその場で憑依能力を使い、
怯えた表情を浮かべている探偵事務所所属の探偵の一人、夏帆(かほ)に
憑依したー。

「ーーぁ…」
ビクッと震える夏帆ー。

すぐに、夏帆から抜け出し、
またすぐに竜吾は夏帆に憑依するー。

”犯罪組織アビスへの忠誠心”を、刻み付けて、
数秒もせずに夏帆の身体から抜けるー。

「ぁーーっ…」

「ひっ!?」

「ぅ…」

憑依されたり、抜け出されたり、それを繰り返されている夏帆の身体が
とても苦しそうにうめき声をあげるー。

その光景を見つめながら
犯罪組織アビスのリーダー・魔崎は「素晴らしい」と、
笑みを浮かべながら拍手をするー。

憑依と、解除ー、それが100回以上も繰り返されて、
夏帆が泡を吹きながら倒れているのを見つめながら、
竜吾は実体を取り戻すと、
「これだけ刻めば十分だろうー。その女は
 犯罪組織アビスに忠誠を誓う犬になったはずだー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーいいものを見せて貰ったー」
魔崎はそう言葉を口にすると、
「礼と言ってはなんだが、宴の準備をしてあるー。
 どうだー?」と、笑みを浮かべながら
竜吾を見つめるー

「クククー
 いいねー。
 そうそう、いつもアンタの組織には亮を通じてだが
 色々仕事ももらえて世話になってるよ」

竜吾がそう言うと、魔崎は「ククー。礼には及ばんさ」と笑うー。

そんな話をしながら、竜吾が宴の準備がされている部屋に入ると、
魔崎はその部屋には入らず、部屋の外で立ち止まったー。

その表情を見て、竜吾は咄嗟に”憑依能力”を発動して
霊体になろうとするー。

がーー
何故か”憑依能力”を使うことはできなかったー。

魔崎は笑みを浮かべると、
「その部屋には特殊な加工がしてあってなー」と、そう言葉を口にした上で
言葉を続けたー。

「憑依サブリミナルー。実に面白い試みだー。
 安心しろー。お前が考えたその素晴らしいアイデアは
 俺が有意義に活用してやるよー」

その言葉に、竜吾は怒りの形相を浮かべながら
「ーーテメェ…俺をはめやがったなー」と、そう言葉を口にする。

魔崎は笑みを浮かべながら「お前の親友には”お前は遠い所に行った”とだけ
説明する」と、そう言うと、
「裏の社会は、喰うか、喰われるかの世界だー」と、
そう言葉を口にしながら邪悪な笑みを浮かべるー。

「ー俺は今まで数多くの奴を喰らい、
 犯罪組織アビスのトップに上り詰めたー。

 ーーそして、この先ー、
 いつかは、俺も誰かに食われるかもしれないー。

 この社会は、そういう世界だ」

魔崎はそこまで言うと、
「ーー楽しい時間だったよー。
 が、こう見えて俺は忙しいのでなー」と、それだけ言い残して
そのまま扉を封鎖すると、笑みを浮かべながら立ち去っていくー

「くっ…くそっー!!」
竜吾は怒りの形相で閉じ込められてしまった部屋の扉を
力強く叩くと、
部屋の中に毒ガスが噴射され始めたことに気付き、
思わず笑みを浮かべるー。

”ー俺も、ここまでかー”
竜吾は、そう覚悟すると、
「ー魔崎ーーー…先に地獄で待ってるぜー
 ”あっち”にお前が来たら、俺がお前を喰らってやるー」と、
そう言葉を口にしながら、”最期”の瞬間を迎えるのだったー。

おわり

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コメント

1話完結のお話でした~!★

何かでサブリミナル効果の話題を見た時に
思いついたお話ですネ~笑☆

お読み下さり、ありがとうございました~!★!

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