夏休みー。
彼氏から花火大会に誘われた彼女は
本当は花火が苦手で行きたくなかったー。
そんな思いを、友達に愚痴として呟いたらー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え?花火大会に行きたくないー?
なんで~?勿体ない~!
秀樹(ひでき)くんに誘われたんでしょー?」
親友の高坂 香織(こうさか かおり)が笑いながら
そう言葉を口にすると、
その香織に対して愚痴をこぼしていた、
久川 美優(ひさがわ みゆ)が、少し苦笑いしながら
言葉を口にしたー。
「ーうんー秀樹とは一緒にいたいんだけどー
そのー」
”秀樹”は美優の彼氏で、
同じ高校に通う男子生徒ー。
美優と秀樹はとても仲良しで、
秀樹からデートに誘われたことは嬉しく思っているし、
一緒にいたいという気持ちは当然あるー。
けれどー
それでも美優が”花火大会に行きたくないなぁ”と
思っているのには理由があったー。
それはーー
”花火が大の苦手”だったからだー。
雷とか、大きな音がとにかく苦手な美優は
例外なく、花火も苦手で、
花火を見に行っても、周囲が喜んでいる中、
一人で内心ビクビクしているような、
そんな状況だったー。
「ーーあ~~~そっか、花火が苦手なんだね~…」
美優が親友の香織に事情を説明すると、
香織も納得した様子で、頷くー。
「そういえば、小さい頃から大きな音、苦手だもんねー」
幼馴染でもある香織が、花火を怖がる美優に理解を示すと、
「じゃあ、秀樹くんからの誘いは断るのー?」と、
そう言葉を口にするー。
が、美優は少し戸惑った後に首を横に振るー。
「ーーううんー……
秀樹、すっごく楽しみにしてたしー
断るのもなんだか申し訳なくてー
だからー花火は怖いけどー…
行けたらなぁってー」
美優は、気乗りしない様子ながらも、
そう呟くと、
香織は「ー秀樹くんにも、事情を説明すればいいのに~」と
少しだけ笑うー。
確かに、それはその通りではあるものの、
言おうと思っているうちに、言い出せないまま、
デートの日が直前になってしまいー、
今更”やっぱりわたし、花火が苦手なの”とは言い出せない空気になっていたー。
そんな美優の姿を見つめながら、
しばらく考え事をしていた香織は、
「あ、そうだー。じゃあー、わたしが代わってあげよっかー?」と、
そんな言葉を口にするー。
「ー代わる???どういうこと?」
美優が心底混乱した様子で言葉を口にすると、
香織は笑みを浮かべながら言ったー。
「ーふふふふふふー
去年、死んじゃったおじいちゃんの家で見つけたものなんだけどねー」
香織はそう言いながら、
得意気な表情で、不思議な水晶玉のようなものを手にして、
それを美優に見せるー。
美優は首を傾げながら、
「それで、どうやってわたしと花火大会、代わるのー?」と、
困惑しながら言い放つー。
水晶玉を手に”わたしが代わってあげようかー?”などと言われても
何のことを言っているのか分からないし、
何をするつもりなのかも、サッパリ分からないー。
そう思いつつ、戸惑いの表情を浮かべていると、
香織は「慌てない慌てないー」と笑った上で、
水晶玉の力を見せてあげる、と、そう言い放ったー。
「ーーーまず、この水晶玉を見つめてみてー」
香織がそう言うと、美優は「こうでいいのー?」と、
戸惑いの表情を浮かべたまま、水晶玉を見つめるー。
「そう!そんな感じ!」
香織は、満足そうにそう言うと、
「今からわたしが、この水晶玉に手を触れるけど、
美優は気にせず、水晶玉をそのまま見つめていてねー」と、
そう言いながら、水晶玉に軽く手を触れて
ゆっくりと目を閉じたー。
