Skeb<他者変身>人間に変身する虫~絆編~

※本作品は、Skebでご依頼を受けて執筆・納品済みの作品デス!
内容はSkebに納品したものと同じデス!

※SKebでリクエスト内容も含めて
誰でも見られるようになっているので
こちらでも、誰でも見れる部分は同じように掲載しています~!
(※リクエスト非表示希望でリクエストを頂いている場合を除きます~)

・・・・・・・・・・・・・・・・・

★リクエスト内容★
※ご依頼者様から頂いた内容デス!
(非表示希望でリクエスト頂いている場合は表示しないので安心して下さい~!
※後から非表示にしてほしい場合は、ご連絡頂ければ対応します~!
※リクエスト本文内に「ネタバレ」がある場合もあるので
先に見たくない場合はそのまま少し↓に進んでください~!

★★★★

こんばんは!
ご迷惑で無ければ、無名さんの「歴代全て」の作品中から、
無名さんの「お気に入り」or「続編」を作りたいとお考えの作品がございましたら、そちらをリクエストさせていただきたいです。

内容は「全て」おまかせ致します。
が、出来れば結末は「ハッピーエンド展開」にしていただけたら幸いです。

ご迷惑で無ければリクエストよろしくお願い致します。

★★★★

↓ここからスタートデス!

・・・

”人間に変身する虫~絆編~”

★リクエストありがとうございます~!★

今回は、”人間に変身する虫”のお話の
続編の物語を考えてみました~!!☆

ちょうど内容が頭の中に浮かび上がっていたのと、
頂いたリクエストの内容にもマッチしていたので、
サラサラ~ッと、物語にしてみました~!

ぜひ楽しんでくださいネ~!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー時々、不思議な夢を見るの」
同じ大学に通う彼氏、滝口 正人(たきぐち まさと)の前で
そんな言葉を口にした峯島 亜香梨(みねしま あかり)は
少し戸惑った様子でそう言葉を口にしたー。

「ー夢?」

彼氏と昼食を食べながら、正人の親の話が出て、
そこから互いの両親の話に発展した二人ー。

そんな中、亜香梨は”夢”について語り出したー。

「うんー。わたしのお父さんとお母さんねー、
 すっごく優しいんだけどー、
 なぜか、時々”酷いことされる夢”を見るの」

苦笑いする亜香梨ー。

「ー親に酷いことされる夢?」
正人がそう聞き返すと、頷く亜香梨。

「そんなことされたことないはずなのに、
 変なところに閉じ込められたり、水を掛けられたり、
 叩かれたりー」

そこまで言うと、亜香梨は苦笑いしながら
「あ、現実のお父さんとお母さんはそんなことしないからね?」と、
誤解されないようにと、そう言葉を続けるー。

「ーはははー、それなら良かったー。
 まぁ、夢なんて奇妙な内容のものが多いし、
 特に気にしなくていいんじゃないかー?
 俺だって、亜香梨と喧嘩しちゃう夢見たことだってあるしー。

 俺たち、喧嘩なんかしたこともないのに」

そう言葉を口にしながら、正人は笑うと、
亜香梨は表情を曇らせながら言ったー。

「ーーそれがーー」
戸惑いの表情を見せる亜香梨ー。
そんな亜香梨を見て、正人も不安そうに表情を曇らせると、
亜香梨は続けたー

「ー時々ではあるんだけどー…
 その夢ー…ずっと前から見るのー。
 まるで、現実みたいに生々しくて、悲しい感じでー」

「ーーーー」

深刻な表情を浮かべる亜香梨。

食堂の窓に、先ほどから降り出した雨が力強く打ち付けるー。

ゴクリ、と唾を飲み込むと正人は
ようやく口を開いた。

「ーーーまぁ、夢占いとかいろいろあるけどさ、
 夢なんて、所詮夢さー。
 ほら、楽しい夢だって現実には起きないことだったり
 全然関係ない夢なことも多いだろー?
 それと同じさ」

亜香梨を元気づけようと、正人がそう言葉を口にすると、
亜香梨は少しだけ考えるような表情を浮かべてから
「うんー…そうだね」と、笑顔を振りまいてみせたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーただいま~」
亜香梨がそう言葉を口にしながら、帰宅すると
母親の恵子(けいこ)が「おかえりなさいー」と、そう言葉を口にするー。