「ーーー…ね、ねぇー、これ、いつまで見てればいいのー?」
美優が少し戸惑いながら言うと、
香織は「もう少し!」と、そう言葉を口にしてからー、
「ほら、そろそろ来るよー!」と、得意気に言い放ったー。
それと同時に、光のようなものが水晶玉から放たれてー、
その光が、水晶玉に触れていた香織の周囲を漂い始めるー。
「ーえっ、か、香織!?大丈夫ー?」
美優がそう言葉を口にするも、
香織は「大丈夫大丈夫ー!ほら、見て!」と、
そんな言葉を発したー。
その直後ー、香織自身も光に包まれるようにしてー、
次の瞬間、香織の姿が一気に美優の姿へと”変化”したー。
「ーーえ…嘘ー…」
その光景を見て、美優は思わず声を上げるー。
目の前で、親友が自分の姿に変身したのだから当然だー。
「ーこの力があれば、あとはわたしさえ、美優のフリを
しっかりとできれば、秀樹くんも悲しまずに済むし、
美優は苦手な花火を見に行かなくて済むし、
一石二鳥でしょ!」
美優の姿のまま、香織がそう言うと、
美優は「わぁ…なんだか、双子の妹が出来た気分ー」と、
そう苦笑いするー。
すると、美優の姿をした香織は首を横に振ってから続けたー。
「ーーちがうちがうー。わたしがお姉ちゃんでしょ!」
とー
「え~~~?」
冗談めいた口調で笑う二人ー。
気を取り直して、美優の姿をした香織が
「これで、わたしが美優の代わりをしてきてあげる!」と、
そう宣言すると、美優は少しだけ申し訳なさそうに、
「でもー…それって香織が大変なだけで、香織にメリットなくないー?」と、
そう言葉を口にするー。
美優の代わりに、花火大会デートに行くー。
そんなことをしても、香織にメリットはないだろうし、
香織に負担をかけてしまうだけなのではないかと、
美優は少しだけ心配そうに言葉を口にするー。
しかし、美優の姿をした香織は
「ーーふふふーわたしもちゃ~んと”得”するから大丈夫だよー?」と、
少し悪戯っぽく笑うー。
「ーーーえ?」
美優が少しだけ不思議そうに言うと、
美優の姿をした香織は笑ったー。
「ー決まってるでしょ!花火!
わたし、花火好きだから、花火大会に行けるだけで
もう十分、”仕事の報酬”を得られる気分だし~!」
とー。
「ーあ~、そっかーそうだねー」
美優が微笑むー。
花火が大の苦手な美優からしてみれば、
なかなか想像できないことではあるけれど、
花火が大好きであれば、
美優の代わりに、美優の姿で花火大会に行けば、
それを楽しむことができるのだろうー。
「ーー秀樹くんの前で美優のフリをする”お仕事”の報酬が
花火って感じー!
だから、気を遣わないでー」
美優の姿をした香織のそんな言葉に、
美優は安心した様子で笑うと、
「じゃあー、よろしくねー。お姉ちゃんー」と、
さっき、”わたしがお姉ちゃんだよ!”と言われたことを
思い出しながら、冗談めいた口調でそう言葉を口にするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー」
花火大会当日ー。
”美優”の姿をした香織が
”美優”として秀樹の前にやって来るー。
「ー美優ーー」
秀樹が美優の姿をした香織に気付いてそう言葉を口にすると、
美優の姿をした香織は「ーあ、秀樹くんーお待たせー」と、
そんな言葉を口にしながら、
秀樹のほうを見つめるー。
そして、花火が打ちあがる夜空のほうを見上げると、
美優の姿をした香織は少しだけ微笑みながら、
秀樹と共にゆっくりと歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”香織、上手くわたしのフリできてるかな~?”
香織に”わたし”になってもらっている美優は、
自宅で一人、のんびりと過ごしていたー。
がー、苦手な花火大会を見に行かなくても大丈夫になった途端、
今度は”香織、ちゃんとわたしのフリできてるかな~?”とか、
”途中でバレちゃったりしないよねー?”とか、
別の方面が心配になり始めてしまうー。
”香織、意外とドジなところもあるからな~…”
どちらかと言うと、客観的には美優の方がドジであるものの、
そんなことを頭の中で考えてしまう美優ー。
やがて、「でも、せっかくわたしのために変わってくれたんだし、
疑っちゃうなんて失礼だよね!」と、自分で自分にそう言い聞かせると、
ようやく香織のことを心配するのをやめて、
”秀樹ーごめんねー”と、内心で言葉を口にしたー。
秀樹とは一緒にいたいー。
ただー、どうしても、それ以上に花火が苦手だったー。
先にそれを伝えれば良かったのかもしれないー。
けれど、秀樹が花火自体もとても楽しみにしていたし、
言い出すタイミングを失ってしまい、こんなことになってしまったー。
”美優の姿をした香織”に代わりに花火大会デートに行ってもらったことはー
彼氏の秀樹を騙すことでもあるー。
そのことに関しては、美優も”ごめんねー”と思いつつ、
「ーーその分、これからたくさん秀樹と思い出を作っていけたらいいなー」と、
そんな風に考えるのだったー。
そしてー、その日の夜ー。
美優の姿をした香織がやってくると、
「花火大会、無事に終わったよ~!花火楽しかった~!」と、
そう言葉を口にしながら、美優の姿をした香織が、
嬉しそうに水晶玉を手にするー。
「ーーホントにありがとう!面倒をかけてごめんねー」
美優が改めてお礼の言葉を口にすると、
美優に変身している香織は
「全然ー気にしないでー。花火をしっかり楽しんだから」と、
そう言葉を口にすると、水晶玉に手を触れたー。
「ーーあ…、わたしは何か手伝う必要あるー?」
変身を解除しようとしているであろう香織に対して、
美優がそう言葉を口にすると、
美優に変身している香織は「大丈夫ー変身を解除するときは
一人でできるからー」と、そう説明してから
穏やかな表情で微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
香織は変身を解除し、元の姿…香織の姿に戻って、
美優も、元通りの日常に戻ったー。
がー、その直後から”ある異変”が起きたー。
それは、彼氏の秀樹が急に冷たくなってしまったのだー。
”どうして?”と思いつつ理由を確認する美優ー。
しかし、秀樹からはそっけない返事しか返って来ないー。
親友を疑いたくなかったけれど、香織が何かミスしたのでは?と思い、
香織にも確認したものの、”普通に花火見てただけだけどー…?”と、
そう返されてしまったー。
戸惑う美優ー。
そんな中、ついに秀樹から唐突に別れを告げられてしまい、
美優は彼氏を失ってしまったのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼氏の秀樹から別れを告げられて、
途方に暮れていた美優ー。
香織は、そんな美優のことを慰めてくれたものの、
原因は分からないままだったー。
がー、
それからしばらくが経過して、
美優はその”理由”を知ることになってしまったー。
「ーー!」
美優の視線の先に、親友の”香織”と元カレの”秀樹”が
仲良くしている姿が目に入ったー。
「ーーーーど、どういうことー…?」
戸惑いながら、美優はその日の夕方ー、
香織に、秀樹と仲良くしていたことを問い質したー。
「ーあ、うんー
秀樹くんとこの前から付き合い始めたの!
だって秀樹くん、今、彼女いないでしょ?
浮気でもなんでもないしー」
香織がそう言葉を口にすると、
美優は香織のほうを見つめながら、
少しだけ表情を曇らせるー。
そしてー
言葉を続けたー
「ーーあの日ーーー」
美優がそれだけ言いかけると、
香織は、笑いながら言ったー。
「秀樹くんー、美優のこと悲しそうに話してたよー。
花火大会の日に横暴な態度を取られて、
しかも、途中で他の男についていったり、
酷いことばっかりだったってー。
”あんなことする子だとは思わなかった”ってー
そう言ってたー」
香織のその言葉に、美優は震えるー。
「ーーど、どういうことー?
あ、あの日は香織がー」
「なにそれ~?わたし、しらな~い!」
笑う香織ー
騙されたー…
美優はそう悟ったー。
そう、香織は元々、美優から秀樹を奪おうとしていたー。
そんな中、美優から花火大会に行きたくないと聞かされて
”秀樹を奪うために取り寄せた”変身薬の使い道が決まったー。
あの日、花火大会の日に、美優に変身した香織は
秀樹の前で、秀樹が嫌に感じるであろう行動を繰り返し、
秀樹と美優の仲を引き裂いたー。
その上で、何食わぬ顔で秀樹を慰めようと、秀樹に近付き、
秀樹と付き合い始めたのだー。
「ーーーう、裏切者ー…!」
美優が悔しそうにそう言葉を口にすると、
香織は「ーなんのこと~?」と、とぼけながら笑うー。
「ーーとにかく、秀樹くんはもうわたしのものー
邪魔はしないでね?美優ー」
香織はそれだけ言うと、勝ち誇ったような表情で立ち去って行くー。
”花火大会に行きたくないー”
そんな思いが、親友の罠にはまるきっかけとなって、
美優は彼氏を奪われてしまったのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
夏のシーズンも終わりが近付いて来たので、
今回は、花火大会のお話でした~~!
友達に自分の身代わりをお願いするのは……
女子同士だと、特に危険(?)なのデス…!
お読み下さり、ありがとうございました~~!!
★作品一覧★

コメント