「ーー大丈夫だった?雨、凄かったけどー」
先程から降り出したゲリラ豪雨ー。
母親の恵子は心配そうに、その中を帰宅してきた亜香梨に対してそう呟く。

今もまだ、家の外壁のあちらこちらに大粒の雨が当たって
音を立てている状態だー。

「ーふふー、うんー大丈夫。電車に乗ってる時間の方が多かったしー
 さっき、大学を出る前よりは少し雨も弱くなったからー」
亜香梨がそう言うと、恵子は「そう、良かったー」と、
安堵の表情を浮かべた。

そう言われてみれば、さっきよりも雨音は小さくなってきたような気がする。
それでもまだ、十分うるさいけれどー。

「ーあ、でも少し濡れちゃったから早めにお風呂に入っておこうかな」
亜香梨がそう言うと、
母・恵子は「ふふー。そうねー。風邪ひくといけないし、それがいいわ」と、
頷くと、先に帰宅していた父親の幸雄(ゆきお)も
「大変だったなぁ。電話してくれれば迎えに言ったのにー」と、
少し苦笑いしながら言うー。

「ーえ~、お父さんだって仕事帰りだったんだし、大変でしょ?」
亜香梨がそう笑いながら言うと、幸雄は
「遠慮なんかしなくていいんだよー。家族なんだから」と、
そう言葉を口にするー。

そうー、”家族”ー。

亜香梨は大切な家族なのだからー。

たとえ、”いつの日にか”亜香梨が本当のことを知ったとしてもー、
亜香梨に家族と思ってもらえなかったとしても、
自分たちは、ずっと亜香梨のことを”家族”だと思っているからー。

小雨になってきた雨の音を聞きながら、
つい自分の中に暗い感情が芽生えてしまっていたことに気付いて
苦笑すると、幸雄は亜香梨の方をどこか寂し気に見つめたー。

”あの日も、雨が降っていた”ー。
そう、今日みたいなゲリラ豪雨の日だったー。

「ーお母さん、やめて!やめてよ!」
そんな声が響き渡るーー。

雨の音が激しく家中に響き渡る中、
”母親”は彼女のことをビンタして叫んだー

「あんたなんか、生まれて来なきゃよかった!」
そう叫ぶ母親ー。

それを見ていた父親は
ニヤニヤ笑いながら「おいおい、やめとけよー。」
と、そう言葉を口にすると、
立ち上がってから言葉を続けるー。

「苦しめちゃ可哀想だろ?楽にしてやらなきゃ」
そう言葉を口にする父親の顔は狂気に染まっていた。

人間には”親の資格”がない人間も存在するー。
いや、厳密に言えば親になるのには資格はいらない。
けれどーー”親にになるには不適合”な考え方をする人間は、
この世にたくさんいる。

この両親も、そんな”親”だったー。

”毒親”ー。

そして、不運にもこの二人の元に生まれてしまったこの子はー、
その命の灯を散らそうとしていた。

子は、親を選べないー。

親ガチャ、という言葉は使うべきではないのかもしれない。
けれど、彼女の場合、
”ハズレ”を引いてしまったと言わざるを得なかった。

ここで、その命の灯は消えるーーー

そのはずだったのだからー。

「ーーー…!?なんだお前ー」
父親が”何か”に気付くー。

そう、これは、あの日の悲劇ー…。

「ーーー大丈夫ー?? ねぇ、大丈夫ー???」
妻である恵子の心配そうな言葉に、
現実に引き戻された幸雄はハッとした様子を見せながら
「あぁ、いや、すまないー。大丈夫だ」
と、そう返すと、
「”あの日も”こんな雨が降っていたなって思ってね」
と、少し寂しそうに笑う。

その言葉を聞いた恵子は
その言葉の意味を理解しながら、
「そうね」と、そう言葉を口にするー。

雨の音を聞きながら、どこか寂し気な二人ー。

「いつか、本当のことを話す日が来たらー…」
幸雄は躊躇い混じりの表情でそう呟くと、
隣にいた恵子は静かに頷いたー。

「ー話しましょうー。本当のことを、ありのままに」
そう言葉を口にした恵子の姿が一瞬揺らぐー。

そうー、ここにいる両親ー、
幸雄と恵子は、”本物”ではなかったー。

知る人間はごく一部に限られる特殊な虫ー
”人間に変身する虫”たちが、
亜香梨の両親に変身した姿だったー。

いつかは、そのことを亜香梨に伝えるつもりだ。

けれど、亜香梨を本当の娘のように思いー、
否ー、娘として育てて来て、
身も心も、亜香梨の両親になった二人にとって
その”未来”はとてもつらい未来だったー。

打ち明ければー、
もう、亜香梨と家族ではいられないかもしれないからー。

言わなければー…
このままずっと、秘密にしていれば、
”偽りの家族”であっても、ずっと幸せでいることができる。
”人間に”変身している虫ー…
亜香梨の両親・恵子と幸雄に変身している二人も、
ずっと”親”として過ごすことができるし、
亜香梨もずっと、”本当のこと”を知らないまま
幸せに過ごすことができる。

本当のことを知れば、亜香梨はきっと戸惑う。
知らないままの方が幸せなのかもしれない。

それでもー…

”いつかは”言わないといけないー。
このままずっと、嘘をつき通して墓場に行くことができるほどー、
自分たちは心の強い存在じゃないからー。

そして、”あの頃の亜香梨の両親”に変身している二人は、
”歳を取っているように”見せようとしているものの、それも
既に限界だからー。

このまま、あと10年も、20年もすれば、
”どうしてお母さんたちはいつまでも若いままなの?”と、
亜香梨は絶対に疑問を抱く。

賢い亜香梨のことだー。
全力で調べれば亜香梨はきっと”答え”にたどり着くー。
”人間に変身する虫”の存在にたどり着いてしまうー。

だからー言わなければならないー。

言うか、言わないか、ではない。
”いつ言うか”だー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

♪~~~

今日は仕事が休みだった父・幸雄は
家の中の台所周りの掃除をしながら、
過ごしていたー。

「ーあら?誰かしらー?」
洗濯物を畳んでいた母・恵子がそう言葉を口にすると、
幸雄は掃除をする手を止めて「僕が見て来るよ」と、
そう返す。

しかし、恵子は「いいわ。わたしの方が玄関に近いし」と
笑いながらそう言葉を口にして、
インターホンを確認すると、
”どうも峯島さんー”と、穏やかそうな雰囲気のスーツの女性が
そう言葉を口にした。

「ー?どちら様でしょうか?」
見覚えのない女の姿に、恵子は首を傾げながらそう応答すると、
「ー特殊生物危機管理センターの上園(うえぞの)と申しますー」と、
その女は、上園 真由美(うえぞの まゆみ)と書かれた名札が、
インターホン越しに見えるようにかざして見せたー。

「ーー特殊生物危機管理センター…?」
そんなところは知らないー。

がー、”人間に変身する虫”である彼女はー
”恵子に変身している虫”には、上園 真由美を名乗る女性が、
何故ここにやってきたのかを理解してしまったー。

”特殊生物”
それは、自分たちのことだろうと、分かってしまったー。

「ーーお話がありますので、中でお話できますでしょうか?」
真由美のその言葉に、
恵子は返事をすることもできずに凍り付いてしまうー。

一気に手汗が噴き出しー、
背筋が凍る思いをしながら、どう返事をすれば良いのか、
頭の中で必死に考えを巡らせていくー。

しかしー、
戸惑っていると、訪問者である真由美が言葉を続けたー

”では、あえてこう言いましょうかー”
とー。

「ー!」
恵子が表情を歪めると、
真由美は言葉を続けたー。

”峯島さんーー…ではなく、虫ケラー
 とっとと玄関を開けろってんだよ!”

急に乱暴な口調になった真由美に対して
小さく悲鳴を漏らす恵子ー

”出て来ないなら、近所に、そしてお前の大事な娘に
 お前たちが虫だってことを広めてやるー
 それでもいいのか?”
真由美の乱暴な口調に、恵子は青ざめるー

「そ、それだけはー…それだけはー」
泣きながらそう言葉を口にすると、
台所の掃除をしていた夫の幸雄も駆け付けるー。

「どうした?何があったー?」
幸雄が言うと、
”もう1匹の虫も出て来ましたねー”と、
インターホン越しの真由美の声が聞こえるー。

「ーーー特殊生物危機管理センター…!」
父・幸雄に変身している虫の方はその存在を知っていたのか、
戸惑いの表情を浮かべると、
「ーーー…恵子ー…ちゃんと、話そうー」と、
そう言葉を口にしてから、やむを得ず、玄関の扉を開けて、
真由美を引き入れたー。

「ーーこのあと”博士”も到着しますー。
 あなたたち虫けらの今後の処遇について、話をしたいのでー」

上園 真由美は、不満そうにしながらもそう言葉を口にすると、
「ーー僕たちはー、人間の皆さんに危害を加えるつもりなどー」
と、父・幸雄はそう言い放つー。

しかしー、真由美は机を叩くと、
「既に、その二人の”本物”はこの世にいないだろ!!!」と、
声を荒げたー。

優しそうな雰囲気に見えるのに、荒い口調の真由美に戸惑いながら
ゴクリと幸雄が唾を積み込むと、
「ー上園さんー。また、手荒な真似をしていないでしょうねー?」と、
そう言葉を口にしながら、中年の男性が中へと入って来たー。

「ーどうも。特殊生物危機管理センター所長の
 辻 陽太郎(つじ ようたろう)と申しますー」

そう言葉を口にしながら名刺を手渡す陽太郎ー。

「我々は、”モル”ー…
 人間に変身する虫を追い、トラブルの解決や駆除を
 行っている団体ですー。」

”モル”とは、人間に変身する虫の呼称だー。
発見された当初は名前がなかったものの、
人間に変身する虫との戦いの最中、
辻 陽太郎の父親である辻 健介(つじ けんすけ)が名付けたー。

かつて、辻 健介は人間に変身する虫の多くを駆除しー、
息子である陽太郎を救ったー。
それ以降も、残党との戦いを続けていてー、
数十年が経過した今、健介は現役を引退、
現在は息子の陽太郎が父のあとを継いでいるー。

「”駆除”する前に、あなたたちの話を聞かせて貰いましょう」
陽太郎がそう言葉を口にすると、
泣き崩れる恵子を見つめながら父・幸雄は
「ー分かりましたー。全部、お話します」と、そう言葉を口にしたー。

あれはーー
今から10年以上も前だったー。

人間に変身する虫であった彼らは、
”たまたま”ある光景を目撃したー。

それは大雨の日に、家の前に放り出されて
ずぶ濡れになりながら泣き叫んでいる少女の姿だったー。

その子の名前は、峯島 亜香梨ー。

亜香梨は、両親に愛されていなかったー。
両親から、連日過酷な仕打ちを受け続けていたー。

たまたま、通りすがりに、
大雨の日に家の前で泣きじゃくっている亜香梨を見たに二匹は
人間に変身しながら、亜香梨のことを支えたー。

通りすがりの人を装って「大丈夫かい?」と声を掛けたりー、
ごはんも与えられていない様子の亜香梨に
「これ、食べる?」と声を掛けたりー。

2匹はひたすらに、亜香梨を支え続けたー。

けれど、そんなある日ー
あの、大雨の降る日ー

「ーお母さん、やめて!やめてよ!」
亜香梨が泣きながら叫ぶー。

雨の音が激しく家中に響き渡る中、
母親である恵子が、亜香梨をビンタしながら叫ぶー。

「あんたなんか、生まれて来なきゃよかった!」
とー。

それを見ていた父・幸雄は
ニヤニヤ笑いながら「おいおい、やめとけよー。」
と、そう言葉を口にした上で、
「苦しめちゃ可哀想だろ?楽にしてやらなきゃ」
と、付け加えるー。

そして、笑いながら
「ー亜香梨は可哀想な事故で死んだ、そういうことにしよう」と、
幸雄は、恵子の肩を叩くー。

恵子はニヤリと笑うと、
「それもいいわねー」と、頷くー。

それを見ていた”人に変身する虫”は、
”このままじゃ、亜香梨ちゃんはー”と、そう思ったー。

そう思った時にはもう、咄嗟に行動を実行に移していたー。

2匹のうちの一匹は、亜香梨の母・恵子の姿にー、
もう一匹は、亜香梨の父・幸雄の姿に変身するー

「何よあんたたち!?!?」
本物の恵子が叫ぶー。

「ーな、な、な、ど、どうなってやがるー!?」
本当の幸雄が叫ぶー。

「ーあなたたちに、”親”である資格はないわ」
恵子に変身した虫がそう言うと、
「ーお前たちには消えて貰うー。この子の前から」と、
幸雄に変身した虫が言うー。

かつて、自分たちの仲間は、人間に変身して悪事を働いていたー。
いや、今もそうー。
そういう奴らもいるー。

自分たちにそれを止める力は悔しいけれど、ない。

でもー…それでも、
目に入った困っている人を助けることはできるー。

二人はそう思い、旅を続けて来たー。

そしてー、
亜香梨を助ける為に、この日、二人は亜香梨の”母親”と”父親”に
なったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学ー

「また、あの夢を見ちゃったー」
亜香梨が苦笑いすると、
「ご両親に酷いことされる夢ーか…?」と、
彼氏の正人は戸惑いながら言うー。

「ーーうんー…最近、見る頻度が多くーーー」
亜香梨がそこまで言いかけると、
亜香梨のスマホが鳴ったー。

”大事な話があるのー
 すぐに帰ってきてー”

そんなメッセージを見た亜香梨は、表情を歪めると
「ご、ごめん正人ー。家で何かあったみたいー」と、
戸惑いの表情を浮かべながら、静かに立ち上がったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

慌てて家に帰宅した亜香梨ー。

そこには、
両親と、
亜香梨からすれば見知らぬ人物ー
特殊生物危機管理センター所長の陽太郎と、部下の真由美の姿があったー。

「ー初めましてー。わたしはこういう者ですー」
陽太郎はそう言いながら名刺を渡すと、亜香梨は困惑の表情を浮かべるー。

「ーーお父さんー?お母さんー?何があったのー?」
亜香梨が戸惑いながら言うと、
陽太郎が全てを説明しようとし始めたー。

がーー

「ー僕たちから、話をさせてほしいー」
父・幸雄がそう言うと、陽太郎は「ーー分かりましたー」と、
話すのをやめて、幸雄たちに”本当のこと”を話すのを任せることにしたー。

その様子を見つめながら部下の真由美は
「虫けらは全員殺すべきです」と、声を上げるー。

しかし、陽太郎は「ごめんなー。君の気持ちはよく分かるけど、それはできない。
話は聞こう」と、そう言葉を口にするー。

「ーーーは、話ってー…な、何なのー?」
心底不安そうにする真由美。

そんな真由美に対して、泣き崩れている母・恵子に代わり、
父・幸雄は話を始めるー。

自分たちが”人間に変身する虫”と呼ばれる存在ー”モル”であることー、
亜香梨は小さい頃、両親からずっとひどい仕打ちを受けていたことー、
それを偶然見かけて助けて、両親に成り代わっていたことー

その全てを”自白”したー。

「ーーーー…う、嘘ー…お父さんと、お母さんがー、虫…?」
亜香梨は震えるー。

父・幸雄は悲しそうにしながらも頷くと、
その場で”変身”を解除してみせたー。

母・恵子も「ごめんねー」と呟きながら変身を解除するー。

驚く亜香梨ー。

しばらく間を置いてから、幸雄と恵子が元の姿に戻ると、
「ーいつかはずっと話そうとしてたのー
 でも、話せなくてごめんなさいー」と、
恵子は涙ながらに言葉を口にしたー。

「ーーーー」
亜香梨は”両親から酷いことをされる夢”の正体を悟ったー。

あれはーー無自覚のうちに自分の中に残っていた
”トラウマ”だとー。

「ーーわたし、ずっとーー嘘をつかれてたのー?」
亜香梨がそう言うと、
父・幸雄は「すまないー。どんな罰でも受け入れるつもりだー」と、
そう言葉を返すー。

それを見ていた管理センターの所長・陽太郎は、
「ー我々は”モル”の駆除、および、潜伏しているモルの正体を暴く活動をしていますー。
 ーこのモルたちも、すぐに”駆除”しますー。
 あなたの今後の生活は、”モル被害”を受けた人向けの救済処置がありますので
 今まで通り変わらずーー」と、そう説明を始めるー。

がーーーー

「ーーー」
亜香梨は、幸雄と恵子の前に立ち、
陽太郎らの前に立ちはだかったー。

「ー二人は、わたしのお母さんとお父さんですー」
とー。

「ーー!」
涙を浮かべていた恵子と、その隣にいる幸雄が顔を上げるー。

「ーー二人が人間だって、虫だって、
 わたしにとっては、わたしを育ててくれたお父さんとお母さんなの!
 ”駆除”なんて絶対にさせない!」

亜香梨が涙目でそう叫ぶー。

陽太郎は「ーその二人は、偽物ー。君の本物の両親の”仇”だったとしてもー?」
と、そう聞き返すー。

「ーーー二人が、わたしを育てて、守ってくれたことは本当のことだからー」

亜香梨は目に涙を浮かべながら、
二人の存在は偽物だったとしても、二人の愛は本物だから、と
そう言葉を口にするー。

「お父さんー、お母さんー
 ずっとわたしに嘘をついてたなんて、酷いよー。」
亜香梨は涙目で、二人の方を振り返りながら、
けれども、笑顔も浮かべるー。

「ーー遠慮しないで、本当のこと、もっと早く言ってくれたらよかったのにー
 きっと、今までずっと苦しんでたんでしょ?
 もっと早く言ってくれたらー
 お父さんとお母さんのこと、こんなに長い間苦しめずに済んだのに」

亜香梨はそこまで言うと、
父・幸雄と、母・恵子を見て言ったー。

「ーー家族なんだからー」
とー。

「ーーー亜香梨ーーー」
父・幸雄は目に少しだけ涙を浮かべながら言う。

母・恵子も涙目で頷くと、
父・幸雄は、亜香梨と恵子を抱き寄せて
「僕たちは、これからもずっと家族だー」と、そう言葉を口にしたー。

それを見ていた陽太郎は、部下の真由美に対して
「帰ろう」と、そう言葉を口にするー

「で、でもー」
真由美がそう言い返すと、
陽太郎は、亜香梨たち三人の方を見て言ったー。

「ー失礼しましたー
 この家の両親が”モル”だという情報は誤報だったようだー
 我々の勘違いでしたー」

陽太郎はそれだけ言うと、背を向けて立ち去ろうとするー。

その対応に、恵子と幸雄は「ありがとうございますーーー」と、
涙目で頭を下げると、
陽太郎は「これからも、家族で仲良くー幸せに」と、
それだけ言葉を口にして真由美と共に立ち去って行ったー。

残された三人は、
涙ながらに互いを見つめると、
改めて”家族”の絆を噛みしめながらー

そして、今日、この瞬間から
本当の意味で家族になれたような気がしてー、
穏やかな笑みを浮かべるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうして…!どうして、見逃すんですか!」
部下の真由美が不満そうに叫ぶと、
陽太郎は言ったー。

「あの二人は大丈夫だー。
 それに、あんなに固い絆で結ばれている両親を奪ったら、
 あの子ー…亜香梨という子はとても傷つくだろうー。

 ー大切なものを失う悲しさは、君もよく知ってるはずだよー。
 上園さん」

陽太郎がそう言うと、
「いや、僕もー」と、
かつて”人間に変身する虫”に食われて死亡した彼女・美優(みゆ)の
ことを思い出すー。

「ーーーーーー」
真由美は表情を歪めると「そう、ですねー」と、そう言葉を口にしてから、
「ーでも、わたし、やっぱり美優お姉ちゃんのことー…」
と、”姉”を奪った人間に変身する虫への憎しみを消すのは無理だと、
そう言葉を口にするー。

そんな真由美に対して、
陽太郎は”お互い、辛いな”と、そう言葉を口にすると
「ーだからこそ、”悪さをする奴ら”は、駆除していかないとな」と、
穏やかに微笑んでから、そのままゆっくりと歩き始めたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

リクエストありがとうございました~!!!

体調不良で、少しお待たせしてしまいましたが
無事に完成できてよかったデス~!!!

少しでも楽しんで頂けていれば嬉しいデス!!!

お読み下さりありがとうございました~★!

PR
Skeb

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